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いじめ文学専用サイト
主人公はu15の少女たち。 主な内容はいじめ文学。このサイトはアダルトコンテンツを含みます。18歳以下はただちに退去してください。
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I N F O M A T I O N
『いじめ文学専用サイト総合情報センター』

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contents 1 ・・・・・・・・・長編小説『由加里』
contents 2 ・・・・・・・・・長編小説『マザーエルザの物語・終章』
contents 3 ・・・・・・・・・二次製作、新釈『氷点2009』
contents 4 ・・・・・・・・・長編小説『おしっこ少女』
contents 6 ・・・・・・・・・長編小説『少女が死にました 18禁バージョン』
contents 7 ・・・・・・・・・長編小説『姉妹』

contents 8 ・・・・・・・・・長編小説『ふたり、あるいは友情』


contents 9 ・・・・・・・・・長編小説『地下貯水槽 18禁止バージョン』


contents 10 ・・・・・・・・『長編小説『兇状もちの少女、あるいは犬』 ・』




ついったー始めました。執筆状況など、近況報告はここまで


contents 9 長編小説『地下貯水槽 18禁止バージョン』
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Contents 8
『いじめ文学専用サイト』へようこそ!



新長編小説『『地下貯水槽 序』(18禁止バージョン』

『地下貯水槽 序』(18禁止バージョン)

『地下貯水槽 1』(18禁止バージョン)


『地下貯水槽 2』(18禁止バージョン)



http://aliceizer10.blog.2nt.com/blog-entry-244.html

テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

contents6
Contents 6 『少女は死にました』18禁バージョン
『いじめ文学専用サイト』へようこそ!ijime12.jpg
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 新長編小説
 『少女は死にました 1』18禁バージョン

テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

『『兇状もちの少女、あるいは犬』 contents10
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Contents 10
『いじめ文学専用サイト』へようこそ!



『『兇状もちの少女、あるいは犬』 』

<"http://aliceizer10.blog.2nt.com/blog-category-18.html">『発端』(18禁止バージョン)

『発端』(18禁止バージョン)


 自分はいったいどこにいるんだろう?いや、どこにいさせられているのだろう?14歳の女子中学生、青井みずなは両手を開こうとしたが、それは無駄だった。なんとなれば、彼女は手錠をかけられているからだ。それでも手首を上げることはできる。傍らにいる女性警察官に促されると少女は命令通りに動かした。いや、自動的に動いたと表現した方が適当だろう。彼女はそんなつもりはなかった。それでも手は動いて、婦警が手錠の鍵を鍵穴に入れる。
 かちゃり、という音がしたような気がした。
 彼女に促されるままに被告席に座る。そうここは東京市地方裁判所、彼女は同級生を殺害した罪で裁かれようとしている。



『保健所1』(18禁止バージョン)

 犬のように、いいや、今度ばかりは「ように」ではなかった。みずなは自分が四つん這いになっていることに気づいた。立ち上がっているよりも自分にとって自然であることが涙を誘う。
 なんということか本当に人間でなくなってしまったのか。
惨めにも圧倒的な喧噪のなかで少女は引かれていく。嵌められた首輪につながっている鎖と摑もうとしたがうまくいかない。手は両方ともちゃんとした手であるのになぜかかつてやっていたようにものを摑むという機能が完全に失われている。それに突然、気づいたのだが少女は全裸になっているではないか。ほとんど芽乳というより他に表現しようがないだろうが、彼女にとってみれば立派な胸なのだろう、その胸部と恥部が露わになってしまっている。
「ぃいやァ!!」


『保健所2』(18禁止バージョン)

 時計は青井みずなが閉じ込められている檻からもみえている。それは午後1時55分を示している。それはあたかも彼女を見下ろしているようだ。銀色の枠に黒塗り、という実にシンプルなデザインである。
しかし、時計だけがそうしているのではない。
彼女に鼻の孔を恥ずかしげもなく見せつけているのは、所長らしき男と田沼という若い部下である。なぜか、桐原桃子という、もうひとりの部下がいない。その事実は少女の心を寒くするのに十分だった。
 午後2時を針が示したところで、ドアが開いて二人の男が入ってきた。二人ともみずなが知らない男である。


『保健所3』(18禁止バージョン)

 桐原桃子は、みずなを保護用の檻に預けるとすぐに、所長と司法省の役人が待っている部屋に行かねばならない。処理しなければならない仕事が彼女を待っている。
田沼たち、その他、若い職員には興味がないために、彼女の脳裏に発生する映像にあっては、のっぺらぼうの匿名というひどい扱いにすぎない。
部屋に到着したころには時計の針は定刻をすでに超えていた。
 入室するなり、新沼という役人に遅刻を素直に謝罪する、ついて、所長と目が合い、それなりの謝罪を込めて頭を下げる。
 クリーム色の殺風景な部屋の真ん中に設置された檻、というよりは単なる鉄格子のついた箱の中には白い犬が鎮座している。かなりの短毛種である。

http://aliceizer10.blog.2nt.com/blog-entry-247.html

『保健所4』(18禁止バージョン)

 雄犬は、みずなを押しつぶすのに十分すぎる体重を持っていた。
 圧力以外のすべての感覚が恐怖のあまり麻痺している。ただ、何かが体内の中から流れ出ていく、そんな感覚は生きている。
 尿でもなければ、血液でもない、まったく別の液体が自分の中から逃げ去っていく。それは青井みずなという少女を構成するのに不可欠な構成要素であって、生気が搾り取られていくような圧力がひしひしと全体にのしかかってくる。子供の時にみた図鑑に青虫に卵を植え付ける小さな蜂が載っていたはずだ。蜂が作った巣に押し込められた青虫は、卵から孵った幼虫の餌となるのである。
 身体の感覚は麻痺しているはずなのに、他者に侵食されるイメージだけが頭の中で展開される。


『保健所5』(18禁止バージョン)




 みずなは晴れて先生の飼い犬となって保健所を無事脱出することができそうである。しかし予断は許されない。
 真夏が近いというのにコンクリートに囲まれている故に、他所との温度差からそれほど気温が低くないのに薄ら寒さを感じる。おそらく精神的な冷房効果だろう。
ここは施設の地下駐車場である。早く車に入って出発してほしい。そうでないと安心できない。すぐにでも自分がカコだとばれて、死刑、いや処理のために係員が彼女を捕まえにくるとも叶わない。
少女は、先生こと桐原桃子がその執行者であることを知らない。いま、自分を戒める服から連結した紐を握っているのが、いままで何頭も犬や猫を殺処分してきた張本人だと知らない。あるいは自分をそうする可能性すら否定できないことにも気づいてない。



『新しい飼い主1』(18禁止バージョン)





 「かわいいな、ねえ、伯母さん、どうしてカーディガンで隠してるの?」
「柿生、伯母さん、忙しいから話はあとにしてほしいんだけど、あんたのお母さんのところにも寄りたいし・・」
「じゃあ、乗せてってよ!」
 先生が何故に素っ気ない態度を、柿生と呼ばれた姪に示すのか、少女はベールの中で固唾をのんで待っていた。
あたかもこれから百叩きにあう罪人のような気分だ。時代劇は好きでいつのテレビで視聴していて、最近は数少なくなったのを残念に思っていたほどだ。番組名は忘れたが定番の時代劇で、罪人が順々に刑罰を受けるシーンがあったが、実際に叩かれている本人よりも待っている方に少女は注視していた。
当時、すでに学校ではいじめられる身分に墜ちていたが、ちょうどいじめが頂点に達したときで、ほかのクラスのいじめられっ子と同時に辱めを受けることがあった。目の前で彼女が殴られたり、唾を吐かれたりするのをみると、過去の同じような体験が由来しているのか、彼女自身も同じ目にあっているような気分になったものだ。
それゆえに罪人の気持ちがわかったのである。
 さて、べつにみずなの前で誰かが痛めつけられているわけじゃない。



『プラナ1』(18禁止バージョン)








  その真っ白な人はプラナというらしい。
 マンションの44階にある彼女の部屋に招じ入れられた少女は、まず最初に、人間の女性に吠えかけられた。先生は彼女を犬だと扱っているようだが、少女が目の当たりにしたのはあきらかに人間だった、けっして犬ではない。保健所で数知れぬ犬たちに出会ったが、彼女を強姦しようとした雄犬も含めて・・・、彼女はあきらかに人間の若い女性だった、それもかなり美人で、先生とは完全にタイプが違う。
 そんなプラナが、いま、少女が身に着けさせられている首輪と胴輪、しかも、フリルやリボンが所せましと飾られている、それゆえにむしろ、破廉恥にみえる。
 少女は顔を赤らめた。
 すると、今度は軽蔑のまなざしを向けてきた。

『プラナ2』(18禁止バージョン)



『プラナ3』(18禁止バージョン)

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テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

contents
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Contents
『いじめ文学専用サイト』へようこそ!
  本サイトでは、U15の少女を主人公としております。
なお、性的なコンテンツを含みます。18才以下の方は、即時、退去していただくようオネガイします。
  本サイトが、内容の中心に置いているのが『いじめ』です。これから、数多くのいじめられっ子談を紹介したいと思います。まずは、トップバッターを連れてきました。西宮由加里さんです。

 『由加里』
  私は、西宮由加里といいます。高校二年生の、ふつうの女の子です。今の私を知っている人には、理解してもらえないのですが、中学の時にいじめられていたことがあります。
  これから、語られる物語は、夢の中で出会った男性に話したことです。彼は、何でも、小説家志望だそうです。もしも、作品に悪いところがあったら、いくらでも注意してあげてください。


『由加里1』
  少女は、闇の中にいる。それは、彼女の内面をも表していた。闇とは意識無意識のうちの無意識を意味する。一言で言えば、ぼっとしていたということだ。だから、ドアがおもむろに開いたことにも気づかなかった。
 「由加里?もう寝たの?あれ起きてるんじゃないの」
「・・・・あ、ママ」
由加里と呼ばれた少女は、返答に窮した。

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『由加里2』
『由加里3』
『由加里4』
『由加里5』
『由加里6』
 「ひどい!何だろう、これは?!」
翌朝、由加里は鏡に映った自分の下着姿を見て、思った。黒いボンデージ風の下着は、あきらかに、13歳の少女には似合わない。少女は、身長は155センチで、平均からそれほど低いわけではないが、そのほっそりした肢体は、年齢よりも一つか二つほど下に見える。
「恥ずかしい!」
由加里は思わず目を覆った。その日は、彼女にとって大変な問題を抱えているのに、さらに困難を抱えるなどと・・。

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 こんにちは。西宮由加里です。ここまで、読んで頂いてありがとうございます。多少は、脚色が為されていますが、書かれていることは、結構、本当のことです。これから、性的ないじめが、始まります。

『由加里7』
 安閑とした教室で、由加里がたったひとりで、英語の授業を受けている。
多賀の発音は、留学経験を自慢するなりに、それなりにマトモだった。しかし、それは、彼の人格や、教師としての資質にまったく関連しない。こんな状況で、平然とした顔で、授業ができるのだ。どう考えても、まともな教師ではない。

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『由加里8』
 
『由加里9』 
 「なんて、破廉恥な下着かしら」
「ぃいやああああああ!!見ないで!見ないで!!」
クラス全体がどよめいた。しかし、照美は冷静なまま話しを続ける。あたかも、予め、由加里の下着のことを知っているかのように、話し出す。

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『由加里10』 
 「由加里!どうしたの!?」
「ママ・・・・・・」
春子は、娘の顔を両手で包んだ。そして、その顔を眺める。由加里は、思わず目をそらす。
「由加里ぃ!」
「か、母さん・・・・・あ!ああああっっぁあああ!!」
 由加里は、いきなり、母の胸に飛び込むと号泣をはじめた。

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 ママに、いじめられていることだけは、バレたくなかったのです。でも、このとき、全部、打ち明けていたら、あそこまで、ひどいことにはならなかったと思います。
『由加里11』
   6月の陽光は、新緑にきらめいて、生命の謳歌に満ちているはずだった。しかし、どうして、こんなにねっとりしていて、気持ち悪いのだろう。由加里は、隠れていたトイレから引きずり出されて、教室に連行された。ちなみに、どうしてトイレかと言えば、そこで弁当を広げていたからである。哀れな由加里は、もはや、ここでしか昼食を取ることを許されないのだ。
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 ここまで、読んでくださってありがとうございます。由加里です。トイレで、ごはんを食べるのは、とても辛いことでした。四方の壁からつぶされるような気がするのです。私の中学のトイレには和式と洋式があるのですが、いじめっ子たちは、和式で食べろと言いました。和式だとうまく座れないのです。彼女たちは、それを知っていて、命じたのでしょう。
 四時間目が終わると、お弁当を持って、トイレに行くように命令されます。具合が悪かった時など、無理矢理に押し込められました。そして、全部たべるまで、出して貰えませんでした。流さないように、上から監視されていました。だけど、ママが作ってくれたお弁当をトイレに流すことなんて、できるはずはありません。一番、何が辛かったって、お弁当に対して、ママに対して、悪くって・・・・・・・・・・・ごめんなさい。もう言えません・・ウウ・・・・・ウ

『由加里12』
『由加里13』
  「アれい?どうしたのカナ」
「いやああああ!ぁ」
 由加里は、大腿を狭めて、いじめっ子たちの視線を防ごうとした。上品なかたちの鼻梁が、恥辱に狭まる。
「西宮ったら、おもらししちゃったのかな」
ちょうど、放送委員の仕事を終えた似鳥ぴあのである。
「ぃやあ!ぃやあ!み見ないで!」

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 本当に、辛い体験でした。西宮由加里です。よく、こんなひどい目にあって、生きていられたと思います。今、思い出しても涙が出てきます・・・・・・・・・。

『由加里14』
『由加里15』
『由加里16』
    「なあに、朝から出かけるの?休みなのに」
春子は心配になって、娘の背中に声をかけた。
「由加里姉ちゃんたら、早いのね」
妹の郁子は、眠い目を擦りながら部屋から這い出てきたばかりだ。

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『由加里17』
 似鳥かなんが、選んだのは、とある空き屋だった。
「・・・・」
「何しているの、入ってきなさいよ、はやくいじってほしくてたまらないんでしょう?」
「そ、そんな・・・・・・・・」
意地悪く言うかなん。

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  似鳥先輩・・・・この人の名前は、もう二度と聞きたくないです。先輩は、私の弱みを全部知っていて、ああいうことをしたんです。ファーストキッスが、同性だなんて・・・・・・・。
『由加里18』
  由加里は、帰宅するなり、風呂場に直行した。まだ、午後4時30分を回ったばかり・・・・・・・である。母である春子は驚いたが、何も言わなかった。
 びりびりという擬音は、本来、水に対してふさわしいものではないであろう。しかし、今、由加里が浴びているシャワーは、まさに、その擬音そのものだった。水が痛い。それは、汚れた少女の躰に当たって、無機的な音が木霊する。

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 本当にひとりでした。ミチルちゃんでさえ、信用できませんでした。
 クラスの女の子のひとり、ひとりに、わずかな可能性を求めて、アプローチしました。もちろん、誰も口すら聞いてくれませんでした。
 そんな辛い時、唯一の慰めがオナニーでした。自慰とはよく言ったものです。私は、いじめられる自分を思い浮かべてオナニーしました。もちろん、いじめっ子の中に、私もいるのです。もう一人の私は、先頭に立って、西宮由加里をいじめていました・・・・。本当にひとりでした。


『由加里19』
『由加里20』
『由加里21』
夜のしじまに、一つの果実がなった。それが腐って落ちるか、貴人に食べられるかは、果実しだい。
 
「痛かったですか?西宮先輩」
「全然、痛くなかったよ、貴子ちゃんが教えてくれた方法が、よかった」
「・・・・・・・」
小池貴子と高島ミチルは目を合わせた。
「でも、惨めだよね。こんなことまでしなきゃいけないなんて・・・・・」
由加里は、顔を自らの膝に埋めると、泣き出した。
 由加里の目には、その日の昼間のことが、鮮やかに復活していた。

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『由加里22』
 高島ミチルは、由加里と小池貴子を、富士山の麓にあるコテージに誘った。ミチルの伯母夫婦が経営しているのである。青木ヶ原樹海の近くにあるこのコテージには、テニスのコートが何面もあって、 それは、プロレベルの選手すらが、利用するほどである。あの西沢あゆみも訪れると聞く。ミチルは、彼女からサインをもらったことがあった。
 「月曜が、創立記念日だから、三連休じゃないですか」と誘ったのである。
たまたま、海崎照美や似鳥かなんからの命令もなかった。

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『由加里 23』
 
  昼過ぎにコテージに入った三人は、ミチルの母親が作ってくれたお弁当を手に、樹海の散策に向かった。おやつ代わりだと言うのだ。
 もともと、高島家は体育会系の家である。運動少女たちが、どのくらい食べるのか、100も承知なのである。テニスコートの裏には、広大な樹海が横たわっている。そこは死の別名だ。磁石すら通用しない樹海。そこに、間違って、入れば二度と帰ることができなくなる。一方、自殺者は、それを利用して、自分を苦痛から解放される道を選ぶ。
 人間の目に親しい緑は、その迷路の恐怖を和らげては・・・いる。しかし、それ故に、樹海はおそろしいのである。

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『由加里 24』
 「西宮先輩、いじめられているんですよ」
いきなり、貴子が切り出した。ミチルは目を丸くしている。親友が、積極的に動く姿は珍しいからだ。
「それは、テニス部内のことなの」
 あゆみが言う。予め、ミチルと貴子が後輩であることは知らされている。
「それはいけないな・・・・・・」
はるかは、まるで他人事のように言う。
「でも、はるか姉ちゃんは、同じクラスなのよね」
「私は、あまり親しくしてないし、口を聞いたのも二年になって一回か、二回ぐらいかな」
「じゃあ、教室で話しかけられたら無視しないよね」

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『由加里 25』
 「やめて!来ないでええええぇ!」
「由加里!開けなさい!一体!何があったの!?出てきて、ママに説明しなさいぃ!!」
春子は、由加里の部屋のドアを激しく叩きながら怒鳴った。
 由加里の自殺騒ぎは、必然的に、両親に知らされることになった。楽しいはずの旅行は、日曜日の夜のうちに切り上げとなり、その日のうちに、父親の運転する車で帰宅した。その最中、由加里は両親の質問には、一切答えなかった。
 そして、帰宅するなり、自室に引きこもった。その上に、机やら本棚やらを放り投げた。ドアにバリケードを作って立てこもったのである。
 部屋の中から、聞こえるのは、由加里の悲愴な泣き声だった

 続きはクリック。
 
 由加里です。ここまで、読んで頂いた方の中には、ここでようやく光が射すと想っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?残念ながら、それは違います。本当の意味での地獄はこれからはじまります。
 どうして、それを、彼に話すことができたのかわかりません。
 あれから二年になりますが、ようやく、本当の意味で笑うことができるようになりました。ここまでなるために、信頼できる精神科医の先生や家族の愛、友達、それに・・・・・・・。とにかく、いろんな人の手助けが必要だったのです。



『由加里 26』
 夏休みが間近になったその日、由加里は、いつもよりもさらにダークな心持ちで登校した。太陽が、まだ午前8時を回ったばかりだというのに、陽光がまばゆい光を放つ。
 由加里の心の中は、それとは真逆に暗雲が立ちこめていた。昨日、すなわち、月曜日は、学校が創立記念日で休みだった。土日は当然のように休みだから、結果、三日ぶりに煉獄のような学校に赴くわけである。

 続きはクリック。
『由加里 27』
 「ゆ、・・・・ううウウ・・・由加里は、・・ううィウ・・全身、汗まみれに、・・うウ・・なって上下に、・・ううウウウ・・動いている・・・・・お、男に、両手を、・・うウウ・・奪われ、背後から、・・ううウ・・付かれている・・・・」
由加里は、モニター上に、展開している映像を、文章にしていく。その間にも、はるかと照美の、指がにちゃにちゃと少女の性器に食い込んでいく。
「・・・・ぅああ!!」
「感じてる場合じゃないでしょう?」

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 みなさん、こんにちは、由加里です。このころは、ほぼ毎晩オナニーに耽っていました。麻薬のように、中毒になっていたとさえ言えます。やらないと眠れなかったのです。オナニーをやって、やって、疲れていつの間にか寝入ってしまうという毎日でした。
 新しいオナニーの方法も知りました。それは、悲しいことに、照美たちから受けるいじめを通じてのことです。
 手術用のゴム手袋を使ってやると、飛び上がるほどに感じるということです。ゴムの感触が、キュキュと言って、とても気持ちいいのです。
 みなさん、こんな由加里をヘンタイだとか言わないでください・・・・・・・どうか。


『由加里 28』

ガタン・・・・ガタン・・・・ガタン・・・ガタン。

 午後4時半、初夏を過ぎた太陽はまだ、空にある。凶暴な熱を予感させる太陽は、地上を睥睨し、そこに棲む人間の幸不幸を完全に支配しているように見えた。電車の中は、冷房が効いているとは言え、その光線は、強烈な熱を有している。
 京王線は、新宿行きの特急に、由加里たちは乗っている。少女の場合、無理矢理に乗せられたというべきか。
 がら空きの車内には、由加里たち五人の他に、ポツポツとしか客は見えない。
 ちょうど、由加里の向かいの席には、腰が90度に曲がった老婆が休んでいる。

つづきはクリック。

『由加里 29』
 電車から降りた由加里は、すぐさま、後から追いかけてきた照美たちに捕まった。
「いや!いや!いや!もういや!」
 泣きながら、激しく抵抗する由加里。しかし、いじめっ子たちは、無理矢理にトイレに押し込もうとする。駅構内を往来する人々は、この顛末を、まるで映画の撮影か何かと思っているようだ。

 つづきはクリック。
 『由加里 30』
 石毛まりは、椅子に座って泣き続けている少女を見下ろした。まるで、刑事と被疑者の関係に見えた。
 ここは、通常、万引き犯を連れてくる場所である。しかし、特別にそのために設えたわけではないが、結果として、取調室になってしまった。決して、万引きが減ることはあっても、無くなることはないからである。
 しかし、この少女は万引きをしたわけではない。ただ奇矯な行動を石毛に見せたために、連れてきたのだ。
 
  つづきはクリック。
 『由加里 31』
 由加里たち三人は、下北沢では有名なステーキ店に入っていた。個室のこの部屋は予約無しでは、この時間帯では部屋がとれない。淳一が常連だったために、余計な注文に応じたのである。既に、食事は終わり、恭しい(うやうやしい)手つきで給仕がコーヒーを持ってくる。
 由加里は神妙な面持ちで、ふたりの会話を聞いている。それは、彼女が想像した恋人同士の会話ではない。音楽の話しばかりが続く。Assemble Night というバンドを彼等は組んでいる。

 続きはクリック。

『由加里 32』
 夜の下北沢。そこは、由加里にとって未知の世界だった。時計店を盗み見ると、午後8時半を超えている。こんな時間に、ひとりだけでこんなところを走っている。それは現実感のない体験である。股間から込み上げてくる官能も、由加里を麻薬に誘うことはできない。
 例え、おむつが必要なくらい濡れそぼっていても、少女はそれを気持ち悪いと思うだけだ。それに、ちょっぴり羞恥心が加味される。心臓がドキドキする。何処をどうくぐりぬけたのかよく憶えていない。ただ、ネオンサインが目にしみた。

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『由加里 33』
 その日は一日中雨だった。きっと、梅雨の最後の一絞りだろう。小さいころは、雨雲が綿飴に見えた。雨を絞ると、完成するのだ、甘くて美味しい食べ物に変わる。
 由加里は、しかし、今日の雨雲のようには行かないだろう。一涙で、いじめが無くなるとはとうてい思えない。天気はいづれ晴れるだろうが、残酷ないじめは続く、・・・・・たぶんずっと。

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 『由加里 34』
 「イヤアアああああ!!」
 泣き叫んで暴れる由加里は、瞬く間に、四股をいじめっ子たちに押さえつけられた。
「ほら、もう一度、ママのお腹の中に卵を戻してやンな」
 はるかが命ずる。
 すると、有紀はほくそ笑みながら、性器に卵を埋め込んでいく。

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 『由加里 35』
 「こづえちゃん、『24の瞳』ってどんな話しなの?」
「とても破天荒な女教師の話よ、大石先生ってのが、田舎の学校に転任して、苦労するんだけど、渡された台本は、それから10年後の話しね、戦争が終わってからのことみたい」
  ここは、向丘第二中学テニス部、部室である。校舎脇にあるプレハブの建物は、冷暖が完備されている。元々は、無化粧な内観は、少女らしい装飾に、リフォームされている。ミッキーマウスの張り紙は、その良い例だ。

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 『由加里 36』
 「あははは!帰ってきた、帰ってきた!」
「たっぷり、可愛がってもらったみたいじゃない、普段、誰にも相手にされないのにね」
「本当、一年生に、面倒見手もらったっていうじゃない!?西宮さん、よかったネ!1年生とはいえ、いい迷惑よね、こんなのの相手なんて!あはははは!」

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 『由加里 37』
 裁判は、6時限目に、厳かに始まった。道徳の授業という表向きである。今回は、担任の公認ということで、クラスメートの目の色がちがう。いつものように、手錠や腰ひもの演出こそなかったものの、クラス全体が、由加里を責める空気は、普段よりも、陰惨で残酷な空気に満ちていた。 
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『由加里 38』
 波乱の内に、裁判は終わったが、終わらせたのは、チャイムであって判決ではなかった。由加里は心身共に、さんざん打ちのめされた。その衝撃で、ぼっとしているうちに、終わったという感覚だった。
 「ねえ、人間のクズ!はやく、移動しなさいよ!そこ、私の席よ!?」
「ひっ!!」
 由加里は、背後から蹴り飛ばされた。床に両手をついたその姿勢は、まさに犬だ。
「西宮さん、鬼畜にふさわしい恰好ねえ、これからよつんばいで歩いたら?あなたにふさわしいんじゃない?!」

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『由加里 39』
 由加里が妹に、平手打ちを喰わせるちょうど、2時間ほど前に、時間を遡ってみよう。
おまけに、空間的にもちょっと移動する。何?Google earthで見るならば、所詮は数ドットにすぎない。
 夏休み直前の太陽は、時間の感覚を誤らせる。既に、帰宅すべき時間なのに、照美とはるかは、放送室に居座っていた。しかし、日が長いとはいえ、二人の影の長さは、彼女らに、帰宅の催促をしているようだ。それとも、不安の深さや広さを暗示しているのだろうか。

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『由加里 40』
  京王線の駅は、何処も似ている。都心から離れるほどに、その度合いを強くしていくのだが、その疑似宮殿性である。ディズニーランドの、お城のように、そのコンクリートの塊からは、虚無ばかりが目に付く。由加里は、財布だけ持って、フラフラと、そんな駅の構内へと入っていく。
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『由加里 41』

 その夜、金属に何か硬いものを打ち付ける音が、幾つも虚空に響いた。それは、一様に赤で着色されていたという。
 由加里は、螺旋階段を走った。ひたすらに、夜の虚空を回転して、落ちて行く。この時、どうして、エレベーターを使うことを思いつかなかったのだろうか。冴子をまくためか。いや、姉が追いかけてくることなど、思いもよらなかったはずだ。

   続きはクリック。

『由加里 42』
 貴子の誘いで、マックに行くことになった。
 由加里とミチルは、かなりの時間、二人で対峙していたらしい。彼女に話しかけられるまで、二人は、そのことにすら気づかなかった。三人とも蝋人形のように、無言のまま、レジに押しかけると、夜の街がよく見える場所に席を求めた。トレーを運んだのは由加里である。
「夜景がきれいですね、こんな席で、ロマンティックな気分ですか?よくそんな気分になれますね、私はなれませんけど」
 付き合っていながら、不満たらたらの体で由加里にあたる。
 「ミチルちゃん・・・・・・・・・!?」
「ミチル!」
 由加里は絶句し、貴子は切れた。

 続きはクリック
『由加里 43』

  邸町とは、何と、少女たちが通う中学の学区である。由加里の家から徒歩で、20分ほどの場所にある。
「じゃあ、明日にでも張り込みに行こうよ」
「まるで、刑事か探偵みたいね」
「バカ、ミチル、遊びじゃないのよ」
「・・・・・・じゃ、帰ろうか」

  続きはクリック

『由加里 44』
「さあ、これから行きますよ」
  担任である大石久子の号令で、教室を出る。由加里を囲むのは、照美、はるか、高田、金江。それに付属するように、穂灘翔子、青木小鳥。男子は、山形梨友、丸当大善の二人である。ひとつ、不思議なことがあった。由加里は、出発の前にトイレに行こうとしたとき、高田と金江に妨害されたのである。
「幼稚園のトイレに行こうよ」
「ど、どうしてですか?」
「クラスのペットで、奴隷が口答えするんだ!?」
「・・・・・・・ハイ・・」
 由加里は、頷くほかなかった。

  続きはクリック

『由加里 45』
 赤い車から、颯爽と出てきた婦人。女性にしては、相当の長身だ。躰を少し折らないと、車から出られなかった。
 年齢は、30を幾つも超えていないように見える。シックな感じの黒い服とタイツからは、大人の女性の官能が、そこはかとなく漂ってくる。肌の張りは、ほとんど失われていない。しかし、目や躰ぜんたいから発せられるエネルギーは、20代の小娘のそれではない。
 海崎百合絵、照美の母親である。
顔面は蒼白で、目は確と前方を睨みつけている。

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『由加里 46』
由加里の目に飛び込んできたのは、赤い車だった。その車体は、妖しく煌めいてきた。まるで、魔女然として、やってきた。

――――あれにぶつかれば、死ねる。

  少女は、涙にまみれながら、身を投げた。
 衝撃。
 強烈な、衝撃だった。身体が、何処かに持って行かれるような気がした。見えざる巨大な手に、摑まれて、躰をもがれるかと思った。しかし、既に、いじめっ子たちの身の毛のよだつ行為によって、身も心も、十二分に、切り裂かれているのだ。それが、実際に肉体に起こっても、おかしくはなかった。

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『由加里 47』
「さ、冴・・・・ウ・ウ・ウ・ウウ・・・・・・・・・!?」
「由加里ぃ!!」
由加里は、まだ覚醒がしっくりいかない状態で、入室者の顔を見た。頭の中で、渦巻いている思いを言葉にしようとしたが、なかなかうまくいかない。
「さ、冴子姉・・・・・・・!!」
「もう、何も言わなくていい ――――――――」
冴子は、黙って妹の黒髪に触れた。

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『由加里 48』
 西宮冴子は、妹の無事を確認すると、とんぼ返りでマンションに帰宅せざるをえなかった。後ろ髪引かれる思いだったが、大学の試験のために、やむを得ない処置だったのである。
  病院を出て、2時間ほどで、自宅マンションのてっぺんが姿を現す。この2時間のドライブの間、冴子の頭の中は、後悔とやるせない思いで、ぐじゃぐじゃになっていた。

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『由加里 49』
  清冽な朝日が、病室に差し込んでくる。もう、夏休みは間近だ。しかし、いつものウキウキとした気分は皆無だ。
  このところ、由加里は自己嫌悪に苦しんでいる。自分は醜くて、臭いのだ、だから、みんなに嫌われていじめられる。そんな固定観念にはがいじめにされている。そのために、自分の醜い姿を顕わにする夏の太陽は大嫌いになった。他人から見れば、嫉妬するほど知性と容姿に恵まれているにも、かかわらずだ。

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『由加里 50』
「あーら、どうしたの? 赤ちゃん? 出しちゃいなさいよ ――――」
「ヒイ! ひどい!ィイイイイ」
  似鳥可南子の言葉は、由加里の精神ばかりか、肉体まで打ち砕く。悲鳴は、それによる苦痛の表明である。溲瓶を押しつける圧力はさらに増していく。
「ムグ・・ムギ・・・ウウ・ウ・・ウ・ウ」
  緊張のあまり、膀胱付近の筋肉が過活動してしまったのだろう。尿がなかなか、顔を出さない。

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『由加里 51』
 教室というのは、学びの室(へや)だったはずである。しかし、いつから戦場になったのだろう。しかし、こんな命題に、きょうび、誰も解答しようとすらしない。生徒はおろか、教師すら、こんな命題に意味があるなどと、牧歌的な夢を見たりはしない。
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 『由加里 52』
  由加里の病院に、鈴木ゆららが現れたのは、入院して、二日目のことだった。受業が終わるとすぐ、その足で病院に向かったのである。しかし、由加里は、ゆららの顔を見つけると、すぐ布団を覆ってしまった。
「由加里、どうしたの? せっかく来てくれたのに」
 母親である春子が、声をかけても、梨の礫だった。
「西宮さん、みんなで手分けして、ノート取ったんだよ ―――」
 ゆららの声は、由加里には地獄への招待にしか聞こえなかった。

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 『由加里 53』

 姿を現したのは、幼児のように、指をくわえている由加里だった。
それは、もしかしたら、ゆららの錯覚だったのかもしれない。しかし、少なくとも彼女の目にはそう見えたのである。
「由加里、鈴木さんがお見舞いに来てくれているのよ」
社交辞令のような、春子の言い方。病床の娘よりも、ゆららに気を遣っているように見える。
「西宮さん ―――」
ゆららは、改めて由加里を見てみる。
まるで金目鯛のような瞳は、一体、何処を見ているのかわからない。それは完全に無垢な乳幼児のそれとは、自ずから異なる。

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 『由加里 54』  
  その花は、赤いスイトピー。アイドル全盛時代に、かつて、そのような歌を歌った歌手がいたはずだ。しかし、その歌手の名前が思い出せない。何というアイドルが歌っていたのだろう。
  由加里は、この花を見せられたとき、一抹の不安がよぎるのを感じた。
赤い血の塊が浮遊している。
 まるでその外観は赤血球そっくりだ。それも、重症の貧血患者のそれのように、いびつな姿は、由加里そのものを暗示しているようだ

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『由加里 55』 
「由加里ちゃん・・・・・・そう呼んでもいいんだよね」
「・・・・・・・」
  由加里は黙って頷く。まるで、ぬいぐるみの首が曲がったように、見える。
「今日、一日だけで、信頼されるのは無理だってわかってるよ。私たちが、由加里ちゃんにやってきたことを考えればね ――――――」
この台詞は、高田でも、照美でもなく、ゆららの独創だった。

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『由加里 56』 
「ほう、早速、創作意欲に燃えてきたようだな」
  鋳崎はるかは、ほくそ笑んだ。
  由加里は、ほぼ本能的に目を背ける。それは、怖ろしいものから、身の安全をはかるための当然の行動だろう。
「ウウ・・・ウ・・ウ・・ウウ・・・ もう、もういじめないでください!ウウ・・ウ・ウ・ウ・・ウ・・・うう!」
  まるで園児のように、両手で顔を覆って、泣き出す。
「よくある現実逃避だな、西宮、だけど、これがおまえの現実なんだよ! 見ろ! 目を背けるな!」
はるかは、本を一冊、彼女の鼻先に押しつけた。さきほどまで凝視していた18禁本である。整った鼻梁が歪む。

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『由加里 57』
  白亜の宮殿に、声に依らない泣き声が、響く。その廊下を照美とはるかが歩いている。外部から見ると、大小の箱を取り合わせたように見える。その簡素な建築様式は、ル・コルビュジエを思わせる。
  モダニズム建築が、宮殿と矛盾すると言う人がいるかもしれない。
しかしながら、アラビア世界あたりに、そのような宮殿があったような気がする。病院という女性を収容し、性的な羞恥を与える施設には、相応しい比喩であろう。言うまでもなく、この文脈においては、イスラム世界のハーレムを志向しているのだ。

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『由加里 58』
「ヤグググググッメエエエエエエ・・・・・・」
「あははは、由加里チャンたら、やぎさんになっちゃったの? 」
 可南子は、由加里の眼前で、高笑いをする。
 彼女の顔に、絶体絶命の4文字が見えた。膣を貫く異物感よりも、精神的なショックの方が強い。  精液を注入されるという恐怖が、少女の華奢な体に侵入しつくす。彼女の美しい肌を詳しく見て貰えばわかると思うが、細かいキメからも、恐怖は、冷や汗のようにあふれている。
 可南子は、そのガスを吸って悦に浸っているのだ。自分が支配するペットが嘆き悲しんでいる。その事実をより強める演出の働き、料理で言うならば、スパイスの役割だろうか。

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『由加里 59』
 由加里は、可南子に、命じられるままに、そのおぞましい料理を噛み続ける。
「ふふ、よく噛んでから、呑みこむのよ。そうじゃないと消化に悪いからね」
「フグウ・・ウ・・ウ・・ウ」
さらに畳み掛けてくる可南子の言葉に、戦慄すら憶える。由加里は、自分の口が自分のものではないような気がする。今、動いているのは、何ていう器官だろう。何のために上下しているのだろう。
 咀嚼しながら、五里霧中の思考を続ける。

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『由加里 60』

 さて、ここで、時間を少し、巻き戻してみようと思う。何、そんなに前のことではない。由加里が耐え難い陵辱を受けている最中のことである。
 その時、三人の少女が連れ立っていた。鋳崎はるか、海崎照美、そして、鈴木ゆらら。以上の三人が、アルミニウムの靴音を立てていた。そう、友人を見舞ったすぐ後のことである。
 ここは、由加里が入院している病院の表玄関、いわば、ロビーのような空間である。さて、三人が行った見舞いとは、どのようなものだったのだろう。
 ちなみに、それは、同時に、行われたわけではないが、たいへんに、友情という点において、比類ないくらいに豊かだった。
 しかし、それにしては、三人三様、複雑な色を顔に乗せている。

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『由加里 61』
 少女の耳には、イヤフォンが詰め込まれている。そこから聞こえてくる音楽は、深海を泳ぐ紳士淑女のようなものである。彼らは、しかし、いくら金銀のような美しい色で飾られようとも、その真価を理解するものは、ひとりしかいない。
 イヤフォンは聴く人のみに、音楽を観る視力を与える。
 深海においても視力を有する者。
 それは、海神、ネプチューンである。
 ただし、音楽を嗜む海の神というのは、絵にならないか。何故ならば、水中を音が伝わることはないからだ。もっとも、神話に科学を持ち込むのは、無粋かもしれない。
非常灯が、妖しく緑に光る。
  夜のとばりが降りた病院は、深海に似ている。『出口』と表示された文字は、闇の中に、何か投げかけている。その冷たい光は、蜃気楼のように、うつろで、実体がないように見える。 

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『由加里 62』
「ママ、もう面会時間終わりが近いよ ―――」
「何よ、母親を追い出すつもり?」
 春子は、娘の言葉におもわず、鼻白んだ。自分の提案に対して、そのような返事が返ってくるとは、夢にも思わなかったのである。
―――由加里の個室は、18時を迎えようとしていた。それは、この病院の面会時間が終了する30分ほど前のことである。
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『由加里 63』
  女は、鼻歌を歌っている。口笛を響かせたいと思ったが、ごく控えめに、ハミングを響かせるに留めていた。
 自分に聞かせるためならば、周囲にとどろかせる必要もない。それは、ストレスのたまることだが、あいにくとここは、野中の一軒家ではない。あるいは、ここは数万の観客を擁するコンサート会場でもない。すんでの所で、そこに立ち損ねた彼女は、余計な感傷を穿つためにここにいるわけでもない。 少なくとも、そう思いたくなかった。
 しかし、今、ここにいる以上、そんなことは眼中になかった。いや耳中になかったとでも表現すべきだろうか。
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『由加里 64』
「私、どうしたら、照美さんとはるかさんに・・・・・・・・」
 その空気の乱れが、人の耳に到着するまえに、語尾は、かんぜんに雲散霧消してしまった。それは、ホームランと見せて、フライにすぎなかった。
 しかし、はるかは憮然とはならない。列車の窓に映るゆららの顔が、あまりに悲しすぎたからだ。透明すぎるその容姿と表情は、はるかの心を融かしていた。一般に、ドライアイスのハートと異名を持つはるかの心は、限りなく融点に近づいていたのである。

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『由加里 65』
「あははは、なんて臭いかしら? これじゃ、奇形児しか生まれないわね。それにしてもなんて臭う月経なのかしら?臭い!臭い!!臭いわ!!」
 少女のハマグリが鉄臭い血液を吐き出す。それを見ると、すぐに可南子はクラクラと笑声を立てる。すると、女の鼻梁がヒクヒクと動く。そこから腐ったマヨネーズの臭いが漂ってくる。
「ウウ・・ウ・ウ・ウ・ウウ!!」
 由加里の目には、異常にきらきらしている可南子の鼻梁がやけに目立つ。脂を塗り付けたかのように、いやらしく光を反射する鼻梁は、女のいちばん、醜い部分を暗示しているように思えた。
 男ならば、一瞬で卒倒しそうな腐った臭いのなかで、二人は相対していた。はたして、どちらが臭いを発しているのか、傍目にはわからない。病室は、自分の胎内で行われている行為をどのように感じていたのだろう。腹が痒いとでも思っていたろうか。

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『由加里 66』

「はーい、笑って、笑って!」
 年甲斐もない笑い声を上げて、可南子は由加里に携帯を向ける。彼女の指が動くと同時に、由加里はムリに笑顔を作った。それは片栗粉で固められている。
「ふーん、そういう態度に出るんだ? アレ?」 
 粉臭い味に舌までやられた可南子は不満の表情を造った。由加里に戦慄が走る。今や、可南子の表情のすべてに、敏感に反応する奴隷になってしまった。それが楽しいのかやや機嫌を取り戻す。
「なあに? 笑えないの?ママと遊んであげたのに楽しくないの?」
「ヒ?・・・・?!」
 ただでさえ引きつった笑顔が、精鋭化した恐怖によって、さらに硬化する。目尻から崩れた皮膚がポロポロと落ちる。夜に散らばった水晶の美しさを彷彿とさせた。それは肌の流す涙かもしれない。
「うふふふ」
 可南子は悪魔特有の笑いを浮かべる。

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『由加里 67』
 『鬼』は自らの車に寄りかかって文庫本を手にしていた。その様子は異様さを極めている。
 
 街を歩く人たちは、ほとんどある距離にいちどは立ち止まって様子をうかがう。そして、しばらくすると去っていくのである。明かに一定の距離以上に近づくことができない。それは、プライベートエリアというわけではない。明かにそれよりも遠いからである。むしろ、彼女のオーラに惹かれ、あるいはそのオーラに妨げられている。そういう感じなのだ。
 それに加えておかしいのは、当該人物の自意識である。自分が人を惹き付ける存在であるという自覚が、明かに欠如している。
 鋳崎はるかもその例に漏れなかった。いや、普通の人たちよりもその人物の見えぬ力に圧倒されていると言って良いだろう。

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『由加里 68』

 南斗太一郎くんへ

 いつも、あなたのこと見ています。授業中も休みもずっとです。体育や家庭科でも、いつも太一郎くんの顔を思い浮かべています。
由加里は、あなたのことが大好きです。
 太一郎君のことなら、なんでもできちゃいます。裸になれって言われたら、何時でも、何処でも、なっちゃいます!
好きです!
 お願いです。由加里を恋人にしてください。
              
 あなたの永遠の恋人 西宮由加里より


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『由加里 69』
「ねえ、お姉ちゃん、どうしたの?」
 知らない子供がうなだれた由加里に風車をプレゼントしようと差し出した。しかし、少女はそれに気が付こうとせずに、もくもくと自分の世界にはまりこんでいる。この病院では彼女しか知らないはずの過去の世界に、手足だけでなしに、頭まで完全に浸かってしまっている。
「ヘンなの!?」
「ほら、和之くん!」
 これまた知らない看護婦の声が病室の一部を黄色に変えると、子供は風車をベッドの上に投げ入れた。そして、奇妙なものを見る目で由加里を見上げると廊下へと掛けだした。


『由加里 70』

 病院の夕食は早い。大抵、午後6時には患者のベッドの上にトレイが乗っているものだ。特別に設えたテーブルは、上に物を置くと頼りなく揺れる。ノートパソコンですら、キーボードを打つたつたびに、年老いたウグイスのように情けない音を出す。それはほぼ悲鳴に近い。
 まるで今の由加里を写し取ったポートレートのようだ。ルノワールのような印象派ではなくて、ルネサンス時代のキリスト教絵画のように、精密、緻密な筆致により人間そのものを紙上に再現した絵画のことだ。

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『由加里 71』

 由加里はふたりの顔を並べてみた。
 塚本誠二と南斗太一郎。
 両名とも自分を待ちかまえている悪魔たちだ。いじめられている自分を求めている。しかし、それは同性のいじめっ子たちが少女に求めるそれとは何かが違うように思える。いや、もしかしてそう思いたかっただけなのかもしれない。思えば、あの二人のような人物にそれを求めるくらいに、由加里は追いつめられていたのである。
 夕食後、少女はすぐに消灯してしまった。まだその時間までそうとう残っている。
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『由加里 72』
「ぃイやぁぁァ!」
 くぐもった声が薄暗い部屋に充満する。それはこの部屋の主である埃と婚姻して、不実な夫婦を形作っている。
 南斗太一郎と西宮由加里もそれに習っていた。
 擬装の恋人。もちろん、少女が望んだことではない。
 そもそも、この太一郎という少年は、由加里にとって真冬の小虫ほどにも印象に残っていない。小虫ならば、それでも不快という感情は残るだろう。
 しかしながら、彼には印象らしい印象を感じることがなかった。言うなれば、透明人間と同じである。それは塚本誠二も同様だ。

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『由加里 73』
 「どうしたの?」
 由加里の剣幕に「お姉さん」は首を窄めた。まるで思いもよらずに熱いやかんに触れたときのように、手を引っ込める。
 少女は泣き続けている。そのようすは梅雨時の鬱陶しい雨音のようだ。
「お姉さん」は困ったような顔をした。
 甘酸っぱい匂いのするこの少女に何の秘密があるというのだろう。
 
 局所を隠そうとするその姿は、たいへん可愛らしく仄かな意地らしささえ見て取れた。白一色だけが支配する殺風景な病院にあって、一輪咲いた可憐な花だった。

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『由加里 74』
 神崎祐介は物陰で震えていた。事もあろうに、この豪毅な男が由加里の泣き声を聞いて股間を縮み上がらせていたのである。
 はじめ、祐介はいつものように威勢を轟かせるはずだった。誠二と太一郎などという小物は、祐介が一睨みするだけで世界の塵と化すはずだった。しかしながら、ふたりに責め立てられて許しを懇願する少女の声を聞いたとたんに、気を萎えさせてしまったのである。   
 もはや、かつての祐介の勇名は地に落ちたと言ってもいい。ただし、この場に誰もいないのでことさら風潮されることもないが、いちばんそれを許さないのは、祐介自身のプライドなのである。かと言って、いちど縮んでしまったものは簡単なことで復活するものではない。

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『由加里 75』
 しかし、すぐにゆららの視線に気づくとあゆみは、何か重大なことを気づかされたような顔をした。あたかも、出陣寸前の騎士が戦いを前に矛を収めるように、それは重大な決意に見受けられる。戦闘までに、人は相当な精神の高ぶりが必要だろうが、いちど完成形にまで準備できた精神の高揚を鎮めるのは、端で見るよりも大変だろう。ゆららは、その真意を測りかねるようにあゆみの顔をさりげなく見遣った。

「そ、それにしても、はるかったら本当に大人げないわね ――――」
「え?」

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『由加里 76』
「はあ、はあ、はあ」
 由加里は、淡い呻き声を上げた。別の言い方をすれば、深い森に燦然と突き刺さる木漏れ日のように見えたと表現すべきかもしれない。しかし、それは加害者にしか通用しない。  
 暗室の中で、外から侵入してくる外灯によって辛うじて照らし出されている少女の姿は、囚われの女神を思わせた。古代ギリシア人は、有名な女神デメテールの娘、ペルセフォネにその原型を見ていたのだろうか。きっと敵方に囚われたお姫様のような存在があったにちがいない。それを神話の人物に重ね合わせたにちがいないのだ。

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『由加里 77』

「女の子なのに?」
「ウウグググ・・・ハイ」
 まるで自分自身の死をモールス信号で表すように、由加里は答えた。
「よく言っていることがわからないんだけど、あいにくと、私は、ごくノーマルな人間なのでそのヘンのことは詳しくないのよね。誰かと違って・・・・・」
 自分のことは何処かの棚に上げて、大胆に言ってのける。おそらく、その棚は、この地球上の何処にも存在しないにちがいない。近くて、太陽系の外縁くらいだろうか。
 
 一方、由加里は、まっすぐに妖女の侮辱を受けて止めていた。


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『由加里 78』
 はるかと照美、それにゆららの3人が大人を巻き込んで、青春ドラマに明け暮れている時に、別の空間では人倫と人間性を同時に無視した行いが続いていた。
 それも病院という清潔と奉仕の白に塗り込められた場所においてのことである。暗い病室の中では絶対的強者が弱者を思うがままにしていた。まさにしたい放題とはこのことであろう。
 白衣の天使は妖女となって幼気な少女に絡みついている。大蛇が小蛇を捕って喰おうという絵画が額に嵌ってひとつの作品になろうとしている。

「ァァ・・・ウウウ、ウ・ウ・ひ、いや・・・・・や、やめて・・・・・ウウ」

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『由加里 79』

 鈴木ゆららが見つめている闇は確かに深かったが、それ以上の暗がりに沈んでいたのは、由加里のふたつの大きな眼(まなこ)だった。
 虚ろな目は何を見ているのかわからない。双眸は、完全に見引かれているというのに、全く光を反射しない。その奥にはブラックホールが隠されているのだろうか。
 それは何でも吸収する挙げ句、光さえ溜め込んでしまうというから、どんなに高性能な天体望遠鏡を夜空に向けても、確認できないらしい。すると、由加里の黒曜石も闇の中に埋もれてしまった可能性がある ―――否、闇そのものに変わり果ててしまったのかもしれない。
――――あらゆる光を吸い取ったあげくに。

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『由加里 80』
「え? それ、ほんとうなの?あの子ってまだ中学生でしょう?」
「最近の子は、すごいわね。それともあの子が特別なのかしら? オトコを求めているのかしら?
あんな幼い顔してね。ふふふ」
 聞きたくない言葉は、概して、耳に入ってくるものだ。世界広しと言えど、それは、古今東西において、変わらない定理にちがいない。

 今、ちょうど午前8時、由加里は、病室にて気乗りでない箸を手に取ったところだった。非常に疲労しているのに、何故か食欲がない。ほぼ義務感から食物を口に運ぼうとしていたのだ。そんな少女の涙ぐましい努力をふいにするような会話だった。

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『由加里 81』

 照美とはるかの悪魔的な笑いにチクチクと突き刺される中、二人に対して何ら抗うことができないという事実は、ことは由加里を奈落の底に叩き落としていた。
 由加里は、蟻地獄に捕らわれた蟻のように身体をゆっくりと、しかし、確実に喰われていくのだった。蟻は、意識が残存したまま捕食者に呑まれていくのだ。それは、ある意味、ライオンに殺されるよりも残酷である。後者のばあい、まず、喉元を咬まれたあげく、窒息により意識を奪われてのち、捕食者の胃袋に収められるからだ。
いじめとは大抵後者を指す。
 さいきんの、というよりは、戦後しばらくして受験戦争が始まってからは、そういう傾向が顕著である。

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『由加里 82』
「照美お姉ちゃん、予め、西宮先輩にも聞いてるんだけど、 ―――」
 ここまで言って、ミチルは声のトーンを落とした。さりげなく由加里を見る目には、彼女を思いやる気持がこもっている。それを目敏く見破った照美は、本人でさえ理解できない感情に心を侵食されるあまり、少女を踏みつけにしてやりたくなった。
 しかし、このときばかりは、辛うじて理性が打ち勝った。
「西宮さんがどんな目にあってきたか ――――ね」

――――私の口からいわせる気?
 
 このとき、照美は妹を見る姉の顔になっていた。由加里はそれを見つけると、嫉妬心でいっぱいになった。


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『由加里 83』

「由加里ちゃん、可哀想に・・・・・・・!?」
 母親がまるで身も世もない哀しみに打ち拉がれる愛娘を抱くような仕草で、照美は、由加里を抱き締めた。
 彼女の美しい顔が涙にくれるいじめられっ子の上にある。獲物の肉の温度を顎で感じながら、彼女は、内面と外面を完全に切り離した。
 感情を完全にコントロールする。
 この種の技術は、女優に欠くべからざる能力である。ただ、当の本人は今、自分が行っていることがどのような技能につながる才能なのか想像することすらしない。ただ、この世で最も忌んで憎むべき存在に対して、致命的な打撃を与えるべく行動しているだけである。
 しかし、はるかはそれを完全に見抜いていた。

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『由加里 84』

「え!?」
 由加里は耳を疑った。正確には、耳に入ってきた空気の振動に驚いたのである。目の前には、似鳥可南子の凶悪な顔がある。
 ジャガイモを彷彿とさせる、いちもつは、しかし、看護婦という表向きの身分に金メッキされて、偽物特有の浅い輝きを発している。
 せめてもの抵抗の意思を示すために何か言わねばならない。だが、口が自分のおもうとおりに動いてくれない。口の中が渇いてたまらなない。唾液は乾燥の上に乾燥にを重ねて、はては、粉になって歯間に侵入してくる。食べ物のカスとそこに棲まう得体の知れない病原菌のミイラが、歯茎にその汚らしい手足を突っ込んでくる。
 我慢しがたい吐き気に密かに苦しむ少女。

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『由加里 85』 
 まるで雪だるまのように膨れあがっていく妄想でさえ、由加里に恐怖からの逃亡を許さなかった。それはまさに目の前に差し迫っていたからである。
 ミチルと貴子が座を辞したものの、まだ、照美とはるか、それにあの悪魔の看護婦、似鳥可南子が被虐のヒロインを魔性の光で照らし出しているのである。
 由加里は怯えた。あまりに眩しすぎて完全に目がくらむ。いったい、自分はどんな目に遭わされるのだろう。その具体的な内容はわかっているはずなのだが、その背後に横たわる意味と恐怖に注意が行ってしまう。

「や・・・あ、止めてクダサイ、おしっこなんかしたくありません」

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『由加里 86』 

 ゆららは、思いだしたようにある名前を出した。
「そうだ、工藤さんとは?」
「ああ、工藤さんは、なかなか、私たちと関わり合いたくないようでね」
「いや、あの子は由加里と関わり合いたくないらしい」

――――お前と違う意味で、あいつを憎んでいるのかもね。

 それをあえて言葉にしなかったはるかは、思案下にガラス張りの壁ごしに空を見た。その時、太陽を横切った鶴のような鳥。その長い足は彼女に何を問いかけているのだろう。  
 あるいは、それをどう受け取ったのか、今のところ、その疑問に答える用意はないようだ。

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『由加里 87』  溢れようとする涙を必死に堰き止めようとしている姿は、さすがに、ゆららの感情の何処かを刺激する何かしらのものがあった。
 しかしながら、一方で、沸き起こってくる感情を、彼女も懸命に堰き止めていたことも事実である。ここで、一時の感情に流されてはいけない。心を鬼にしなければと、ゆららは奥歯を密かに噛みしめていた。

「そうね、わかっているわよ、由加里ちゃん・・・・」
「ウウ・・ウウ・ウ・・ウウ!?」
 ゆららのその一言を聞いたとたんに、高いダムは大自然の驚異の力によって、いとも簡単に崩れた。そして、白魚のような手が少女の元に忍び寄ってきたのだ。その瞬間、彼女の背中に無数のウジ虫が登ってきた。
押さえきれないおぞましさを堪えながらも、ゆららは、しかし、現在、彼女に科せられている任務が女優であることを忘れなかった。

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『由加里 88』 
 涙にくれる由加里を抱き続けた。ゆららは、その冷え切った背中を華奢な身体で温めたのである。
 自分が泣いているときにしてくれなかったことをどうして自分がしなくてはいけないのか、非常にシャクだったが、照美やはるかのことを考えると、そうせざるを得なかった。
さて、車イスを病室に運ぼうとしたゆららは、意外な人間と相対することになった。
 
 由加里の姉である西宮冴子。
 
 どうやら妹の見舞いに来たらしい。シックな色のスーツからは自分たちの世界とは別の人間だという空気を感じ取れる。そして、妹に似たほっそりとした肉付きながら、由加里とは違う芯の強さを見いだす。
 これが大人ということだろうか。ゆららは思わず、その迫力に煽られた。

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『由加里 89』 

「西宮さん、もう少し、足を踏み込んで下さい」
「ハァ・・・ハ・・あ・・・・あ」
 両者の応酬はプロアスリートとコーチとの関係を彷彿とさせる。
 柔らかいというよりは、季節通りにけっこう強い日差しが入るなか、由加里はリハビリに励んでいる。平均棒のようなバーに両手を添えてよちよちと両足を交互に揺らす。
 腕の骨折はすでに治癒しているので問題はないのだが、まだ痛みが残っているために微妙に両肩の角度が歪んでいる。それがやけに痛々しい。
 しかし、それだけが由加里に息を乱させる原因ではない。実は、この瞬間をも、可南子の企みによって性器に挿入された異物が底意地悪く少女を攻め続けるのだ。股間を丸く覆ったおむつが生じさせる圧力は、少女が感じる羞恥心を倍加させている。
 知的な美少女は訓練士のものではない誰かの視線を感じると、ぷるぷると震えた。
「ハァ・・あ・・はあ・・」

「少し、休みましょうか」

  
『由加里 90』

テーブルの上に五線譜を取り出して、いや、投げ出すように置くとやや殴り書きするように、オタマジャクシを並べていったのである。
「ふふ」
 思わず微笑が零れる。まるでビデオテープを再生したかのような目の前の出来事に、照美は心が溶かされるのを感じた。あの由加里と酷似しているのに、どうして、この人には憎しみを抱かないのか、その理由はわからない。
 しかし、冴子に好意を抱いている自分に気付いたことは確かである。自我への新たな闖入者をどう扱ったらいいのか、青春の途上にいる少女にはわからないことばかりだが、プライドが高い彼女は、そんな自分じしんを認めたくなかった。
 ロックバンドのヴォーカル。
 現在の音楽シーンにたいして興味を持たない自分だが、その言葉が持つ神話性には覚えがある。
 
 何故かわからないが、この時間が永遠に続けばいいと思った。不朽のものなぞこの世に存在しないことはわかってはいるが、このまま、新しい人間関係に深入りせず、と言って遠ざかりもせずに、曖昧な関係のままで過ごしていたいと、絶世の美少女は考えた。

 
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『由加里 91』

  「ねえ、郁子ちゃんでしょう、私、海崎照美って言うんだけど」
「・・・・・」
 支払いを済ませた照美は、喫茶を出るなり由加里の妹に声をかけた。しかし、少女は黒目がちな瞳を微動だにせずに不審そうな視線を送ってくるだけだ。
「郁子ちゃん」
「お姉さん、どうしてあたしの名前、知っているの?」
「西宮さん、冴子さんに教えてもらったの」
「冴子姉さん?冴子姉さんと知り合いなの?」
「そうよ、私、冴子姉さんのバンドの関係者なの」
「かんけいしゃ?」
「友だちなの」


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『由加里 92』

 由加里が毒牙にかかろうとしている時、照美と郁子はカラオケを後にしようとしていた。もちろん、携帯は料金を考えて、すでに切ってある。
「郁子ちゃん、楽しかった?」
「うん・・・そうだ、あたし、携帯、持ってるんだ」
 思いだしたように言い出した郁子。照美にとって見れば、それは意外な事実だった。最近の小学生の動向は、ニュースなどでは頓に耳にしていたが、情報化がそこまで進んでいるとは思わなかった。
「じゃあ、アドレスの交換しようか、わからない?こうやるんだよ、貸してごらん」
 その時、小学生の小さな頭に浮かんだのは、海崎百合絵のこんな言葉だった。
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『由加里 93』

 海崎照美と西宮郁子が病院を後にした、ちょうどその時、由加里は看護婦の毒牙にかかろうとしていた。
 短髪を茶色に染め上げ、肌をも焼いたその姿からは、もしも淡いピンク色のナース服をきていなければとうてい看護婦には見えないだろう。20歳の半ばを優に過ぎているのだが、そのような風体からまだ20歳そこそこ、間違えれば19歳ていどに見られてもおかしくない。
 看護婦は、由加里を見るとほくそ笑んだ。
しかしながら、彼女にそのような趣味が以前からあったわけではない。べつに今でもそのような趣味があるわけではないが、ふと何かの拍子に催してしまったのである。

 
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『由加里 94』

 看護婦、野上怜夏に陵辱された由加里は、その夜、鈴木ゆららと電話のやり取りをやっていた。午後十時をすぎて、すでに消灯時間となっていたので、密かに非常階段に隠れて行っている。
「ゆららちゃん、お願い、会いに来て・・・ウウ」
 既に、相手の都合を気遣う余裕はなくなっていた。知的な美少女の精神はそこまでぼろぼろになっている。
「・・・」
 ゆららは、時計を視て、一瞬だけ沈黙した後に諒と回答した。
 既に門は閉まっているので、裏門から入らねばならない。そこから非常階段が見えるとのことだ。
 因みに、母親は工場で夜勤のために家はからっぽになる。だが、突然、電話がかかってこないとも言い切れない。
「仕方ないか・・・・」
 少女は、手を洗うと夜の街に飛び込んだ。実は、さいきん憶えはじめたオナニーに耽っていたのである。少女にとってみれば、それは怖ろしい秘密だった。偶然、入浴中に性器の周囲を洗っているうちに不思議な感覚に気付いたのである

  
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『由加里 95』


 「ぁあ・・・や」
 自分よりもはるかに劣る、あるいは、そのように見なしてきた相手に性的な慰めを受けるという恥辱に我慢できずに、ゆららの手を解こうと思ったが、もしも、そんなことをしたら友人として彼女を失ってしまうのではないか、由加里はそれが怖くて何も出来ずに、恥ずかしい局所を晒すだけだった。
 しかも、照美に縛られた縄じりまでが、顕わになってしまいそうだ。曰く、自分の性器になお、ゆで卵を挿入しているのは、彼女に対する恭順の証、いわば、奴隷の刻印のようなものだ。そんなものをこの小学生のような女の子に探り当てられるほどの屈辱がこの世の中に存在するだろうか。
 由加里は悶えるしかない。
「ぃや、いや、もう、やまて、ゆらら、ちゃんぁ・・・あ」

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『由加里 96』

 
鈴木ゆららが、由加里の元から脱兎のごとく逃げ出した、まさにその瞬間、海崎照美と西宮郁子は携帯電話で通話中だった。
 午後9時30分。
 因みに、かなり夜も更けているというのに、小学校5年生の少女は戸外を遠くのネオンサインに照らされながら滑り台の上にちょこんと腰掛けていた。塾からの帰り道だが、照美と話すために公園に屯しているのだ。
 携帯を彼女が持っていることは、海崎百合恵からの厳命によって、両親には知られないように自宅で使用することはないように躾られている。よって、余計に危険な状況に追い込んでいるわけだが、そこまで考える余裕は百合恵にはなかった。
 だが、照美は心配のようだった。
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『由加里 97』


 西宮郁子が友人とともに校舎から出てきた。彼女は、その瞬間に太陽から感じる以外の眩しさに反射的に虹彩を閉じた。
 彼女が照美であることは一目瞭然だった。校門の先に咲いた美しい花は、周囲に存在するあらゆるものを凌駕して輝いていたからである。
「・・・・・」
 既に一緒に帰宅しようとしていた友人のことなぞ、郁子の目と耳から完全に除外されている。それでも、そこいらへんに転がっている蛙の死体程度の注意を払うぐらいの、反応はしてやる。

「え?郁子ちゃんのお姉さって、入院しているんじゃなかったけ?」
「アレは、別のお姉さん、あの人は照美お姉さんって言うの」
「ふうん」
 予め、ハードディスクに記録しておいた音声ファイルを再生するかのように、機械的な声をだした。
 「私、用があるから先に帰って」
「うん」
 友人を追いやるように返すと、郁子は照美に顔を向けた。
「あの子、友だちなの?いいのかしら?」


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『由加里 98』


そうだね、西宮さんとテニスが出来る日が楽しみだね、退院したら、どう」
「ええ・・・・」
 まさに猛禽類の目をして、照美は、こともなげに言った。
「改めて、西宮さん仲よくなりたいな。仲が良いのに、姓で呼び合うなんておかしいでしょう?私は、由加里ちゃんって呼ぶわ、由加里ちゃんも、私のことを照美ちゃんって呼んで・・・・いいでしょう?」
 心筋梗塞を起こすのではないかと思われるほどに、胸が痛くなった。この人は、いつ、いかなる状況にあっても自分と同席している限り、どのような方法を使ってでもいじめようとする。常に攻撃の手を休めようとしない。怖ろしい、本当にいかようにも表現しようもなく、目の前の美少女が怖くてしょうがなかった。
 
 鋳崎はるかによって、小説まがいのものを書かされて、それなりに表現力に自信がついてきたとは思うが、この人の美しさと恐怖を正面から描けるほどに、文章が上達したとはおせじにもいえないだろう、たとえ、自画自賛とすらも言えないということだ。


『由加里 99』



ふふ、今度は精神科に入院してみる?鉄格子の嵌った部屋で、毎夜、拘束服に全身をきつく縛られた上に、猿轡を嵌められるから涎が垂れっぱなしよ、あなたにはお似合いの姿かもね、それにしても、両腕は縛られているから、あなたが大好きで堪らないオナニーができないことが厳しいわ、そうなったら、とても辛いと想わない?想像してごらん、この優れたアタマでね!ありえる?オナニーしない夜なんて、耐えられないでしょう?インランで多陰症の由加里チャンは!」
「・・・うぐ・・うぅっぅ!?そ、そんな、だい、大好きじゃ・・・・じゃ、ありません・・ううう」
 由加里は、似鳥可南子によって女子トイレに連れ込まれて、陶器の肌を、それこそ、瞼から小指の先まで、身体のありとあらゆるところを所有され、まさぐられている。


つづきはくりいく

『由加里 100』


「ウグ・・うぐぐぐ・・・!?」
 突如として、可南子に侵入された由加里は、追憶を中止せざるを得なくなった。双頭のペニスの張り型を装着した看護婦は、男がそうするような腰つきで少女を貫いた。この悪徳看護婦は、既に知的な美少女の処女を奪っていた。
 可南子の激しい動きにも、次第に苦痛を感じない身体になっていく、あるいは、強制的に替えられていく、どんどん自分が自分でなくなっていくような気がする。
 それは、女性が生まれて始めて知る性との邂逅、すなわち、生理に似ているかもしれない、と思った。
 だが、それには、恐怖がストーカーよろしく忍び歩きをしていながら、性という未知なるものへのワクワク感がなかったとはいえないこともない。
 あの時、可南子によってはじめて全身を貫かれた。


 つづきはくりっく


『由加里 101』
 まるで何年も入院していたような気がする。思えば、あの事故から1ヶ月あまりしか経っていない。洗濯物とエトセトラが入ったバッグは、旅行鞄のようにも思える。
 刑務所か、少年院と考えれば、今日の今日まで経験した地獄を表現するのに適当な言葉かもしれない。
 自分は本当にここから解放されるのだろうか?母親の顔を見るまで、由加里は素直にそれを信じる気になれなかった。本当に心細かった。入院しているときに、いくら面会に来られても、家族と出会ったような気がしなかった。そのまま彼女は帰宅してしまい。自分を置いて帰ってしまうからだ。

 可南子と母が和やかに語り合っている。

 彼女が一体、どんな人間なのか、あの厚化粧の下に、どれほど獰猛で残酷な肉食獣の素顔が隠されているのか、彼女は、想像だにできないだろう。
 考えてみれば、自分はまだ保護観察の身分にすぎないのだ。自由の身はあくまで一時的なものにすぎず、一週間に一度は、あの看護婦に身体を委ねなくてはならない。
 入退院の如何はすべてあの看護婦の手に握られている。下手すると精神病棟に放り込まれかねないのだ。


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『由加里 102』


 藤崎さわと真野京子は、涙ぐみながらもにこやかに笑う由加里に違和感を覚えていた。罪悪感を引き起こすスパイスが、しこたまにかけられているためだ。自分たちが言っていることがすべて嘘だという事実、それが内心の葛藤を産み、自分たちを苛んでいる。彼女は、あきらかに自分たちを信用しはじめている。それが話し方からわかるのだ。
 しかし、病室で久しぶりに出会った時から、こんなに心を許していたわけではない。高い壁と警戒心がベッドの前に立ちはだかっていた。少しずつ話し込むことでここまでもってきたのだ。
二人は、泣きながら笑うという、実に不思議な感情表現をする同級生と相対しながら、複雑な心理状況に陥っていた。
 そこで二人は彼女について思い出せることをピックアップしようと思い立った。
 西宮由加里とは、どのような少女だったであろうか。


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『由加里 103』



 真野京子と藤沢さわがいなくなって一人になると、否応無しに不安が襲ってくる。たった数秒しか経ってないので日が傾くはずがない。だが、突如として目の前が真っ暗になったような気がする。
 明日が来るのが怖い。ずっと、このまま時間が止まっていればいい。そうすれば重大な決断をしなくてすむ。
 学校へ行くべきか、行かざるべきか、そのことで少女の頭の中は一杯になっている。どうしたらいいのかわからない。
 何が真実なのかわからない。わけのわからないままに、携帯はベッドの隅に投げ遣った。誰からの着信も受け取りたくないし、メールでさえ目を通したくない。疑念が疑念を呼んで、それが作った視界ゼロの海に溺れそうになるからだ。

 だが、一方、それに触れたいという気持も押さえられない。もしかしたら、完全に失われてしまった人間との結びつき、一般にそれは友人と呼ばれるが、それともう一度、ネットを再連結するように回復できるかもしれない。 そう思うとどうしてもすがりたくなる。
 

『由加里 104』

『由加里 105』

『由加里 106』 

 由加里にとって、照美の家族のことなぞ、いっその事どうでもいいことだった。自分を虐待する人間の母親のことなぞ、完全に関心の範囲外にある。今、一番大事なのはわが身であって、それ以外のことを考える余裕はなかった。照美の一方的な憎しみの前に、命の危険性すら感じているのである。
 そのために、もしも、照美の両親なり家族が存在していれば、この場からの忌避はおろか、いじめそのものから解放される可能性すらあるかもしれない、という事実に気づくことすらできなかった。
思考回路はほぼショート状態にあっても、鋭敏な感受性は健在だった。
 この家には、レモンに糖蜜を混ぜたような、実に甘酸っぱい香りが立ち込めている。
 だが、この懐かしい匂いはなんだろう?



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『由加里 107』 


 「こ、こんな・・・」
 化粧用の大きな鏡に着替え終わった自分を映してみて、由加里は絶句した。なんと言うことだろう。まるでビキニの水着姿の女性ではないか。いや、それが学校指定の体操着である故にいっそう淫らに見えた。
 おそらく、父親が帰ってきたのだろう、ふいに、階下から野球中継の騒音が聞こえてきた。巨人の四番が逆転ホームランを打ったらしい。由加里は、都民のくせに巨人ファンではない、いわば非都民なのだが、このような異常な状況におかれてそんなことは頭にない。
「ウウ・・・、こ、こんな恰好で外に?」




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『由加里 108』


 照美の、もちろん、手術用の手袋で覆われた指が由加里の膣の中に侵入してきたとたんに浮かんできた映像がある。真野京子と藤沢さわの顔だった。
 同時に声まで聞こえてきた。必ず、自分を守ると、二人の同級生は誓ってくれた。ここで、照美に白旗を立ててしまったら、あれほどまでに自分のことを思ってくれているふたりを、いや、彼女たちだけではない。鈴木ゆららを始めとする、その他のクラスメートたちの行為まで完全に無にしてしまう。
 絶対に、負けてはならない。由加里は、かすかに口腔内に力を込めた。それは、歯を食いしばって、といえるほど外見から明らかではなかったが、目ざとい二人には簡単に見破られていた。
「どうしたの?西宮さん?」
「・・・・!?」


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2年3組、女子名簿
 由加里の元クラスメートの女子を紹介します。
本当は、名前すら思いだしたくない子ばかりです。さんざん、浴びせかけられた罵声や、嘲りが、今、ここにあるかのように、思いだしてしまいます・・・・・・・・・。
 でも、いいことがなかったわけでは、・・・・・・・・ありません。こうして生きているのですから・・・。

 今のところ、交流があるのは2人だけです。交流どころか、今では親友と言える関係までに、なりました。

中学テニス部、女子名簿。
 テニスは、小学校のときから大好きでした。あの西沢あゆみになりたいと、子供心に、思っていました。胸をわくわくさせて、中学にあがるなり、入部しました。
 一年生のころは、夢のように楽しかったです。優しい先輩たちに、仲の良い友人たちと友情をはぐくみました。だけど、2年になって、しばらくして立場がガラリと変わってしまいました。教室で、始まったいじめは、部活にまで広がり、可愛かった1年生にまで、いじめられるようになりました。尊敬していた先輩たちは、ただ見て見ぬフリを決め込んでいました。・・・・・・とてもみじめでした。


西宮家、家族
 私の大切な家族です。もしも、彼等がいなかったら、今の私はいないにちがいありません、楽しい高校生活なんかなかったと思います。
 もっとも、一番辛い思いをさせられたのも・・・・・・・みんなだったのですが・・・・・・・・・。


学外、主要キャラクター
 学外の人たちで、私に、大きな影響を与えた人です。特に、この人は、私は、本当に会ってよかったのか・・・・・・・とさえ思います。でも、会わなかったら、今の由加里はないんです。

向丘第二中学教師名簿
 二度と、思い出したくない人たちとは、この人たちかもしれません
  
『由加里が借りたエロマンガ、小説』

 いじめられている時に、借りた漫画や小説です。最初は、単純な複製を命じられたのですけど、後に、創造活動の材料になりました。当時は、本に触るのもいやでした。顔から火が出そうになりました。今、思うと、とても可愛い子でした。
  一体、だれのせいでこうなったんでしょう?!
 「ねえ、逃げないでよ!だれのせい?ねえ?!」


由加里の夢日記
 ここでは、由加里の夢日記など、私のプライベートなことを公開しています。えらそうなことを言っても所詮、私は、露出狂なのでしょうか?あんまり、詳しく見ないでくださいね。横目でちらりと見て貰えばうれしいです。

由加里日記
 由加里の日記です。私がされたいじめが、事細かに書いてあります。

テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト