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主人公はu15の少女たち。 主な内容はいじめ文学。このサイトはアダルトコンテンツを含みます。18歳以下はただちに退去してください。
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『由加里 48』
 西宮冴子は、妹の無事を確認すると、とんぼ返りでマンションに帰宅せざるをえなかった。後ろ髪引かれる思いだったが、大学の試験のために、やむを得ない処置だったのである。
  病院を出て、2時間ほどで、自宅マンションのてっぺんが姿を現す。この2時間のドライブの間、冴子の頭の中は、後悔とやるせない思いで、ぐじゃぐじゃになっていた。
 さしもの、ドライアイスと言われた性格の持ち主であっても、こと身内や親友のことになると、性格が180度変わることがあるのだ。
 いや、人間の情などというものは、個体差はないのかもしれない。何処の分野に、どれほど振り分けられるかで、その人間の人格が決まる可能性もある。数いる人間の中では、それが、自分だけに振り分ける自己愛の塊のような輩もいる。冴子は、それが身内やごく限られた人間だけに、集中するきらいがあるのだ。

 車は、マンションの正門を通り抜けて、地下にある車庫に入った。キーを抜いて、ドアを開ける。その時、冴子は全身が凍り付くのを感じた。しかし、今、彼女が見ている映像によって、それが為されているわけではない。正確に表現するなら、ごく5,6秒前に目撃した像によって、全身の細胞がそうなってしまったのだ。その様子が、あまりに常識からかけ離れているために、目が、全身が、それを受け止めることを拒絶したのである。

――――何か、見てはいけないものを見てしまった。あれは、現実ではない。
  そう、自分に言い聞かせて、冴子は、車から降りた。ハイヒールの音が、駐車場に響く。大聖堂のような鎮まった空間に、赤い音が響き渡る。
 彼女は、そのくぐもった音が嫌いではない。絶対音感を持っているために、その音が、冴子の頭の中で、音符になって踊り出す。それらはいわば、小人や妖精の類だ。彼等をうまく使って、曲を作る。彼女は認めたくないだろうが実母である海崎百合絵譲りの、楽才としかいいようがない。
  
 それは、とても楽しいことではあった。
 
 そのようなとき、冴子は自分に酔う状態になる。。筋金入りのナルシストである彼女は、いちいち、自分のことを小説化するのが癖だった。そして、そのバックに自作の曲を流すのだ。

――――その美しい女学生は、颯爽と車から降りると、上品な手つきで、キーをふりふりしながら、地下駐車場に降りて行く。金色のキーは、夜の僅かな光に反射して、きらきらと光る。その美しいキラメキは、光の音階をつくるのだった。
 彼女が、粗野なコンクリートにヒールを立てるたびに、芳しい音が響くのだった。それは、彼女から醸し出される何とも言えない良い匂いとアナロジーを構成していた ―――――
――――――――!?

 駐車場から上がって、マンションの正門に辿り着いたとき、何故か、小説の朗読と音楽は、すさまじい雑音とともに、終わりを告げる。

「 ―――――――――!?」
 冴子が見た二つの影は、二人の少女だった。ちょうど、由加里と同じくらいだと思われる。その二人が、コンビニ弁当を突きながら、談笑しているのだ。もしも、これが教室だったり、野山のハイキング所だったら、まことに頬笑ましい像というほかなかった。しかし、ここは、マンションの正門、しかも公共の場所なのだ。しかも、少女の周囲には、カップラーメンの食べ残しなど、ゴミが散乱している。

――――もしかして、最近、噂になっている子どもたちとは、こいつらのことだったのか。
 それは、ここ数ヶ月の間、この近所に出没する中高生のことだった。あたり構わず、弁当を広げた上に、ゴミを散らかして帰るのだ。たしか、冴子の待ち受けにも、注意を促すビラが入っていたはずだ。
「あ! ねええ、もしかして、貴子!」
「そうだ!?」
 目が点になっている冴子を前にして、携帯を弄りだした。

――――私は、何も見なかった。早く試験勉強をせねば。
「聞けばいいんだ!あの、すいません」
 少女の一人は冴子の背中に声をかけた。

――無視!無視!
 冴子は、玄関前の機械を操作すると、エントランスゲートが開いた。少女の一人は、その様子を見て、騒ぎ出した。
「きゃあ! かっこいい!ホテルみたい!」
「ちょっと、ミチル! 西宮先輩のお姉さん、行っちゃうよ ―――――」
「まだ、お姉さんだって決まったわけじゃないでしょう?」
「私は、郁子と由加里の姉だが?」
 ここまでくれば、さすがに無視するわけにいかない。

「私は、西宮先輩の後輩の高島ミチルといいます」
「私は、西宮先輩の後輩の小池貴子といいます」
 ふたりは、さすがに体育会系らしく、まるで軍隊のような挨拶を披露した。
「私は、西宮由加里の姉の冴子だが ―――――――――」
「はい、お妹さまから、お聞きさせてもらっています」
 何処をどうしたら、日本語が、そんな風になるのだろう。ミチルの言い方を見ていると、日本人が2000年かけて創りだした敬語法を嘲笑っているとしか思えない。
 冴子は、密かに舌を出した。しかし、ミチルが冴子に最大限の敬意を示していること、そして、彼女が由加里のことを想っていることは理解できた。
「に、西宮さん!!」
「急に、ミチルの顔が険しくなった」

「―――あ、話しは部屋に入ってからにしよう、ここは暑い。それから ――――」
 冴子は、自分たちに向けられる通行人の視線を感じて言った。そうあのビラは、ここ近所一円にばらまかれているのだ。彼等は一様に、非難の眼差しを向けてくる。それは、冴子に集中してくるにちがいない、いや、しているのだ。冴子は、おそらく、この二人の縁者にちがいない。そのような目で見ているにちがいないのだ。
 冴子は、頭痛薬を携帯していないことを、これほどに悔やんだことはなかった。

「わかってるでしょう?」
 冴子は、大理石をかたどったタイルに、散らばったゴミ群を指さした。
「はい、すいません」
 二人は、素直にレジ袋に、それらを詰め始めた。
「まったく、由加里もとんでもないのを、後輩に持ったものだな」
「あ、すいません」
 文句を言いながらも、ゴミを拾おうとしてくれる。そんな冴子を見ていると、改めて、由加里の姉であることがわかる。彼女に輪をかけて知性を感じさせる視線に、大人びた物腰。長髪が自慢の妹と、違って短くカットされた頭髪は、一見すると、ふたりが姉妹であることを忘れさせる。しかし、知性を感じさせる目鼻立ちから、小さな唇まで、顔つきの細かなところまで、見ていくと見まごうかたなき姉妹であることがわかる。
 しかし、ミチルには、別の思いがあった。

―――――似ている! そっくりだわ!
「何見ているのよ、高島さん」
  まだ中学生にすぎない由加里と違って、あの人物と、見比べると ―――――――。
「変な子ねえ、はやく、入って。これ以上、見せ物になるのは叶わないわ」
「・・・・・・・・・・」
 冴子の部屋は、46階の高層にある。そこに向かって、一路一蓮托生の道を進むのは、不思議な気持がした。貴子は、ともかく、冴子とは初対面なのだ。しかしながら、冴子の、まさに由加里を彷彿とさせる容貌は、ミチルに、不思議なデジャブーを与えるのだった。
 ミチルの視界に教会の十字架が入って来たとき、冴子のアルトが聞こえた。
「もしかして、あんたたち、由加里が事故にあったの知らないのか?」
「えー?」
「そんな!! あ、だから携帯つながらなかったんだ」
 貴子が大きな声を上げた。
「どうしたんですか? 先輩は無事だったんですか?」
 ミチルは、思わず冴子にしがみついた。二人の間には、頭一つほどの身長の差がある。だから、豊満な胸に、少女は埋まってしまった。ぷにゃという感覚は、かつての母親を彷彿とさせる。

 貴子は、しかし、あることに気づいた。

 「ミチル、こうして、西宮さんが来てるって、ことは ―――――――」
「そうだよ、高島さんは、どうやら理性的な判断ができるようなだな、しかし、それは女としては必ずしもプラスとは限らないな」
「そんなこと、どうでもいい、先輩のこと教えてクダサイ!」
「その前に、顔を話してくれないか、この暑いのに」
「ご、ごめんなさい・・・・・・・・」

 冷房が効いているのにも係わらず、冴子の台詞は習慣化した結果であろう。
まるで、中世ヨーロッパの城のような、上下するうねうねとした回廊を進んでいく。都会の喧噪に中に造られたある種の密室は、中国の長城のように、他と世界を異にして、こんこんと存在し続ける。あたかも、時間と空間から解き放たれた、あるいは、遊離した空間のようだ。
 数分歩いて、やっと部屋に到着した。一戸建ての玄関のような佇まいである。はたして、中に入っても、まさにそのような構造物がビルの中に、巣くっていた。それは、ミチルと貴子のマンションというものに対する既成概念を否定するものだった。

「暑いな ―――――――――」
 冴子は入るなり冷房を入れる。
「そこら辺に座っていてくれ、冷たいものでも、用意するから」
「そんなことよりも、先輩のことを ――――」
「ミチル!」
「あんたたちが、何のために来たのか、由加里に聞いている」
 ミチルは、あくまでも冷静な冴子に苛立ちを憶えた。
「どうして、そんなに冷静で居られるんですか?」

 食ってかかるミチルを、押さえようと貴子が苦労している。
冴子は、三つのグラスにアイスコーヒーを入れている。焦げ茶色の妖しげな液体に、ミルクが混じっていく。その様子は、あたかも悪魔の冷酷を、天使の優しさで溶かしているように見えた。渦を作って混じっていくさまは、まさに悪魔と番う(つがう)天使の翼に見えた。

 そのころ、由加里は病室で一人震えていた。その白魚のような手には、携帯が握られている。その手のあまりの冷たさに、機械の回路は、凍結寸前まで追い込まれていた。
 
 いま、春子と和之夫妻は、歯がみする思いで、廊下を歩いている。宮殿のような回廊は、ただ、薄っぺらい白さだけが目立つ。医者や看護婦は、その服が意味するように、白い光で満たされてはいるが、その実、何の安らぎをも、患者に与えたりはしない。
  ただ、象牙の塔の眷属として、住人、いや、奴隷たちを支配することを楽しんでいるだけである。彼等に与えるのは、ただひとつ、威圧だけだ。彼等の娘は、両親が部屋を後にするとき、「行かないで!」叫んでいた。その目が叫んでいたのだ。黒目がちな美しい瞳が!娘の虹彩の一筋、一筋には、恐怖の二文字が刻み込まれていた。

「どうして、一晩くらい付き添ってやれないんですか?」
「いいだろう!? 精神科医として主張する! 娘は憔悴している」
「西宮先生、ここは万全な総合病院です! 娘さんのことは、我々がちゃンと見張っています!」
「見守る」ではなく、「見張る」と言ったところに、この病院のスタンスが見て取れた。
「いい、今日のうちに退院させる! わたしは医師だ!」
「パパ、だいじょうぶだよ、しんぱいしないで ・・・・・・・・」
「ゆ、由加里ぃ」
 その時、本当に、消え入りそうな声が聞こえた。聞きまごうはずがない。彼等の愛娘である由加里の声だ。たとえ、ここが新宿の雑踏であろうとも、イラクの戦場であろうとも、その声を聞き取ることができたであろう。
 

「なんだ! あの態度は!?」
「あなた、これからでも無理にでも連れて帰るべきじゃない?!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
 それは、和之にはできそうにない相談だった。この大学病院は、彼の母校なのだ。いろいろ便宜を図ってもらっている以上、出過ぎたことはできない。組織から抜けだしても、しきれない医師という職業の悲しさである。
「それにしても、できすぎた話しだ! あの女が由加里を轢くなんて! まさか今日の今日まで付きまとっていたのではなるまいな!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 春子は、それには返事ができなかった。冴子と由加里の母親、百合絵。冴子の話によれば、病院のエントランスまで姿を見せたという。吐き出すような、憎しみの籠めた言い方が印象的だった。普段、感情を表に出さない性分なだけに、より、鮮明に記憶に残った。あの二人を産んでくれたという感謝の気持ちと、嫉妬心が混じり合って、奇妙な果実が熟していた。

 夫妻が病院を後にしようとしたとき、冴子は、彼女のマンションにてミチル、貴子と話し込んでいた。
「じゃあ、先輩はすぐに退院できるんですね ―――――」
「ああ、肉体的にはほとんと問題はない、軽いねんざくらいだ。しかし、 ―――――――」
「今は安静剤で寝ているはずだ ――――――」
「変な薬を打たれてるんですか?」
 ミチルが騒いだ。
「大丈夫だよ、単なる安静剤だ ―――――」
 冴子は、ギターを手にする。
「でも、そんなものが必要なくらいに、先輩は追いつめられているってことですよね」
 ギターを整備しながら、この少女の冷静な観察眼に、ひそかに感心した。
「そりゃあ、車にはねられたわけだからな」
「え?この曲!」

 貴子は、冴子の冷静な態度に反感を感じながらも、彼女の手がかき鳴らす曲に、耳を吸い取られる気分になった。その曲はあまりに、彼女が聞き慣れたメロディだったからである。
「すごい、上手いですねえ」
「へえ、この曲、知ってるんだ」
「貴子に言わせたら、1時間でも、2時間でも、Assemble nightの話しなら続けられるよね」
 ミチルは、半ば迷惑という色を滲ませて言った。よほど、その害を身にしみているのだろう。
「ほう?」
 冴子は、貴子を試すような目つきをした。その視線からは、針が仕込まれているような気がする。

「・・・・・・・・・・」
「そのバンドについて、詳しいことを教えてくれんか ―――――」
 冴子は、中世のリュート奏者のように、弦をかき鳴らし続ける。その妙なる音曲と、奏者の視線を交互に見ていると、この人は本当に現代の人間かと思わせる。
 その指が生み出す旋律は、一見、クラシックを思い起こさせた。しかし、古典でありながら、全く旧さを感じさせない。バッハだとモーツァルトと言った、かつての巨人たちの旋律を一切、感じさせない。
クラシックを完全に自分のモノとして消化し、新たな音楽を創りだすたけの構想力と創造性を併せ持っている。
「たぶん、すぐにでもメジャーデビューしますわ、そしたら、日本一、いや世界一のロックバンドになるとおもいます」
「ふーん」
 鼻で笑うような表情は、大人の官能と魅力に満ちていた。もしも、ふたりが同じ年齢の少年だったら、イチコロになっているだろう。しかしながら、冴子にその趣味がないために、いや、ないにも係わらずと言ったほうがいいだろうか、二人の少女は、冴子に参ってしまったのである。

 そのころ、午後四時、まだ夏時の太陽は、地平線近くで遊んでいるわけにはいかない。
由加里は、病室でただ、ひとり喘いでいた。少女の華奢な肢体では、とうてい耐えられそうにない重荷によって、くの字に歪められていた。それは、想像を絶する悲しみと孤独感、そして、自責の念だった。己の行為が、自殺に当たることは、彼女じしん、理解していた。

―――もしも、ミチルちゃんたちに知られたら!
 ミチルと貴子の、白い目が、ありありと見えた。
「ゥウウウ・・・・ウ・ウ・!」
 完全に布団に潜り込んで、エビのように、その幼い肢体を歪めている。その中からくぐもって声が聞こえるのだ。その声は、山吹色に塗装が為されていて、かすかに朱系統が補充されていた。その朱は甘みを感じさせる。
 いま、エビが動いた。白い布団の上からでも、その形状がたしかにわかる。あきらかに、人間だ。人間の少女だ。ある種の性的な趣味を持つ男女だけが、感じ取れるサインのようなものを発している。少女は、ドアが開いて閉まる音を聞いていなかったというのだろうか。そんなに夢中になって、何をしているというのだろう。もしくは、ただ眠り惚けているだけで、看護婦である彼女が、入ってきたことに気づかなかっただけなのだろうか?

「はーい、何をしているのカナ?西宮さん ――――」
「きゃあ?!」
「きゃあ、じゃないわよ、それはこちらの台詞よ ―――――――」
  看護婦は、布団を取り払ったまま、言葉を続ける。その目には、あきらかに軽蔑の色が見て取れる。
「・・・・・・・・・・・!」
「そんなところに手を突っ込んで、何をしているの?」
「ぃいやあ! 声を出します!」
「そんなことして、赤っ恥を掻くのは誰かしら?」
 看護婦の意地の悪い笑顔を見ていると、誰かを彷彿とさせた。この三十路も半ばを過ぎたと思われる女性からは、他とは別のある種のフェルモンが放たれていた。既視感。

―――似鳥先輩!
「あなたの恥ずかしいトコロ、みんな見せてもらったのよ、いや、見せてもらっただけでなく録画させてもらったわ ―――――」
「?」
「気づかなかったの? この病室には録画装置が設置されているの、患者を監視するためにね」
「いやぁあ!」
 看護婦は、布団を完全に取りはらうと、由加里を背後から抱きしめ、彼女の右手を摑んだ。
「このお手々で、何をしていたのかしら? 知ってるわよ、最初は誰も見ていないと思って、下半身を丸出しにしてたでしょう?」
「ウウ・・・ウ・・ウ・ウ!」
 由加里は、羽交い締めにされ、身動きできない状態のまま、摑まれている。唯一自由な右腕だ。ちなみに、両足、左足は包帯が巻かれている。
「言いなさい、何をしてたの? ・・・・・・・そうだ、まだ自己紹介がまだだったわね。私の名前は、似鳥 可南子、この病院の看護婦よ。ちなみに、この病院の院長は私の叔父だからあしからず」
「ええ?」
 由加里は心底驚いた。やはり、ぴあのとかなんの親族にちがいない。もしかしたら、母親かも。そうだ、そうに決まっている。かつて、ぴあの自身から聞いたことがある。
「ぴあののお母さん、看護婦なんだ」
 二人とも、あどけない笑顔で、ランドセルをガラガラと鳴らしていたころのことである。


「ぁ・・・・・・・・・」
 由加里は、ふいに、宙に放たれた。可南子が立ち上がったのである。鍵をかけるためだ。
「私としたことが ――――――――」
 施錠を終えると、ふり返る。由加里は、可南子を上目遣いでみた。まるで子犬のようだ。少女は、恐怖と羞恥心のために、完全に縮こまっている。まだ、右手は、ズボンの中に入っている。
「それにしても、色気のない恰好ね、ま、病院だからしょうがないだけど」
 だからこそ、少女を淫靡にしているとも言える。その色気も雅も感じさせない寝間着姿だからこそ、猥褻さが目立つとも言えるのだ。

「あははは、なんて、いやらしい姿勢かしら? いつまで汚い場所を触り続けているつもり?」
「ウウウウ・・ウ・ウ・・ウ・ウ・ウウ!!」
「いいなさい、何をしていたの!? もしも、言わないならこのビデオを・・・・・」
「いやああ! そんな!」
 由加里は、泣き叫んでいた。しかし、誰もこないのはどういうわけだろう。
「ふふ、さあ、言いなさい、この変態娘。だから、みんなにいじめられるのよ!」

――――え?この人、何を言っているの?
 それは、可南子が知るはずもない事実だった。何かおかしい。
「さあ!言いなさい!みんな、あなたをお待ちかねなのよ、クラス中の、嫌われもののくせに、みんな歓迎してくれているのよ」
 とたんに施錠されているはずのドアが開いた。すると、照美や高田をはじめとするクラスメートが全員入ってくるではないか。みんな、由加里に蔑みと好奇心の入り交じった視線を送ってくる。どれも、同じ人間の友達だと認めてくれない。
「クラスの嫌われ者、学校中の恥さらし!」
 誰かそう言うと、輪唱が波のようになって、順々に由加里を口撃する。
「西宮由加里は、病室で、オナニーした変態患者! 精神病院に一生閉じこめておくべきだ!」
「ぃいやああああああ!!」
「西宮さん? どうしたの?」
「あ?」
 由加里の目の前には、可南子がいる。そして、自分を見ると布団の中だ。右手はズボンの外だ。オナニーもしていない。しかし、全身が汗まみれだ。鼻を突き刺すようなアポクリン臭が、自分から発生している。自分が大と書いて、臭とはよく言ったものだ。冷房が効いているというのに、この暑さだ。まるでサウナに放り込まれたような気がする。

「はあ、はあ、はあ ―――――」
 肩で息をする由加里。

――――夢、だったの?
「び、ビデオは?」
「どうしたの?」
 可南子は怪訝な顔になった。

―――何を言っているの?
 そんな顔だ。
「きっと、恐い事故にあったから、そんな夢を見たのね」
 しかし、すぐに優しい顔になった。
「エエ・・エ・・エ・・・・エ・エウウ!」
 嗚咽が止められない。流したくないのに、涙が頬を伝わって、顎を濡らす。そのまとわりつくようなしつこさは、いじめっ子たちを彷彿とさせる。
「大丈夫よ」
「ううう・う・う・う・う・う・うう!!」
 優しくされると子どもは、さらに激しく泣き出すという。由加里は、胃を吐き出すような激しい悲しみの中で、理性的な自己分析を行っていたのである。

――――もう、学校なんか行きたくない! こんな目に合わせる学校なんて、いっそのことなくなっちゃえばいいのよ!
 由加里は、見知らぬ人の肌の中で、泣きじゃくりながら密かに決意していた。

テーマ:萌え - ジャンル:アダルト

コメント
こんにちは。

個人的な趣味になるのですが「病室+オナニー+見つかる」というコンボは大好きです。
2009/03/06(金) 00:57:17 | URL | ベンジン #0MXaS1o.[ 編集 ]
コメントありがとうございます!
西宮由加里です。あれは、あくまで、夢の中の出来事だったんですからね。そのことは念頭に置いておいてくださいね。
 
 でも、夢の中では、とはいえ、オナニーをしてしまったのは、とんでもない失敗でした。あろうことか、いつもよりも、感じてしまったんです。

  病室特有のにおいってあるじゃないですか、例えば、消毒薬とか、看護婦さんのコロンとか、そのような清潔色に染められたにおいに包まれていると、知らないうちに、興奮してしまったんです。だから、あんな夢を見たんだと思います。
2009/03/06(金) 09:52:12 | URL | 西宮由加里 #-[ 編集 ]
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