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 『由加里 104』
 西宮春子は、娘たちの間に今までにない空気が漂っていることに気づいていた。特に次女がおかしい。確かに、中2に上がっていらい見舞われているといういじめ、それに約2週間の入院と、彼女はこれまでの順調な人生にはなかった荒波に揉まれている。だが、今度は、あくまでも姉妹の間だけに醸し出されているにおいのような危惧するのだ。
 
 肉汁の匂いと食器どうしがしなやかに当たる音がカチカチと上品な音楽を奏でている。
 今、夕食の最中である。
 メニューは、好物のハンバーグにもかかわらず、由加里の箸は進まないようだ。何を思い詰めているのか、その口は固く閉じられている。それに好対照なのが、妹の郁子だ。いつも、彼女は明るくはしゃいでいるのだが、今、彼女が見せている態度は、何か姉に対して勝ち誇ったような顔をみせている。いったい、これはどういうことか。
 そして、無言のままで由加里に何かを迫っているようにみえる。
 それに促されたのか、次女は重い口を開いた。ほとんど、義務感と、今が夕食時どい長年続いた惰性から、ハンバーグを一欠片口に入れて呑みこむと、重い口を開いた。
「ま、ママ、郁子とあるゲームをしようと思うの・・・」
「ゲーム?」
「え?由加里お姉ちゃん、どんなゲームなの?」
 嘘だと、長いこと二人の母親をやっている春子は、直感で思った。由加里は喉になにかが引っかかっているような声で、続ける。
 かすかに首を傾けて郁子を伺うような姿勢を取って、「い、郁子と立場を逆にしてみようと思うの、たまには私がい、妹になってもいいかなあって、そんな気分を味わってみようとね・・・・」
 この子は、いったい、何を言い出すのだろう。妹の気分ならば、長女の冴子が轟然と存在して、むしろ、母である自分よりもこの家で存在感を由加里に示してきたのではなかったか?
「それは具体的にどういうことなの?」
「わ、私が、郁子の、ことを・・・・い、郁子お姉さんって呼ぶから、郁子、は、私の・・ことを妹のそう呼ぶみたいに、ゆ、由加里って呼んでね・・」

 無理矢理に造った笑いが、何処かマネキンめいている。しかし、プラスティックの肌の下には、確かに、温かい血が流れているはずなのだ。そう強く主張できないのが残念だが、春子の愛おしい娘が隠されているにちがいないのだ。
 春子は、二人と自分の間に見えない壁が立っているのを見て取った。どうしても乗り越えられそうにない。郁子はわざとらしく笑った。
「そんなのヘンだよ、郁子がお姉さんだなんて!どうしたの、由加里お姉さん」
 まるで台本を棒読みするような口調、彼女は完全に春子を意識していない。彼女を騙そうとすらしていないのだ。しかし、それが、彼女の幼さ故の無邪気な仕草とはとうてい思えない。だが、詳しいところまでは読めない。 何を考えているのかわからない。
 一体、二人の間に何があったというのだろう?まるで何年もふたりと顔を合わせなかったようにすら思える。それほどまでに壁は高く、そして、強固だ。
郁子が由加里にそのように迫ったことはたしかだが、あれほどまでに仲がよかった二人の間に亀裂が入ったのは、いつのことなのだろう?春子の印象によると、妹の姉に対する信頼感は絶対だったはずだ。
 
 こともなげに、郁子は言った。

「じゃあ、仕方ないなあ、由加里お姉・・由加里!」
「うん、郁子・・郁子お姉さん・・・」

 俯いた由加里の顔を長い髪が隠したので、わからないが、涙ぐんでいるのではないか、ここで、春子は、ふたりの母親として言うことがあるべきではないか、もしかして、それを彼女に躊躇わせたものがあるとすれば・・・・それは、片方と自分が血のつながりがないせいか・・・そこまで考えて、春子は、態度に出るような勢いで、それを自分に対して否定した。
 そんなことはあるまい、と・・。

 再び、顔を上げた由加里はハンバーグを口に放り込むと、ニコと笑ってみせた。強がって硬直した頬が痛々しい。だが、以前のように手を出せないことがもどかしい。もはや、子供たちとのつながりは切れてしまったのか。それともこれが成長の一歩だということか、しかし、ならば、まだ小学生にすぎない郁子はどうなのだろう。彼女と自分は正真正銘に、血が繋がった娘にもかかわらず、姉の由加里よりも心が読み取れない。
「由加里ったら、こんなに遺しちゃって、あたしが食べてあげるね」
 半分も食べずに食卓を立った姉に、わざと聴かせているのではないかと訝るほどに大きな声で、郁子は言った
 その声は、とうぜんのことながら、知的な美少女の耳にも入っていた。聴覚神経を通し送られる電気信号のうち、その声しか脳が受けとらないのではないかと思った。耳にこびりついた「由加里」という声を郁子が発するなどと、太陽が西に沈むことに等しかったはずである。
 
 今、それが現実となった。

「うう・・ひどいっ」
 暗いままの部屋で、寝具に沈み込んだ由加里が発した声は、郁子に向けたものなのか、それとも、照美かはるみ、あるいはそれとも全く違う誰かなのか、彼女には判断できない。いや、判断すらしたくなかった。そのような 気力すら、すでにないのだ。
その時、聞き慣れた着信音が、由加里の鼻面をぶちのめした。
「か、海崎さん・・・・!?」
 携帯を手に取りたくない。だが、随意神経が勝手に働いている。あるいは、脳の中にRAMが勝手に設けられて、由加里の自我に、早く携帯を取ってご主人様に答えるように、と命じている。
「いや、いや、いや、いや!!このままじゃ、あの人に殺されちゃう!!」
 由加里は大量の涙で顔を洗っていた。シーツは濡れて、まるでおもらししたみたいになっている。だが、それでもぬるぬるする手で携帯に手を伸ばした。
「何をしているの?奴隷の分際で!」
「・・・、もうしわけありません・・・」
 
 もしも、一年前の由加里が今の自分の姿をみたら、きっと、いくらそれが自分に酷似していたとしても何か悪意の充ちたいたずらにしか思えないに決まっている。よく駅のホームなどで携帯片手に30度に状態を傾ける、模範的なお辞儀をしている姿を、彼女は、自分の父親ならばあんなことはしないと、心密かに哀れに思ったものだ。
その由加里が、今、かつての彼女が同情を向けた対象となんら変わらない姿勢を取って、しかも、幼女のように顔を涙でぐっちゃぐっちゃにして、土下座と錯覚するほどのお辞儀を披露しているのだ。
「今すぐ家に来なさい」
「え?こんな時間にですか?」
 由加里は慌てた。いくら照美の命令と言っても、時計を見れば、午後7時半をまわっている。すでに、中学生が外を出歩く時間帯ではない。塾に通っていていればまだ夜とさえいえないかもしれないが、そんなものは彼女には必要なかった。
「聞こえなかったのかしら?」
 照美の家には一度だけ行った、いや、行かされたことがある。あの時も惨めなおもちゃとしてさんざん嬲られたものだった。
 しかし、と思う。もしかしたら、そんなことはこれで終わるかもしれないのだ。ゆららや、真野京子、それに藤沢さわの顔がちらつく。きっと、彼女たちが助けてくれる。そうなのだ・・・一条の光が天から差し込んできた。
だが、そんな由加里に美貌の悪魔は酷薄な命令を下してきた。
「そうだ、郁子ちゃん、あなたのお姉さんに服を借りて来なさい。そうね、学校の体操着がいいわ。下着はつけないで来るのよ、自転車を使うのよ!はやく来なさい」
 
 由加里の返事を待たずに照美は電話を切った。
 語尾がやけに落ち着いていた。それがおそろしい。
だが、郁子の服だって?小学5年の中でも小柄な彼女の服が自分に着られるはずがない。それに、午後8時、こんな時間に外出するなんて・・・・親からの躾と自分の主人、所有者の命令が、葛藤して由加里を苦しめる。
最終的に勝ったのは、類い希な美少女だった。
「郁子・・郁子お姉さん・・」
「あら、どうしたの?由加里お姉・・・由加里?!」
どうやら、照美は郁子に知らせていなかったと見える。由加里が来ることを予見していなかっと見えて言い間違えた。やはり、彼女は妹なのだと、嬉しくなったが、それどころではない。郁子から体操着を借りなくてはならない。
「郁子、郁夫お姉さん・・・体操着を借りたいの?貸してね」
「何をばかなことを言っているの?」
「あ、あした、体育があって。洗濯したままなの」
「じゃ、敬語で頼んでよ、昔はお姉さんに敬語使ったのよ。国語で習ったんだから」
「そ、そんな・・・・」
 涙にくれる由加里だが、郁子の背後に照美を見てしまった。彼女の部屋の窓から見えるネオンサインが爛々と輝く、照美の瞳に見えた。
「わかった・・・」
「わかった?」
「いえ、わかりました。お、お願いですから、い、郁子お姉さん・・」
 照美の酷薄さや残酷さには、品格の意味からも、そして、程度の意味合いからも、大人と子供くらいの差があったが、由加里は、かなりのダメージを受けた。
「い、郁子、お姉様、体操着をお貸しクダサイ・・・ううう」
 身も世もなく泣き崩れる由加里、そんな姉に郁子はふいに怒りを感じた。
「何よ・・・!?」
 お姉さんならどうして抵抗しないのよ!という言葉を呑みこんで、溜まりに溜まった憤懣を、自分の右足に爆発させる。身体をくの字にして亡きじゃくる姉の腹に向けて蹴りはじめたのである。
「い、痛い!郁子!やめて!!」
「あんたは私の妹でしょ!?」
 7発目の蹴りが由加里のみぞおちに食いこんだ。
「うぐぐう・・・い、郁子、お姉さん・・」
 ふいに意識が遠のいた。
 ・・・・・・・・。
 しばらく暗転があって、気が付くと薄汚れた体操着が置かれていた。
「・・・・・!?」
 由加里は、上着に貼ってあるゼッケンをみて、我が目を疑った。
3-1、西宮郁子。
「こんなのが入るわけ・・・、やっぱり、海崎さんの・・・・・・!?」
 絶望しながらも、極度の緊張と羞恥心のために全身の筋肉が吊りそうになっても、由加里は絶対に遂行しなくてはならないことがある。それは、海崎照美の命令のことだ。
 少女は、躊躇いながらも全裸になると、布の切れ端のような体操着に袖を通し始めた。
 
 



 

テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

『由加里 103』

 真野京子と藤沢さわがいなくなって一人になると、否応無しに不安が襲ってくる。たった数秒しか経ってないので日が傾くはずがない。だが、突如として目の前が真っ暗になったような気がする。
 明日が来るのが怖い。ずっと、このまま時間が止まっていればいい。そうすれば重大な決断をしなくてすむ。
 学校へ行くべきか、行かざるべきか、そのことで少女の頭の中は一杯になっている。どうしたらいいのかわからない。
 何が真実なのかわからない。わけのわからないままに、携帯はベッドの隅に投げ遣った。誰からの着信も受け取りたくないし、メールでさえ目を通したくない。疑念が疑念を呼んで、それが作った視界ゼロの海に溺れそうになるからだ。

 だが、一方、それに触れたいという気持も押さえられない。もしかしたら、完全に失われてしまった人間との結びつき、一般にそれは友人と呼ばれるが、それともう一度、ネットを再連結するように回復できるかもしれない。 そう思うとどうしてもすがりたくなる。  
 もしも、すべてがウソであり、恥をかくよりも、この切ない気持ちを満足させるために、溺れる者わらを掴む思いに賭ける方を選ぶべきだろう。
 この小さなカード状の物体がそれらとのジョイントになってくれる。
 だが、それがすべて嘘だったらどうなのだろう。自分はもう立ち直れないだろう。生きて屍になるようなものだ。
 ちょうど立ち上がってベッドに近づこうとしたとき、招かれざる客が訪れた。
 ドアが開いて無遠慮にも視界に侵入してきたのは、妹である郁子だった。
「何しているの?入るときはノックぐらいしないって言ってあるでしょ?!」
 姉の剣幕など何処吹く風と、妹は姉の機嫌を伺った。
「せっかく、退院できたのにどうしてそんなに怒っているの?」
 退院できた・・英語で言うcanの語感を伴っていたことが、由加里の堪忍袋に罅を入れさせた。
「出ていって!!」
 危うく枕を投げつけようとしたが、それを躊躇させたのは、郁子が持っていたものだった。
「い、郁子!!どうして、そんなのものを!?一体、何処から持ち出したの!?」
 理性を失った由加里は、郁子の髪を摑んで床に引きずり回していた。圧倒的な力を持つ者が持たざる者に対してその力を行使する。その恐怖を痛いほど知っている由加里が、気が付いたら同じ事をやっていた・・・・それを恥じるとともに、矛盾することだが、それをさせた妹を恨んだ。

 彼女が手にしていたもの、A4の茶封筒は、それほどまでに少女に衝撃を与えるものだった。何となれば、それは知的な美少女が誰にも、特に家族に知られたくない秘密だからだ。
 鋳崎はるかの命令によって否応無しに書かされた、性的な描写を含んだ小説や漫画・・、どうして、郁子がそんなものを手にしているのだろう?机に隠していたはずなのに・・いや、どうして、彼女がそんなことを知っているのか、いいや、いつからその存在に気づいていたのか、まだ10才にすぎない妹が・・・。
 沸き起こってくる羞恥心にもかかわらず、由加里は、涙を湛えながら妹を叩きのめしていた。
「ぎゃあ!やめて!やめて、照美お姉さんに言いつけるよ!」
 その一言は、由加里の心臓を貫いた。銃弾でなく言葉で人を殺せるという、ハリウッド映画なのか、何かの小説なのか、出典は定かではないが、その言葉の意味を少女ははじめて理解した。どうして、妹が海崎照美を知っているのだろう?頭の中が真っ白になった。
「・・・・・・郁子!!?どうして!?」
「あたしの言うことを聞かなかったら、これをママに渡すよ、由加里お姉ちゃんの部屋に在ったってね」
「郁子!!」
 絶望の淵に追いやられた由加里は、郁子から封筒を奪うべくさらに暴力を振るい続ける。めちゃくちゃに髪の毛を引っ張って、その小さな頭を殴りつける。三発目を喰らわせようとしたところで、由加里は信じられない光景を目にした。
 郁子が手にしていたのは携帯だった。どうして、彼女がそんなものを持っているのか・・?さらに信じられないことが起きた。
「て、照美、お姉ちゃん!助けて!!」
「ばかなことを!おもちゃでしょ!よこしなさい!!」

 矢理にふんだくった姉は、自分の予想が完全に楽観主義に裏付けられていたことを思い知らされていた。
「ふふ、退院、おめでとう、西宮さん」
「・・・・!?」
「あら、親友を無視するの?!」
 親友という単語にやけに語気が強められていたことに、由加里は命の危険を感じた。
「いえ、・・か、海崎さん・・・・あ、りがとうございます・・・」
 サラリーマンよろしく、電話中に頭を下げる姉を郁子は蔑みの目で睨みつけた。
「そ・・・・そんな・・・どうして?!」
 眼球が溶けてしまうのではないかと危惧した。それほどまでに夥しい量の涙があふれてくる。あまりにも熱くて頬が焼けそうだ。
 そして、当時に照美にさんざん弄ばされた性器の周囲が疼くのがわかる。今の今、妹の前で局所を露出させられ辱められる映像が浮かんできた。心なしか、膣が湿ってきたようだ。
「察しの良い西宮さんなら、わかってくれるでしょう。私が何をあなたに求めているのか、答えてごらんなさい」
「・・うう、お、お願いですから・・・・」
 郁子にはかかわらないでください、という一言がでてこない。そんな言葉が無意味であることは、勝利宣言をする郁子を観て痛いほど理解したからだ。
「私に、何をしろと?」
「そうねえ、まずは、郁子ちゃんのお願いを聞いてあげなさい」
 いったい、自分に何をさせようというのだろう。戦慄に似た感覚が全身を貫く。
 郁子は、あたかも姉の反応を見るように言葉を咀嚼した後に、上目遣いになった。そして、一気に言いのける。
「あたしのこと、お姉さんって呼んでよ」
「・・・・・?!」
 あまりに非現実的な要求。
 姉の沽券に抵触する物言いに、由加里は言葉を失った。しかし、それを受け入れないわけにはいかない。何となれば、彼女の傷口に笑いながら塩を塗りつける悪魔が携帯の向こうに鎮座しているのだ。
だが、儀式として疑問を妹に投げかけてみる。
「一体、何を考えているの!?」
「由加里おねえちゃん、この封筒、ママに見られたくないんでしょう?」

 辛くも携帯によって虎穴から逃れて涼しい顔の妹はこともなげに言う。
「郁子、その中身を見たの?だめ!見ちゃ!!」
 妹のようすからまだ見ていないと判断した知的な美少女は再び、郁子に飛びかかろうとした。しかし、その瞬間に氷の槍が彼女ののど元を貫いたのである。
 携帯の向こうから響いてきた美少女の笑い声は、それだけで由加里の心臓を止める力を有している。
「う・・・」
「郁子お姉さんよ、由加里!」
 本能的に右手が上がったが、とっさに照美の美貌が脳裏をよぎった。思えば、携帯という憎むべき手枷、足枷によって、常に由加里は縛られて行動の自由を奪われていることを思い出した。
「西宮さん、お姉さんを呼び捨てにするのはおかしいと思うわ。郁子ちゃんはあなたのお姉さんでしょ?」
 完全に照美は遊んでいる。普段、自分をいじめている時とも様子がどこか違う。いつもならば、自分に対する憎しみが先立っていたはずだ。それが、完全に面白がっている。他のいじめっ子たちのように由加里をおもちゃとしてしか見なしていない。非常に不思議な言い方になるが、とても淋しいような気がした。
 妹は、こともなげに言い放つ。
「郁子おねえちゃんよ、由加里!」
「いやよ・・そんな、どうして?」
 困惑する由加里がどうして携帯を手放さなかったのか、それは進んで照美の奴隷になっていたということだろうか。藤沢や真野、それに鈴木ゆららたちとの間につながったと、知的な美少女はそう見なしていた相手よりも太いつながりを、こともあろうに自分に対する最大の加害者に求めていたのかも知れない。
 その加害者はいつも放送室で、由加里を打つような言葉の鞭を振るった。
「西宮!?」
「ハイ・・うう、も、申し訳ありません」
「私に向かって謝ってもらっても困るのよ、あなたがそうすべきは郁子ちゃんでしょ!?」
 その時、何故か、藤沢や真野、それにゆららの笑顔を浮かんだ。そうだ、自分には味方がいるのだ。少し待てば、きっと、みんなが自分を助けてくれる。根拠もない担保が由加里を力づけた。そのことが、我慢することを告げた。
 今、搾っている乾いた布からはもう、水滴がほとんど出ない。しかし、渾身の力を込めて絞り込んだ。すると、自尊心という水滴がひねり出てきた。
「い、郁子おねえちゃん・・・・」
 「そうよ、よくできたじゃない、由加里、ママたちの前では、遊びでやってるって言うんだよ」
「まさか、みんなの前でもそうするの!?郁子!?」
「郁子お姉ちゃんでしょ?」
「い、郁子・・・お姉ちゃん・・やっぱり、いやよ!どうしてこんなことを!?」
 まるで分裂した自己と言い争うような姉は、あたかも芸を失敗したピエロのように滑稽だった。


 その時、海崎照美は、鋳崎はるかと自室で会話していた。
「あまり、気持のいいものではないな」
「・・・・・・・」
 親友がこのような言い方をするとき、その裏に深い理由があることをはるかは知り抜いていた。だから、軽々にその質問に答えることを避けた。
「私は言っているのよ!!」
照美は、たまたま弄んでいたヴァイオリンを投げつけようとした。
「・・・!?」
「そうしようと言いだしたのは、お前だろ?どうして、私に当たるんだ?」
 そう言い方が自分を受け入れていることを照美は知っている。知っていて、なお、反発を強めるのだ。自分の内心をすべて知っている。知っていて、なお、それを説明しようとしないはるかに怒りを覚えているのだ。
「郁子ちゃんを利用としたことは、確かに気持ちよくないが、こうすることで明日、西宮に登校させるきっかけにはなるかもしれない」
「そんなことをいて欲しいわけじゃないわよ!」
「なら、予め模範解答とやらを先に示してほしいな」
「あんたは、アスリートでしょ、先を読めなくてよくもテニスなんかできるわね」
「こんな回りくどいやり方をして関係ない人を傷付けるなら、いっそのこと、あいつをこの手で殺せばいいのよ」
「・・・・・」
 さすがにこの言葉には切り返す具体的な言い回しを、はるかは見つけられない。だが、あえて言うべきことを吐いた。
「なら、これから殺しに行こうか、強盗殺人に見せかけてやろう」
「・・・・・」
  何か言おうと脳内検索しようとしたところで、照美の携帯が鳴った。
「あ、冴子さんだ」
「何?西宮の姉・・か?」
「はい、照美ですが?今夜のライブですか?大丈夫ですよ・・ハイ、ちゃんと用意しておきますから・・ハイ」
 照美に、ここまで平身低頭させる相手とはどんな人物かと、はるかは興味を抱いた。確かに教師など、あくまでも外見にそのようなお面を被ることは上手いが、本当に、相手にアタマを下げることなど、このプライドの高い友人に限ってほとんどありえない。
 彼女はあきらかに、冴子なる照美の姉に対してそうした感情を抱いている。
 携帯を切った美少女にはるかは思い切って訊いてみた。
「なあ、照美、冴子さんを目の前にして、何も感じないのか?苛立ちとか?」
由加里以上に、百合恵ママに酷似しているという、冴子に照美が反感を感じないことが不思議だった。
 照美は、冴子に対する素直な気持を隠そうとしない。
「とても素敵な人よ」
「そう、なら、私も一度会っておきたいな」
 それは、照美の予期していない展開だった。

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