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『由加里 87』

 溢れようとする涙を必死に堰き止めようとしている姿は、さすがに、ゆららの感情の何処かを刺激する何かしらのものがあった。
 しかしながら、一方で、沸き起こってくる感情を、彼女も懸命に堰き止めていたことも事実である。ここで、一時の感情に流されてはいけない。心を鬼にしなければと、ゆららは奥歯を密かに噛みしめていた。

「そうね、わかっているわよ、由加里ちゃん・・・・」
「ウウ・・ウウ・ウ・・ウウ!?」
 ゆららのその一言を聞いたとたんに、高いダムは大自然の驚異の力によって、いとも簡単に崩れた。そして、白魚のような手が少女の元に忍び寄ってきたのだ。その瞬間、彼女の背中に無数のウジ虫が登ってきた。
押さえきれないおぞましさを堪えながらも、ゆららは、しかし、現在、彼女に科せられている任務が女優であることを忘れなかった。

「由加里ちゃん・・・・・」
「ウ・・ウ・・ウ、ゆららちゃん、お願い・・・・・・」
 瀕死の病人のように、由加里の握力は完全に計量以前の段階までに後退していた。
 ゆららは簡単に理解していた。
 被虐の美少女が一体、何を言わんとしているかが手に取るようにわかるのだ。いや、長い経験から、それがいやでもわかってしまうのだ。

「わかっているわよ、由加里ちゃん」
「・・・・・!?」
 吐息が顔にかかるくらいに近づいた。すると、彼女が怯えていることがわかる。捨てられた猫のように、まだ、ゆららを警戒しているのだ。それを、非常に上から目線だが、とても可愛らしく感じたのである。
 だから、彼女自身、気づいていなかったが、愛玩動物に対する憐憫の情を由加里に指し示した。知的な美少女はそれを無条件に受け止めた。無意識の何処かにおいては、それを見抜いていたのかもしれないが、何日も水も食糧もなしで炎天下の砂漠を歩き続けた旅人が、水が入っている水筒を発見した場合、まず、何も考えずに水を飲み干すにちがいない。
 それに毒が混入しているなどと、疑いもしないだろう。
 今の由加里は今こそ、そう言った心持ちになったのである。
 
 鈴木ゆららという人間の中に、どんな毒が混入しているのか。例えば、照美やはるかなど、あるいは、貴子や高田などという得体の知れない、体をあきらかにこわすものが隠されているのかわからない。
 その可愛らしい笑顔に裏など会って欲しくないと希がった。
 人間というものは、得てして、自分の主観を外に照射するものである。そうなるはずがないのに、自分の都合のいいように世界を見てしまう。得てして、追いつめられている人間ほどその傾向が強い。
 だが、さすがに由加里は聡明だった。
「ご、ごめんね・・・・・ゆ、ゆららちゃん・・・・・・私ったら・・・・」
 はにかむように両手を引っ込めた。
 だが、ゆららは意を決したように、傷だらけの草食獣を追いかけた。
「いいのよ・・・・由加里ちゃん」
 その傷を庇うように由加里の背中に覆い被さった。まるで、テレビゲームのように、こう操作すればこうなると簡単にわかる。由加里はまるでこの世の終わりが急に訪れたように泣きじゃくり始めた。
 かつて、彼女にやって欲しかったことをやっていた。そうすることで実は復讐を行っているのではないか。ゆららは意識の底辺に過ぎった思いを必死に打ち消した。だが、そうしようとすればそうするほど、無尽蔵の泉よろしく、地中から幾らでも浮かんでくるのだった。

「あれ、車イスがあるんだ・・・・・・」
 ふと、自分のいやな考えから意識を逸らそうとした少女は、部屋の隅に鎮座しているものを見つけた。
「あ、家族とか、看護婦さんが散歩に連れて行ってくれるの」
「じゃ、行こうよ。晴れているし・・・」
「いいの? ゆららちゃん、連れて行ってくれるの?」
 由加里は、鈴木ゆららという少女を通して、いじめっ子たちの魔術に取り込まれようとしていた。
 暗闇ばかりの人生に突き落とされて、永いこと地獄の日々を過ごしてきた。だが、ようやく薄日がさしてきた ――――。
 かつて、トワイライトゾーンという魔術世界を描いた映画があった。薄日を英語でトワイライトと言うのだが、人はそのような時間にまやかしの世界へと誘われてしまうのだろうか。
 完全に由加里はその世界へと足を踏み入れている。 
 
 鈴木ゆららによって、車イスに乗せられて一見甘美な雲の絨毯へと誘われていく。しかしながら、人間が雲に乗ることができないことは自明の理である。さいきんでは、小学一年生でもそんなことは理解の射程内である。
それを人一倍知的な由加里が心得ていなかった。
 初夏の太陽はトワイライトと表現するには、あまりに笑止である。まばゆい光と緑が知的な美少女の視力を奪う。
「あつい・・・・・・・もう、夏だね」
「うん・・・・・」
 いつの間にか元気を取り戻していた由加里に、ゆららは真水の憎しみを憶えていた。

――――やはり、自分は彼女を恨んでいるんだ。だから、どんなひどいことをしてもいいんだわ。

 一見、小学生と見間違われがちな、とても小柄な少女はここでもう一度初志を思い出していた。
 ここにはいない誰かに向かって胸を張って宣言するのだった、雲の上であぐらを掻いていた由加里を奈落の底に叩きのめしてやるのだと。
 もはや、照美やはるかと言う具体的な像は、少女の網膜に像を構成しない。自分のうちに芽生えた何かしらの目的のためにそれを行っているのだ。
 由加里を籠絡して、学校に来させること。
 彼女にとって、戦場、いや、地獄とでもいうべき教室に放り出すためにならば、どんなことでもできる。ここで、友人と偽って彼女の心を絆させるためならば、どんなひどいことでもできるだろう。
 ゆららは車イスの上にちょこんと座っている由加里を見下ろした。始めて見掛けた時は、どれほど大きく思えたことか。あの時は、完全に胸を張っていた。華奢な身体ながら、沢山の友人と信望者に囲まれて輝いていた。
 永年、戦場を駆けめぐって、由加里は心身ともに疲れ果てた傷病兵でしかなかった。そんな彼女をもう一度、傷も癒されていないのに、戦場へと帰還させよというのだ。それも味方がひとりもいない劣悪な環境へと叩き込むのである。
 車イスは見掛けよりも動きが軽い。
 それは知的な美少女が軽いのか、それとも、車イスというハードがゆららの想定よりも技術革新が進んでいるのか、即座には判断できなかった。
 ゆららは自分の薄暗い企てのために、由加里に話しかける。
「由加里ちゃん、どう、辛くない?」
「大丈夫だよ、それにしてもいい天気ね」
 しかし、会話は長く続かない。ここで思い切って、話を切り出すことにした。
「もう、中間テストが近いよ・・・・・」
「うん・・・・・」
 由加里は黙り込んでしまった。視線が虚ろになった。話の持っていき方が悪かったであろうか。彼女にとって学校に付随するあらゆることは、タブーなのだろうか。
 いや、そうではあるまい。何しろ、彼女が入院していらい、ずっと受業のノートを提供してきたのである。その間、ゆららは由加里に勉強の仕方を教えてもらうことすらあった。それは、照美やはるかが企む目的への一貫だと、自分に言い聞かせて、彼女の友人を演じてきた。
 ゆららはさらに畳み掛けることにした。
「由加里ちゃん、学校に来ようよ。みんな待っているよ」
「うん・・・手紙、読んでいるだけどね・・・」
「・・・・・・」
 由加里の両目から涙が零れていた。それは彼女の目がガラス玉ではない証拠だった。
「・・・・信じられないの」
 そう言うと、小さな顔を両手で埋めて泣き声を発しはじめた。
 何て言うことだろう。たが、数ヶ月ほどいじめられただけで、このザマはどうしたことだろうか。
 ゆららは学校という概念を体感していらい、ずっと、いじめられてきたのだ。そうでなくても、軽視されてきたことは事実である。改めて、怒りが沸き起こってくるのを感じた。
 血液が沸騰して皮膚の下から噴き出てくるような気がする。
 だが、それをストレートに感情に反映させるわけにはいかない。彼女にわからないように、悪意を言葉に含ませるべきだ。それには慎重の上に慎重が要求される。
「由加里ちゃん、あれほどヒドイ目にあったんだから、仕方ないと思うけど・・・・」
「ゆららちゃんの言うこと、わかるのよ、わかるんだけど・・・・・・」
 ここで、ゆららは心にもないことを言うことにした。
「絶対に、私が護るから、何があってもね、ううん、護れなくても、一緒にいじめられるから・・・・・」
 いじめられてあげると表現しなかったことに、ゆららが冷遇されてきたことの証左になるだろうが、それは由加里の洞察力の及ぶところではない。もしも、この時、それを見ぬいた上に、態度に表すことができたならば、完全に、ゆららの友情を得ることができたであろうか。

 いや、それは難しいだろう。照美と由加里の間に挟まれて、引き裂かれてしまうにちがいないのだ。
 由加里は、ゆららが思ってもいないことを言った。
「それはないと思うな、高田さんや金江さんたちはともかく、照美さんやはるかさんは私以外をいじめたりしないわ・・・・・」
 まるで、自分に言い聞かせるような口調だった。
 彼女が照美の本質を理解していることに驚いた。やっぱり、この人は頭がいいんだと、実感させられる。
「私ねえ・・・・・・」
 由加里は思い詰めるあまり、言葉を詰まらせた。
 だが、思い切って舌を動作させる。そうできなくても、そうしようと努力しているのが見て取れる。
「由加里ちゃん・・・」
 おもむろに、彼女の冷え切った手がゆららの手に重ねられた。
「ねえ、触れていていい?」
 ゆららを見上げる黒目がちな瞳は過剰なまでに涙が溜まっていた。
「いいわよ・・・・・・」
 もしも目の前に崖があったら、無条件に飛び込んでしまうのではないかと思われた。何か声をかけなければならない、そう思ったが何を言って良いのかわからない。そんなところが、非情な女優になりきれないゆららの本質を表しているのであろう。
 由加里に言葉を求めるのは、からからした不毛の砂漠に水をもとめるようなものだった。だが、少女は何とか口を開いた。
「ゆららちゃん、どうして・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
 ゆららはこの時、女優であることを忘れていたかもしれない。由加里の言葉をただひたすら待った。
「どうして、みんな、照美さんたちに同調したのかな?・・・・・・私、それがわからなくって、そんなに、私はイヤな人間なのかな?」 
 知的な美少女はゆららの手を握ったまま、泣きじゃくり始めた。






テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

コメント
はじめまして。
いつもこの物語を楽しく拝見しております。
これから由加里ちゃんをどんなイジメが
待っているのか非常に楽しみです。
更新期待しています。
2010/06/20(日) 19:13:22 | URL | むー #-[ 編集 ]
コメントありがとうございます!
cesare:コメント、ありがとうございます。まだまだ物語の絶頂、すなわち、シンデレラ曲線の最高値は先のことです。ご期待ください。

 由加里:むー様、コメントありがとうございます。この鬼畜ったら、私の話を聞いて、喜ぶばかりが、性的に興奮しているんです。この人は、本当のクズです!ひどい人です。現世でも、殺人と暴力と悪徳を欲しいままにしていたそうですが、生まれ変わっても、その本質は、変わりません、ううう。

ツイッターもよろしくお願いします。私をはじめ、まひるさんたちの近況がわかります。
http://twitter.com/aliceizer10
2010/06/20(日) 20:21:59 | URL | cesare borgia&西宮由加里 #B3tPMIzc[ 編集 ]
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