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『由加里 93』
  
 
 海崎照美と西宮郁子が病院を後にした、ちょうどその時、由加里は看護婦の毒牙にかかろうとしていた。
 短髪を茶色に染め上げ、肌をも焼いたその姿からは、もしも淡いピンク色のナース服をきていなければとうてい看護婦には見えないだろう。20歳の半ばを優に過ぎているのだが、そのような風体からまだ20歳そこそこ、間違えれば19歳ていどに見られてもおかしくない。
 看護婦は、由加里を見るとほくそ笑んだ。
しかしながら、彼女にそのような趣味が以前からあったわけではない。べつに今でもそのような趣味があるわけではないが、ふと何かの拍子に催してしまったのである。
 かつて、妹の自慰の現場を、彼女が中学のときに押さえたことがあるが、少しばかり悪戯してやったことがあるのだ。
 それから、10年経って同じようなことに巡り会うとは夢にもおもわなかった。患者の少女の華奢な肩がこころなしか震えていた。同性の直感から、彼女が性的な刺激によって悶えていることは簡単に予測できた。
「あら、由加里ちゃん、妊娠でもしたのかな?」
 ちょっと、口が滑ったかもしれない。そこまで言う必要がないとも考えたが、怯えきったあどけない顔をみているうちに、自然と嗜虐心が育ってしまった。
 相手を侮辱しようとわざと赤ちゃん言葉になるのは、彼女にとってみれば上司に当たる似鳥可南子の真似をしているわけではない。
 ただ、由加里にとってみれば、可南子以外の看護婦からもこのような扱いを受けるのは耐え難い恥辱だったにちがいない。
「さあ、看護婦さんに話してみようね、一体、何をちていたのかしら?」
「・・・・・」
 
 知的な美少女は、何も言えず俯くだけだ。看護部は彼女の背後から、その柔らかな頬を伺っているわけだが、自らの顎をそこに滑り込ませようとした。
「いいや、や、やめて!」
「そう、男性看護士を呼んでもいいのよ、男におまんこ観て貰ってもいいのよ、それの方がインラン中学生にはお望みかしら?」
「ウウ・ウウウウ・・ハイ」
 小さく肯くと少女は泣き崩れようとした。しかし、看護婦がそれを許さなかった。
「聞こえるでしょう?静かになさい!」
「ウウ・・・う!?ゥウゥゥ」
 患者が自分の奴隷人形に堕ちたことを知った看護婦は、この際、氏名を告げておく、野上怜夏は少女の正面に自分の身体を移すと、股間を臨もうとした。
野上の吐息が股間に当たる、
「いや!?」
 とたんに両手で股間を押し隠した。しかし、その途端に・・・・・。
ビシ!
 野上の平手打ちが少女の柔らかい頬を打った。加害者はほくそ笑んだ。少女に触れる手の感触に気持ちよさを感じたのだ。普段、介護している老人、因みに彼女は老人看護が専門である、彼らの干からびた肌と違ってもちもちとした若い少女の肉体は、ふれ合いがいがあった。
 ビシ!
 首の骨が折れるのではないかと思うほど、看護婦の平手打ちは激しい。
「ご、ごめんなさい、ゆ、許してください!」
 知的な美少女は自分の顔を護るために、両手を顔に当てた。すると、彼女の両手首を摑むと、ベッドの上に少女の柔らかな身体を押し潰した。
「ごめんなさいだって?だったら、どうして、素直にぶたれないのよ!!」
 さきほどの赤ちゃん言葉と打って変わって、まるで暴走族のレディースの総長のような暴虐ぶりを見せた。
 両手を使って、強弱を自在に使い分けてぽんぽんと、頭やら顔やら胴体やら、あちらこちらを叩き回る。最初に痛くさせて、次に和らげる。二回目がくるまでに少女はそうとう怯えるが、その顔が堪らずに可愛らしい。単純なサディストの本性を顕わにして、子供のように笑いながら少女を小突き回す。
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!もうぶたないで、くださいィウツツ!」
 何処まで行っても自分はいじめられる運命なのか、少女は泣きながら加害者に向かって泣きじゃくるしかなかった。
「謝罪するなら、今の今まで何をしていたのか言いなさい!言うのよ!!」
「うぎぃい?!」
 看護婦の長い指が少女の柔らかな頬に食い込む。可愛らしい知的な顔が捩られた風船のように歪む。夥しい涙が零れる。その様子はあたかも黒い蜘蛛が取り憑いているようだ。
「汚いわねえ、あなたの気持ち悪い体液で指が汚れるじゃない!!」
 パーンという音とともに、快心の一撃が由加里の頭部に炸裂する。
 怜夏からすれば、単に水の入った水筒を叩いているにすぎない、そんな感触が両手を通じて伝わってくる。
 何回も叩いているうちに、掌を掲げただけで激しく怯える。
「何を泣いているのよ、まるでいじめているみたいじゃない!?」
「ウウ・ウ・ウ・ウウウウウ・・うう?!」
 涙でくしゃくしゃになった少女の顔からは、抗議の色が心なしか見て取れる。それが看護婦の気に障ったのだ。
「言うこと聞かないなら、男性看護士の前で、おまんこを顕わにさせるからね」
「ヒ?そ、それだけは」

 知的な美少女は完全に理性を失っていた。そのようなことが可能か不可能か、すこしでも脳細胞を働かせれば答えが出るはずだろう。しかし、被虐に被虐を重ねた結果、少女の精神は激しく傷つき、ちょうど、看護婦が掌を見せただけで激しく怯えるのと同様に、由加里は、看護婦が思うとおりの実に従順な奴隷にされていたのである。
 怜夏は静かに命じた。
「今まで、何をやっていたの?」
 それが性的な意味合いであることは、容易に察することができた。女子中学生は、しかし、自分の口からそれを認めることは憚られた。何と言っても、相手は照美やはるかではなく、あまつさえ似鳥可南子すらないのだ。そんな相手に簡単に認めることは、自分を否定することに等しい。
「そう・・・」
 看護婦はやおら立ち上がると、回れ右をしてドアにむかった。
「あ、ま、まってください・・・・」
 彼女の仕草から、今までの言動から何を言わんとしているのか、如実に伝わってくる。
「い、言います・・・」
「何をしていたの?」
「お、オナニーです・・うううゥゥウ」
 言うなり、溢れる涙は羞恥心の証だった。涙で鬼のような看護婦の顔がぼやけてよく見えない。だが、それは彼女から伝わってくる恐怖をけっして和らげはしない。むしろ、ものが見えないだけ余計な想像力が働き、対象に対する恐怖を倍増させるだけである。
「何だって?あなた、病院でそんなことをしていたの?なんだって?」
「ウウ・・ウウウ・・うう、お、おな・・・オナニーです」
「じゃあ、自分で脱いで見せてごらん、フフ」
「・・・・・・ウウ」

 まるで自分の手が自分のものじゃないように思えた。少女は、パジャマを脱いでいく。因みに、花柄の幼女が好んで着用するような代物だ。母親は服装の趣味が悪いので、西宮家では有名なのである。
 だが、今は、そんな朗らかな記憶に浸っているばあいではない。市井の看護婦にまで自らの性器を晒そうとしているのである。それは町中で全裸にされて、大腿を180度ほど広げられているのと、ほぼ同意である。この看護婦、野上は、由加里にとって町中の見知らぬ人間に等しい。それに故に込み上げてくる羞恥心はひとしおである。
 その上、少女の性器には照美によって挿入させられたゆで卵が、未だに存命中である。照美の所有物にすぎない由加里にとって、彼女が傍にいないときなどない。トイレで用をしているときでも、黒目がちな瞳には照美の悪魔めいた微笑が映り込んでいる。
 だが、看護婦はちがう。どうしてこんな人にまでひどい目にあわされるのだろう。
 そう考えながら、命令通りに大腿を限界にまで広げて自らの性器を顕わにする。
「あれ、若いのに硬いのね、え?中に何か入っているわよ」
「ァアあ・・!?」
 必死に性器の筋肉を操作して、ものが出ないように注意していたはずだ。だが、目敏い看護婦は中に何かが入っていることを察していた。
「あれ?タンポン、それにしてもおかしいわね、これじゃ生理じゃないわよね」
「ウウ・ウ・・ウ・ウうう?!」
「ほら、出しちゃいなさい!何を入れているの!?」
  野上の指が性器に吸い込まれていく。
 「あれ?卵?由加里ちゃん?」
 ゆで卵は、少女じしんのそれこそ体液によってどろどろになっていた。看護婦は意地の悪そうね目で、それをいかにも汚いものを視るような目で観察している。
「こんなものを常に入れていないと、満足できないのね」
「・・・・・!?」
 もはや、何を言っても何の説得力もない。そのことは、被虐の美少女じしんが誰よりも自覚していた。
 知られてしまった!
 もはや、海綿体となりつつある脳の何処かで正常な理性が生きていて、少女に危機を告げる。しかしながら、それに対する方策は全く見付からないため、余計に混乱させるだけだった。
 その時、聞いたことのない着メロが看護婦のナース服から響いてきた。
「あ、仕事か!」
 あまりに軽い対応はかなりのギャップを感じさせる。自分の置かれている状況の深刻さを思えばあまりに違うのだ。遊びの片手間に仕事をしているという感じの、ごく軽いノリを見ていると、自分の価値の低さを否応無しに納得させられる。

「もっと、遊んであげたいけど、お仕事、入っちゃったからまた後でね!」
 あたかも友人にさよならを言うように去っていく。
 残された由加里はシーツを頭から被って泣きじゃくるだけだった。無意識のうちにゆで卵を元に戻したのは、あの美少女に対する恐怖が尋常ではない証拠だろう。気が付くと、喘ぎ声を出していた。
「ぁぁあああぁぅぅぅぅ・・・ウウウう!?」
 いくら再体験しても官能というものは慣れないようだ。ジェットコースターなどと違って、体験するたびに新しい刺激が心身を翻弄する。
 由加里は、意外とその手の乗り物に耐性がある。だが、何度も経験するとしたいに飽きてしまう。性感にはそれがないのだ。
「ウ・ウ・・・・ウウ・、わ、私、本当の、変態なんだ・・・・ウウ・ウ・ウ」
自分の涙に溺れながら、知的な美少女はすぐれた頭脳を自己嫌悪にしか利用できない。それを無駄と判断する理性すら、この女子中学生には残っていなかった。


 

テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

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