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『由加里 37』
 裁判は、6時限目に、厳かに始まった。道徳の授業という表向きである。今回は、担任の公認ということで、クラスメートの目の色がちがう。いつものように、手錠や腰ひもの演出こそなかったものの、クラス全体が、由加里を責める空気は、普段よりも、陰惨で残酷な空気に満ちていた。         
 大石先生の指導によって、座席の移動が始まる。すなわち、由加里は机を真ん中に移動し、他のクラスメートたちは、それを、黒板に向かってコの形で、囲むように設置した。
 大石先生は、裁判長、検察官、弁護士をそれぞれ発表した。あたかも、予めこの裁判を予定していたかのように、周到に準備されていた。
 証人席も、由加里のすぐ目の前に用意される。こうして、由加里を裁く舞台装置が完成した。哀れな少女は、こういう舞台道具をどんな心持ちで、見つめていたのだろう。
 
 裁判長は、海原ゆき、検察官は、真野京子、弁護士は、水崎ゆらら。この三人は、いままで、由加里いじめに、それほど積極的ではなかった面々である。
 少女が、すがるような視線を送っていた大石先生が、教室の背後に移動した。
こうして、前代未聞のクラス裁判が始まったのである。

 「私がこの裁判の裁判長をおおせつかった海原ゆきです。まず最初に検察官に、この裁判の趣旨を説明していただきます」
 海原は、何処と言って特長のない少女である。成績は中の中。容姿を形容すれば、何処にでもいるふつうの女の子という以外の表現は見あたらない。
彼女は、由加里を囲むコの字の、内側の窓側に席を占めている。立ち上がると、用意していた文章を読み上げはじめた。

――――ずっと前から、用意してたのね。どういうこと?これ?
 由加里の中で、不審が夜火のように広がっていく。しかし、今は震える心で、水崎の言葉に意思を集中させねばならない。
ゆららの顔には、悪意がありありと浮き出ている。
 「私が、検察官を拝命した水崎ゆららです。あそこに座っている西宮由加里を被告として、訴えたいと思います。その理由は、クラスメートみんなの要望によるものです。中2学年に進級して以来、この被告から受ける迷惑は、クラス全員が賛同するものであります。    
 みんなの要望によって、この裁判は始まりました。ここに、要望書と全クラスメートの署名があります」

 同意のどよめきが、教室に木霊した。
「それは、私が確認しています」
 大石先生が、みんなに呼応するように、口を挟んだ。
由加里は、すでに涙で顔を浸している。今更ながらのことだが、自分への悪意を公認されるのは、辛いことなのかもしれない。
――――先生、どうして?私はいじめられているのに、どうして、助けてくれないんですか?
 
 由加里は、背後の大石先生に、凍える背中ですがったが、何も、答えてくれそうにない。真夏が近いというのに、どうしてこんなに震えるんだろう?凍えるんだろう?机に落ちる涙さえ凍ってしまうかのように、寒かった。
 大石先生は、ただ、手を組んだ姿勢で、壁によりかかり、事態を傍観しているたけのようだ。
「では、弁護士は主張したいことがありますか」
 真野京子が立ちあがった。

 かってのクラス裁判で、照美がやった弁護はひどいものだった。ある意味、誰よりを由加里を徹底的に罵倒していた。京子は、一体、どのような弁護をするのだろう。
 しかし、複雑な立場であると推察される。何故ならば、由加里を非難しなければ、クラス全体の非難を受けるからである。といって、反対の立場を取れば、また弁護士という何にもとることになる。やはり、照美が主張したようにする以外にないのだろうか。
 
 「弁護人は、検察官の主張を全般的に認めるものであります。しかし、被告の育った家庭環境を示すことにより、みなさまのお情けを望みたいと思います」
 真野の言いようも、相当に、由加里を侮辱していた。
しかし、一体、由加里の何の罪を主張したいというのだろう。この辺りなど、さすがに中学生のおままごとに過ぎないのだろう。照美やはるかも、意味ありげな微笑を浮かべるだけだ。大石先生が助け船をだした。

 「検察官に聞くわ。あなたは、西宮さんの何の罪を主張したいの」
「はい、穂灘翔子さんへのいじめです」
「あああああ!!」
真野の言葉を聞いたとたんに、穂灘は泣き叫びはじめた。その声は明かに芝居がかかっていたが、それを主張するものは、誰もいなかった。

―――私がいじめを?!
 由加里は耳を疑った。大石先生との会話でも、主張したことだが。主語と述語が転倒している。穂灘がとやかくと言うのではない。彼女は積極的にいじめを行ってきたわけではない。いじめを囃し立てるクラスメートの一人、いわば、その他の一人にすぎない。小学校時代からの知り合いだから、一抹の淋しさは感じていたが、彼女は、それ以上でもそれ以下でもなかった。
「ウウ・・ウウウ!」
 その時、股間が疼いた。少女の下半身は大変なことになっている。おむつとはいえ、万能ではない。そのうち、漏れてしまうかもしれない。

―――――そんなことになったら・・・・・・・。
 少し、盗み見たのだが、照美とはるか、それに有紀とぴあにだけが、意味ありげに笑っている。もしかして、それは由加里の錯覚や思いこみかもしれない。何故ならば、四人が、少女の下半身の秘密を知っていると怖れているのは、誰よりも、まず彼女自身なのだから・・・・。
 ところが、当の照美は、由加里が思うようなことを考えていたわけではない。ここまでの展開は、決して、彼女の思うとおりではないのだ。

 「穂灘さん、立って発言してください」
海原が、すこしとまどいながら、言った。
穂灘は、しゃっくりを上げながら語るには、由加里に小学生のころからいじめられているということだった。彼女の告白が、佳境を迎えようとしたとき、誰かの泣き声が、教室を半分に割った。
「・・・・・・・・・?!」
 由加里もビクリとして、下半身をさらに濡らしたくらいだ。彼女の下半身は、海洋生物ではないのだ。その皮膚も鱗で出来ているわけではない。そのためにふやけて、組織に水分が入ってしまっているかもしれない。
おぞましさに形の良い眉をひそめざるをえない。

「・・・ウウ・・う」
もう、限界に達していた。おむつの上限は、臍のすぐ上にあるが、もう、そこまで海岸線は、膨脹しているのだ。さしずめ、由加里温暖化ということだろうか?恥辱と羞恥のために、精神的にかなり興奮していたにちがいない。そのために、体温も平均よりも、高かったかもしれない。
 
 由加里は、おろおろとそちらを向いた、声のする方向だ。
―――香奈見ちゃん!?!
立ち上がって泣き出したのは、かつて、互いに親友だと呼び合った工藤香奈見だった。

 「どうしたの?工藤さん、不規則発言はだめですよ」
海原は、この裁判ごっこに、首たけになっている。もはや、完全な裁判長きどりだ。それがおかしかったのか、照美は密かに、舌を出した。

 「わ、私が、・・・ウウ・・ウ・う、ここにいる、に、西宮さんと、穂灘さんを、・・・ウウ、いじ、いじめてました!ご、ごめんなさい!!」
 教室中がドッとなる。直角であるべき角が90度を超えて、120度に拡大される。教室のすべての物が歪み、声は光よりも、早く、飛び交い出す。

 「それは、西宮さんに命令されて、いやいやながらやったということですか?」
あきらかな、誘導尋問だ。由加里が一番、悪いのだと印象づけたいのが見え見えだ。しかし、香奈見はそうは答えない。
 「いえ、一緒になって、やりました。ものすごく反省しています、穂灘さん、ごめんね!」

 ひたすらに、真摯な態度で、泣きじゃくる穂灘に謝る香奈見。
「どうなんだよ!西宮!おめえは認めないのかよ!!」
「よくも、平然としていられるわね!このうそつき!!最低!」
「ひどい!あんたみたいな人非人(にんぴにん)が、同じクラスにいると思うと吐き気がするわ!」
 
 集団による暴力とは、恐ろしいものである。あの照美やはるかでさえ、それには抵抗し得ないであろう。そもそも、由加里は繊細な神経の持ち主なのである。それに、人に非難されるという経験に乏しい。チヤホヤされすぎた報いだと言うのは、少女に対する嫉妬であろう。
 
 彼女を罵る陪審たち、とりわけ、少女たちの中には、激しい嫉視を向ける子たちが多い。彼女等の被害妄想かもしれないが、中学くらいから、大人たちは、子どもを総じて、成績だけで評価してしまうことが多い。そのことが、余計に由加里を敵意の標的にしてしまったのである。       
 しかし、由加里が、庇護を受けられなかったのはどういうことだろう。
 成績がトップクラスである上に、おとなしく控えめ。これが、中学に上がった由加里に対する生徒や教師達のイメージである。
 照美ははるかのように、デキのいい子たちは、大抵プライドが高い。そのことが敵意の標的になるなら、話しは早いだろう。
 ところが、由加里はどのように、いじめられっ子になってしまったのだろう。その理由がわからないのである。

 「・・・・・ウウ・・う!」
 由加里は、ただ泣き続けるだけだ。もう口が震えて抗議する気力すらない。
 内憂外患とはまさに、このことである。少女の内側は、卵とおむつに責められ、外側は、
 少女の皮膚感覚として、実感される圧倒的な敵意。そして、下半身は大洪水を呈している。そして、少女に情け容赦ない罵声が浴びせかけられる。しかも、教師はそれを黙認しているのだ。
 しかも、彼女のいいぶんは何も聞いてもらえない。既に、有罪は既定事実として証人されてしまったかのようだ。

――――夢だよね。これは夢よね、悪い夢を見ているんだよね。
由加里は、涙の海に溺れながら、そう思うしかなかった。
 できるなら、溺れきってしまいたかったかもしれない。しかしながら、少女の理性と知性はそれを許さなかった。そんな少女に、真野はさらに責めの手を緩ませはしない。それは、彼女自身の個人的な怨みでなしに、クラス全体の意思のように思えて、ならなかった。
 香奈見が証人として、立たされる。
 
 「あなたは、穂灘さんにどのようなことをしたのですか」
「いじめをはじめたのは、小学校5年の三学期です」
 「被告人とふたりではじめたのですか」
 「西宮さん・・・・・・・彼女に勧めたのは私です」
香奈見は、由加里を見つめて震えている。

 「どうしたのですか?裁判官、工藤さんは明かに怯えています。西宮さんに後でドンナ目に遭わされるのか怖くてたまらないのです」
「被告は、証人を強迫しないように」
「・・・・・・・・・」
 香奈見はついに泣き出してしまった。
「証人に聞きます。被告人とはどんな関係ですか」
「・・・・・し、しんゆう・・・・・でス・・・・」

―――――しんゆう?
 彼女の口からそんな言葉が出てくること自体が、信じられない。しかし、教室中の同情は彼女に集まっている。由加里に、友人関係を強要されているとみなされているのだ。
「裁判官に請願します。被告人と工藤さん、ふたりの関係を知っていると思われる証人を招聘したいと思います」
 「認めます」

 「猿渡さんです」
猿渡百合絵は、狸のような顔を、赤らめて証人席へと歩み寄る。正面から見ると、本当に狸そっくりだ。髭が生えていないのが、不自然なくらいである。海原は、噴き出すのをこらえるのに大変だったらしい。
「あなたは、いつから二人を知っていますか?」
「小学校二年からです」

――――このオンナの口から人語が出るのね。
海原は、やっぱりおかしくてたまらない。
「仲良く見えましたか」
「最初は、そうでした。西宮さんは、外向きだけは良い子ですから」
「・・・・・?」
 猿渡の言葉、言葉には相当、針が仕込まれている。

「最初とは!?」
「善意を押しつけるんです」
「具体的には」
「頼んだこともないのに、恩を売って後で見返りを請求するんです」
「ですから、具体的に示してください」
「テストの時がそうです。その時、席が隣同士だったのですか、テスト中に、わざと見せるんです。その後で、お金を要求されました」

「そ、そんなことしてない!!そんなことしてない!」
 由加里は、当然のように泣き叫んだ。そして、猿渡に詰め寄ろうとする。しかし、側にいた少女たちに取り押さえられた。
「被告人は静粛にしてください。そうだ、お二人に警察官になってくれるように頼みます」
「被告には手錠が必要だと思われますが、暴れますので」
「認めます」
 「いやあ!ぃいやああ!!」

 高田から手錠を受け取ると、いやがる由加里に手錠が填めた。少女は、下半身の秘密がばれることを怖れて、あるいは、暴れることによって、より強い官能を怖れて、すぐおとなしくなってしまった。
 密かに、警察官の一人は、由加里を余計に殴る機会を失って、悔しがった。

 この時、大石先生は何をしていたのだろうか?彼女は渋茶をしゅくしゅくと飲むように、言葉を並べた。
 「海原さん、こういうことは予めやっておきなさい。被告人が暴れることは予想できたはずです」
 「すいません」
海原は含み笑いを押し殺しながら言った。
「被告人は静粛に」

 「・・・・・」
由加里は涙を呑むしかなかった。まるで、血の流れを無理矢理に押しとどめられるように、感情の躍動を止められた。それは大自然を押しとどめるダムのような試みで、いつかは破綻するだろう。
 
 「検察官は質問を開始してください」
「はい、被告人はいくら請求してきました」
「300円です」
「裁判長、小学生に300円は高額です、被告の罪は重いと思われます」
「弁護人は何か言うことはありますか」

 一斉に、水崎に視線が集まる。思わず顔を赤らめてしまった。何か言うことはないかと、考えてひねり出したのが以下である。
「猿渡さん、被告にいいところはなかったですか」
「ですから、外見はいいです。人当たりはいいし、先生に対しての受けもいいです」
「裁判長、今話していることは、3000円のことのはずです」

 いつの間にか、3000円になっている。
「そうですね、では、被告人、3000円を要求したのは本当のことですか」
「嘘です!そんなこと!してません!」
 由加里は、涙を瞼で押し潰すように、訴えた。
「嘘つかないでよ!私にも要求したくせに!!」
「大善くんに、告白させたくせに、何を言っているのよ!!」

 「・・・・・・・?!」
由加里は絶句した。クラス全体がひとりの少年に注がれる。丸当大善。彼も小学校時代から知っている間からである。野球部でもないのに、丸坊主のとんがり頭は、何を語っているのだろうか。
 
 「裁判官、至急、新証人を呼びたいと思います
「許可します」
海原はみなまで言わせずに言いはなった。その語尾に、興味津々なのがあふれている。
「丸当くん、証人席まで」
 丸当は、おどおどしながら、席に着く。
「告白とはどういうことなのですか」
「・・・・・あの・・・小6のとき・・・・・に、西宮さんが好きでした・・・・・」
「どんなところが好きになったのですか?」
「・・・外見です」

 やっぱりという空気が教室を包む。由加里は、外見だけの人間だという雰囲気が醸成されている。由加里は、大善を直視した。訴えるような視線。しかし、大善は、そんな視線を意に介さない。
「ところで、告白というのは」
「あ、ある日の午後、西宮さんに告白しました。そうしたら、OKだと言うんです。そうしたら、ある場所で、次ぎの日に告白してほしいって言うんです。」

 「そんな!!?」
由加里の声は、ほとんど悲鳴に近い。
暴れそうだと判断した二人の警察官に取り押さえられた。どさくさに紛れて、平手打ちを喰わされた。しかし、大石先生は見てみぬふりを決め込む。
「そ、そうしたら、次ぎの日、指定の場所に行きました」
「そこは何処ですか?」
「墓場の前です」
「あははは!趣味悪い!でも西宮らしいよね、もっとも、すぐそこに入ってほしいけど」
「それって最高!」
「あははは!」

 「陪審は静粛に、おもしろいところなんだから!」
思わず、海原の口からホンネが漏れる。
「続けて、丸当くん」
「おかしいなあと思ったんですけど、浮かれていたのだと思います。好きですって言ったら、彼女はひどいこと言って笑ったんです。それだけじゃなくて、クラスメートがみんな一斉に出てきて、僕を笑いました」

 「そんなの嘘!嘘よおぉ!!」
泣き叫ぶ前に、殴られぞうきんを口に詰め込まれる由加里。股間を突き刺す官能も、この際、気にならないほどの侮辱だった。

 「それは、結局、被告人がしくんだことなのですか」
「そうです」
「西宮さんが予め、呼んだそうです」
「それを証明してくれる人はここにいますか」
「工藤さんと穂灘さん、それに井上馨くんです」
「大善、ごめん!」
 山形梨友が立ち上がった。
「証人になってくれますか」
「はい!」
ナチのように、片手を天井に向かって振り上げると、山形は立ち上がる。
「このオンナがおもしろいことがあるって言うからさ」
「そうよね、あたしも呼ばれた」
香奈見が立ち上がった。

 「工藤さん、それは本当ですか?それは・・・・では、被告に質問します。あなたはこれまでのことを認めますか?つまり、丸当くんを騙したばかりでなく、みんなの前で辱めようとしたのですか」
「ち、ちがう!ちがいます!そんなの嘘です!」
 言い終わるなり、机に伏して泣きじゃくる由加里。
「じゃあ、丸当くんが好きなのですか?」
ものすごい論法である。アリストテレスも裸足で逃げ出すような言いようである。

  「・・・・・・・・・!?」
「どうなのですか?じゃあ、嘘なのね」
「・・・・・・・好きです」
 おおお!教室中がどよめいた。このとき、どうして、由加里はこのように言ってしまったのか、後々まで悩んだ。
「じゃあ、どうして断ったのですか?それだけでなくひどいことを言ったそうじゃないですか」
「・・・・・・・・・」
「答えてください」
「恥ずかしかったからです・・・・・・・・・・」
「丸当くんは納得できますか」
「できません、ものすごい傷つきました。あんなひどいことをしなくても、すぐに断ってくれればよかったんです」

 丸当は、乾いたぞうきんを絞り出すような仕草で言葉を紡ぐ。その姿は哀れで、非常に同情を誘うものだったから、その分、由加里に対する敵意と非難は、雪だるま式に膨脹していくのだった。

 「でも好きだって言って居るんですよ、断りますか?」
「被告は、丸当くんを傷付けたんですよ、どういう風に罪を償うべきだと思いますか」
 もはや決めつけるというレベルではない。事実になっている。
「ごめんなさい」
「謝ってすむことかよ!」
「そうよ、恋人になって奉仕しなさいよ!」
 誰かの言った言葉に海原が反応した。
「では、恋人になったらどうですか?好きなんでしょう?もっとも、丸当くん次第ですが」
「願い下げだよな」
「当然よ、こんなヤツと」
「恋人になってほしいです」

「エ・・・・・!?」
由加里は、思わず仰け反った。しかし、二人の警察官に取り押さえられて、それは実現しなかったが。
 「では、恋人の儀式を行ってもらいましょうよ」
おおう!
 教室がうなり声を上げる。この教室は意思を持って、呼吸しているかのようだ。由加里は、そのおぞましい怪物に頭ごと喰われ、消化されようとしている・
 「ぎ、儀式って・・・・!?」
「当然、キスしてください、警察官、被告を連れてきてください」
「いや!いや!いやああ!!」
由加里は漁船に引き上げられた蛸のように、引きずり出される。

 「オネガイ!許して!ェエエエエ!」
泣きわめく由加里は頭を固定されると、目の前に男の顔を発見した。丸当大善、その人が目の前にいる。前に書いたとおり、別に醜男ではない。しかし、今、どんなイケメンが目の前にいようとも、フランケンシュタインの怪物にしか見えないだろう。

 その時、意外な声が由加里の耳に届いた。

 「待って下さい」
それは照美だった。
何という迫力だろう。それは、大石先生でさえ、見逃すことができなかった。すくっと立ち上がった照美は、身長以上の大きさを感じさせる。
「結婚式には、異論が許されるはずじゃない?」
いつのまにか、結婚式まで話しが進んでいる。
「具体的には?」
「結ばれる二人の前に、出よというはずね、異論がある人はね?」
「それが、あなただと?」
 震える声で、海原は言った。
「ちょっと待ってよ!照美さん!」
おおー!
男子たちが騒いだ。
あの丸当と、海崎さんが ―――――――と!?
「海崎さん!いやああ!!」
女子の数人が騒いだのは不思議なことだと、一応言っておこう。

 それを無視して、丸明の前に歩みを進める照美。
「私はあなたが好きです、どちらか選んでください」
絶世の美少女に、告白されたのである。

――――聞いていないぞ!こんな展開!
丸当は高田と金江を睨んだ。二人は、何処吹く風と、唇を吹いている。
繰り返すが、けっして、丸明は醜男ではない。しかし、照美や由加里と釣り合うはずはないのだ。

―――助けてくれているの?!
由加里は、もはや機能しなくなりそうな目で、照美を見た。どうして、そんな風に思うのか?自分自身に説明ができない。今まで、あの手この手で、自分を嬲ってきた照美である。その彼女が、どうしてこんな挙に出ているのだろう。まさか、本当に丸明が好きなのだろうか。いや、そんなことはありえない。何故か、由加里はそう断言できた。

「ああ――――」
ブザマにも、丸当は二人の美少女を前にして、腰を抜かしてしまった。床に転がるように逃げた。
「むむむむ~~~~~!!?」
照美は、丸当の上に跨ると、一片のためらいも見せずに。その口吻に口づけをしたのである。 灰色も、完全な黒の前では、白く見える。しかし、プラチナの白の前では、薄汚い灰色にすぎない。
 今の丸当は、まさにプラチナの前の灰色だった。

 向丘第二中学2年3組、総勢35人と教師1人は、信じられないものを目撃していた。
 


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