ガタン・・・・ガタン・・・・ガタン・・・ガタン。
午後4時半、初夏を過ぎた太陽はまだ、空にある。凶暴な熱を予感させる太陽は、地上を睥睨し、そこに棲む人間の幸不幸を完全に支配しているように見えた。電車の中は、冷房が効いているとは言え、その光線は、強烈な熱を有している。
京王線は、新宿行きの特急に、由加里たちは乗っている。少女の場合、無理矢理に乗せられたというべきか。
がら空きの車内には、由加里たち五人の他に、ポツポツとしか客は見えない。
ちょうど、由加里の向かいの席には、腰が90度に曲がった老婆が休んでいる。
由加里を中心にして、照美とはるかが左右を占め、そして、その外側に、それぞれ、有紀とぴあのが少女を監視している。
少女はスカートの裾を、握りしめながら、歯をそっと食いしばっている。長い髪は、辛うじて、由加里の顔を隠してくれる。しかし ―――――――――。
「西宮さんの奇麗な顔を、みんなに見てもらおうよ」
はるかの大きな手が、せっかくのベールを取り払ってしまう。
「恥ずかしい?」
「・・・・・・・」
由加里は小刻みに震えて、その大きな瞳にうっすらと涙を浮かべている。
「あなたみたいな恥ずかしい子に、羞恥心なんて高級な感情があるわけ・・・・ないか」
「そ!そんなことありません・・・・・」
ムキになって反論する少女、いま、涙が一筋こぼれた。
「ぐ!」
照美のエルボーが、少女のお腹の一番柔らかいところにめり込んだ。あどけない顔が苦痛に歪む。
「いやらしい西宮さんに、たくさん楽しんでもらおうと思って、用意したんだよ、新宿に行ったら、楽しもうね」
こんな時に、由加里が返すべき言葉は決まっている。
「・・・あ、ありがとう・・・ございます」
照美はほくそ笑んだ。自分の思うがままに、生きている人間が動く。この世に、これほどおもしろいことがあろうか。それも、恥辱と苦痛を耐えしのびながら、死ぬ思いで命令に従っているのだ。そんな由加里を見ていると、しかし、一時的とはいえ、憎しみが溶けていくのを感じる。
――――どうして、自分はこの子をそんなに恨むのだろう。
ここまで来ても、照美は、その真実を理解できなかった。ここまで、14年間、決していじめをしたことはない。もしも、それが他のクラスの出来事であっても、率先していじめを止める珍しい女の子だった。だから、小学校時代から彼女を知る友人たちは、当初、そんな照美を見て、驚きを隠せなかったものだ。もっとも、今となっては、ありあまる嗜虐心を持て余し、由加里に対するさらなる加害をのぞんでいる有様だ。
「何、キョロキョロしてるの?新宿はすぐだって、あと1時間したら、みんながあなたの恥ずかしい姿を、見てくれるよ」
照美の言葉に、敏感に反応する。そろそろ、新宿が近くなり、乗客が増え始めたのだ、とはいえ、5時前のこの時刻は、ラッシュにほぼ遠いし、なんと言っても上がりなのだ。由加里を恥ずかしい思いにさせる客はまばらだ。それが、照美たちにはおもしろくないのだ。
「ねえ、西宮さん」
「・・・な、なんでしょうか?」
弱々しい由加里の返事に、いじめっ子たちの嗜虐心に火が付けられる。
「あのOLの前をさ、スカートを捲って歩いてくれる?」
「そ、そんなこと!」
由加里はおもわず大きな声を出してしまった。一部の乗客が、こちらに注目する。顔から火が出そうになる。
照美が指し示した先にはOLが数人、話し込んでいる。
「チラリとでいいのよ、濡れ濡れのパンツを見せてあげな」
はるかの口から、残酷な言葉が零れ出る。
「そんな!できません!」
由加里は、スカートの裾を震える手で摑みながら、吐き出すように言う。
「よく聞こえなかったな ――ねえ、照美、私耳が遠くなったのかな」
「痛い!」
はるかの長い足が、由加里の足を蹴りつけていた。苦痛に眉間に皺ができる。
「これから、やらせてもらいますって」
「そうか?どうやら、耳鼻科に行ったほうがよさそうだな」
はるかが、いやらしい笑いに顔を覆う。
「・・・・・・・ハイ・・・・・」
由加里はうなづいた。涙が幾筋も、形の良い頬に走る。上品な造作の唇が、恥辱に歪む。
―――どうして、私がこんなことしないといけないの?!助けて!
少女は、OLたちを見た。その目は、明かに救いを求めている。しかし、大人たちにそんなことは、通じない。彼等は生きることに夢中で、他のことは目に入らないのだ。それは、教師たちで証明済みのはずだ。向丘中学の教師は、みんな由加里がいじめられているのに、見て見ぬフリを決め込んでいる。
いや、彼等はいちおう、子供たちに興味があるから、その職に就いたのであろう。
それに比べて、OLたちは、見ず知らずの中学生なぞ、歯牙にもかけないはずだ。
あの中学の教師とて、目の前でいじめを見せられれば、止めに入るだろう、さすがに。
「サ、いこか!」
「レッツゴー!あははは!しっかり、西宮さん!!」
有紀がぴあのが、はしゃいだ。
「・・・・・・・」
由加里は、震える大腿に、ようやく力を入れると立ち上がった。冷房が効きすぎているというのに、汗が喉元や、腋から滲んでくる。それよりも深刻なのは、卵を埋め込まれた股間だ。少女の動きによって、微妙に蠢く卵は、少女のクリ○リスや小陰脚の襞など、性的に敏感なところを刺激しては、奥から恥ずかしい液体を分泌させる。もはや、動くだけで、ニチャニチャという音がしそうだ。それは、少女に向かって「オマエハ淫乱ダ!!」と言っているように聞こえた。
「ァ」
あまりの羞恥心のために、頭がクラクラする。
お尻の筋肉が、うまく動かない。震えが止まらない。懇願する目で、照美とはるかを見る。
しかし、いったん、サディズムに目覚めた二人が、許すはずがない。情けない由加里の顔を見せられて、かえって、油に火を注ぐだけだ。
「・・・・・・・・」
観念した由加里は、腰に力を入れてようやく立ちあがった。だが、直立にはほぼ遠い。
「ほら、背筋を伸ばして!西宮さん!」
「しゃきっとしなさいよ!!若いんだから!あははは」
可哀相な由加里は、いじめっ子たちに囃し立てられながら、OLたちに向かって歩を進めた。しかし、すぐに立ち止まってしまう。恐るべきことに気づいたのだ。ふと、由加里は視線を床に向けた。そこには、黒い点が、ポタポタといやらしい音を立てながら、できあがっていく。その恥ずかしい沁みの正体は何か?言うまでもない、由加里の股間から、零れているのだ。
しかし、背後からの圧力に負けて、さらに歩を進める。OLたちの姿は、歪み、ふらふらと左右に動く。
「・・・・・・?!」
「あら・・・・?」
さすがに、異変に気づいたのか、OLたちは目をシロクロさせる。中学生くらいの少女が歩み寄ってくるのだ。それも、何やらただごとではない様子。ふらふらしているし、千鳥足だ。具合でも悪いのだろうか?それにしてもおかしい。少女の足下を見ると、黒い沁みが、道を作っている。それは金魚の糞のように、少女の後についていく。
――――まさかお漏らし?まさかはしたない。
石毛というOLは直感的にそう思った。
少女の顔を見れば、その大きな瞳には、涙が湛えられている。その黒曜石のような瞳には、深い悲しみと、あきらめに似た憂いが湛えられている。それはぞっとさせられる美しさだった。気品すら感じられた。
そして、少女の背後を見れば、四人の少女が笑いこけている。彼女たちも、中学生くらいの歳だと思われる。
「石毛さん、アレ」
「・・・・・?」
OLたちの目の前で、彼女たちが信じる現実が崩壊しようとしている。
由加里は、幻惑される意識の中で、OLたちを目標にするしかない。その歩みが進むにつれて、四人の反応が変わっていくのが見て取れた。少女は、いじめっ子たちの無言のサインに、コクンと小さくうなづいた。
――――何をするのか?
石毛は目を見張った。少女が目を瞑るのが見えた。長い睫には、大粒の涙がいくつもみうけられた。そして、スカートを捲ったのだ。
「・・・・!!」
少女の下着は、まるでおもらしをしたように濡れそぼっていた。
「・・・!」
次ぎの瞬間、少女はたまたま開いたドアから、外に出て行った。少女の足跡に従って、いやらしい沁みが列を作っていた。それは、哀れな少女の涙の刻印だったのだろうか。
それはすぐに蒸発して跡形もなく消え去るであろう。しかし、このOLたちと四人の少女、それにあの少女の記憶には、おそらく永遠に、そう、奴隷に押される焼き印のごとく、その跡を残すのだろう。
「明大前、明大前」
極度に、感情を抑制した声が、周囲に響き渡る。それは、人間のそれとは思えないくらいに、感情が抑制されていた。
四人は、少女の後を追って、慌てて電車を降りた。
午後4時半、初夏を過ぎた太陽はまだ、空にある。凶暴な熱を予感させる太陽は、地上を睥睨し、そこに棲む人間の幸不幸を完全に支配しているように見えた。電車の中は、冷房が効いているとは言え、その光線は、強烈な熱を有している。
京王線は、新宿行きの特急に、由加里たちは乗っている。少女の場合、無理矢理に乗せられたというべきか。
がら空きの車内には、由加里たち五人の他に、ポツポツとしか客は見えない。
ちょうど、由加里の向かいの席には、腰が90度に曲がった老婆が休んでいる。
由加里を中心にして、照美とはるかが左右を占め、そして、その外側に、それぞれ、有紀とぴあのが少女を監視している。
少女はスカートの裾を、握りしめながら、歯をそっと食いしばっている。長い髪は、辛うじて、由加里の顔を隠してくれる。しかし ―――――――――。
「西宮さんの奇麗な顔を、みんなに見てもらおうよ」
はるかの大きな手が、せっかくのベールを取り払ってしまう。
「恥ずかしい?」
「・・・・・・・」
由加里は小刻みに震えて、その大きな瞳にうっすらと涙を浮かべている。
「あなたみたいな恥ずかしい子に、羞恥心なんて高級な感情があるわけ・・・・ないか」
「そ!そんなことありません・・・・・」
ムキになって反論する少女、いま、涙が一筋こぼれた。
「ぐ!」
照美のエルボーが、少女のお腹の一番柔らかいところにめり込んだ。あどけない顔が苦痛に歪む。
「いやらしい西宮さんに、たくさん楽しんでもらおうと思って、用意したんだよ、新宿に行ったら、楽しもうね」
こんな時に、由加里が返すべき言葉は決まっている。
「・・・あ、ありがとう・・・ございます」
照美はほくそ笑んだ。自分の思うがままに、生きている人間が動く。この世に、これほどおもしろいことがあろうか。それも、恥辱と苦痛を耐えしのびながら、死ぬ思いで命令に従っているのだ。そんな由加里を見ていると、しかし、一時的とはいえ、憎しみが溶けていくのを感じる。
――――どうして、自分はこの子をそんなに恨むのだろう。
ここまで来ても、照美は、その真実を理解できなかった。ここまで、14年間、決していじめをしたことはない。もしも、それが他のクラスの出来事であっても、率先していじめを止める珍しい女の子だった。だから、小学校時代から彼女を知る友人たちは、当初、そんな照美を見て、驚きを隠せなかったものだ。もっとも、今となっては、ありあまる嗜虐心を持て余し、由加里に対するさらなる加害をのぞんでいる有様だ。
「何、キョロキョロしてるの?新宿はすぐだって、あと1時間したら、みんながあなたの恥ずかしい姿を、見てくれるよ」
照美の言葉に、敏感に反応する。そろそろ、新宿が近くなり、乗客が増え始めたのだ、とはいえ、5時前のこの時刻は、ラッシュにほぼ遠いし、なんと言っても上がりなのだ。由加里を恥ずかしい思いにさせる客はまばらだ。それが、照美たちにはおもしろくないのだ。
「ねえ、西宮さん」
「・・・な、なんでしょうか?」
弱々しい由加里の返事に、いじめっ子たちの嗜虐心に火が付けられる。
「あのOLの前をさ、スカートを捲って歩いてくれる?」
「そ、そんなこと!」
由加里はおもわず大きな声を出してしまった。一部の乗客が、こちらに注目する。顔から火が出そうになる。
照美が指し示した先にはOLが数人、話し込んでいる。
「チラリとでいいのよ、濡れ濡れのパンツを見せてあげな」
はるかの口から、残酷な言葉が零れ出る。
「そんな!できません!」
由加里は、スカートの裾を震える手で摑みながら、吐き出すように言う。
「よく聞こえなかったな ――ねえ、照美、私耳が遠くなったのかな」
「痛い!」
はるかの長い足が、由加里の足を蹴りつけていた。苦痛に眉間に皺ができる。
「これから、やらせてもらいますって」
「そうか?どうやら、耳鼻科に行ったほうがよさそうだな」
はるかが、いやらしい笑いに顔を覆う。
「・・・・・・・ハイ・・・・・」
由加里はうなづいた。涙が幾筋も、形の良い頬に走る。上品な造作の唇が、恥辱に歪む。
―――どうして、私がこんなことしないといけないの?!助けて!
少女は、OLたちを見た。その目は、明かに救いを求めている。しかし、大人たちにそんなことは、通じない。彼等は生きることに夢中で、他のことは目に入らないのだ。それは、教師たちで証明済みのはずだ。向丘中学の教師は、みんな由加里がいじめられているのに、見て見ぬフリを決め込んでいる。
いや、彼等はいちおう、子供たちに興味があるから、その職に就いたのであろう。
それに比べて、OLたちは、見ず知らずの中学生なぞ、歯牙にもかけないはずだ。
あの中学の教師とて、目の前でいじめを見せられれば、止めに入るだろう、さすがに。
「サ、いこか!」
「レッツゴー!あははは!しっかり、西宮さん!!」
有紀がぴあのが、はしゃいだ。
「・・・・・・・」
由加里は、震える大腿に、ようやく力を入れると立ち上がった。冷房が効きすぎているというのに、汗が喉元や、腋から滲んでくる。それよりも深刻なのは、卵を埋め込まれた股間だ。少女の動きによって、微妙に蠢く卵は、少女のクリ○リスや小陰脚の襞など、性的に敏感なところを刺激しては、奥から恥ずかしい液体を分泌させる。もはや、動くだけで、ニチャニチャという音がしそうだ。それは、少女に向かって「オマエハ淫乱ダ!!」と言っているように聞こえた。
「ァ」
あまりの羞恥心のために、頭がクラクラする。
お尻の筋肉が、うまく動かない。震えが止まらない。懇願する目で、照美とはるかを見る。
しかし、いったん、サディズムに目覚めた二人が、許すはずがない。情けない由加里の顔を見せられて、かえって、油に火を注ぐだけだ。
「・・・・・・・・」
観念した由加里は、腰に力を入れてようやく立ちあがった。だが、直立にはほぼ遠い。
「ほら、背筋を伸ばして!西宮さん!」
「しゃきっとしなさいよ!!若いんだから!あははは」
可哀相な由加里は、いじめっ子たちに囃し立てられながら、OLたちに向かって歩を進めた。しかし、すぐに立ち止まってしまう。恐るべきことに気づいたのだ。ふと、由加里は視線を床に向けた。そこには、黒い点が、ポタポタといやらしい音を立てながら、できあがっていく。その恥ずかしい沁みの正体は何か?言うまでもない、由加里の股間から、零れているのだ。
しかし、背後からの圧力に負けて、さらに歩を進める。OLたちの姿は、歪み、ふらふらと左右に動く。
「・・・・・・?!」
「あら・・・・?」
さすがに、異変に気づいたのか、OLたちは目をシロクロさせる。中学生くらいの少女が歩み寄ってくるのだ。それも、何やらただごとではない様子。ふらふらしているし、千鳥足だ。具合でも悪いのだろうか?それにしてもおかしい。少女の足下を見ると、黒い沁みが、道を作っている。それは金魚の糞のように、少女の後についていく。
――――まさかお漏らし?まさかはしたない。
石毛というOLは直感的にそう思った。
少女の顔を見れば、その大きな瞳には、涙が湛えられている。その黒曜石のような瞳には、深い悲しみと、あきらめに似た憂いが湛えられている。それはぞっとさせられる美しさだった。気品すら感じられた。
そして、少女の背後を見れば、四人の少女が笑いこけている。彼女たちも、中学生くらいの歳だと思われる。
「石毛さん、アレ」
「・・・・・?」
OLたちの目の前で、彼女たちが信じる現実が崩壊しようとしている。
由加里は、幻惑される意識の中で、OLたちを目標にするしかない。その歩みが進むにつれて、四人の反応が変わっていくのが見て取れた。少女は、いじめっ子たちの無言のサインに、コクンと小さくうなづいた。
――――何をするのか?
石毛は目を見張った。少女が目を瞑るのが見えた。長い睫には、大粒の涙がいくつもみうけられた。そして、スカートを捲ったのだ。
「・・・・!!」
少女の下着は、まるでおもらしをしたように濡れそぼっていた。
「・・・!」
次ぎの瞬間、少女はたまたま開いたドアから、外に出て行った。少女の足跡に従って、いやらしい沁みが列を作っていた。それは、哀れな少女の涙の刻印だったのだろうか。
それはすぐに蒸発して跡形もなく消え去るであろう。しかし、このOLたちと四人の少女、それにあの少女の記憶には、おそらく永遠に、そう、奴隷に押される焼き印のごとく、その跡を残すのだろう。
「明大前、明大前」
極度に、感情を抑制した声が、周囲に響き渡る。それは、人間のそれとは思えないくらいに、感情が抑制されていた。
四人は、少女の後を追って、慌てて電車を降りた。
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