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『『兇状もちの少女、あるいは犬』 発端』

 自分はいったいどこにいるんだろう?いや、どこにいさせられているのだろう?14歳の女子中学生、青井みずなは両手を開こうとしたが、それは無駄だった。なんとなれば、彼女は手錠をかけられているからだ。それでも手首を上げることはできる。傍らにいる女性警察官に促されると少女は命令通りに動かした。いや、自動的に動いたと表現した方が適当だろう。彼女はそんなつもりはなかった。それでも手は動いて、婦警が手錠の鍵を鍵穴に入れる。
 かちゃり、という音がしたような気がした。
 彼女に促されるままに被告席に座る。そうここは東京市地方裁判所、彼女は同級生を殺害した罪で裁かれようとしている。法律に従って大人と同じ方法で裁かれることになった。すべては機械的な変遷にすぎない。そう、思い余っていじめっ子の首を絞めて、彼女が動かなくなった、自分は人を殺したのだ、その瞬間に青井みずなという少女は死んだのだ。そう思うと何もかもが楽になった。犬のように紐で引かれて入った瞬間に泣き声が彼女の耳に入ってきて、それが母親と家族のものだと同定できても、何も感じることはなかった。
 ドラマや映画では、手錠を外された被告は片方の手で片方をさすっていたが、彼女も無意識のうちにそうした動きをしていて、思わず心のなかで笑ってしまった。
 すべては現実感がない。
 そう、いじめられはじめて、その日は日記をみればはっきりとわかる。たまたま親友が発熱して休んだ日だったから、ひとりで登校すると自分の席がなかった。そして、クラスメートのひとり、彼女が殺した諏訪良子だったが、近づいてきていきなり失礼なことを言った。
「どうしてワンちゃんが入ってくるのかな?ここは人間が通う学校よ、あら、犬に人間の言葉をかけた私がばかだったかしら?」
 その時は、彼女とはあまり仲が良くなかったのでいつもの嫌味にしても度が過ぎているなど思う程度だった。美人だが、少し癖が強すぎる、きつめの顔の少女を非難する言葉は決まりきっていたが、これほどまでに非常識ではなかった。
が、しかし、教室中がどっと笑った段階で異常に気付いた。クラス中が良子を支持している。比較的、仲の良い子たちまでがわざわざ近づいてきて、彼女と同じようなことを笑いながら言った。それが5月3日。
 そして、ちょうど一か月後、彼女は良子を教室の真ん中で絞殺すことになる。
 警察の取り調べ室で殺したことは認めたが動機については何も言わなかった。
「黙秘します」
 ただ、その一言でだんまりを決めた。そのとき、彼女の頭の中で渦巻いていたのは、親友である、安彦眞子のことだった。彼女は最後まで自分の味方であろうとしてくれた。しかし、彼女はそれを拒否したのだ。もちろん、その理由はいじめが彼女に飛び火することを恐れたことにあるが、最後まで何とか救おうとしてくれた、彼女の大人っぽい美貌がいくら目を背けようとも、その時はできたが、取調室でも、そして、家庭裁判所においても、少女の視界から離れてくれなかった。
 それがこの裁判所ではさすがにあきらめたのかいなくなっている。
 ようやく自分を見捨ててくれたかと思う気分が楽になる。胸を張って兇状もちの人生を歩んでいこうではないか。友人はいっぱいいたつもりだが真実のところはかなりの嫌われ者だったらしい。このような事態になっても、いくら家庭裁判所の調査官が調べても、いじめの事実は出てこなかった。そもそも、被害者であるみずなが何も言わなかったこともあるが、クラスの誰かがいじめについて何も証言しない、そんなことはありえないと思っていた。まさか、自分からいじめられていたことを言うのだけは耐えられなかった。彼女の高い自尊心がそれを妨害したのである。
 無意識のうちに誰かが自分を弁護してくれると思っていた。
 だが、これではあまりにも惨めではないか。そもそも、学校やその関係者にまったく期待するところなどなかったが、伊豆頼子がそんなに怖いのか、彼女は良子とともにみずなをいじめていた中心グループのひとりだが、彼女を恐れてクラスの誰もが事実に口を閉ざしたらしい。
 しかし、親友である眞子はどうしたのか?
 どうしても助けると縋ってきた彼女にみずなは、彼女を助ける意味でこう言い放った。
「あんたなんて友達だなんて思ったことない、単に利用しただけよ」
 その一言を恨みに思ってのことか、彼女すら頼子の軍門に下ったようだ。もはや絶望を通り越して、自殺すら予定行為のなかに入っていない。もうどうとでもなれだ。女ならこの身体を売ってでも生きてやると、かつて映画の中で女主人公が言っていたセリフを、禿げ上がり始めた裁判官の頭を見ながら心の中で再生していた。
 
 少女が裁判所に入るととたんにざわめき声が起こった。大人たちはどんな目で自分を観ているのだろう。子供だから、週刊誌に載るのは美女ではあるまい。ならば、美少女だろうか?中学生の彼女であっても美女や美少女がマスコミによって、どのような用語として扱われるのか、それを知らないわけでもないが、少なくとも自分ならばその程度には扱われる外見をもっているという自負がある。
そんな彼女は中学のセーラー服に袖を通している。夏服は血で汚れたために冬服である。おそらく弁護士が母親に進めたのであろう。裁判官や裁判員の心証がどうとか、もうどうでもよかった。死刑にならないことは彼女の知識でもわかっていて、とても残念だった。たしかある小説で得た知識だが、裁判所で名前を訊かれて答えない場合、法律で決められた罪でもっとも重い罪で裁かれるのだ。殺人罪ならば死刑が最高刑だから、自殺するにはひとつの手段ではあろう。
良子が死んだと気づいたとき、彼女の胸に過ったのはもう、学校の制服を着ることもなく、いじめられることもないんだという安心感だった。しかし、そんな彼女の気持ちを大人たちはまったく理解しなかった。あれほど痛めつけられ唾も吐かれた制服をまた着ろというのだ、どれほど彼女がこの制服を着用することによって傷つき、まだ再び袖を通すこになれば再び傷つくことも知らない、それが大人たちなのだ。まったく信用するに当たらない。
 それでも、自分を取り調べた刑事の一人が自分と目線を合わせてこんなことを言ったことは忘れられない。
「おじさんは色んな子供の殺人容疑者を調べたが、お嬢さんが理由もなく人を殺すとは思えないんだ」
 悔しくも目線を外してしまった。それはいまでも悔しい。もう今となってしまえばそんなことは考えまい。考えてはいけないのだ。自分は決して、いじめられて、まるで窮鼠猫を噛むようなみっともない恰好で良子を殺したわけではない。最初からぜったい優位にあって惨めにも命乞いをする良子を殺した、のである。
 裁判でもそれを証言するつもりだ、快楽のためにやったと。

犬のように紐で引かれて、数歩歩いたところで、ある有名な芸人と目が合った。長髪の30がらみのその男は裁判芸人として有名で、かなりの数の事件を膨張して仕事のネタにしていることで有名だった。毎月、一回、あるテレビ番組にコメンテーターとして出演する番組は毎週欠かさず見ていたが、まさか、自分自身が彼のネタの対象になるとは、いじめられてみなけば自覚がなかった。冗談みたい彼の顔を見たら気分が楽になった。自分が犯した事件は芸人が笑いものにする程度の、世界的にみれば一国に一件、一年に起こる程度のありふれた、日常茶飯事の出来ごとにすぎないのだ。
弁護士は、まったく顔のない男である。
裁判官とちがって髪の毛があるのか、ないのか、あるいは例の芸人のようにふさふさなのか、そういう印象すらまったくない。しかし、その男が発した言葉は完全に印象的だった。少女の海馬に一時的記憶ではなく、一生消えない長期記憶として埋め込まれた。
「この裁判は無効です。なんとなれば、青井みずなと称する被告人は人間ではなく犬だからです。法律は動物を裁くことはできません」
 いったい、この人は何を言っているのだろうか?ふと、あの日、5月3日に良子に言われた言葉が蘇った。しかも、驚いたことに検察、裁判員、それだけでなく裁判長までもが弁護士の主張を認めたのである。
「どうして、犬がここにいるのか、警察官、はやく連れて行きなさい!」
「わ、わたしは人間よ!ふつうの女の子よぉ!!」
 今度は手錠ではなく犬の首輪をはめられて、乱暴に引かれた。信頼していないはずの母親の一般名称まで叫んで救いを求めた、自分はあくまでも人間であって、犬ではないと。
 それは教室で毎日のようにいじめられた一カ月、無言のうちにみんなに叫んでいたことだった。だが、今度こそは実際に言葉にする。
 裁判所にいる大人たちの反応は冷たいものだった。母親はいつのまにかいなくなっていた。芸人は目を丸くして、いつのまにか人間の被告が犬になってしまった、というような顔をしている。
「助けて!!」
 彼女が最後に叫んだのは、親友、眞子の名前だった。あのとき、あれは大雨の降る校庭でのことだった。剣道部だった少女は防具をつけたままで降りしきる雨に打たれることを、良子から命じられたのだ。
 眞子は走り寄ってきてすぐに中に入るように促したが、みずなは拒否した。あのときほど悲しそうな幼馴染の顔をみたことがない。まるでどちらがいじめられっ子なのかわからないほどだった。
 ああ、あの時首肯していればよかった。彼女は認めたくなかったのだ、自分がいじめられていること、そういう人からの助けを必要としている惨めな身分にあることを!
 しかし、すべては遅い。
 何を叫んでも、誰も彼女の言葉に耳を貸す人間は、大人も子供もふくめて誰もいない。そうあのけがらわしい週刊誌すら記事にしないだろう。自分は犬なのだ。人権はおろか、人を殺しても裁かれる権利すらない、そこいらでさまよっている薄汚い雌犬にすぎないのだ。良子がそう言っていたっけ、その一言が彼女を絞殺す動悸になった。
 なぜか、あの時、自分を唯一人間として認めてくれた刑事さんの顔が浮かぶ。おそらく、数々の犯罪者を締め上げてきたのだろう、何処か極道にも通じる人に思えたが、あの時、自分を認めてくれる一言を発したとき、仏の慈悲に近いものを少女は感じたはずなのだ。
 しかし、今となっては遅い。すべては無に帰した。

テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

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