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『由加里 45』
 赤い車から、颯爽と出てきた婦人。女性にしては、相当の長身だ。躰を少し折らないと、車から出られなかった。
 年齢は、30を幾つも超えていないように見える。シックな感じの黒い服とタイツからは、大人の女性の官能が、そこはかとなく漂ってくる。肌の張りは、ほとんど失われていない。しかし、目や躰ぜんたいから発せられるエネルギーは、20代の小娘のそれではない。
 海崎百合絵、照美の母親である。
顔面は蒼白で、目は確と前方を睨みつけている。
「海崎先生!」
 助手席からは、頭髪を赤く染めた男性が出てきた。まだ若い。女性に、何やら言葉をかけている。
この人物は、百合絵になじみのレコード会社が、今、売り出そうとしている歌手である。作曲、作詞を百合絵が担当することになったのだが、仕事において、常に人物重視である百合絵は、彼を伴って昼食――――と息込んだ最中に、事故は起こったのである。

「・・・・・・・・!!」
 女性は携帯を取り出すと、口に押し当てた。おそらく、相手は救急と警察なのだろう。
そして、ほぼ、同時に自分がはねた少女に駆け寄る。
 その間、何者かが、彼女に声をかけたが、耳に入らなかった。
 「大丈夫!?あなた?すぐに救急車が来る、しっかりしろ ―――――え?あなた!?由加里?!」

 百合絵は、少女に縋りつくと、大声で叫んだ。上品な作りの鼻に皺ができる。表情筋が収縮しているのだろう。声の感じから、娘を案ずる母親の声だと推察できた。騒ぎを聞きつけた大石と鈴木加世子が顔を強ばらせたところである。
「西宮さん!」
 大石は、加世子に先立って、ふたりに駆け寄った。一応、教師としての義務に従っているのだろうか。内心は、この少女をあまり、好いていないのだ。
女性は、若い男性に、何やら励まされながら、少女の名前を連呼し続ける。
「由加里ィ!由加里!由加里!」
「・・・・・・・・・・・!!」
 「・・・・・・・・・・・ママ!!」

 二人の少女らしい声が、背後からすがり付いてきたが、やはり、百合絵の耳には入らなかった。
 連絡して、五分と絶たないうちに、二種類のサイレンが聞こえた。言うまでもなく、救急車とパトカーである。
「救急です、意識はありますか?」
 眼鏡をかけた救急救命士は、30歳を少しばかり超えたぐらいかと思われた。ひげを剃ったばかりの青いあごが、なぜか百合絵の海馬に焼き付けられた。
「私の娘を!!頼む!」
「あなた、お母さんですか?」
 別の救急救命士が、駆け寄ってくる。
「ウウ・・・ウ・・ウ・・ウ!」
「ゆ、由加里!!」
 そのとき、婦人の肩に触れた者がある。照美とはるかだった。
「ママ!」
「百合絵ママ!」
「照美!はるか!どうして、お前達がここに?」
「それは、私の台詞よ!ママ!由加里が娘ってどういうこと!?」
「照美!」
 所構わず泣き叫ぶ美少女に、普段の冷静さは微塵も見受けられない。
「・・・・・・・・はるか、照美を頼む」
「・・・・・はい、照美、落ち着け!」

 その高い身長を利用して、照美を押さえつける。しかし、百合絵の背中に、非難の視線を投げつけることを忘れなかった。
――――百合絵ママ!何を考えているの!? 誰のせいで、こうなったと思うの!?

 いつの間にか園児たちが、集まってきた。
「はーい、みなさん、幼稚園の中に戻りましょうね」
「おともだちがいない姉さん、跳ねられちゃったの?」
「キット、死んじゃったんだ!」
「バカなこと言わないの!」

「ママぁ!!」
 少しだけ、落ち着いて、辺りを見回してみた。しかし、百合絵を見つけることはできなかった。
「はるか、ママは!?」
「きっと、警察に行ったんだろう?現場検証は済んだみたいだから、由加里の病院に行ったのかも」
「その名前! 聞きたくない! 私の前であんな女の名前を出さないで!」
 美少女の頭の中で、色んな感情が違いを食い合っている。百合絵に対する子としての情、由加里に対する、全く理解できない愛憎、はるかに対する友情、そして――――。


 傍にいる若い男は、いや、少年と言ったほうがいいだろか? 
目の前に起こった出来事に、唖然としている。その重大性を受け止めかねているのだ。さきほど、百合絵を「海崎先生」と呼んだ少年である。
 赤く染めた髪を、どうしたらいいのか、考えあぐねている。そう、もしも、葬式の現場に赤い服で訪れたらどんな気分になるだろうか?想像してみるがいい。おそらく気持ちよくはあるまい。きっと、居づらい気分になるだろう。少年はそんな感じなのだ。この場にあって、中学の関係者もでないし、よもや、幼稚園と関連がある人間でもない。突如、闖入した百合絵の関係者ということでしかない。しかも、その年の差から、愛人とツバメの関係というよからぬ噂を立てられていた。

 一方、そんな少年と関係なく、事態は進んでいる。
警官、救急救命士、女性、大石、ちなみに、彼女は救急車に同乗して、病院に向かっている。
 照美は、今まで体験したことのない感情の爆発に、自ら対応できずに苦慮していた。
ぶっちゃけた話し、クラスメート、幼稚園児、大石に、鈴木加世子。照美は、それらを人間として見ていなかった。ここにいる唯一の人間は、はるかだけだ。

「照美!」
 はるかは、照美を幼稚園から連れ出すことを思い立った。ここに存在するすべてのファクターが親友にとっていいものだとは思わなかった。まるで、棒のようになった親友をどうにか、外に連れ出す。
「とにかく、家に帰ろう」
そこにこそ、照美がいるべき場所だと、はるかは思った。

「照美、入ろう――――――――――」
 ほぼ家族同然のはるかは、カギのありかを知っている。玄関の脇にある小さなもの置き場の小箱にあるのだ。
「どうした、照美、どうして入らない?!」
「わ、私、この家の子じゃない!!」
 照美は、急に感情を爆発させた。
「何を言ってるんだ!はやく入れ!」
 無理やりに、照美を中に押し込む。はるかは、改めて、親友の顔を見た。顔面蒼白とはこのためにあるような言葉だと、改めて思った。この暑いのに、握った手は凍りついたように冷たい。居間に連れて行くと、どうにか座らせる。
「私、ママの子じゃない!?」
「何を言ってるんだ!?ばかなことを!」
 はるかは、自分で言っていて、その発言に説得力がないことをわかっていた。なぜならば、彼女自身、すべての事実を知っているからだ。

 照美は、身の毛もよだつ事実を受け入れられずにいた。

 まるで相似形のように、酷似している母親と由加里。今の今まで、それに気づかなかったのだろうか?いや気づかないふりをしていたのだ。自分がどうして、由加里を憎んでいたのか。その理由を知っていながら、知らぬフリをしていたのだ。あまりに恐ろしすぎるその結論にたどり着かないために。しかし、実際には、その結論はあまりに空想的すぎた。もしかたしたら、他人の空似かもしれない。だから、はるかに追求されたとき、惚けておいた。

「どうして?」
「て、照美?」
 はるかは、長身を奮わせて、親友の言葉に慄いた。
「いいから、落ち着け!」
「だって、そうでしょう?由加里がママの子なら、私はどうなるのよ!たしかにママは言ったのよ、私の子って!!」
「そうなら、由加里と私は双子って言うことになるわ!そんなことってありえる?!ありえないでしょう!?」
「私は一体、どうなるの!?」
 照美は、はるかに対して叫んでいるのではなかった。また、百合恵に対してでもない。それは透明な運命とでも言うものに対して、抗議していた。自分の立っている場所が崩落していく。一体、自分は何者なのか!?この疑問は、はたして、いま、突然起こったものなのだろうか。いや、そうではない。
 照美は、両手を机にたたきつけると、乾いたタオルから水を搾り出すように、泣き伏した。思わず駆け寄るはるか。
「照美!」
「離して!裏切り者!」
「照美?!」
「あ、あんた、ママが言ってたこと、聞いても驚いてなかったわね?なんで?」
「そ、そんなことない!」
「このうそつき!何でも打ち明けてくれる仲だと思ったのに!?家族だと思っていたのに!?裏切り者!」
 すべてを見抜かれていると知って、はるかは、唖然としたが、反面、当然だとも思った。姉妹同然に育った二人だ、いや、それ以上かもしれない。

「ふざけるな!! だったら、どうしろと!? お前は、百合絵ママの子じゃないって言えばよかったのか!?」
 たまたま、手に触れたCDを投げつけた。バシリと割れる音は、何をもたらしたのだろう。二人の間に、壊れるものがあったのだろうか?
「わ、私、ママの子じゃ・・・・・ないの?!」
その顔は、すべての未来を奪われたかのように、光を失っていた。まるで、これから処刑されるかのようだ。
「て、照美・・・・!?」
 内心、しまったと思った。まさに語るに落ちたのだ。
「ァア・・・ア・・ア・・ア・・あ!ママ!」
 まるで、主柱を失ったガラス細工のように、崩れ落ちる照美。はるかは、なにもできずに立ち尽くす自分を恨んだ。やるせない気持が股間から心臓を通って、脳に到った。

テーマ:萌え - ジャンル:アダルト

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