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主人公はu15の少女たち。 主な内容はいじめ文学。このサイトはアダルトコンテンツを含みます。18歳以下はただちに退去してください。
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『由加里5』

 
 5月も半ばをすぎると、由加里へのいじめは、ただ無視されるだけではすまなくなっていた。公然と物が隠されることは、当たり前。あるいは、悪口が教室の掲示板に貼られることなどが、頻繁に起こった。ただし、由加里は、それが書かれている場面を見たことがない。
 
あるクラスメートなどは、「ひどいよね、だれがこんなことを書くのかなあ」
などと、空々しく言うのである。誰が書いたのか明らかにもかかわらず。そんな時、教室中がスモークされた笑いに包まれる。由加里は、その真ん中で、どうしていいのかわからず、ただ泣きそうな顔で俯くだけだ。
 そんな辛い学校から帰宅すると、由加里に困ったことが起こっていた。

「あれ、ママ、私の下着ないの!?」
タンスを開けた由加里は思わずつぶやいた。それは、たまたま側にいた母親に聞かれた。
「ごめんね、まだ乾いてないのよ。困ったわねえ」
春子は途方にくれた顔をした。
 「これじゃ、学校行けないよ、あした休む」
それは、母親にとって予想外の言葉だった。
あんなに学校が大好きな子がどうしたのだろう?春子は不思議に思った。

「何言っているのよ、そうだ、郁子から借りればいいじゃない」
「小さすぎるわよ」
「冴子のはどう?何枚か残っているかもね」
「・・・・・・・」
西宮家の長女である。東京の国立大学に通っている。別に自宅から通えない距離ではないが、一人暮らしをしている。
「探してみよう」
「あ、勝ってにはいったら怒られるわよ」
「いいの、親だもん」
春子は、ドアに貼ってある看板を無視して、中に入った。ちなみに、そこには赤い文字で『勝手に入るな、ドロボウ!』と書いてあった。

 しばらくして、春子はとんでもないものを持ってきた。
「え!何コレ?やらしい」
それは、まるでSMショーで使われるような下着だった。
「冴子お姉ちゃん、こんなのしてたの」
「私、こんなのいや、あした、休むからね」
「だめよ、冴子には後でメールしておくから」
「・・・・・・・」
ここで、どうして、春子の下着という発想が浮かばなかったのは、謎であるが、親子関係とはそのようなものであろう。
このような顛末があって、由加里は姉の下着を着ることになった。それは、ボンデージファッションとでもいうべき下着だった。真っ黒な下着は、かなり露出度が高いものだった。その上、ところどころに付けられているフリルは、かえって、性的なイメージを増幅するように思えた。
---――こんなものをつけていて、もしもみんなに見つかったら・・・・・。もちろん、下着で教室をうろつくわけではなかったが、学校における、彼女が置かれている立ち位置を考えた。そうすると、空恐ろしい結果を思い浮かんだ。

明日への問題はそれだけではない。香奈見から手紙が来ていたのである、鞄を開けると入っていた。中2になってそんなことは、はじめてことだ。喜び勇んで手紙を開けると、そこには、不可思議なことが書いてあった。
   
           急告
 
 明日、多賀の授業をボイコットすることになりました。
体育の授業の後、体育館の裏に集まりましょう。

---――とそれだけである。無味乾燥な記事。これが親友からの手紙は思えない。がっかりして、鞄をベッドの上に投げ捨てて、うなだれた。

しかし、すぐに立ち上がった。問題は単純でないことがわかったのである。これはどういうことだろう。本当なのだろうか?由加里をはめるためのワナでないのか。このことを奇貨にしてさらにいじめをエスカレートさせるつもりではないのか。
 
自分の知らないところで、ヒソヒソ話をしているクラスメートのイメージが消えたり現れたりした。最近では、そのなかに香奈見の姿までが、現れはじめたのだ。
「もう、いや、こんなこと考えたくない!!」
勉強は好きで、いくらでも思考が進むのだが、こういうことになると、中途してしまう。元々純情な由加里がこういうワナに気づいたことだけでも成長したと言えるのだ。

「それで、もしかして、嘘じゃなかったら・・・・そうだ!みんなに付いていけばいいんだ。どうして、こんな単純なことに気づかなかったんだろう・・でも」
そこまで、考えて由加里はまた思考停止してしまった。
「授業をボイコットするなんて・・・・・」
それは、彼女の価値観から完全に外れることだった。しかし、みんなに言うとおりにしなければ、陰湿ないじめが待っているだけだ。しかも、それはこれからどれほどエスカレートするかわからない。

 ひどいいじめの実態は、ネットを通じて情報を得ていた。嫌な情報は常に目に付くものである。由加里は、ネットの世界で、たくさんの同胞を得ていた。それはとてもいやな同胞ではあるが。そして、同じいじめられっ子同士の付き合いもあった。メールで、お互いの傷をなめ合っていた。最近では、それがいやになって、ネットを開いていないが・・。
いい加減、自分が惨めになってくるのだ。ネットの信用性にも問題はある。はたして、この子は本当のことを言っているのだろうか?そもそも、この子は実在するのか。
そう思うと、ネットがとてもいやで、信頼できないものに思えてきたのだ。

「もう学校行くのやめようか」
それは客観的に言えば、もっとも有効な手段であるはずだった。しかし、この決定には
欠点がある。それは由加里がいじめられていることが、家族にばれてしまうのである。この世でもっとも信頼しているはずの存在ながら、それを打ち明けることができない。少女はこのいばらの矛盾の中で、傷つき、身体を引き裂かれていた。

「うぅあ・・・ぁ」
そんな時、することがある。サラリーマンが仕事に嫌気がさしたとき、何をするだろうか?アルコールで意識を混濁させることを選ぶだろう。もちろん、13歳である彼女が酒を飲むわけにはいかない。
少女は、その方法を独自に見つけていた。
「ぁ・・・あ」
くぐもった声が響く。
少女の指は、もうひとつの自分を探り当てていた。捕まえたのは、ひとつのいちご。そして、それを崩していく。すると、胎内(なか)から果汁が零れてくる。それは、哀しみの汁。
「ぐ・・・ぅ・・ああ」
誰からも相手にされない淋しさをごまかすためにする行為。皮肉なことに、それがかえって孤独感を誘発する。
「わ・・たしって、こんなにいやらしいんだ・・きっと、ぁ・・・・とても臭い」
指は、膣の奥まで入り込んでいく。
「ぁ・・・あ」
いやな記憶を忘れるためにする行為なのに、それをすることによって、余計に増幅されていく。

「ねえ、ここに居なくていいヤツっていない?」
「居なくて良いどころか、すぐにでも消えて欲しいよ」
「そうよね、ずうずうしいヤツがいるよ、図太いっていうかサ」
 
少女たちは口々に陰口をたたく。それは由加里にわざと聞こえるように言うのだから、すでに、陰口で無くなっている。その声は記憶の中で、完璧に再生される。いや、不快な記憶と同居しているぶん、それはより残酷な現実となって由加里に迫ってくる。

「いやだ。この変態、オナニーはじめたよ、こんなところで!!」
「きもい!いやだ!こいつ、よくやるわ!」「・・・・・!!」
突如として、悪夢のシャボンが割れた。中からは、哀しみの涙がこぼれる。
「あ・・・こんなに・・・」
由加里は引き抜いた右手を見た。粘液が糸を引いている。それは、とても汚らわしい物に思えた。
「・・ま、まさか・・・・そんなことにはならないよね!!」
由加里は自分に言い聞かせるように言った。
かつてネットの書き込みで、教室でオナニーをさせられるいじめられっ子のことが書かれていた。
「こんなのウソよ!ひどい人がいる。こんなのを書きこむなんて!なんて無神経なんだろう」と怒ったものだが、いま、由加里を襲っている予感は、それを現実にするものだった。

「ウソよね・・・」

 その独語には、まったく説得力がなかった・・・・・・・・・・。



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『由加里4』
『由加里4』
 新学期も五月を迎え、新緑が唄う声が教室にまで、聞こえてきそうな空気になった。しかし、由加里には、初夏はおろか春さえ来ない。完全にひとりにされてしまった。それだけでなく、陰湿な陰口が、彼女にわざと聞こえるようになされはじめたのである。それをいじめだと由加里は信じなかった。いや、思いたくなかった。

いま、由加里のクラスは英語の授業の最中だが、それは、中止されている。なぜならば、一人の生徒が宿題をやってこなかったからだ。それは、すべての教師に受けがいいはずの由加里だった。
彼女は、授業中に一人で立たされている。しかし、教師は、それほど怒ってはいない。
「どうした?西宮が忘れたのか?」
「す、すいません」
由加里は、腰を30度に曲げて、教師に謝った。多賀春昭は、すこぶる生徒たちに評判が悪い。平気で生徒を怒鳴るからである。時には今時、生徒を殴るという話しも聞く。ついこの前も、ある女子生徒が宿題を忘れて怒鳴られた。しかも、それだけでなく口汚い言葉で罵るのである。それはとても、教師が口にする言葉とは思えない代物だった。生徒は当然、涙を流したが、この40がらみの教師はいっさい意に介さなかった。

 当然、このときも由加里は怒鳴られるものとみんな思っていた。いや、それを愉しみにしていた。あの由加里が公然と辱められるのである。それを喜ばないクラスメートは、たぶん、もういない。
「仕方ないな、気を付けろよ」
「・・・・・はい」
由加里は、消え入りそうな声で答えた。そうとう恐縮しているらしく、声はほとんど教室に響かなかった。しかし、悪意のクラスメートたちは、それをそのまま受け取らなかった。ただ、いい気になっていると受け取ったのだ。
「何よ、あれ!ひどいと思わない?」
かつて、多賀に怒鳴られた生徒が言った。隣の友人にひそひそ話をしただけだ。とうてい、表だって、自分の意思を表明する勇気なぞいるわけはない。

「あの顔、自分がエライって思ってるよ、あの顔、むかつくよね」
「ちょっと、あとでシメない?前から、ずっと許せないんだよね」
そのような陰口は、由加里にわざと聞こえるように為されている。その一言、一言にビクビクと身を震わせるのだった。
「おい、そこ何を話している?!なんだオマエ。この前宿題を忘れた高田だな」
「ヒ!」
多賀のめざとい目は、自分の授業における無駄口を許しはしなかった。
「おい!オマエ!」
「ヒ!」

 今度は陰口をたたいたほうが怯える番だった。由加里は、そちらの方を伺う勇気すらなく、ただ、震えていた。はやく授業がおわって、学校が終わればいい。そうすれば、安心な家に帰ることができる。

「何してんだよ!オレの授業中にどういうつもりだ!」
「ヒ!ィ!」
持っていた教科書を、おもいっきり、高田の机に投げつけたのである。神聖なる教科書をこのような扱いをするだけで、教師の資格は、たぶん、ない。このとき、高田の敵は、多賀ひとりにすぎなかったが、由加里に取ってみれば、クラスメート全員がすべて敵なのである。その報復を想像してみるといい。
 
 少女はできることなら、このまま立ち上がって家に帰ってしまいたくなった。宿題を忘れたことは、彼女の責任だったが、それを責められなかった責任はないし、高田が無駄口を叩いた責任は、なおさら、ない。しかし、その全ての席を授業の後に受けようとしているのだ。怯えない方がおかしい。
 
 もしかしたら、暴力を受けるかもしれない。まだ、表だって殴られたことは、なかったが、それが現実になる日は近いと思われた。それほど、クラスメートの彼女に対する悪意は広がっているのだ。
逃げ出したい思いを必死に押さえるしかなかった。

 このとき、由加里を憎んでいるはずの海崎照美はいっさい、いじめに参加していない。陰口も叩かないし、持ち物を隠したりしたこともない。それは、鋳崎はるかにとって疑問だったが、少し考えてみれば当然のことだった。自分の親友がそんなチンケなことをするはずはなかった。
(杞憂にすぎなかったか)
はるかは、親友の端正な横顔を見た。彼女同様、教室で起こっていることにいっさい関知していない。
その時乾いた音がした。
ビシ!
「あ!」
その後、鳥が啼くような声がした。教室は、完全なる沈黙に支配された。それは、由加里にとってみれば、とうてい耐えられない沈黙である。
その後、残されたものは女子生徒の、ただならぬ泣き声とクラスメートが、彼女を庇う声、声。それに、悠然と教卓に戻った加賀である。
起立と礼が済んで、加賀が、何事もなかったかのように、教室を後にした後のことだ。


その後は、由加里が肩すかしするほど、何も起こらなかった。もっとも、誰も彼女に声をかけるものはなかったが、その日は、無事に帰宅することができたのである。
 
 その後、起こるべくして起こった地獄は、このとき彼女の想像外にあった。
『由加里日記 4月3日』
今日も、誰も口を聞いてくれなかった。
学校って、こんなに冷たいばしょだったけ?香奈見もだなんて、ひどいよ。
家に帰るときに、話しかけたら、また無視されちゃった。                  ともだち

 そんなに、私、ひどいことしたのかな? ともだち  ともだち  ともだち


もう、いや、何も考えたくない。だから、何もかも忘れたくって、またしちゃった。恥ずかしいコト。
 小学校の時に、香奈見だけに、そっと言ったことがあるアレ。
電気消して、ベッドに入ったら、自然に涙が出てきちゃった。
    
    友達ほしいよ         ともだち              ともだち        ともだち

そんなの忘れたくって、気が付いたら、あそこ触ってた。まるでお漏らししたみたいになってた。
触ったら、全身に電気が走った。とても気持ちいい。しちゃいけないってわかってるのに。

  みんな、どうして、私とお弁当食べてくれないの?         ともだち   ともだち

 消えて!そんな思い。恥ずかしい悔しい!そう思ったら、中にまで入っちゃった。隣に妹が寝ているから声を出さないようにするのが、大変だった。その日は、おもらしがひどかったから。
きっと、由加里はいやらしい子なんだね。だから、友達ダレもいなくなっちゃった。

 あんたなんて、こんな変態なのよ!きもい!
そんな風に罵られちゃう。
 そう思ったら、太ももまで濡れちゃった。あとでシャワー浴びなきゃ。

きっと、みんな今頃気持ちよく寝てるんだろうな、明日友達とどうやって楽しくすごそうかって
でも由加里は違う。由加里は友達なんてひとりもいない。こんなにしちゃうやらしい子に友達なんて
できるわけない。
 きっと、いま、由加里、とても臭いんだろうな
ママが見たらどう思うだろうな?                               ともだち
「あんたなんて、娘じゃない」
なんて言われそう           そんなことになったら、生きていけない

 気が付いたら、午前0時を過ぎちゃった やめなきゃ 

  こんなこと

  香奈見ちゃん    きっと 元に戻ってくれるよね

だから やめる こんな はずかしい コト  
                                             ともだち
 ともだち
 ママも、ごめんね 絶対やめるから、ママでいてね                       ともだち

友達ほしい 友達ほしい 友達ほしい                 ともだち

 大好きなpurple acid 香奈見がファンでも許してくれますよね
こんな香奈見でも、CD買ってもいいですよね
 leonさん、ファンでもいいですか?
由加里、こんなやらしい子でも・・・。
                                              ともだち



エロエロ親父



『由加里3』

 西宮由加里という少女の中で、どれほど精神的なフラストレーションがあろうとも、新学期は粛々と進んでいく。それは、ある一個人が筆舌に尽くしがたいほど、不幸であっても、カレンダーはめくられるのと同じだ。あなたが大学受験に落ちた日であっても、カレンダーはめくられたであろう。
さて、新学期も5日を過ぎた。由加里は、みんなが仲よくなっていく中でひとり孤立を強いられていた。
それでは、幼なじみである工藤香奈見はどうしたのか?彼女は違うクラスに所属してしまったのだろうか?

  いや、違う、同じクラスである。そのことを知った由加里は、ひどく喜んだ、いや、喜んだというよりは、安心したと言ったほうが適当であろう。ひときわ人見知りをしない彼女について行けば、みんなと上手くやっていけるだろう。
もっとも、始業式に行った彼女の行動からすれば、彼女を「人見知りをする女の子」とは言い切れないかもしれない。しかし、あの時は、窮鼠、猫を噛むというが、まさに鼠の心持ちだったのである。それほど、海崎照美という少女に恐怖を感じたのである。

 ただし、このとき、照美がいじめを画策していたというのは嘘である。そして、クラスメートたちも同じだ。みんな、自分のことだけで精一杯だったのである。新しい生活、新しい人間関係、それを構築するのに、弱者を助ける余裕はなかった。誰も彼女をいじめようとしていたわけではないのである。もしも、後日、常人の想像を超える由加里への「いじめ」の映像を見せたら、誰しも、彼女に同情し、自己嫌悪に至っていたにちがいない。それは、照美に至っても同じことだろう。いくらネット社会に汚染されているとはいえ、ごくふつうの中学生の子供たちにすぎないのだ。
 
 「ねえ、ねえ、わ、わたしも一緒にお昼してもいい?」
 その日、由加里は乏しい勇気を絞った。
由加里は、しかし、本人すら気づいていなかったが、重症の淋しがり屋だった。家庭においても、学校においても、それまでがあまりに幸せすぎたために、それに気づかなかっただけである。「本当に大切なものは失ってはじめてわかる」とはこのことだろう。

 この五日間、由加里はひとりで弁当を広げていた。香奈見は、もしかしたら、彼女だけは意識的に由加里を避けていたのかもしれない。由加里の必死のアピールをお無視しつづけてきた。だから、思い切って、他のグループに声をかけてみたのである。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
 少女たちは、お互いを見合った。そして、由加里を見る。相当におどおどしている。このとき、少女たちは無意識のうちにおもしろがっていることに気づかなかった。だから、次ぎのようなひどい言葉が言えたのである。
「西宮さんだったわよねえ」
「ゆか、由加里って呼んで」
由加里はけなげにも必死に自分をアピールした。しかし・・・・・・・・・。
「ねえ、西宮さん?何か特別なことがあったの?」
「え?」

 一瞬、少女はその意味を理解できなかった。
---――もしかしたら、はじめてのことだからカナ。だったら、はじめてカモ。彼女はそう安易に考えてしまった。
「と、特別なこと?」
「そう?だったら、地震か火事でも起きたのかな」
「え?」
「それとも津波?」
「おい、翔子ちゃん、ここ何処だと思っているのよ、ここまでくる津波だったら相当だな」
 
  由加里はクラスメートたちが何を言っているのか理解できなかった。いや、理性においては理解していたのである。ただし、感情においてはそうではなかった。
「・・・・・・」
「ねえ、聞いているのよ、何かあったノ?」「ううん?ただ、い、一緒に、お弁当、た、食べようって」
 由加里は頭を振る。しかし、残された勇気を絞りきって最後まで言い切った。
「よかった、翔子、はやく食べようよ、もう十分も経っちゃった」
「そうだね、有紀ったらオナカ空いちゃった」
 少女たちは、由加里を無視して箸を動かしはじめる。
「ねえねえ、多賀のことどう思う?」
「アイツ、暴力教師よね、ただの」
「ぁ・・・・・・・」
 由加里はただ、立ち尽くしていた。端正な顔が震えていた。それを隠そうとして、さらに震えた。これまで、こんな目にあったことはなかった。誰もが、由加里を「友達」と呼びたがった。家庭においても、三人姉妹の真ん中という位置ながら、上には可愛がられ、下からは慕われた。大抵の次女や次男は複雑な位置に甘んじているのにもかかわらずである。両親から、当然のように愛された。
 
  冷たくされることに免疫が無い由加里は、ただ、呆然とするしかなかったのだ。しかし、涙を人に見せるのは耐えられなかった。
「・・・あ、ご、ごめんなさい」
どうして、謝らなくてならないのか、理解できなかったが、区切りという意味でそう言った。そして、脱兎のごとく廊下へと逃げ出した。廊下に右足が達するときには、涙が床に零れた。
「何か特別なことがあったの?」
その言葉は残酷にも、少女の頭の中でハウリングすると、拡大再生産されていった。それはあふれるばかりの涙を作る。
それから、学校での居場所が完全に無くなって、トイレの個室が昼食のばしょになるのは、そんなに未来のことでは、ない。

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『由加里2』
『由加里 2』

始業式は退屈なだけだった。まるで、安っぽい何処かのサイトからコピペしたような教師。いや、生徒たちにとって、教師ですらない。なぜならば、この定年間近の校長が、どんな教科を担当していたのか知るものは、誰もいないからである。それは彼の部下である教師たちに至っても、同じだった。それは、西宮由加里も同じだったが、一応表向きはまじめに聞いているふりをした。
いや、このまじめな生徒は、ある程度、真摯な気持をこの校長に対して持っていたのかもしれない。
 
--――――なんだか気に入らないな!この子。

由加里のすぐ後ろにいる長い髪の少女はそう思っていた。
美少女!海崎照美は、そう言っていい少女である。いや、類まれな美少女と言っていい。彼女に比較したら、由加里なぞはふつうの女の子にすぎない。いや、それは言い過ぎだろうか。
それはたぶん内面に帰するところが大きいのだろう。由加里、照美の内面から発する内的な意思の問題である。

--―――――何かしら、後ろから何かちりちりしてくる。

一方、由加里の方でも、照美を意識していた。まだ、両者とも名前以外、何も知らない。出身小学校が違うことくらいは知っていたであろう。しかし、始業式に先だって、教室での自己紹介でも挨拶のひとつも交わさなかったのである。ただ、由加里の第一印象は(なんて奇麗な人なんだろう)一方、照美の方は(何だろう?いけ好かない子!)だった。

---―――――海崎照美さんだったわよね。私、何か悪いこと言ったかしら?そうだ挨拶していなかったのが気に入らなかったのカナ。後で挨拶しておこう。
 この時点においては、照美はあれほど悪鬼になるとは思っていなかったにちがいない。しかし、それを密かに予見していた少女がいる。鋳崎(いんざき)はるか、彼女は同じ小学校出身で親友である。
 ---――――似ている。あの人に、照美は気づいているのだろうか?
おそるおそる親友の整った顔を見下ろす。はるかは身長が高かった。中2の女子の平均身長が159センチの中で、彼女は170センチに達しているのである。一方、照美は167センチだから平均よりもかなり高いが、それでもはるかには叶わない。
 
 「・・・・・・・短い話しでしたが、ご静聴ありがとうございます」
コピペ校長のくだらない話しは1時間30分をすぎて、やっと終わった。生徒も、いや、教師たちでさえうんざりしていた。もっとも、教師たちは教師たちで大変だった。その気持をストレートに出すわけにはいかないからである。 「何が短い話しだ!ご静聴だ!?みんなてめえの話しにうんざりしてんだよ!感受性ねえな、そんなみんなの気持もわからんか!それでよく教師が務まる」
これはある教師の心の中でおこなれた悪態である。

 一方、生徒たちの場所では奇妙な会見が行われていた。
「わ、私、西宮由加里って、言うんだ、こ、これからよろしくね」
「私、海崎照美、よろしくね」
校長の話が終わったとたんに、もうスピードで回れ右をした由加里は、勇気を絞って照美に自己紹介をしたのである。それは突然だったので、周りも照美も驚いた。しかし、照美はそれを内面に押しこめて、顔に笑いの仮面を貼り付けた。

 「・・・!?」
それに気づいたのは、鋳崎はるかと由加里だけだった。由加里は、握手したとたんに、その手の異常な冷たさに気づかされたのである。
「よろしくね」
「あ・・はい・・」
由加里はまるで目上の人間を遇するようなおどおどした視線を向けた。このときに、服従、被服従の関係は出来ていたのである。しかし、はるかにとってみても、それは無意識の領域に属するものだった。ただし、はるかだけはそれを意識的に予見していたかもしれない。
--―――まずい、まずいな・・・。
はるかは密かにそう思っていた。
彼女はしかし、こうも思っていた。
--―――わたしは、あんたがどうなっても味方だからね・・・




フェチ外来








『由加里1』
 
 少女は、闇の中にいる。それは、彼女の内面をも表していた。闇とは意識無意識のうちの無意識を意味する。一言で言えば、ぼっとしていたということだ。だから、ドアがおもむろに開いたことにも気づかなかった。

 「由加里?もう寝たの?あれ起きてるんじゃないの」
「・・・・あ、ママ」
由加里と呼ばれた少女は、返答に窮した。

「明日から中2でしょう?いい加減大人にならないとね」
「まったく、ママは心配性なんだから」

由加里はすっとんきょうな声をあげた。内面の動揺を隠しきれなかった。

「心配性って大人ぽい言い方するのね」
「あら、矛盾してるじゃん。由加里に大人になって欲しいんでしょう?」
「大人は、自分のことを名前で呼んだりしないわよ」

 由加里がもっと小さいころは、そのことでもっと厳しく躾たものだ。最近では、あきらめているのか。無言で承認している。

「明日の用意、ちゃんとするのよ。おやすみ」
「まだ、9時じゃない!寝ないわよ、子供扱いして!!」
由加里は演技で怒ってみた。しかし、どこか迫力がなかった。それに母親は気づかない。
そのことに、不満でもあったし、その反面安心もした。

「どうして、こんなに不安なんだろう?」
由加里は自問自問いせざるをえなかった。
「まあ、いいや、香奈見ちゃんにメールして寝よう」
いまどき小学生ですら寝ない宵の刻に、少女は寝床に入った。

翌朝、由加里は、よく眠れないままに起床した。覚醒するにつれて、昨日の不安が襲ってきた。
「起きなきゃ、今日から中2か・・・先輩になるんだもんネ」
どうにか、適当な言葉で自分をごまかす。
 その日、4月1日は、由加里の内面と反比例するように、晴天だった。

 由加里は一抹の不安を抱えながらも玄関に降りた。ぽんと音がする。
「あれ?」
本来の音と違うのだ。いつもなら、もっと軽快な音が響くのに。ためしに自分の姿をもう一度確認してみる。玄関には、鏡台用の鏡が貼り付けてあるのだ。少女のほぼ全身が収まってしまう。肩に掛かりそうで、掛からない髪は、奇麗に決まっている。いつものヘアスタイルだ。良い具合に整った顔からは、知的な雰囲気が漂っている。良い具合とは、整いすぎていないということである。無理に、化粧などで作っていないということも意味する。

「うん、大丈夫だ!」
由加里は、まるで火事から逃れるために、川に飛び込む人のように、かけ声をかけた。いうまでもなく自分にである。

「いってきまーす」
娘の声は、毎年のように変わらないはずだった。自分の娘ながら知的だけど、快活な性格。容姿も人並み以上だと自負している。そんな自慢の娘は、小さいころからかわいいと評判だった。
しかし、何処か違う。そんな不安を春子は抱えていた。

「ママ、遅れちゃう!言ってきます!」
そんな春子の不安を打ち消したのは三女で小学5年になる郁子だ。
脱兎のごとく、玄関を飛びだした娘を送って、苦笑する春子。
「杞憂よね」
そう自分に言い聞かせる春子だった。

由加里は、幾つかの小道を通って、街角にある電話ボックスに到達した。ここで、友達と待ち合わせするのが常なのである。ただし、これを使ったことはない。そしれ、ずっと使うことはないだろう。それに、彼女が生まれる前からここにあるそうだが、何時まであるものか。たぶん、無くなるのは遠い未来のことではないだろう。由加里の目が知的に光った。

 「香奈見、おそいなあ」
何人もの生徒たちに、抜かれてそう思った。彼等がする冷たい視線に、何処か違和感を感じた。もちろん、これまで、通り過ぎたのは知らない子たちばかりなのだから、由加里に挨拶などするはずはないのだが、どうしてか、去年までと違う気がするのだ。
 
 --――私はここにいてはいけない。

どうしてか、彼女はそう思った。登校路にある木々、建物のありようなど、すべて同じなのに、なぜか以前とは違う世界にいるような気がするのだ。

「おはよー、由加里、遅れてごめんね」
「あ、おはよう」
その時、友人である工藤香奈見の声がした。

--―――よかったいつもと変わらない。

由加里は一瞬だけ、安心した。しかし、香奈見の横顔、首の筋肉のかすかな盛り上がりを見ていて、不安がよぎった。

--―――香奈見ったら、少し見ないうちに大人びたのかな?

 そのことが、由加里には冷たく見えたのかもしれない。
「どうしたの?おかしいよ、由加里」
「ううん」
香奈見の不審を打ち消すようにいった。
「あ、そうだ、みつあみどうしたの?髪型変えたの?」
「うん?今日はママがお出かけだからね。子供ッポイ顔には似合わないカナ」
「ううん、そんなことないよ」
由加里は、なぜか、親友の目の淵の三角が気になってしかたがなかった。

--――もう、考えるのやメよ。
由加里は、ムリヤリに思いこむと校門に足を踏み入れた。しかし、以前ならば、その一歩が香奈見と同じだったことには思いが向かなかった。そして、その時、一歩背後から、香奈見がかすかに、冷たい視線を送っていたことも・・・。




eropeg




contents 3 『おしっこ少女』
Contents 『おしっこ少女』 new!


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『おしっこ少女 序章』
 麻木晴海が佐竹まひるとはじめて出会ったのは、勤務先から帰宅中のことだった。その日は珍しく午後5時に仕事先を抜けることができた、と言っても、実は昨日は夜通しあるデーターを分析すべくコンピューターにかかりつけになっていた。だから朝帰りならぬ、夕帰りなのである。
今、その列車上の人になっている。彼女と同じように細長い空間に詰め込まれた乗客たちは、さながらアウシュビッツ行きの家畜用列車に乗せられた囚人そのものだった。今日も、人間らしい臭いを発するタンパク質の塊は、私立の中学生から定年間際のサラリーマンまで、疲れ切ったお面を顔に被って運ばれていく


『『おしっこ少女 1』
 麻木晴海は、物事に対する見方が概して運命論に傾く。
 いわく、人間は生まれたときにすべての人生の経緯が決定されている。だから、努力などというものはすべて無意味である。あるいは、努力することそのものが運命だから、人間のはからいなど、すべて、絵に描いた餅にすぎない。
 兄である祐輔の許婚者とその家族と会合を持ったとき、佐竹まひると邂逅したことをそれほど驚いてはいなかった。さすがに、最初は、運命の神とやらがくみ上げる物語の陳腐さに文句のひとつも述べたくなったが、あいにくと何処の宗派のなんという神に文句を言っていいのわからないので、断念することにした。
 だが、当の佐竹まひるは完全に凍りついていた。初夏の足音が聞こえてくる季節にもかかわらず、瞼には霜が張り付き、その綺麗な瞳は完全に、安物のマネキンのそれに墜ちていた。

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『おしっこ少女 2』
「ウグウウ・・っ!」
 唇を離すと、ふいに、佐竹まひるは軟体動物のようになった。麻木晴海はその手で如実に感じ取っていた。
 しかし、次の瞬間、凍りつくような光を感じた。それを知ってほくそ笑むと、再び、少女を抱こうとした。
 その時 ―――。
 少女が取った態度は、晴海の期待をはるかに超えていた。それは彼女がかなりの上物であることを暗に示していた。
「ナ・・・・・・!?」
 咄嗟に、自分の身体を長身の女性警官から引き離すと、個室のドアに背中を打ち付けてしまった。だが、そんな痛みなど少女にとってみればアヒルの毛で肌を撫でられたに等しい。むしろ、その刺激は少女の怒りを買うことになった。

「・・・・・・・・・!!」
 歯ぎしりしながら晴海を睨みつける少女の姿は、成長途上の雌ライオンを思わせた。しかも手負いだ。
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『おしっこ少女 3』


 「・・・・・・・・・・!?」
 気がつくとスクリーンセイバーが陳腐な3D迷路を造っていた。その時、聞き慣れた陰険な声がした。言わずと知れたカメレオンの声だろう。晴海は颯爽とした顔を作らねばならない。
「きみは見所があるんだ。ただ机上の勉強が得意な連中とはひと味もふた味も違うと思っている ――――」
 この両生類と爬虫類の合いの子のような上司が、自分を持ち上げるようなことを言うときには、いつもろくなことが起きない。きっと、その外見に違わない陰険なことを企てているにちがいない。そして、そのおはちが回るのはいつも自分なのだ。
 彼が言うところの『日本の敵』に関する講釈を聴きながら、どうして、あの少女のことが気になってたまらないのだろう。
 あの少女。
 言うまでもなく、佐竹まひるのことである。

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『おしっこ少女 4』

 雨が降っていた。
 午後3時半を回ったところだ。五月は初夏といえ、こんな日は底冷えするものだ。麻木晴海は、ワンピースに付着した水滴に肌寒い思いをさせられながら、ハンドルを握っていた。樹脂製の素材がもたらす感覚に気持ち悪さを感じていた。
 普段ならば、このような手に吸い付いてくるような脈動感が、ドライブの醍醐味なのだが、こんな日は不快なきぶんだけが粟粒をつくりながら肌の上を一人歩きするだけだ。
 やけに手が粘つく。納豆のようないやらしい粘液がねばねばと糸を引いている。

「まったく、もう、露? 一ヶ月以上、季節が早まってるんじゃないの?」

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『おしっこ少女 5』

 あくまでも、音声を通じてしか事態を把握できなかった晴海は、裸眼でまひるの偉容を見たことはない。
 ふいに、この学校の至る所に隠しカメラを仕掛けたくなった。この細い足を怪我した白鳥の子がいじめられているところをつぶさに見物したくなった。少女の演技を生で見たくなったのである。『偽りの生徒会長』というBC級映画並の題が適当だろうか。そもそも生なので、舞台と表現したほうが適当かも知れない。
 他の生徒に見られるとまずいので、まひるから少し離れて歩く。まるで、校舎内が濡れているように思えた。それは、少女が流した涙かもしれない。知らず知らずのうちに流れた涙は露や霜になって大気中に発散し、やがて、リノリウムの廊下や窓、そして、天井に結露する。
 昼間なのにやけに薄暗い校舎を歩いていると、短い距離でも、そして、単純な経路でも、難解複雑な迷宮を彷徨っているような気がする。
 やがて、簡単に時間を乗り越えてしまうかもしれない。
 気が付くと自分があの制服を着て、あんな感じで歩いているかもしれない。かつてのように、肩で風を切って・・・・・・・・・。

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『おしっこ少女 6』

 麻木晴海のマンションはまひるの家から車で15分ほどの場所にある。
 だから、彼女が被虐のヒロインが放り込まれたドラマ空間を知るのに、同じ時間程度のタイムラグがあった。
「うーん」
 女性捜査官は、装置のスイッチをオンにすると煎れたばかりのコーヒーを手に、ソファに腰を据えた。
「さて、今日はどんなラジオドラマを聞かせてくれるのかな?」
 はたして、スピーカーは、晴海を満足させるほどの空気の波を造ることができるだろうか?
 乾いた電子音とともに、何か堅いものに躓いたような音、そう、それは声と呼ばれるかもしれない、それが聞こえてきた。
―――――ママ、ありがとうね、こんな高いもの・・・・。
―――――いえ、まひるちゃんが喜んでくれて嬉しいわ。わたしたちにとっては、何よりもあなた、家族のことが一番大切なのよ。
―――――そうだね、パパも、お前たちのためにがんばって働いているのだしね。
―――――そうよ、まひるちゃん、わたしたちはね。ねえ、皐。
―――――わたしたちって? 皐お姉ちゃん?

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『おしっこ少女 7』

 釈放、いや、仮釈放される。
 佐竹まひるは、まぶしい光に目を細めながら思った。どうして、「仮」がつかなくてはならないのか。
 それは、自分が置かれている、なおも過酷な状況が彼女にそう思わせている。それは、言わば諦めの心境なのだろう。
 管の類はすべて放擲され、忌まわしい仮面から少女は完全に解放された。しかし、全身をなおも、黒曜石のゴムが覆っている、戒めている、縛っている。少しでも腕や足を曲げようものならば、鉄の重しを持たされているように激しい抵抗が発生する。指の先から足先まで緊縛されている状態となんら変わらないのである。
 ぬめぬめとした半ゲル状の物質から成る生地は、全身の窪みという窪みに情け容赦なく侵入してくる。それは性器や肛門と言った場所でさえ例外ではない。汗と粘液に汚れた生地は、少しでも彼女が動くとコバンザメのように何処までもついてくる。
「ぁあぁああ・・・・・ァァァ」

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『おしっこ少女 8』

「ううううぅぅっぅん?!」
「そのシートはメーカー製の特別あしらえなのよ。疲れた身体をたんと休めてね」
 運転者は傍らのシートに身を沈める奴隷に語りかける。
「この車が相当の高級車であることを感謝しなさい。あそこへの刺激もこの程度で済んでいるのよ」
 車に関するまひるの知識では、晴海のカービジネスの世界を理解することは難しい。よって、現在、彼女が乗せられている車種を教えられたところで、その価値を理解することは難しかった。
「ウウ・ウ・ウ・ウウ、ほんとうに、このままでテニスを?」
「してもらうわ」
 麻木晴海は接ぎ木の要領で言葉をつなげる。

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『おしっこ少女 9』

ふふ、もう限界のようね・・・起きなさい、子猫ちゃん」
「ウウウ・・・!?」
 とつぜん、上腕を摑まれるなり、まひるは立つことを強要された。月に向かって引き上げられるような気がした。優しい光を讃える月でなくて、冷たい光を放つ氷の牢獄に放り込まれるような錯覚を憶えた。
「あぁぐぐグ・・・グググィ!?」
「ふふ、いい?そんな気持ちよかった?」
 それどころではない、外部から急激な刺激を受けた悪魔の生地は、激しく収縮し、それが蓄えた力は少女を激しく陵辱する。すなわち、性行為の最中に男性に立ち上がられた女性のごとく、下半身から激しく震える官能に身を悶えさせたのだ。
「すごいわよ、服の上からも、まひるちゃんが興奮しているのがわかるわよ、そんなに気持ちよかったのね、羨ましいわ、そんな恥ずかしい体に生まれて!」
「ウウ・ウ・ウ・・うう、嘘です!!アアア・・・ああ!?」
 激しく悶えながらも、まひるは、テニスラケットを放さない。
「本当に、テニスが好きなのね」
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『おしっこ少女 10』
  シャワーの音が聞こえる。だが、何だか別の世界から響いてくるように思える。自分は既に黄泉の国へ旅立ってしまい、魂になって現世を彷徨っているのでないか、まひるは、そのような妄想を逞しくする。
 意識が次第に戻ってくる。
 少女は、全裸にされていた。牢獄からすでに自由になったというのに、意識が遠い世界に迷いこんでいるためか、その事実に気づいていない。晴海に支えられながら、ようやくタイルに座していることができる。
 「・・・・・・」
「ようやく、お目覚め?」
「ハア・・・・はあ?!・・・ぁぁあぁああああ!?」
 いきなり身体を摑まれたウナギのように、少女は身を躍らせた。地獄の生地から解放されたぶん、身体は自由に動くはず・・・・であった、しかしながら、事態は少女の思うとおりにはならない。

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『おしっこ少女 11』


 目を覚ました少女は、まず自分が何処にいるのか探した。
「ウッ・・・・!?」
 蜂に刺されたかのような痛みが股間を突き刺す。中学生は眉を顰めた。それでも、意識の覚醒がうまくいかない。今は、何年、何月、何日なのか、そして、現在の時刻はいつか、すべてが曖昧模糊の海に溺れている。
 しかし、時間が進むにつれて、自分が置かれている状況がはっきりしてくる、現在、過去、そして、想定されうる未来が明かになっていく。
 「あ?!・・・・よかった」
 少女は胸を撫で下ろした。
 彼女の中では、現在は土曜日の夜ということに決定されたからだ。

 そんな少女を晴海は微笑を浮かべながら立っていた。その手にはワインが入ったグラスが握られている。
「ア・・・・?」

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 新釈『氷点』2009  発表会
「そうなの、被疑者には娘がいるの? あ、そうか、被疑者ね」
「そうですよ、先生、被疑者死亡のまま送検されると思いますが・・・・・」
 自分の雇い主にそう答えた青年は、赤いネクタイがグレイのスーツに似合っていない。センスが残酷なほどに破壊されているのだ。しかし、仕事は至ってまじめで、春実の期待を裏切ったことはない。

「だけど、先生ほどの人がどうしてこんな仕事を承けようとなさったんですか、国選弁護人なんて」
「この手の犯人には同情を禁じ得ないわ」
「幼女殺人犯にですか?」
 驚きと意外性を表情に混ぜ合わせて、表情を造り出す。
「犯罪なんて、複雑な計算の結果よ、社会という方程式に因果を混ぜ合わせた結果ね、髪神の意志とでも言うべきだわ。何?私みたいな人間がそんな単語を言ったことがあまりにも意外かしら?」
「いえ・・・・・・・・」
 青年は、言葉を失った。

「私は、ねえ、自分たちがいかにも正義漢ってカオをする人間が許せないのよ、マスコミとか検事、ケーサツによくあるタイプね」
 雇い主、こと、財前春実弁護士は、青年に渡された書類を広げた。
「そう、・・・・え?辻口記念病院? 啓三のところじゃない・・・・」
 その時、春実は美貌に狐を潜ませた。青年は雇い主の上目遣いに、何か憑きものが降りたのではないかと本気で錯覚した。
「わかったわ」
「え?」
 顔の表面を剥ぎ取られたような奇妙な表情だった。春実はそんな顔に容赦なく言葉を突きつける。
「新しい仕事の件はキャンセル、用ができたわ。付いてきなさい、あなた秘書件、運転手でしょう?」
「え? 先生、あさま銀行の件ですよ」
 青年の申し出を無視して、春実はハイヒールに髑髏の音楽を奏でさせた。
 その音があまりにかまびすしかったので、春実の囁きを聞くことが出来なかった。
―――あの女、ぜったいに許せないわ!!

 新釈『氷点』2009


 キャスト
辻口陽子 :海崎照美
辻口夏枝:浅野篤子 
財前春実:池上貴見子(25歳)
辻口啓造:三浦友数
辻口薫子:未定
村井靖夫:未定

          急告!
 
 この度、新釈『氷点』2009を発表することになりました。突然の報告になりますがくれぐれもよろしくお願い申しあげます。


『新釈 氷点2009 1』


 青年がエンジンを踏むと、黒塗りの国産車はうなり声を上げた。それは生命の呼吸を思わせる。
 背後で扉が締まると意志の強さを感じさせる女の声が聞こえる。
「谷崎君、啓三のところね」
「え? もしかして、辻口 ――――さんとお知り合いなんてすか?」
 突然のことなので、敬称をつけることを忘れるぐらいだった。国選弁護人としてこの事件に係わろうとしていた矢先のことだ。そのために秘書兼、運転手である谷崎は、ある程度の情報を得ていたのである。
「啓三と彼の奥さんとは、幼馴染みよ」
「ということは、親友の娘を殺した犯人を弁護しようとしていたんですか?」
 悪魔の笑みを浮かべて口を開く。

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『新釈 氷点2009 2』

 啓三は、ただ黙って机の上にあるものを見つめていた。それは彼の家族のポートレイトだった。自分と妻である夏枝、そして、二人の前に長女である薫子が立っている。そして、その前にはお客用の豪奢な椅子が置かれ ――――。
 その上には ―――――。
 次期城主の視線は写真の中の聖域に注がれていた。それは、現在の彼がけっして見てはならないものだった。何故ならば、彼じしんの精神の健康を非常に害する危険を内包していたからである。  しかし、何十キロも走ったランナーが水を求めるように、愛娘の顔を探しあてていた。

「ルリ子!!」

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『新釈 氷点2009 3』

 家族を見送り終わった夏枝はしばらく空を見ていた。蒼天という言葉はこのためにあるのだと思わせるくらいに、透けるような青空が広がっている。
――――これから、ずっとこうだといいわ。
 自分に言い聞かせるように、空に視線を遣ると、人の背の二倍くらいはある板チョコのようなドアを閉めた。
 玄関を入ると客人は正面にある絵画に魂を奪われることになる。キュビズムと言うべきか、それともシュールレアリズムなのか、大抵の客人は評価に苦心することになる。
長崎城主の邸宅ともなれば、客人の数は、普通の家の倍増しとなる。彼らは、この絵をどう批評しようかと頭を悩ませる。
 ところが、彼らは総じて同じ感想を持つ。
 それは、この絵が醸し出している圧倒的な幸福感である。

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『新釈 氷点2009 4』
「そうだ。学校戻らなきゃ ――――」
「陽子ちゃん!?」
 まるで他人事のように言う陽子。夏枝と春実から見るとあまりに現実感が欠けているように見える。 いわゆる素人芝居にありがちなぎこちない動きと台詞回しである。
「音楽の授業で合奏をやるのよ、それにはねえ、陽子はヴァイオリンの担当になったのよ、それなのに ――――」
「陽子!」
 夏枝の耳には、合奏が合葬に聞こえた。それは春実も同じ思いだった。
「陽子ちゃん・・・・・・」
 改めて見ると、己の罪が服を着て歩いている。しかし、どうしてこんな愛らしい罪があったものだと、変なところで感心させられる。
―――――自分たら、この非常時に!!

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『新釈 氷点2009 5』
 辻口建造が自宅に足を踏み入れたとき、なぜか名状しがたい不安を覚えた。俗に虫の知らせというが、建造は意外とそのようなものを信じるほうだった。
 いわゆる経済高度成長時代の青年、しかも、医師などという職業に就いていた人間にはありうべからざる態度であろうが、時代を先取りしていたのか、その反対だったのか、周囲にいる者たちは判断しかねた。

―――何かあったのか?
 その不安は、妻の顔を見ると完全に現実化した。
「夏枝、何かあったのか?」
「あなた・・・・・・・」

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『新釈 氷点2009 6』

 ルリ子の墓参りはしとしとと、いささか鬱陶しい雨が降りしきる日に行われた。
 初夏だというのにやけに雨に濡れた肩が冷たい。助手席に座る夏枝は、バックミラーで愛しい娘の顔に視線を送っている。
 銀色に鈍く輝くフィルムからにょきっと花束が生えている。それは、まるで雨後の茸のように見えた。やけに元気に見えるのは、持ち主から栄養を奪っているからにちがいない。
 俗にそれは寄生と呼ぶのだろうが、夏枝はそれを嫌な記憶ともに呼び起こしていた。それは、彼女が少女時代、家族でパリに旅行したときに美術館で見た絵画のことだ。『寄生』と題されたある有名画家の作品だが、無数の茸が美しい少女からにょきにょきと生えていた。
 夏枝はそれを見たとたんにトイレに駈け込んだものだ。寄生されている少女はそれは美しい少女だった。ちょうど横にかけられているラファエルロの作品に棲まう少女のように、この世のものとは思えないほど清らかで美しい少女だった。

――――ちょうど今の陽子のように。

  

『新釈 氷点2009 7』

少女は一体何処にいたのだろう。
 気がつくと、寺の庭崎に設えられた座席に未発達の尻を乗せて、遠くに息づく長崎の町並みを眺めていた。

―――あそこにお父様の病院があるのかしら?

 紺のブレザーは心なしか露を散らしていた。水晶の珠をあしらっているのだ。建造は、娘の胸を見ていた。年齢に相応しくこんもりと盛り上がりつつある。その頂点の部分には他の部分よりも余計に宝石が乗っているような気がした。

――――もう、年頃なのだな。一昔前ならば、嫁入りもそう遠いことではない。

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『新釈 氷点2009 8』
 はたして、夜明けはまたやってきた。窓の外に顔を出しているのは、安価なインクでべた塗りしたような陳腐な太陽だ。
 なんと不快な朝か。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
 ――――来てしまった。朝なんて二度と来て欲しかったのに!
 寝具の上で長崎城婦人は我が頭を摑んだ。しばらくその姿勢のまま、あまりに冷酷な朝日を恨むしかなかったが、隣に城主が寝息を立てているのに気づくと、急いで姿勢を元に戻した。
 「う・・・・、どうした、夏枝、日曜日だと言うのに、こんな早く?」
「いえ、嫌な夢を見たものですから」
 夏枝はかぶりを降って、夫の視線を巻こうとした。
 しかし、短く別れの言葉を残すと、建造はすぐにもといた夢の世界へと舞い戻ってしまった

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『新釈 氷点2009 9』

 夕食が済んで3時間が過ぎていた。
 長崎城主婦人は台所で食器棚を整理している。瀬戸物が発する銀色の音に誘われたわけではないが、陽子が入ってきた。
「お母さま・・・・・・」
「あ、陽子?!」
 おずおずと母親を上目遣いで見る娘に思わず息を呑む。
 思えば、この子にはいつも気を遣ってきたものだと思う。強いて優しくしてきた、言い換えればスポイルしてきた。それがこの結果である。少し冷たくしただけで、この体たらくである。塩を掛けられた青菜のようにしゅんとしている。
 しかしながら、そんな陽子を見せつけられると、自分の中に虹色の卵を発見して、とことんいやな気分を味わうのだった。その卵が孵ると陽子に対する情愛がぴーちくと歌を歌い始めるのである。
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『新釈 氷点2009 10』

 翌朝、渋る陽子を説得して病院に行かせることになった。
 その任を担ったのは、言うまでもなく長崎城主だった。午前10時に、母親である夏枝が連れて行くことになっている。
 新緑がかまびすしい季節なのに、車内は零下になっていると、陽子は思った。
「お父様ったら、どうして、こんなに心配性なのかしら」
「陽子、あなたのことを思ってのことなのよ」
エンジンにキーを差し込みながら言った。夏枝は思う。

――――どうして、建造!? あなたはこの子が誰の娘なのか、わかっていたんでしょう!?それなのに、よくも父親面して、私の前に立てたわね!?

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『新釈 氷点2009 11』

 辻口陽子が帰宅したのは昼食を母親と取った後だった。本来ならば、仲のいい母娘がどういう理由からか始終無言を通していた。そのレストランは辻口家に馴染みの店だったために、普段と違う二人の様子を目の当たりにして店主は不思議に眺めたものである。
 二人の頭の中はまったく違う考えが支配していた。母親は娘に対する憎しみと愛に引き裂かれ、娘は、かつて、経験したことのない羞恥心に身を焼かれて、まさに自愛の最中だったのである。
 だから、二人は同じレストランにいようとも、アフリカとアラスカに別れているのも同様だった。

 だが、辻口家の三女は帰宅して、室内用のスリッパに右足を挿入したとたんに、母親に対して自己主張するという、彼女の性向からすれば実に革命的な出来事を起こした。
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『新釈 氷点2009 12』



 そこはかとない眠気だった。
 しかしながら、よく考えれば、その理由は明かである。昨夜は絶え間のない尿意のためによく眠れなかったのである。それが今になってやってきたのだろう。
 娘の手が止まったのを確認した夏枝が同じことを繰り返した。
「どうしたの?陽子ちゃん、やっぱり、口に合わない?」
「そ、そんなことないですわ、お母さま・・・・・・」
 娘は何事もないように、スープを口に運び、そして、肉にフォークを刺し入れる。
 だが、美味しそうに湯気を立てる料理にはとんでもない秘密が隠されているのだ。料理を作った彼女だけは知っている。かつて、彼女が小学生のころ、生まれて始めて料理を作ってみたときのように、凄まじい味になっているはずだ。
 味というのは割合の問題である。その配合を少し替えただけでも、美味になったり、あるいは人間の食べるものとはおもえないとんでもない味になったりする。

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