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主人公はu15の少女たち。 主な内容はいじめ文学。このサイトはアダルトコンテンツを含みます。18歳以下はただちに退去してください。
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ふたり、あるいは、友情


 人間は何を思うのか、考えるのか、自分のものだといって本当に制御可能なのだろうか?中学1年生のごくふつうの女の子である如月美佐枝はリノリウムの床がきらきら光るのを見て、忘れかけていた、ある同級生のことがインスピレーションのように浮かんでいた。
 彼女のクラスには一人の少女がいじめられている。
 宮間未華がそのような立場に置かれたのは自業自得だと、美佐枝は思っている。いや、彼女だけでなくクラスのほぼ全員がそう考えている。
それにはある切っ掛けがあった。
 ある朝、クラスメートたちが登校すると、教壇の上にCD_ROMが置かれていた。それを再生してみると、美香がクラスメートを罵倒する内容が長々と20分ほどに渡って録音されていたのである。誰の耳にも、それは彼女の声であることはあきらかだったし、本人も否定しなかった。
 単に美貌で頭がいいというだけでなく、弱い人間に惜しみない助力を差し伸べるなど、精神的にも高潔な人間だと、みなに受け止められていた。しかし、録音はそれと完全に相反する内容だった。
 いったい、誰がどんな目的で置いたのか、という根本的な問題を完全に忘れ去って、ただ、信頼していた人に裏切られた思いだけが勝ってしまった。その結果、少女は一瞬にして、クラスの人気者から忌み嫌われる存在に落ち込んでしまったのである。
 あんな台詞を録音した声を聞かされてしまえば、クラスのほとんどは彼女を嫌うだろう。さすがにあそこまでひどいことをする必要はないが、少なくとも、かかわろうとしなければいいのだ。
 今は、放課後、HRが終わったばかりで、運動部のかしましい声がまだ響いてこない。嵐の前の静けさとでもいうべきひと時だった。
音楽室に向うために渡り廊下を歩いている。
 美佐枝の中学の音楽室は、二階の行き止まりにある。その扉を開こうとしたときだ。けたたましい足音がしたと思ったら、今の今まで脳裏にいた彼女が駆け込んでくるではないか。美しい顔が涙で汚れてクラスのアイドルだった見る影もない。
 「如月さん・・お、お願い、階段の下に逃げたって言って!?お願い!きょ、今日は・・・うう」
 悲壮な顔で迫ってくる美貌を美佐枝は無視しようとした。音楽室に逃げ込もうとするその姿は悲壮だった。かつての堂々たる姿は何処に消えてしまったのか。完全に興醒めで幻滅だった。
 彼女を追いかけるように迫ってくるあの足音たちは、きっと、聡子たちのものだろう。言わずと知れた、未華をいじめている主要メンバーたちである。きゅきゅっという、上履きのゴムがリノリウムの床をこする音が、未華にさらなる恐怖を抱かせる。
 音楽室の奥を見ると、美少女がさらに悲壮な思いで頭を下げている。両手を合わせて、自分は観音様かしら?と突っ込みを入れたくなった。
 いっそのこと、聡子たちに突き出してもいいと思ったが、ある一言を一対一で告げる機会は今回しかないと思い立ち、気が変わった。音楽室のドアを投げやりな手つきで閉める。
 激しい足音からキリンが集団で襲ってくるような錯覚を覚えた。
 聡子を中心とする五人がそこに立っていた。
 あの優しい顔がこんな風に変貌するのか。
 美佐枝は自分に迫ってくるリーダーの顔を見た。あんな人をあいてにする必要はないのにと思いながら、聡子はこちらから声をかけた。
「どうしたの?聡子さん」
 息せき切って走ってきた四人組の少女たちは、すぐには言葉を発せられないようだ。なんといっても、未華は運動が得意で足が速い。陸上部所属というわけでないが、一度、逃げられたら捕まえるのはむずかしいだろう。
 そのうちの一人がまず質問してきた。
「はあ、はあ、ここにあいつが来なかった?」
 クラスメートがあいつと言えば誰のことか、今では代名詞ではなくなっている。
「宮間のこと?来なかったよ」
「やっぱり、右に回ったのよ!急ごう!」
いじめっ子たちの駆け足は、サイやスイギュウなど大型草食動物が集団移動するさまを思わせる。
 とおざかる足音が消えると、音楽室のドアが開いた。
 そこには顔を両手で覆って泣きじゃくる未華がいた。
「ぁ、ありがとう・・・・如月さん・・」
「あの人たちもひまよね、あなたなんかまともに相手にする価値なんてないのに」
「・・・・うう・・如月さん・・」
「気軽に名前を呼ばないでくれる?穢れるから」
「如月さん・・・・」
「そうだ、今日はどうしたっていうの?どうせ、明日にはずっとひどいことされるのになんで逃げ回っていたの?別にあんたのことなんて興味ないのよ、ついでだから聞いてるだけ、答えたくなったら、答えなくてもいいよ」

「せ、生理だから・・・・うう」

「・・・・・」
 その一言で、いじめっ子たちに普段どんな目にあわされているのか、如月美佐枝にもおぼろげながら摑めてきた。だが、こんな機会はもうないのだから言ってしまいたい。
「宮間さん、よくも学校に来れるわよね、そうとう図太いね、神経が」
「・・・き、如月さん・・・・」
 今まであこがれていた。だが、彼女の傍にさえよることができなかった。だが、今ではぼろ雑巾のように彼女の目の前にいる。
 美佐枝は無理に笑いを作った。クラスメートたちのように、みじめな未華を見ても心から笑うことができない。
 だが、勇気を持って言わねば、ついこの前までこんな人に尊敬の念を抱いていた、かつての自分に対して申し訳が立たない。
「自業自得よ・・・」本心ではなかった。だが、畳み掛ける。「人を見下すとこういうことになるのよ!」
 「・・・・・」
未華は黙っていた。だが、美佐枝の本心を見抜いたのか、目を伏せようとしない。そればかりか、美佐枝の肩を摑んだのだ。
「あ、あれは違うの!お願いだから信じて!」
 制服のパットが破れるどころか、肩そのものが脱臼するほど勢いが強い。なんだろう、この圧力は?
すがるような目つき。
写真で見たアフリカの子供たちがこんな目をしていたっけ。だけど、自分の知っている宮間未華はこんな目をしていなかった。あんたなんて、あの人じゃない!相手が間違っているならば、たとえ教師にでも繰ってかかる負けん気の強かった彼女は何処に言ったというのだ?
 肩をいからせると、簡単に手を引いた。
「ぁ、あ、如月さん、ごめんなさい・・だけど、聞いてほしいの・・・・」
 まるで幼女の瞳を彷彿とさせる。黒目勝ちな瞳。まったく邪気が感じられない。それが怖くてなって思わず、「気持ち悪いから傍に寄らないで!」と突っぱねてしまった。
「・・・・うう」
「ちょっと、何処に行くのよ!?」
 階段を下りようとした未華に美佐枝は訊いた。
「石岡さんが言っていた方に行くから・・・」
 水銀のような涙が数滴、パイプのような欄干に落ちるのが見えた。
 討ち入り前の赤穂浪士のような悲壮な覚悟を決めた顔だった。
「庇ってくれてありがとう・・・・」
「ちょっと、待ちなさいよ」
「・・・・!?」
 ふりむいた未華の顔は同一人物とは思えないほどに変容している。
 吊り上った眼からは涙がこぼれているが、さきほど見られた気弱さはまったくといっていいほど消えてなくなっている。その代りに持ち前の負けん気の強さが凌いでいる。
 それを見せられた美佐枝は思わず呟いた。
「わかったわ。信じる、嘘なのね・・まだどういことなのか、わからないけど」
「・・・・・」
 未華はクラスメートに背中を向けたまま俯くと、レモン汁を絞り出すように涙を一滴、二滴とこぼし続ける。
 だが、再びキリンの蹄の音が聞こえた。
「はやく、こっちへ、音楽準備室から外に出られるよ」
「え?2階なのに?」
「歌唱部だけが知ってる秘密の通り道よ、体育準備室の屋根に出られるの」
 未華の肩を摑むと、音楽室へと誘い込む。
「ヒィ・・・・?!」
 彼女の顔が怯えている。石岡聡子の声が風に乗ってきたのだ。華奢というよりは、中学生にしては大人びた、スリムな身体がぶるぶると震えている。まるで真冬の外に全裸で放り出されたような塩梅だ。
 そんなに聡子が怖いのか。いったい、どんな目にあわされているのだろう。ちなみに、あの五人のうちのひとりは如月美佐枝の幼馴染である。しかし、その日は病欠だった。もしも、彼女がいればイの一番に自分に質問してきたにちがいない。そうしたら、嘘を突き通せたのか自信がない。
 彼女、栗下蘭によれば、性的な行為を強制したりするらしい。ならば、生理の彼女は
どんな目に合わされるのだろう。身体を密着させると、ほのかに鉄っぽいにおいが漂ってくる。少女には、それが未華の悲しみのように思えた。
 
 思春期にはじまる生理は、将来、赤ちゃんが生まれる序章のようなものである。そんな大事な儀式をいじめのネタに使われるなどと、たとえ、彼女の声が真実だったとしても、とうてい許されることだとはおもえない。
 準備室に入ると、嗅ぎなれたにおいが鼻孔になじむ。
「こっちよ・・・そんなに高くないでしょ?」
「イヤ・・・怖い!!」
「宮間さん、もしかして、高いところが苦手なの?」
 窓辺に立ってぶるぶると震えている。先ほどよりもはるかに怯えている。どう見ても病的にしか見えない。高所恐怖症であることは火を見るより明らかである。
 背後をうかがえばキリンの足音が迫りつつある。
 「もうそこまで来てるよ、宮間さん」
「・・・・・」
 何かを心に決めたのか、未華は窓際から離れて机の上に両手を滑らせた。そこにはカッターナイフが置かれていた。おもむろにそれを摑むと美佐枝に突きつけた。
「しっ、私の言う通りにして!」
 もう、何がなんだかわからない。もはや、怯えていた姿は微塵もない。
 数秒後、石岡聡子をはじめとする四人が入ってきた。
 キリンのくせに肉食獣めいた凶暴さをむき出しにして、二人に迫ってくる。そのうちのひとりがまず牙をむいた。美少女は、美貌を歪めて、そんなものに負けじと真正面から向かっていく。
「宮間?あんた、何してるの!?」
 いじめっ子たちのひとりは美佐枝をすぐに被害者だと認定したようだ。
「美佐枝さん!!」
「近づかないで!!」
 未華は、スリムな体型からは信じられないほど強い力で、美佐枝の右腕をひねると聡子たちに向けた。刃物は、少女の首筋に光っている。
「何を考えているの?!美佐枝さんを離しなさいよ!!」
 四人のうちのひとりが叫んだ。
 しかし、聡子はあくまでも冷静だった。
「そんなことして、どうなると思っているの」
「もう、あんなことイヤよ!先生を呼べばいいじゃない。警察でもなんでもいいわ!」
 泣き叫びながら引き下がる未華。しかし、あまりにも感情的になっているためにそこが窓際であることに気づかない。
 それを知らせたのは、二階から見える園芸用の如雨露に光が反射したせいかもしれない。
「ぁ・・・!?」
 本質的な恐怖が少女を襲った。とたんにナイフが落ちる。すとんと床に突き刺さった刃物を、引き抜くと聡子はそれを未華に突きつける。
「さきほどの威勢のよさは何処に言ったのかしら?・・・ま・ふふ、自分で言っておきながら、あまりにもお笑いな台詞ね。三流映画みたい」
 美佐枝の知っている聡子はけっしてこんな饒舌ではなかった。
 「ちょうどいいわ。今日のショーはここでやりましょ。蘭ちゃんがいないことだし、今日は美佐枝さんに加わってもらいましょう。被害者だし・・・」
 理知的な視線を向けてくるいじめっ子のリーダー。
事、ここに至って、美少女の意図に気づいた。彼女は、自分を庇うためにこんな芝居めいたことをやってみせたのだ。思えば、彼女は子役プロダクションに関係していると聞いたことがある、これほどまでの美少女ならば、それもうなづける話だが。
 「美佐枝さん、今日の予定は?」
 聡子の優しげな微笑の向こうに、未華が首を振っているのが見えた。リーダーに刃向ってはいけないと言っているのだ。
 仕方なく、少女はコクンと頭を下げた。
「この子、今日は生理なのよ。驚きでしょ?こんな性格破綻者が子供を産もうっていうのよ」
「ウウ・・ウ・ウ?!」
 未華の小さな顎を乱暴に摑むと、自分の方向へと無理やりに引き寄せる。
「性格破綻者の上に、性的な異常者でもあるのよね、宮間は?」
 主人が奴隷にその身分を確認させるように怒鳴りつける。
「宮間?!」
「ヒ・・・?は、はい」
 尽かさず。平手打ちを未華の美貌に炸裂させる。高貴な美術品がゴミ袋のようにしわくちゃになった。
「い、淫乱です・み、宮間、みか、未華は・・・・やらしいことが、だい、大好きな、淫乱な女の子です・・・・・うう」
 悪魔の手からやっと頭部を解放された少女は、顔を覆って号泣しはじめた。その瞬間に、ちらっと、美佐枝に視線をうつした。
 そのとき、聞きなれた足音が彼女の耳に届いた。視覚障害者などが足音だけで誰のものかよくわかる、ということがよくあることだが、同じく音楽を長年やってきた者にも同様のことが見られるという。
 美佐枝はその好例だろう。声楽家を母にもつ彼女は小さいころから歌唱に慣れ親しんできた。
 彼女が聞き取ったところによると、掃除を終えた部員がやってきたのだ。
 「そうか、ここは歌唱部の活動の場だったわね。将来、歌手になる美佐枝さんは練習しないといけないわね」
 石岡聡子の言葉が終わると同時に部員たちが入ってきた。
「ぁ、聡子さん、それに、宮間?」
 その名前を聞いたとたんに、一変して汚らわしいものを見る目に変わった部員。
 一方、聡子は打って変わってしおらしくなった。美佐枝には見慣れた彼女の姿である。
「宮間さんが寂しいからお友達がほしいって・・・」
「無理やりに言い寄られたの?まるでストーカーじゃない。ちょっと、いくら誰からも嫌われたからって、おとなしい石岡さんに近付くってどういうこと?」
「ぁ・・ああう?!」
 その部員、佐竹登美子は、歌を歌うというよりは柔道の方が部活としては似つかわしいほど強靭な身体を持つ少女である。未華のほっそりとした身体など軽々と片手で持ち上げてしまう。
哀れにも両足は床から引き離されてしまった。だが、ばたばたさせるほどの気力も残っていないようだ。ぐたっと海藻のようなさまを晒している。
 あまりにも無体な扱いである。だが、そこにいる誰も被害者に同情する視線を送ってこない。
 思わず、美佐子は援助の言葉をかけたくなったが、未華の思いを考えるとそう簡単に嘴を突っ込めずにいた。

テーマ:萌え - ジャンル:アダルト

『姉妹 6』


「ぁ・・・・あ・・ぁ!?」
  山村と名乗った刑事から、転じて自分に意識を戻した奈留は思わず三段階の声を出した。最初は、単なる序章、そして、次は、自分が裸だと錯覚した「あ」である。そして、最終段階としては、自分が寝間着とはいえ恥部を露出していないことへの安堵だった。
 そして、もうひとつ。
 山村の外見があきらかに体育会系の権化と称すべきほどにごついとしても、その眼をよくみれば優しさが宿っていたからだ。
 彼ともうひとり、山村に比較すれば親子ほども離れた若い刑事とともに、少女は老医師によって別室に連れて行かれた。
 ちゃんと歩けるはずだと主張したかったが、半ば強制的に看護婦によって車椅子に跨った。そんなことをされてまったく抵抗できないことを思うにつけて、いっきに何十年も年を取って老婆にでもなってしまったようだ。
看護婦の言い方は表面的にはやさしかったが、かなり事務的で温度に欠けているように思われた。
 その上、中学生を扱うにはかなり大げさで子供扱いをしているようだ。もしかしたら、看護学校でそのように教育されたのかもしれない。
 出口を通るまで、なぜか、少女は見たくてたまらない方向から目を背けつづけた。あたかも、自分が法廷に引き出された殺人犯で、傍聴席から被害者の家族に指弾されているような気がしたのである。どうして、自分の家族からこんな扱いを受けなくてはならないのだろう?奈留は悲しくなったが、一方で、これが当たり前という意識が自分を追い立てる、このことが、わけがわからずに首をひねるのだった。
 扉が閉められたとき、奈留は思わず涙を一筋、そのかたちのいい頬に滑らせていた。こんなときはどうでもいい思いが人を救ってくれるものだ。同行している老医師が誰かに似ていることに気づいたのだ。少し考えて、ある少女マンガのキャラクターとそっくりだった。小野寺という、キャラ的には主人公と相反する立場にあるその男は、別に優しい性格付けがなされているわけでもないのだが、どう見ても酷似している。
 そういえば、作品の中でかなり悪そうに書かれているこのキャラも孫を前にすれば、きっと、やさしい顔になると親友に語ったことを思い出した。きっと、そのときのことがよみがえったのだろう。
 本当にどうでもいいことだ。
 奈留は、しかし、誰かに救われたような気がした。これから彼女が赴く先は、極刑が誰の目にもあきらかな殺人犯が法廷に行くよりも、さらに辛い場所かもしれない。
 たとえ、そうであったとしても、たとえ、一瞬でも救いになったのだ。それが誰なのかわからないが、その人物に感謝したい気持ちでいっぱいなのだ。なんとなれば、この世界に自分の味方はひとりもいないのだから・・・・。

 奈留は、歯噛みした。
 自分の考えに反論できなかったからである。

 その小部屋は、こぎれいだったが、蛍光灯に青白く照らし出されてどうにも、警察の取り調べ室を彷彿とさせた。ドラマの一場面が脳裏をよぎる。その少女は両親や学校をはじめとする、大人のだれもから不良だと恐れられる子だったが、いざ、取り調べ室に引きずり込まれると、まるで幼児のように泣き出した。
 今の奈留はそんな気持ちだった。妹の奈々をあんな目に合わせたのは自分のせいだという意識が何処かにある。罪悪感で身体を裂かれそうだ。
 部屋に招じ入れられた奈留は、しかし、ドラマとはちがって丁重に扱われた。
「折原さん、あなたはひどい目にあった被害者なのに、取り調べるようで心苦しいのだが、これも仕事でしてね」
 「・・・・」
 一瞬の間があって、山村は事件について切り出した。
 「われわれは当惑している。事件の首謀者である、あの外国人の女性だが・・」
「ドミニクと名乗りました・・・・うう」
 また涙が一筋、こぼれた。刑事たちは少女を慮って優しい声をかけてくれる。しかし、あのブロンド女が醸し出していた恐怖は、とても人間が発するものとは思えなかったのである。
 「そのドミニクだが、自分が何をやったのかまったく覚えていないのだよ」
「覚えていないですって?」
 山村よりもすこしばかり高い声が別角度から耳に到着した。
「携帯していたパスポートによると、彼女は、ローザ・ルクセンブルクというベルリン人なのだが、太陽国に観光のためにやってきたというのだ。今、ベルリン語の通訳を通して取り調べを行っているが、難航している」
「え?あの人、太陽国語を流暢に喋っていましたよ」
「妹さんもそう言っているから、嘘だとも思ったのだが・・」
「彼女は、明らかに嘘をついていない」
「どうして、わかるんですか?」
 少し、向きになった。
 その態度に、山村は、彼女を年齢しては一本、筋の通った子だと感じていた。あくまでも、第一印象にすぎないが、折原奈留の供述は信用できるという、確信が芽生えていた。それは、刑事として長年やってきた経験がそう囁いている。
 自分のすべてを見抜くような、山村の視線に奈留は、両親や担任に感じるような大人ではない、別の意味の大人を感じて身体中に粟粒を作った。だが、突然にあることを思い出した。刑事は、奈々について言及していた。 
「あの、妹は、奈々も調べているんですか!?」
「相当、精神的なショックを受けているようで、両親と一緒にいる。われわれと話ができる状態じゃなくてね・・・・」
 ならば、自分はふつうに訊けるような状態なのだろうか。自分が軽く見られているのか、重く見られているのか、わからなくなってきた。いろんな思いが交錯してあとからあとから涙がこぼれてくる。
 刑事さんたちは、いったい、何があったのか、それを写実的に語られたら信じる気になるだろうか?
 いや、そんなことは絶対にムリだ。あの体験はとても言葉にできることではない。だが、彼らがどの程度、果実を得ているのか、それには興味がある。
「山倉さん」
「山村だよ、折原さん」
「ごめんなさい。逮捕されたのは何人なんですか?」
「ローザ・ルクセンブルクを筆頭に、カール・リープクネヒト、みなベルリン人、みな、一様に何をやっていたのか、まったく覚えていないと繰り返すばかりだ。水戸空港に到着して飛行機から降りたとたんに意識を失ったと、一様に供述している」
「そのカール、リープクネヒトという人はサングラスをしていませんでしたか?」
「よく、一度で覚えられたね」
 自分の名前は間違えたのに・・・・という言葉を言外に言いながら、「その男は君たちに何をしたんだい?」
 「あの大きな建物は誰の持ち物なんですか?」
「いいところに目を付けたね。不思議なことに外国人たちとは何も関係ない人の所有物なんだよ」
 「じゃあ、鍵は?」
 「ちょっと気の利いた泥棒なら、あの程度の鍵はふつうにこじあけるからねえ・・・」
 山村の神妙な顔つきは、名探偵ナントカを彷彿とさせた。どう考えても、事、ここに至っても今、奈留に起こっていること、そして、起こったことのすべてから現実感が失せていくのがわかる。
 これは嘘なんだ。きっと、夢だ。
 山村たちとやりとりをしながら、これは映画の撮影であの大きな建物をはじめとするすべてものが張りぼてにすぎないと思うようになった。
 だから、刑事たちとも冷静に話せるのだ。そうでなければ、あのようなおぞましい体験、妹に性器を舐められて感じてしまったなどと、回想できるはずがない。
 あれは嘘で、虚構にすぎないのだ。
 だが、何ど言い聞かせても、なぜか納得してくれない部分がある。
 どんなに疑っても、疑うものの存在そのものは否定できない。有名なデカルトのわれ思う故に我あり、のように、奈留に対して自己の存在を強調してくるのだ。
 それをさらに補強するように、ドアが開くと、母親の姿があった。本来ならば、心から安心して涙を流すべき状況だ。しかし、彼女の冷たい瞳はおおよそ娘を見る目ではなかった。
「奈留・・・・早く来なさい」
 そういうと彼女の手首を乱暴に摑んだ。
「山村さん、娘がお世話になりました」
 まるで虞犯少年の親だなあ、と、山村は思った。彼は少年課にいたことはないが、いわゆる、不良少年とカテゴライズされる一定の存在と交友を持ったことはある。この奈留という、頭がいいだけでなく気立てもいい、確かに、一癖も二癖もありそうな少女だが、とても、そのような範疇に収められる子だとは思えなかった。
 この母親は、娘が被害者であることを忘れていないか?
 引きずられるように、廊下をいく奈留の小さくなっていく背中を見つめながら思った。そして、元いた部屋に振りかえようとした、その瞬間に思い出したように奈留の方向へと戻ると、「ああ、そうだ。折原さん、またご連絡いたしますから・・・あっと」
 すでに母娘は建物の外へと消えていた。

「マ、ママ、腕が痛い・・」
 「・・・・!」
 闇に包まれて今更ながら夜のとばりが降りていたことに気づいた。
 奈留は、鬼のような形相の母親を見て戸惑った。
 「どう、どうして、そんな目で見るの?!」
 眼球と頬の肉が溶けるほどに涙がこぼれてくる。たしかに、その液体は刺激性があって、塩酸で肉を溶かしたような臭いがしてきそうだ。
「・・・・」
「ママ!?ぁ・・・あ!?」
 咄嗟のことで何が起こったのかわからなかった。とにかく、母親の掌が超スピードで動いたかと思うと、右頬に強烈な痛みを感じたのである。
 ものすごい轟音が辺りに轟いた。だが、夜の町を行きかう人たちは何事もなかったかのように、散策を楽しんだり、帰宅を急いでいるのは、奈留には理解できなかった。
 だが、敬愛する母親の口かが迸った言葉はそれよりも意味不明だった。
「あなたに、母親呼ばわりされる筋合いはないわ」
「どうして・・・!?」
 懇願と非難を含まれた瞳を母親に向ける。口の端にのぼせるのもためらわれるほどにひどい目にあったのに、どうしてこんな仕打ちを受けねばならないのか。しかも、彼女は娘に反論と感慨の余裕すら、一秒も与えずにさらにひどい言葉を捲し立てた。
「法律上、私はあなたの母親だから、しゃくだけど家に連れて行かないといけないの、早く車に乗りなさい」
「・・・・!?」
 な、何を言っているの?法律上?しゃく?それってどういうことなの?
 完全に言葉を失った奈留は、再び手首を乱暴に摑まれると駐車場に連れて行かれた。もう、何も感じない。真冬の外に裸で放り出されたとしても、さすがに最初は寒い、冷たい、と感じるだろうが、じきにそれも感じないくらいに感覚が麻痺してしまうだろう。
 だが、それはまったく苦痛がないのと違う。逆だ。苦痛そのものになってしまっているために、苦痛とそうではない感覚がくべつできなくなっているにすぎない。
 だが、見慣れた父親の愛車、ちなみに、黒塗りのベンツだが、それが待っていたのはさらに冷たい仕打ちだった。
 まるでいらなくなった荷物のように車内の放り込まれようとした奈留を阻んだのは、妹である奈々の悲鳴だった。
 「ママ?なんでそんなものを入れる?捨てちゃえばいいでしょう!絶対にいや!!」
 奈々は、口が張り裂けそうな勢いで泣きわめく。
 だが、その反応に驚愕したのは奈留だけだった。母親は、いつものことだとごく冷静に、入りかけた奈留の襟首を摑んだ。 
 あまりにも急激だったので、首が閉まった。
 だが、呼吸困難よりも絶望の方が勝っている。
 まさか、本当に捨てるつもりなの!?
 そういう思いが、真冬の外に裸で放り出される恐怖とともに襲ってきた。
 奈留を引きずりだした母親のやったことは、ある意味、それよりもひどいことだった。本当に荷物扱いしたのだ。
 無造作にベンツのボンネットに手をかける。
「ママぁ・・まさか・・・嘘だよね!?うう・・いやぁ!」
 奈留は信じられないという顔で、母親の顔を見た。暗がりだが、すでに鬼の形相でないことがわかる。だが、襟首に食い込んだ冷たい手を放そうとしない。
「奈留?あなたは折原家の荷物なのよ、そうよね、奈々の言うとおり、荷物が人間のいるべきところに入るのは間違っているわ」
 あれほど優しかった、いや、優しいはずの母親の口から出る言葉とはとうてい思えない。
 「イヤ?イヤ?!イヤ!?わたし、荷物なんかじゃない、ママの娘よ、どうして、そんなひどいこと言うの!?」
 「喋るんじゃないの!!」
 「うう・・?!」
 純生物学的にいえば、両者の間にそれほど力の差はないはずである。奈留は、健康的な中学一年生の女の子で、運動の得意な方だ。
 だが、親と子の間には目に見えぬ服従―被服従の関係がいくつになっても息づいている。老齢の親をあいてに恐怖を感じることもあるのが、人の子として生まれた境遇の哀れさ、であろう。
 それどころか、母親はまだ40前の女盛りなのだ。
 度重なる精神的な攻撃によって、さんざん打ちのめされた奈留など簡単にボンネットの中に放り込まれる。
 え?棺桶?!
 しだいに狭まってくる星々の空。もしも、閉じてしまったら、もう二度と開かなくなるのだ。
 「いやああああ!!」
 だが、両手を犠牲にしようとは思わなかった。少女には、先天的に両手、両足の先が潰されるという恐怖心を人よりも抱いている。
 逆にいえば、そのことが、彼女のけがを未遂に終わらせたのかもしれない。
 だが、その代わりに彼女を覆ったのは桎梏の闇だった。
「ママ!パパ!奈々ぁ!!こんなのいや!!!!助けえ!助けて!!」
 耳をつんざくエンジン音とともに、少女は、触れられるあらゆるものをたたきはじめた。
 そうしないと、あまりにもみじめだったからだ。何かしないと、見えない恐怖に押しつぶされそうだったからだ。
 だが、少女の喚き声は夜の町には届かない。
 

テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

 『姉妹5』

 
「そう、そうやってキタナイお姉さんのココを舐めてお上げなさい」
「うぐぐぐ・・・・?」
 ブロンド女は自らの命令に素直に服する奈々を見て、満足そうに微笑んだ。
 奈留、奈々、折原姉妹は道ならぬ行為を強制されている。薄暗く、がらんとした広い部屋でレズ行為を強制されているのだ。より具体的に描写すると、ふたりは全裸にされた上に、一様にエナメル色に妖しく光るベルトで上半身を拘束されている。それらは腕、腰、臀部に食い込んでいる。物理の法則によって、押し出された皮膚が余計に飛び出ているところが痛々しい。だが、体型がそれぞれスリムなために、同年齢の少女が同じ格好を強制されたならば、さらにみっともなく皮下脂肪がそのかわいくない頭を出すところだろう。
 妹の奈々は、姉である奈留の性器に舌を伸ばしている。クリトリス、小陰脚、その他、性器を構成する秘肉をしたたかに舐められている。その内部から迸る液体は、けっして、奈々の唾液だけがその正体ではないだろう。
 両者の格好に違いを見出すとすれば、姉ある奈留の口には、その小作りで上品な唇には似つかわしくないほどに暴力的で巨大なさるぐつわ、現代的に言い換えればポールギャグが食い込んでいる、ということだ。ついでに言わせてもらえば、その小さくてかたちのいい顎には、彼女の柔らかで健康的な輝きを発する肌と対照的に、軍事的で暴力的な金属がはまり込んでいる。それらはピタゴラスが発見した数学の定理に従って、支点を要求し、少女に不自由を強制している。
 ポールギャグの穴から流れてくる唾液が糸をつくる。口との間から出てこないのは、よほど強く中に入り込んでいるからであろう。不自然に歪んだ口の周囲が痛々しい。
 もうひとつ、重大なことがある。それは、二人が平均をはるかに超える美少女姉妹だ、ということだ。
 ふたりは、ドミニクと名乗ったブロンドの外国人によって、このおぞましい行為を強制されている。彼女は、大腿を限界まで開かされてドミニクに赤ちゃんのように抱えられているわけだが、その姿勢のままで妹に性器を舐められている。
ピストルによって彼女が潜在的に持っている権力を証明されたために、最初は可愛らしく反抗していた奈々も、いまや完全に彼女の奴隷と化している。
 ブロンド女が顎で合図すると、奈留を誘拐したサングラス男がやってきて、入れ替わりに彼女を抱えた。
(ぃいやあ!お、男の人??!)
 女性の柔らかな手の感触とまったく違う、大人の男の手のそれに奈留は身の毛がよだつ思いを味あわされた。おそらく、その身体に触れた異性は父親だけだろう。それも、幼児のころのはなしだろう。いまや、年頃、いや、その年齢にはいまいち到達していないが、そのくらいの少女の身体を成人に達した男が抱いているのだ。
「ふふ、奈留ちゃん、彼が初めての男なの?ふふ」
「うぎぎぎぃい」
 まさか、うぶな少女とはいえ、こんなことで妊娠するなどと本気で信じているわけではない。だが、処女を失うという意味は、じっさいに処女膜をペニスによって破壊されるという、以上の意味を内包しているのだ。
 ブロンド女はそれを理解した上で、少女の柔らかだか一本芯の入った髪の毛を掻き揚げる。それは彼女の性格を暗示しているようで興味深いが、ドミニクの興味は他にある。
 それをよりわかりやすく自分の前に展示させるために、奈々の頬に顔を近づけるとキスをした。
「ぅむ?!ぐぐぐうぅぐぶぶ?!」
「ほら、やめない!」
 情け容赦なく、少女の耳を引っ張る。おびただしい涙とともに、少女は視界を奪われた口の中に鉄のバールを突っ込まれ、喉を経由して身体の奥までかきまぜられるような恐怖が、少女を襲う。
 仕方なく、再び、命じられた行為にいそしむ。
「かわいそうに、こんなに汚くてクサイものを舐めさせられるなんて、奈々ちゃんは我慢できないでしょう?」
 穏やかな物言いがおそろしい。さらに言えば、自分が命じているにもかかわらず、ドミニクは他人事のように描写するのだ。奈々はそのことが特におぞましいと感じた。
 一方、女の子として大切な部分を悪しざまに言われて、精神的なショックを受けていた。いや、ドミニクにそういわれたことよりも、それを否定しない奈々から受けるダメージの方がはるかに大きかった。
 なおも、妹は自分の性器を舐めづつける。 
 まったく抵抗を止めてしまった奈々に、ドミニクは物足らなさを感じたのか、口だけでなく行動によって彼女をいたぶり始めた。
「私は訊いているのよ?これは、奈々ちゃんが質問に答えないことに対する罰よ」
「ムぎぃいぃ!?」
 奈々の三つ編みをぐいと摑むと、無理やりに自分の方向に引き戻し、しかる後に、奈留の性器に強引に押し付けた。姉の粘液が顔中にへばりつく。このときは、ドミニクに対する根源的な恐怖よりも、生理的な嫌悪が勝った。
「き、汚いぃいいい!!」
「ふふ、アナタのここ、汚いって、奈留ちゃん」
「むぐぐぐむぐぐ・・・!?」
 ポールギャグによって完全に口の自由を奪われた奈留は、哀れなことに一言も抗議することができない。
 一方、妹である奈々は姉の性器によって言葉を奪われたのである。ドミニクは言った。
「そろそろ、退散するわね」
「・・・・・・」
「・・・・」
 二人は完全に無反応だった。まるで死体のように折り重なって身動きひとつしない。ブロンド女は長い髪を掻き揚げながら、サングラスの男に何やら命じていたが、二人の耳に届かない。その代りに入ってきたのはパトカーのサイレンだった。
 やっと、助かった。
 奈留にとって、普段はうるさくてたまらない雑音がこれほどまでにありがたく思えたことはない。だが、気になるのは奈々の態度だった。薄れる意識の中で、そればかり考えていた。しかし、意識が途絶する瞬間に割って入ってきたのは、ブロンド女の吐息と言葉だった。
「奈留ちゃん、また会いましょうね。会いたくなくても、あなたの方から来てくれるわよ、だって、この世界はあなたが知っている世界とはまったく違うのだもの・・・ふふ」
 金色の玉ねぎが割られたような笑声がやけに耳に焼き付いていた。自分が知っている世界とまったく違うとはどういうことだろうか?それは、奈々が自分を嫌っているという事実からも合致することのように思えた。
 逆に言えば、妹が自分を憎むはずがない、という彼女なりの原理が崩れることはなかった。なぜならば、ドミニクによればここは異世界だからである。
 意識の途絶は急に起こった。
 もしかしたら、これは死かと、そう思う以前に世界が桎梏の黒に閉ざされた。
 
 次に意識を取り戻したとき、視界に入ってきたのは温和な老人の顔だった。
「大丈夫かね?たしか、奈留さんだったか・・・」
 彼が白衣を着ていることから、医師に間違いないと思ったが、意識は別のところに言っていた。両親と奈々の泣き声が同時に聞こえたからだ。
 自分もあそこに行かなければならない。そして、大切な家族を安心させてあげなければならない。そう思って、上体を起こそうとした。だが、うまくいかない。全身がだるい。まるで鉛が全身の細胞に仕込まれているかのようだ。
 そんな少女にかけられた声は、老医師の声に比較するとあまりに冷たかった。耳が凍りつくくらいだった。
「そう、助かったのね」
「え?」
 一瞬、何が起こったのかわからなかった。妹である奈々を助けられなかったことを、姉として恥ずかしいと責めているのだろうか?日ごろから、いや、小さいころから姉であることを
強く自覚するように育てられてきたから、奈留はそう誤解したのである。
 しかし、どうもおかしい。だが、自分を納得させるためにもこちらから言葉を発すべきだと筋肉を動員させようとする。だが、うまくいかない。
 奈留は、愛する母親の声がした方に、状態をむかせようとする。しかし、帰ってきたはさらに冷たい言葉だった。
 老医師や看護婦が部屋から消えたことを確かめながら、「あなたの顔なんて、見たくないわ」と言ったのである。
 そして、驚くことに次に彼女の耳をつんざいたのは、奈々の怒声だった。
「あの人、自分が助かりたいばかりに、奈々なんてどうなってもいいって言ったのよ!!」
 あの人という単語のつながりが少女の耳に針を刺す。どうして、そんな風に言うの?もはや、反論する気すら消え失せようとしている。
「お前は本当にどうしようもない子だ」
 父親の低い声がしたが、そちらを振り向く気にもならない。だが、家族の冷たい仕打ちよりもさらにおそろしいことが彼女の心の中で起こっていた。
 自分はみんなに嫌われているんだ。いっそのこと、殺してくれたらよかったのに・・・そう思う自分がたしかに無意識の何処かで鼻歌を歌っている。
 そんなばかな。自分ですらが自分を弁護しなくなってどうなると言うのだろう?
 ここは、あのドミニクが言ったとおりに、自分がかつて知っているような世界とはまるで違う、いわば異界なのだろうか?
 本気で怖くなった。生命の危機すら覚えた。
 だが、少女は思考を逡巡させる自由すら与えられなかった。老医師が、あきらかに堅気ではない男性を数名ほど連れてきたからである。角ばった頭髪が視界に入ってきた瞬間に、奈留は、あのサングラス男を思い出した。しかし、よく見ると身長がかなり低いようだ。
 先頭を切って入ってきたその男性が、自分を刑事だと名乗って、ドラマでよくあるように警察手帳を示した。
 山村と名乗ったその男は、奈留を見つけるなり、両親や奈々ではなく、ロケーション的にはあきらかに妹の方が近かったにもかかわらず、彼女の方向に近づいてきた。いや、駆けだしてきたと描写した方が適当かもしれない。
 両親に儀礼的な挨拶もせずに奈留に直進してきた。そして、開口一番、「いったい、君たちに何が起こったんだい?」と声をかけてきた。その声があまりにも温和だったために、外見からかけ離れていたことも加味できるかもしれないが、思わず、声を上げて泣き出してしまった。
 久しぶりに人間的な扱いを受けたような気がした。老医師も優しかったが、微睡の中にいたためによく覚えていない。家族に冷や水をかけられた後だっただけに、この刑事が炬燵のように思えたのだ。
 

テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

『姉妹4』
 「奈々!奈々!」
 奈留は、必死に妹の名前を呼ぶ。しかしながら、本当に妹のことを思ってそうしているのか、はなはだ疑問だった。
泣き叫びながら、実は妹に抗議していたのである。どうして、自分にたいして疑念を含んだ視線を向けるのか?今まで、そんなことが皆無だったたけに、少女が受けたショックは計り知れなかった。
 そして、ついには、奈々は姉からそっぽを向いて、あさっての方向を睨み付けるに至っている。まるで、これまでの人生をすべて否定されたほどに思えた。
どれほど記憶を検索しようとも、このような顔は引っ掛かってこない。
涙ぐんでいるその眼からは哀しみでも辛さからでもなく、自分に対するただ怒りと憎しみだけが感じられる。
 ふいに視界が真っ暗になった。 
「ぐぎぎ・・・・!?」
「ちょっど、うるさいから黙っていてね、奈留ちゃん、妹さんの言い分を上げなさいな。じきに警察が来るから」
 なんということだろう、この凶悪な女は自分の行為を、あたかも小説の中で作者が語るように睥睨して言っているのだ、まったく罪の意識もみせずに・・。言い換えれば、即席俳優が素人芝居を楽しんでいるようにすら見える。
 奈留は、ふたたび、さるぐつわによって発語の機会を奪われた。
 それと入れ替わりに、奈々は口の戒めを解かれた。外されたポールギャグは、奈留のものとまったく同じ大きさだった。ねっとりとした唾液が糸を引く。金髪の美女は、それを奈留の顔に振りかけながら、芝居見物を決め込んだようだ。

  言語の自由を回復した妹は、ここぞとばかりに姉に食って掛かる。いままでため込んでいた怒りを放出するように、牙をむいた。
「あんたなんか、大嫌い!間違っても、お姉さんなんて思ってない!」
 ちょうど、満水のダムが堰を切られたように奈留を罵りはじめた。彼女の口角泡がまともに飛んでくる。
「そうなの?そんなに憎いの?」
「憎いなんてものじゃないわ、殺してやりたい!」
 どうしたら、あんなに優しい妹の顔がここまで恐ろしくなるのだろうか。まるで、ネコ科の肉食獣のように怒りと憎しみで表情が歪んでいる。それにしても、彼女は自分が置かれた状況がわかっているのだろうか?彼女も、自分と同じように誘拐されて、ここに連れてこられたのだろうか。その答えはドミニクの口から発せられた。
「奈留ちゃんが、言うのよ、どうしても妹を招待したいって」
「・・・・・!?」
 自分はそんなことはしていないと主張したいのだが、口の中に無理やりに詰め込まれたポールギャグは、いかに、口腔内の筋肉を動かそうとも微動だにしない。
 金髪の美女は奈留の意思を読み取ったかのように言った。
 「どうやら、奈々ちゃんが怒っているのは、べつのことのようよ」
「・・・!?」
 ドミニクの言葉は奈留の耳に入らない。妹にされたことがあまりにもショックなので、自室茫然としているのだ。脳内にあるニューロンに流れる電流が限界を超えたために、ショートしてしまったのだろう。
 「こんなに嫌いな、お姉さんだけど、ぜひともあなたにしてほしいことあるのよ」
「・・・!?」
 今度は奈々が驚愕する番だった。ドミニクが言ったことは、とうてい、彼女が受け入れられることではなかったからだ。
 ドミニクは、少女の膣に食い込んだベルトを外すと、嫌がる奈留を抱きしめながら言う。
「お姉さんの、ココをキレイにしてあげてほしいの、この子ったら、赤ちゃんみたいにおしっこを漏らしちゃったからね・・・・ふふ」
「むぐぐ・・・」
 ドミニクの指が、奈留の性器にめり込んだ。最初は、一番長い中指から、そして、薬指、人差し指、小指、という順番に少女の膣を蹂躙する。
 「どう?お姉さんのココ」
「キ、気持ち悪い・・・」
「ムゲェェェ?!」
 無機質な喘ぎ声をあげる奈留。
「よほど、かわいい妹さんに恥ずかしいところを見られるのが答えるのね、けど、本当はうれしいんでしょ?」
 ちょうど、Mの字に大腿を広げられた奈留は、妹の前に、女性のすべてを展示している。奈留は、拘束具によって自由を奪われているのだが、さるぐつわを噛まされていることによって精神の自由さえ亡き者にされているのだ。ドミニクや奈々の誹謗に対して抗弁できない、そのことはイコール、魂の牢獄に入れられたも同じなのである。
 「さあ、ココをお舐めなさい」
「いや、こんな汚いものを舐めるなんて、いやあ!絶対にいや、死んでもいやよ」
「死んでもいやだって、ふふ、奈留ちゃんも嫌われたものね、でも・・・」
 奈留の耳にキスすると、妹の方を向いた。
「これがどういう意味を持つのか、わかるわよね、奈々ちゃん?そうね、あなたは死んでおいやだって言ったわね。だったら、死んでみる?」
「・・・・!?」
 
  いったい、何処に隠していたのだろう、ドミニクが妹に向けたものはピストルだった。それがあまりも少女にとってなじみのない物のために、おもちゃにしか見えない。だが、美女の顔は真剣だった。こんな顔を見たことがなかった。殺意、というのだろうか。映画やドラマのなかでしか出くわせない、恐ろしい顔を目の当たりにしている。
 それがあまりに美しいだけに、そして、彼女の言葉が穏やかなだけに、余計に、ふたりの少女を戦慄させたのだった。
 だが、奈留は違った。かわいい妹を傷つけるものは許せない。ドミニクが自分から離れて、両足が自由になったことをいいことに、彼女に向って飛びついた。自らの頭を武器にして、妹に向いているピストルを飛ばそうと考えたのである。
 だが、目方にして、長身であるドミニクの三分の二ほどしかない奈留に、それも下半身以外の自由を奪われてしまった彼女にそのような芸当が可能なわけがない。
「・・・?!」
 奈留の咄嗟の行動を、奈々は否定することによって精神の均衡を保っているようだ。少女は、大活劇が目の前で起こったにもかかわらず、何食わぬ顔であさっての方向を見つめている。すくなくとも、表面上は冷静さを顔の表面に塗装することが可能だったようだ。
「むぐぐぐぐぐぐ!?」
 奈留は、そっけない妹を背にして、動かない口をひっしに動かして構音しようとしている。その仕草は、水中からいきなり引っ張り出されて呼吸を奪われた魚を彷彿とさせる。だが、いかに外見が滑稽であろうとも、本人は本気なのだ。
 ドミニクは、すでに奈留を相手にしようとは思っていないようで、戦く奈々の方向へと歩みを進める。一方、姉は、妹を必死に守ろうとドミニクの足首に噛みつこうとした。だが、さるぐつわを噛まされて開けることも叶わない口が、どうして、そんなことが可能だろうか、あえなく、彼女の妄想だけのなかでそれは達成された。
 すぐに、それは妄想だと思い知ったときには、少女の頭はハイヒールによって踏みつけられていた。
 そのあまりにひどい光景に奈々が動かされないはずがなかった。
「お、お姉・・・・く!?」
 「奈々・・・・?」
 姉は、その言葉だけで十分だった。だが、言葉を飲み込んだ妹は、ふたたび、あさっての方向に目を背ける。そこには、凝視しようと決め込んたシャガールの、おそらく複製画であろうが素人にすぎない彼女には判断がつかない、その絵の中で花嫁を抱きしめて飛ぶ青年に視線を固定しようとした。
 「ふふ、奈々ちゃん、それは本物よ。有名な作品とは別規格で彼が描いた作品で、それほど知られていないの」
 少女は、ぎょっとした顔を見せた。心を読まれた?と数秒ほどは、しかし、可愛らしい顔を出目金にしたものの、すぐに偶然だと高をくくった。
 「そんなことはどうでもいいわ、さあ、するの?しないの?それとも、これが偽物だと思っているわけね、じゃあ試してあげる」
 ドミニクは、シャガールの下に置かれた石膏像に向けて弾丸を発射させた。すると、耳をつんざく轟音が少女たちを襲った。残念ながら、両手は背中に固定されているために耳を覆うことができない。
 「ぁ・・ああああ・・・ぁ」
 もはや、開けた口を再び閉めることができなくなってしまった。
 「どうなの?」
「ひ・・・・」
 円らな瞳を不自然なかたちに歪めて、奈々は姉の方向へと向かった。
 「アレ?奈々ちゃんは、死んでもよかったんじゃないの?それほどまでに、お姉さんがキライじゃなかったの?」
 もはや、反論する気力もなくなったようだ。少女は、姉の股間へと顔を近づけていく。
「ほら、逃げないの、奈留ちゃん・・・せっかく、妹さんがキレイにしてくれるのよ、あなたの汚くてクサイココをね」
 「あぎぃぃぃ!?」
 ドミニクは、なんとか、恥辱から逃れようとする少女を捕まえると、彼女に大腿を開かせて妹の口元に性器を展示させた。そして、舐めやすいように小陰脚を開く。
「むげぃぃぃぃ!!?」
くちゅくちゅと、粘液がかき回される音が薄闇に奏でられる。
「ふぐ・・ふぐ・・ふぐ・・・ぐ!?」
 少女がかまされているポールギャグの穴からは、彼女が身体をぴくんとさせるのと同時に、唾液が迸る。少女はそれにさえ気づかないようだ。身体を襲う官能に驚いているのだ。性器を舐められるという、これまでに味わったことのない感覚に、どのような態度をしめしたらいいのか、精神的に、そして、身体的に、奈留は戸惑っているのだ。
 「このちょびんと飛び出たところがあるでしょう?ここをしっかり舐めてあげなさい」
「むいいい!?」
 ある程度の性知識のある奈留は、それが陰核であることを知っている。そして、それが弄られると、とんでもない、わけのわからない感覚を連れてくることも、だ。
 (何?!)
 
 少女は、ふたたび、既視感が自分を襲っていることに気づいた。学校、そうだ、大好きなはずの場所で、このような体験を強制的にさせられている・・・そのような映像だった。
 だが、経験したことのない官能に襲われている今となっては、それに対して反論する気力があろうはずがない。
 それを引き起こしているのが、かわいい妹だという事実が相まって、官能はさらに二乗、三乗となって、少女を八つ裂きにしようとしている。

テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

 『姉妹 3』


  自らの排泄物によって下半身を濡らしてしまった奈留は、羞恥心と汚物に対する汚辱感で頭の中が真っ白になっている。さらに、温度を失った尿は、氷の冷たさを親に対して感じさせ、それがいっそう少女に羞恥心を強く感じさせる。
  口惜しいことだが、その耐えがたい状況から自分を解放させてくれるのは、このプラチナブロンドの外人しかいないようだった。
 奈留は、彼女に訴えようとするが、あいにくとその呼び名を知らないのだ。
 「あー」
 「何かしら?奈留ちゃん?」
 「・・・・・・」
「そうだったわ、私の呼び名を教えていなかったわね」
 しばらくの間、意識を何処かに飛ばしているのか、俯いて美貌を陰に隠れさせた後に、再び口を開いた。
「そうねえ、ドミニクというのはどうかしら?」
「・・?ド、ドミニク?」
「さまをつけるのよ、お嬢ちゃん、あなた奴隷でしょう?忘れたの?」
「ぐぃぃぃ!?」
  まったく、躊躇くことなく少女の背中を踏みつけた。ハイヒールのかかとが白い肌に食い込む。白人のそれと性質の違う真珠の白に、ドミニクは微笑を浮かべる。
「ほら、正しくお呼びなさい」
「ド、ドミニクさま・・・・」
 おびただしく流れる涙で視界が崩れ去る。だが、どうしたことだろう。このように扱われることが自分にとって不自然ではないような気がするのだ。しかし、よく考えてみればそれはおかしいことだ。少女にこのような仕打ちをする人間は世界の何処にも生息していないはずなのだ。
 両親に手を挙げられたことはほとんどない。なかんずくあったとしても、他人を侮辱するか、あるいは、自分というものを粗末に扱ったときだ。中でも後者の場合、その怒り方は尋常ではない。あの優しげな両親が変貌を遂げる瞬間である。だが、それは愛情の裏返しだとわかるかたちで怒るから、間違ってもDVをされたなどという記憶の残り方はしない。
 それに学校でも奈留は友人というものに苦労したことがない。とびきりの人気者というほどではないものの、常に自分の味方といえる人間に事欠くがなかった。たしかに、彼女を好く人、嫌う人の差は激しかったが、後者から受けるダメージよりも、前者から受ける恩恵の方がよほど多かったのである。
 そんな少女がどうして、今のような状況を耐えられるだろうか。
 改めて、ドミニク、と躊躇いがちに名乗った女性の顔を仰ぎ見る。そのあまりにも非現実的な美しさが、奈留に、もしかしたら、今、彼女が置かれている状況がすべて夢ではないだろうかと、思わせることを加速させている。
「だけどね、奈留ちゃん、もしかしたら、あなたのそんな記憶こそが夢かもしれないでしょう?あくまでもこちらが現実でね」
「え?!・・・・そ、そんなっ?!」
「そんな目で人を見るものではなくてよ?」
 この人は本当に人間なのか?第三階梯の人間という、SFの世界を乗り越えて、少女はドミニクを人ならぬ存在へと格上げしてしまっている。そう考えた方が、自己に起こった状況を自分に納得させることが可能だからかもしれない。
 あなたは誰?という問いは、必然的に、自分は誰という?命題を引き出す。
 記憶の中で自分に笑いかけている友人たちは、夢にすぎないということか?
「そんなに友達、友達っていうなら、名前を挙げてごらんなさい。できないでしょう?」
 「・・・・!?」
 ドミニクが顔を近づけると、プラチナブロンドの髪が固有の意思を持った生き物のように、奈留にまとわりつく。彼女の吐息がかかるほどに接近している。どういうことだろう?心臓がドキドキするが、それは恐怖故ではない。この高まりは、あきらかに・・・・そんなばかな!と少女は負けん気の強さでドミニクを睨み付けた。
 だが、すぐに目力が緩んでいくのがわかる。どうしたことだろう?奈留は、自分の中に理解しがたい感情が芽吹くのを感じた。彼女に抱きしめてほしい。誰にも愛されない自分を慰めてほしい。
 だ、誰にも愛されない?そんなことない!自分を大切に思ってくれる家族も友人も、自分を心配しているに決まっている。いまごろ、警察が動いているだろうから、救われるのは時間の問題にちがいない。
「警察が動いていることは事実よ」
「なら、逃げなくていいの?」
 すでに、奈留の心がドミニクに読まれていることに、何の不自然さを感じなくなった。口のまわりが異様にだるい、喋るために口を動かすことすらめんどうくさい。だから、言葉を発さなくても意図を読んでくれることは、少女にとってありがたいのだ。
 「心配してくれるんだ?」
「・・・・・!?」
 そんなはずがないでしょう?と言いたかった。心が読めるのにそんなこともわからないのか、という気持ちが強い。しかし、一方で自分がひと肌を異常に求めていることがわかる。あまりにも寂しい。
 きっと、それはこの異常な状況が、赤ちゃん返りのようなことをさせているにちがいない。
 きっと、家族や友人たちが・・・。
「だったら、友達の名前をあげてごらんなさいって」
「ひ?!」
 ふいに身体を抱き寄せられて、奈留は悲鳴を上げた。
「や、やめて、やめてくだ・・ううう・・・」
 突如として唇を奪われた。なんということだろう、ファーストキスを、こんなに美しい人とはいえ、同性に奪われるなどと、自分にそんな趣味があるわけがない。もしも、あったらとしたら天にも昇る心持だろうか?
 いや、ちがうだろう?こんなふうに動物のように縛られて、自由意思もなく好き放題にされた挙句に強制的に接吻させられるなどと・・・・、奈留は、こんなことを考えながら、何か、高級な酒に酔うような気持ちになっていた。
 そんな時に流れる涙は、まったく理解不能な味がする。
「ぁあ・・ぁあ・・あああ・・・」
 いつしか、ドミニクの舌は唇から移動して少女の喉元に吸い付いていた。真珠の肌が、彼女の唾液によってさらに妖しい輝きを増していく。さらに、鎖骨、胸骨、エナメルに輝くベルトによっていびつなかたちに歪められた胸に近づく。
「ぁあっぐう・・・!?」
 乳首に、ドミニクの唇が吸い付くと、少女はすっとんきょうな声をあげた。自分の身体に起きたことが信じられないのである。何か、真っ赤な両生類のような小さい動物が、身体の中で暴れているような気がする。
 「やーあぁぁあ」
 ドミニクの舌は、さらに下降していく。臍、下腹部、そして、つにいに、少女のもっとも恥ずかしい場所へと向かっていった。
「ぃああいや、そこは、いやあああぁあぁあ!?」
 小陰脚、クリトリス・・・・ありとあらゆる、性器の構造物を支配していく。
「ふふ、そんなに気持ちいの?」
「そ、そんなことない!や、やめて!いやいや!」
「オナニーとか、もう経験しているんでしょ?毎晩、これしないと眠れないくらいに淫乱なのは、わかっているのよ、見てみればわかるわ。こんなに男のモノを要求してるんだもの」
「そ、そんなことない!!」
 ドミニクの言っていることが理解できる年齢になっているだけに、少女は顔を赤らめた。
「人に見られるのも、うれしいでしょう?奈留ちゃんは、私は知っているのよ?」
「・・・!?」
 顔をしかめると、ドミニクの双眸がきつくなった。
 「普段のあなたを知っているから、そういうのよ、私は」
 いったい、普段の自分の何を見てそんなことをいうのだろう?奈留は不思議でたまらなかったが、性器をさらにまさぐられておもちゃにされる中で、何か、それも嘘ではないような気がして、さらに羞恥心が刺激されるのだった。
 すべてが終わった後に、奈留はよだれを垂らして、頂点に達していた。
「ぁはあ・・はっぁ・・・ぁああ・・・」
「ほら、赤ちゃんじゃないんだから、よだれを拭いてあげる。こんなにいやらしいのに・・・ふふ」
「ぃいやあ・・ぃやああ・・・」
 不快な既視感が襲ってきて、少女を打ちのめす。自分はこんなことをされたことなんて、一度もない。性器を人に見られたことなんて、おそらく、経験にないことだ。おそらくと、カッコウつきなのは、自分が赤ん坊の時におむつを替えたことあるような人間は、きっと、視たことがあるにちがいない。しかし、題名も思い出したくない、奈留が間違って読んだ小説のように、その中では大学生が女の赤ちゃんを誘拐してきて、彼女の性器を舐めるシーンがあったのだ、よほどのヘンタイでなければ、単なる裂け目を性器だと認識することもないし、視られている方はまったく記憶にないのだ。
 
「奈留ちゃんは、露出狂の変態みたいだけど、そんな姿をいちばん見せたい人を連れてきたわ」
「・・・え?!」
 咄嗟に言われると、ふいに指が鳴らされる音がした。
「な、奈々!!?」
 なんと、奈留の視界に入ってきたのは、この世でもっとも可愛らしい妹だった。まだ、小学生の彼女は、奈留のように全裸にされた挙句に、全身をエナメルに光るベルトで拘束されている。その上に、小さな口は限界まで開けられている。見るところ、姉よりもずっと大きなさるぐつわを嵌められているようだ。
「あなたと違って、ほんとうにおとなしい子なのね、外見も、性質上も、だけど、あなたに対する感情だけは違うようよ」
「私に・・・・!?」
 全幅の信頼を自分に預けているはずだ・・・いや、そんなことよりも・・奈々!
「お、お願いだから、奈々を助けて!なんでもします!奴隷でもなんでもいいです!私は返さなくてもいいから、妹だけは!!」
 自由にならない身体を芋虫のように歪めて、少女はドミニクにすがる。しかし、まったく意に介さないと言う風に、彼女は立ち上がると、少女の小さな顎を無理やりに奈々の方向に向ける。
 姉と違って、本当におとなしげな表情をしている。だが、姉に気づくと大きな瞳を疑念に歪めた。
 奈々、どうして、そんな顔をするの?きっと、ひどい目にあわされたのね?かわいそうに!
「ちがうわよ、奈々ちゃんは、あなたが虫唾が走るくらいに大嫌いなのよ」
「そ、そんなことない!!」
 「ふふ、そうかしら?あなたを見る、妹さんの目を見てごらんなさい」
 美女が顎をかすかに動かすと、奈々を連れてきた男、なんと、奈留を捕縛したあのサングラスの大男だ、彼は軽々と妹を持ち上げた。
 しかし、その可愛らしい顔は恐怖に歪むどころか、姉をひたすらに疑念と憎しみを含んだ視線を送ってくる。
 かつて、妹にそんな目で見られたことはいちどもなかった。それなのに、どうして・・・奈留ができることは絶句することだけだ。
 

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『姉妹2』



 折原奈留は、鏡に映る自分の姿を改めて凝視している。痛いほど食い込んだ黒光りするベルトが、今、彼女を包んでいる、いや、唯一の衣服だ。
初夏とはいえ、まだ、水着姿では肌寒い気候である。暖房がまったくない、がらんとした部屋で、少女は白妙の肌に粟粒を作りながら震えている。しかし、それは寒気のためだけではないだろう。まだ、14歳の少女が、なんといっても家族から引き離されてこんな場よに監禁されて縛られているのだ。恐怖を感じない方がおかしい。
かなり肉厚のベルトは皮膚に食い込んで身体をいびつなものにしている。これ以上、縛られ続けたら、内出血を起こしてしまいそうだ。
 しかし、何と言っても異様なのは、少女の顔だろう。客観的に見ても、彼女の自己評価によってもかなりの美貌がさるぐつわで歪んでいる。ゴルフボール大のゴムが、ポールギャグという立派な名称があるのだが、奈留が知るはすがない、小さな口に食い込んでヨダレを垂れ流させている。それだけでなく、あどけない両頬には鉄輪が食い込み、頭を頂点として三角形をベルトが描き、頭部を拘禁している。まるで鉄仮面をつけられた少女を思い起こさせる。
 そんな少女を背後から肩を抱いているのは、プラチナブロンドの美女である。奈留は、本当に美しい人というものを、生まれてはじめて見たような気がした。だが、そのような感動を与えた人間が、命を削るような恐怖と恥辱をふるまっているのだ。
 脳内が破裂しそうだ。
 おもむろに、少女の口に手が伸びて、さるぐつわが外された。
「うぐー!?」
 奈留のヨダレが糸を引く。ピアニストのように長く気品に満ちた指で、それをこねくり回すとにおいを嗅ぐ。少女にわかるようにわざと、整った鼻梁をひくひくさせる。もしも、彼女が知っている人間ならだれでもおなじことをすれば、それは奈留自身も含まれるのだが、下品以外の何ものにも見えないだろう。しかしながら、彼女はさながら調香師のようで、あんな美しい人に自分の唾液なぞ汚いものを嗅がせることに罪悪感すら覚えた。
 
 しばらくすると、自分をこんな境遇に落とした彼女に対する怒りが、ふつふつと浮かび上がってきた。
「あ、あなたはだれ?どうして?私を?はやく、家に帰して!」
「奈留ちゃんの家には誰もいないのに?」
「そんなはずない!!」
 激しく否定する美少女だが、なぜか、自分の考えに自信が持てない。たしかに、あの家は空だった。家族がいない家など、単なる入れ物にすぎない。
 たしか、あのサングラス男は、「家のローンはすでに返された」とかわけのわからないことを言っていたが、あれはどういうことなのだろう?ふつう、住宅ローンとはサラリーマンが一生かかって払いきるものではないのか、いかに折原家の主人が高給取りだと言っても、三十代半ばで払いきるなどとても不可能だ。
 奈留は、見えざる手が動いているような気がして、恐怖を覚えた。ただで払ってくれる奇特な人間がいるわけがない。宝くじが当たったなどという話は聞かない。それとも、この前の年末ジャンボで一等を当てたのだろうか?子供たちには隠していた、ということはありえるだろうか。
 少女は、なんとしても現実的な思考をすることで、今、彼女が置かれている、あまりにもファンタジックな状況からの逃避を試みたのだ。これは夢にちがいない。それにしても、夢とは不思議なものだ。知らない外国人の女優をキャストに使うのだから、無意識の働きとはものすごい。心理学に興味がある奈留は、年齢に似合わないくらいにこの手の知識に強い。
 だが、ブロンド女は少女にそんな呑気なことを許すはずがない。すぐに、自分の城へと無理やりに連行した。
「残念ながら、私は女優じゃないのよ。演技の才能はないわね」
「な・・・・!?」
 エスパーかと奈留は驚きのあまり動かぬ身体をのけ反らせた。
「うぎぃい」
 そのために、身体や股間に革ベルトが食い込む。
「まあ、こんなところまえヨダレを垂らして・・・・」
 奈留は、何処かで聞いたセリフだと思ったが、何処でのことかわからない。まるで、夢での出来事のようだ。だが、よく考えるとこれと似たような光景にでくわしたことがある。女が調香師のように見えた、あの瞬間のことだ。彼女が、少女のヨダレのにおいを嗅いだ。
「うううううん!いや、ぃいやあああああ!!」
 女の指が、奈留の思考を中止させた。少女の未発達な性器に食い込み、陰核や小陰脚をむにゅむにゅと揉み始めたのだ。
「もしかして、ココが奈留ちゃんのお口かしら?ヨダレがいっぱい出てくるわよ」
「いいあ、いやや!お、お願いだから・・アウウアウア・・・ゆるして!!ぅあ!」
 激しく、顔を振りながらいやいやをする。自慰とはまったく違う刺激に、少女は顔を真っ赤にして粟粒のような汗を額に浮かび上がらせる。自分でするのと違うのは、予期しない刺激、ということだ。自慰ならば、必然的に自分が行った刺激がどのような結果を生むのか予想がつく。意思とは逆に行われる、身体をいいように弄ばれることに官能とともに、恐怖心が脳下垂体に広がる。
 しかしながら、また、既視感を覚えた。
 まさか、こんな体験をしたことがあるはずがない。奈留が困惑したのは、同時に脳裏に滑り込んできた映像が通いなれた学校だったからだ。
 だが、困惑は、強制された絶頂とともに打ち消されてしまった。
「ぐぐぐぐああああぐうぐ・・・!」
「お、お願い・・体が、痛い・・」
「私にどうしてほしいの?お嬢ちゃんは?」
 
 そっと、髪を撫でられると、奈留は思わず涙ぐんだ。幼いころに母親によく撫でてもらったことを思い出す。いまでも、冗談めいてそうされることはあるが、恥ずかしがって表向きは拒絶するかたちとなってしまう。このような状況になってしまうと、そんなことすらが後悔される材料になる。
「ベルトが食い込んで痛い・・・・」
「ちゃんと、頼みなさい」
「お、お願いですから、ベルトをはずしてください」
促されて、やっとのことで戒めから解放されることを切望した少女だが、そう簡単には事実現しそうにない。
「残念ながら、それは難しい相談ね」
「え?」
「あなたは奴隷だから」
「そんな・・・・・」
「反抗的な目ね、まだ、自分が人間だと信じているの?」
「わ、私はふつうの女の子です!」
 たとえ、縛られていなくても、身体の大きさから彼女にかなうとは思えない。それが、手足を縛られてだるまにされて、完全に自由を奪われているのだ。だが、負けん気の強い彼女の性格は簡単に黙っていられないのだ。
 それに、彼女から言われた台詞に紛れ込んだ、ある単語が少女の頭の中を巡っている。
「奴隷」
 いつのことかわからないが、ある場所で、奈留は常にそういわれ続けていたようだ気がする。しかし、どんなに記憶を検索しても、そんなひどい体験を思い出すことができない。もしかして、前世のことだろうかと、ちょうど、少女が定期的に読んでいる少女小説の内容を思い出した。
 「奈留ちゃん、妹さん、確か奈々ちゃんと同じ学校よね」
「え?奈々?まさか、こ・・ここに・?!」
 女の美貌を仰ぎ見る。
 「ふふ、あなたの目を見ていたら、簡単にわかちゃったわ。相当、妹さんのことがかわいいのね」
「し、質問に答えて!奈々はここにいるの?!」
「もし、そうだと言ったら・・?」
「そ、そんな・・・・・」
「あなたの想像に任せるわ、いるのか、いないのか?」
「じゃあ、両親のことは?たしか、あなたの部下が家のローンは全部、支払われたとか・・・・」
 ブロンド女は、奈留の顔を摑んで引きよせた。
「そう、そんなことを言っていたの?なら、妹さんがここにいてもおかしくないわね」
「お、お願い、妹には何もしないで・・・」
「ご両親は?」
 「・・・・?!」

 勝気な美少女も、一家ごと誘拐したと暗示する言い方に何も言えなくなった。
「ふふ、勝手に決めつけないでね、私が誘拐したなんて一言も言っていないわよ」
「・・・・どっちなんです!?」」
「さあ、想像にまかせると言ったはずよ」
「ひ!?」
 ブロンド女が手を離すと、自分の身体を支える手段がない奈留は、ぶざまに転がるしかない。その衝撃で、全身と、そして、女の子として大事な部分が刺激を受けることになる。性器の内部に食い込んだベルトは、小陰脚やクリトリス、尿道、といった部位を刺激する。
「ァウアア・・あいい・・・・いやひひぃいいいいいやあああああぁあぁっぁあっぁ!!」
いったい、以前にトイレに行ったのはいつのことだろう。だから、かなりの量の尿が膀胱に貯蔵していたのである。それが奈留が身体を制御することができなくなると同時に、対
外へと排泄されはじめた。
「ぃいやああ・・・」
 尿意が解消されたことの快感と、羞恥心が、それに知り始めた官能が、ぜんぶ、一緒くたになって、奈留の複雑な表情を形作る。それを見ると、女は聖母のような微笑を浮かべた。
「奈留ちゃん、かわいいわ・・ふふ」
 実際に、じゃあじゃあと甚大な音がしたわけではない。だが、確かに少女はガラガラヘビが発するような音を聞いたのである。それは、敏感になっていた羞恥心がそうなったのかもしれない。尿のおぞましい温かさも相まって、少女を屈辱のどん底へと落とし込んだ。
 だが、それ以上に少女を戦慄させていたのは、これと同じような体験をしたことを思い出したからだ。「奴隷」と言われた記憶と酷似している。それは同一空間での出来事かもしれない。
 すると、奈留は、「奴隷」と罵られつつ、おもらしをさせられた体験をしたことがある、ということだろうか。
 そんなことがいつ、彼女の身体に起こったのか、どう考えてもわからない。

 尿は外気に触れると急激に温度を失い、かえって、少女の身体から体温を失わせる。それがさらなるおぞましさを呼ぶ。
 中学生の少女は泣き続ける以外に、自分がすることをみつけられずにいた。
 いったい、奈々は、そして、両親はどうなったというのだろうか?
 

 

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灰色の近代文明国に咲いた、美しい姉妹愛を描く

新長編小説『姉妹』

『姉妹1』

『姉妹2』

『姉妹3』

『姉妹4』

『姉妹5』


『姉妹6』


『姉妹7』


『姉妹8』


『姉妹9』


『姉妹10』

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『姉妹』
 学校から帰宅した奈留は、家の様子がおかしいことに気づいた。第一に、二階のベランダにあるべきものがない。
 洗濯物、布団。
 通常ならば、それらが少女の帰宅を歓迎してくれるはずだった。だが。物干し竿の銀色は、文句ありげに陽光にきらめいているもの、肝心のものがまったくないのだ。
何か、家屋が空っぽになったような気がして、玄関に走る。
「え?鍵が?」
 専業主婦の母親は買い物にでも行っているのだろうか?いや、奈留が帰宅するころには、すでに終えてしまっているはずだ、夕食の準備前のひと時をテレビの前で過ごしているはずだ。初夏とはいえ、洗濯物はそろそろ入れ時だ。既にしまったのだろうか。
 それにしてもおかしい。感受性が人よりも恵まれている、というよりは過剰な奈留は、ただならぬ胸騒ぎを我が家に感じながらも、一つしたの妹の名を呼ぶのと同時に勇気を振り絞ってドアノブをまわそうとする。
「美奈!美奈!」
セブンイレブンのあたりで、彼の背中を見かけたのだ。もしも寄り道をしていなければ、すでに帰宅しているはず。
 可愛らしい妹のイメージが脳裏を駆け抜けた、その瞬間に、男のものと思われる、太い声が少女の背中を突き刺した。
「折原奈留さんだね?」
「え?」
 思わず振り返るとサングラスの男性が自分を睨みつけている。20代後半から、40歳ぐらいだろうか、それならば年齢不詳と言った方がより適当だろう。おそらく。180㎝はくだらないだろう。筋肉が発達していることがスーツの上からもわかる。彼があまりにも長身のために彼の背後に数人の同業者がいることに、すぐには気づくことができなかった。
 サングラスとは、人間の感情を隠す役割を隠匿するものだ。だから、気が小さい人間が愛用するきらいがある。
だが、この男の場合、それらを超越してあきらかに堅気でない空気を醸し出している。もしかして、母親のおなかから排泄された時も、サングラスを着用していたのではないか。そう思わせる何かが、彼から発散されているのだ。
 喪服としか見えないほどに黒いスーツが、より、いっそう、少女に恐怖心を抱かせる。

 奈留は、どれほど控えめに言っても、奈留は、かなりの美少女である。やや釣り目がちな瞳が、つんととがった小さな鼻梁と合い間って、特徴的な顔を作り出している。美形なのに個性があるというのは、かなり希少な存在だろう。
 サングラス男は、一歩近づくと、少女に語りかける、いや、宣告したと表現した方が出適当だろう。
「ご両親はもういないよ」
父親はまだ会社にいるはず。だが、母親は、ちがう。
スーツの中に隠れた猛獣が畳み掛ける。
「この家のローンはすでに支払われた」
「・・・・」
 いったい、この人は何を言っているのだろう?ロボットのような男に恐怖を感じて、後ずさると、背中をしたたかにドアに打ち付けた。むなしい音が木霊する。
「この家の所有権は、すでに、御両親にはない。だから、新しい所有者の元に、あなたは行かなければならない」
 まるで英語の逐語訳のような、サングラス男の言いように、奈留は苛立った。
「なんなのよ!
 負けん気の強さは、友人だけでなく、大人にも向けられる。しかし、この時は相手が悪かった。第二声を発するまえに右腕を背中に回してねじられ、口を分厚い手で押さえられていた。そして、黒塗りの大きな車に押し込められた。
 手の平にはハンカチのようなものが握られていた。それには、薬が染み込まれていたのだろう。
「ママ、パパ、美奈・・・」
 信頼する家族の名前を呼ぶと、少女は意識をしだいに失っていった。


 意識を取り戻した奈留は、すぐさま手足のありかを確かめようとした。なんとなれば、凶悪なサメに四股を食いちぎられる夢を見たからだった。だが、それはできない相談だった。思わず、ぎょっとなったがうめき声をあげることすらできない、奈留は、全身を縛られた上に、さるぐつわをかまされていた。
 だが、夢から覚めたとはいえ、すぐには自分の状態を認識できない。彼女は寝かされているようだった。硬い床、とても冷たいことからすると、カーペットやじゅうたんではなさそうだ。
「ムグ・・・」
 この状態から少しでも解き放たれとウと、身体を動かそうとした。その瞬間に、股間に何かが食い込んだ。痛みとも快感ともつかない感覚が少女を襲う。なんということだろう、少女は濡れていた。失禁していないことは、あきらかだった。14歳になる少女は自慰をすでに体験していたから、自分の身体に何が起こっているのか、即座に理解した。
「いや・・・・ぁ」
 鏡を目の前にしているわけでもない上に、かなり薄暗く、部屋の状態がほとんどわからないほどにもかかわらず、少女は自分の顔が真鯛のようになっていることに気づいた。顔が火照って、やけどしそうだ。羞恥心は、少女に落涙を強制した。
 いや、少女の鋭敏な感覚は、彼女をさらなる深い穴へと放り込んだ。
 覚醒しつつある意識によって、少女は全裸であることがわかってきたのである。とたんに顔が赤らむ。服を脱がして自分をこんな恰好をさせたのは、あのサングラスの男だちだろうか。それは、イコール、局所を見られたということを意味しないか、よもや、触れられた、ということはあるだろうか?もしも、そんなことが事実ならば、もう生きていけない。
 自慰を経験しているということすら、友人に言うことはおろか、そういう事実を鏡に映る自分に対してすら認められないのだ。好奇心と気持ちよさから、それを定期的に行ってしまうことを恥じていた。
 そんな少女が、なにもかもすべてを奪われて意思とは逆方向に、こんなところに監禁されている。はやく、家に帰りたい。明日までにやらないといけない宿題があるのだ。彼女は成績が優秀なために、それを目当てに頼ってくるクラスメートが後を絶たない。
 それにしても、ここは何処なのか。さらに身体を動かそうとするが、芋虫のように這うことすらできない。少しでも動けば股間を刺激することになる。言い方を替えれば、自慰をやっているような気がする。
 それが気持ちいいだけに、少女の頭の中は羞恥心と罪悪感から真っ白になった。
 耳をつんざく女性の声が、奈留から思考力を完全に奪った。おもわず、顔を上げると同時に何百もの太陽が輝いた。
 それが電燈だと気づいたときには、この部屋が予想をはるかに超えて広いことが記憶に上書きされていた。なんという広さだろう。折原家も、中産階級においては上位に位置する家庭である。父親はサラリーマンとしては高給取りであるし、家も平均からすればかなり広い方で、友人たちをうらやましがらせたものだ。
 それが、この広大さはなんだろう。まるで、ホテルのロビーではないか。この部屋だけで、奈留の家がみっつぐらいは優に入ってしまいそうだ。
 いや、今はそんなことに貴重なブドウ糖を使っているときではなかった。女性の声だ。まるでオペラ歌手のように美しい、朗々としていた。
 はたして、彼女は何と言ったのだろう?
 まるで、カメのように首を伸ばして、声がした方を向くと、それはそれは美しい女性が立っていた。身長は170㎝をはるかに超えるだろう。あきらかに日本人ではない。プラチナブロンドや堀の深い貌がそう歌っているのではない。日本人の長身というものは、どうしても、骨格の上から不自然さを否めない。だが、彼女は、完璧にバランスが整っているのだ。
 人間ですらないと表現するほどに、彼女の美しさは非現実的だった。
 そんな彼女から流暢な太陽国語が迸ったのには、奈留は心臓が微塵になる気分を味あわされた。
「あら、私が太陽国の言葉をしゃべるのが不思議?」
「ムグ・・・むぐぐ!?」
 思わず、身体をのけぞらせる。女性から発されるオーラーのようなものが、あまりにも強烈すぎて、少女を戦慄させた。テレビや映画でしかお目にかかれないスター、それも外国人だ、彼らや彼女らからは、そのような雰囲気が漂っているのだな、と奈留は心の何処かに呑気な部分を温存していた。
 だが、そんな余裕を消滅させてしまいそうな出来事が、中学生の女の子を襲った。
「ぁあアアぎゅぐう!?」
「なんて、声を出すのかしら?少し、触っただけでしょう?それとも人間、いや、太陽黒人というのはこんなに敏感なのかしら?」
 ピアニストのような、女性の手が少女の股間に伸びていた。下着、それをそう呼ぶことができるとしたならばだが、光沢のある黒い紐をすこしばかり上に引っ張った。すると、まだ蕾のような奈留のスリットに食い込んだのだ。物体に圧力をかけると、自然に同量の質量が外にでる。女性は好奇心をむき出しにして、その部分を視た。
「へえ、かなり弾力があるのね?あなたのここって、ふふ」
「むぐ・・・うぐぐぐ・・ぐぐぐ」
「なに?もっと、してほしいの?」
「ぐぐぐぐgヴ!?」
 必死に首を振るが、それは自らの進退に下着を食い込ませる結果となるだけだった。
「奈留ちゃん」
「うぐ?!」
一瞬だけ驚いたが、彼女を拉致した男たちが自分の氏名を知っていたことを尾も出した。
「ふふ、自分のいやらしい姿を鏡で見てごらんなさい」
「うぎ・・・・!?」
 とつぜん、少女は抱き起された。背中に感じる圧力にぞっとしながらも、目の前を見る。そこには、ひとり分映せるくらいの大きな鏡があった。母親も同じようなものを持っていたはずだが、それ家具調の仕様になっていて、西洋の城にあってもおかしくないような彫刻が施されている。
 奈留は、しかし、鏡に映った自分の、あまりにもあられもない姿に絶句していた。それは衣服、いや、下着というのもおこがましいほどのきわどさだ。まるで罪人のように、
身体を縦横にベルトが走って、奈留を戒めている。股間に食い込んでいるのも、同じ材質のものだろう。濡れているせいか、局所の部分だけ余計に光を反射している。
「ウウウウ・・・」
 思わず、顔を背ける。
 どうして、自分がこんな目にあわないといけないのだろう。誰か、助けてと叫ぼうとするが、口腔に痛いほどに食い込んだ何かが、少女にまともな構音を許さない。このままだと、それまでが自分の身体の一部となって、永遠に言葉を失うような恐怖を抱いた。
 

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『少女が死にました1』18禁バージョン

 佐原陽子は首をひねっていた。両親の遺体と対面して、そのショックから冷めるのにかなりの時間がかかったとはいえ、今、彼女が置かれている状況とは幸福とはほど遠い状態だからである。
かつて、伯母と呼んでいた相手は、ヴァージョンアップして、継母と呼ぶことになった。それを聞いて、ゲーム好きのお兄さんがそう言っていた。後から思えば、何とも無神経な中学生だったが、当時の陽子は、そんなことを忖度する余裕がない。
 今からおもえば、赤西家に到着した夜に継母から聞いた言葉、「今日は、陽子ちゃんは
お客さんだからね」の意味が次の日になってわかるようになってきた。
翌朝、土曜日だったので学校は休みだった。
遠くから鶏が鳴く声が聞こえると途端にふすまが開いて、そこには継母が立っていた。昨日と裏腹に何処かかしこまっていて、非常に他人行儀だった。その態度に不自然に感じるより先に冷たい言葉をかけられた。
「このふすまを境に、ここは佐原家ですからね」
自分に対して敬語?と陽子は思った。
どういうとかと質問する前に、朝食が乗った盆が目の前を移動する。まるで浮遊しているように見えた。
「明日から、いえ、今晩からは自分で取りに来てもらいますよ。いいですね、陽子さん」
「え?・・・はい」
思いよらぬ言葉に、陽子は、半ば、いや、半ば以上、強制されたかたちで肯くしかなかった。
「お、おばさん・・」
「おかあさんでしょ?」
 言葉の内容と裏腹に、冷え切った印象に頬を強張らせる。
以前の伯母とは打って変わった態度に、少女は言葉を失っていた。
「あ、あの・・・」
「何かしら?」
「学校のことですけど・・・・」
つられて、思わず敬語になってしまう。
「保護者になったんだから、当然の義務よね」
「な、何が?」
「あなたを学校に行かせること・・・」
 保護者という言葉に、かっこ付がついていることがあからさまだった。いったい、どうしたというのだろう。何か、自分に落ち度があったとでもいうのだろうか。継母は、彼女にそんな考えをする余裕を与えない。
「それから、佐原家の玄関はあそこですからね」と指差したのは御勝手だった。すぐにわかったことだが、そのために少女にこの部屋を宛がったのである。佐原という、少女が失ったはずのみよじが異様に軽々しく聞こえて、とても不安に思った。
「いいですか、ここからは他の家ですからね。陽子さんはお友達の家に勝手にはいらないでしょう?どそういう時はどうする?」
「ピンポンを押します・・・」
「よくできました。ここにはそんな気の利いたものはないから、これで代用してちょうだい」と渡されたのはベルだった。
何か、ショックなことをいわれているのは、理解できるのだが、あまりにも矢継早に繰り出してくるために、頭が即座に吸収するのを拒否している。電気と同じでショートすることで、いちどに高い電圧がかかることを防いでいるのだろう。
そうしたときに、まず彼女が自分を守るために思い出したのが、従妹である、いま、姉妹になった、恵美たちのことだった。
「あ、恵美ちゃんは・・・・」
ふと、継母の顔が、かつて陽子が知った伯母に戻ったような気がしたが、それはごく一瞬にすぎなかった。
「恵美は友達のところに遊びに行っているわ。あなたには用があるんだけど、買ってきてほしいものがあるの」
 昨夜、恵美と彼女の妹の百合は、陽子を訪れて、ずっと、泣き続ける彼女の背中をさすってくれた。記憶では、明日、友達に紹介してくれるということだった。きっと、後で連れてきてくれるのだと高をくくった。
 継母から渡されたものは、お金と半分に折った紙だった。開く前に口頭で説明された。
「買うべきものと道順を書いたから、よろしく」とそっけない。だが、言うべきことを言わねばならない。
 つい、伯母の態度につられて敬語になってしまう。事実、彼女がかけてくる無言の圧力にはそうしなければならないように思わせる迫力が備わっている。
「お、お願いが・・・あるんですけど」
 それは、従妹たちにも言ったことだった。
「何かしら?」
「パパとママのことは、誰にも言わないでほしいの」
「そう、わかったわ」
 本当に理解しているのだろうかと、疑わせるような言い方だった。その上、さらに渡された買い物籠をぶら下げてふすま跨ごうとすると、冷たい手と腕がにょっきっと出てきて、御勝手を指さした。無言だった。それがなおのこと冷たく感じた。顔を見上げると、普段は本当に美しいと感嘆していたのに、それゆえになおさら寒々と感じられて、おもわず涙ぐんでしまった。
 とぼとぼと、外に出る。いつ、用意したのか、彼女が履いてきた靴がそこにあった。
 
 しかし、元来、根が強い陽子のこと、「きっと、気に入らないことを私がしたんだわ」と気を取り直した。頑張って、この家に役立つことをすれば認めてくれるにちがいない、と健気にも、何の保証も担保もないのに、力瘤を作ってみた。

 陽子がひたひたと買い物に向かうと、ちょうど、恵美たちがやってきた。
「どうしたの?買い物に行くなんて?みんなに紹介しようって言ってたじゃない」
「だって・・」
 いつにない従妹の態度に、少女はサメに指を食いちぎられた気分になった。いったい、彼女が何を責めているのかわからない。買い物は継母に頼まれたから、やっているのだし、もしも、それを知らないというならば、きっと説明すればわかってくれるだろう。しかし、従妹は、陽子の予想外のことを言い出した。
「陽子ちゃんから、買い物に行きたいって、催促したんだって?・・・・」
 何か言いたげに、従妹は黙りこくってしまった。そんなに睨まないでと、陽子は思わず涙ぐんだ。
 恵美にしてみれば、今、自分を支配している感情をどう説明していいのか、うまく言語化できずに戸惑っているのだ。あいにくと、それは身近な大人が、しかも、それを言うのにふさわしい人間が変わりを果たしてくれた。
 たまたま、所用があって出かけていた父親が帰宅したのだ。
「陽子ちゃん、別に気を使わなくていいんだよ」
 少しばかり、頭に白い物が混じっているが、ふさふさした髪の毛からは、一見、学者風のインテリめいた知的さを醸し出している。陽子は、小さいころからこの叔父に好感を持っていたから、彼の好意を素直に受け止めたかった。しかし、それはできにくい状況だった。が、しかし、むしろ、彼が出現したことで場の空気は悪化の一途をたどったようだ。
 陽子が、叔父、正しくは継父だが、彼に対していい子ちゃんの態度を取ったために、恵美が妹の清美の手を取って、みんなをあさっての方向に連れて行こうとした、少女の知らない場所へと。
もう一人の従妹、清美は小型の恵美というほどにそっくりなのだが、心配そうな顔でこちらを見ていたが、姉によって無理やりに引き寄せられた。ふと見えた、恵美の顔は、あきらかに自分に対して反感を抱いていた。顔をつぶされたとでも思っているのだろうか。だが、継母から買い物を頼まれたのは事実なのである。
継父は、すでに家の中に消えていた。だから、自分の心を補強してくれる相手をみつけようにも、そこには誰もいなくなっていた。

何かに促されて中の紙を取り出して開いてみると、はたして、そこには何も書かれていなかった。キツネに包まれた気分で玄関に入っていく。そして、家の中に入ろうとすると、継母が笑っていた。だが、それにはとてつもなく温度が感じられなかった。
「昨日、教えたこと、まだ覚えていないの?」
「・・・・」
むしろ、強烈に怒鳴りつけられた方がどれほど楽だろう。しかし、彼女は表情を変えずに続ける。
「何って言ったかしら?」
「・・・・・」
継母に言いたいことは山ほどあるが、頭の中が真っ白になってしまった。その様子を楽しむように、冷たい脅迫は続く。
「でも・・・」
「でも、じゃないでしょう・・」
「何も、書いてありませんでした」
「そう、書き忘れたみたいね」
勇気を振り絞って言いたいことを告げても、あっさりとそう返されると、もはや、どんな反応をしていいのかわからない。
「この件はわるかったわ・・・」
継母は無言で責めてくる。よもや、疑うようなことはないでしょうね、ということだ。
「ご、ごめんなさい・・・・」
思わず、涙ぐむ少女。
「別に泣くことないわよ」
「・・・・」
 優しげにほほ笑むが、偽りのマリアにしか見えない。
「ちょうど、新しい用ができたから、そちらに行ってほしいの、買い物は恵美に任せるから」
「はい・・・・」
 「そうだ、陽子ちゃんにはたんとオメカシして、言ってほしいいんだ」
急に猫なで声になったのに驚いて、少女は思わず唾を飲んだ。
 怯える少女を玄関に招じ入れる。決して、入ってはいけないと言われているので、薄いえんじ色の床が、あたかも黄金のように思える。伯母が連れていったのは、少女も入ったことのある恵美の部屋だった。
アイボリーのクローゼットを開くと赤いワンピースのドレスを取り出した。まるで余所行きの服に驚いた。彼女の姿勢から、明らかに着用を命じているのがわかる。
従妹の服を、彼女の許しを得ずに着ていいものかと、訝りながらもそでを通す。彼女の方が背が高いし、目方もあるのだから、当然のようにサイズが合わない。だが、陽子がふとっているというわけではない。小学6年生にしては背が高いが、どちらかというと痩せている、ローレル指数からすれば、従妹よりもパラメーターが低いだろう。
陽子は改めて自分の身体を鏡に映してみた。
身体に食い込む生地。あきらかに、これは小さすぎる。もう少しで乳首が見えてしまいそうだ。思わず胸を隠す。幸か不幸か、少女は気づかないことだが、おとなの目線からすれば簡単に見えてしまう。
おまけに、丈が低いために少しでも歩けばおしりが見えてしまいそうだ。
とたんに、顔から火が出てしまいそうだ。
 この格好で、いったい、何処に行けというのだろう。外を歩くなど、羞恥心の強い少女には耐えらないことだった。
 

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『由加里 107』






 「オナニーしてみてくれない?」

 それは、何回も由加里が拒否してきた命令だった。外見からは容易に想像できないほどに頑固な態度が見たくて、照美もはるかも、彼女が従わないことをわかっていて、あえて、同じ命令を下したものである。そして、後に帰ってくる反応を観察しながら二人は嗜虐心を満足させていたものだ。

 由加里も、それをわかっている。だが、わからないことがある。

 今、こんな夜更けにわざわざ自分を呼び出した理由はなんだろうか?

 知的な美少女は、怯えながらも二人の表情から真意を読み取ろうとした。だが、まったく不可能だ。顔の表面が異常につるつるしている。すべての光を反射してしまう、ちょうど鏡のようで、由加里の思惟は侵入できずに締め出されてしまう。



 この二人は恐ろしい。当たり前のことを今更ながらに思い起こされる。冷たい床がそれをその思いを強くする。クラス全体に責められているもむしろ、この二人だけの方がより受ける精神のダメージが強い。あるいは、苦痛の性質が違うといった方がより適当かもしれない。



 もはや、沈黙は一分以上も続いている。由加里は、このような時に何をすべきか、二人に厳しく躾けられている。沈黙は大罪だ。自分はご主人様を悦ばせることだけに存在価値のある、おぞましい存在なのだ。だから、すぐにも口を開かねばならない。奴隷として何をすべきなのか、それを考えてすぐにも実行しなければならない。しかし、それが思いつかない時には平身低頭して、ご主人様に許しを乞い、かつ、どうすればいいのか、お伺いしなければならないのだ。

 そのような文章はなんども復唱させられ、骨の髄まで染み込んでいるはずだった。

しかしながら、極度の緊張と恐怖のために口が開かない。歯と歯が当たってかちかちと音を立てている。

しかも、それを自分が出しているなどと実感できない。心が何処かに旅しているのだ。どうやら、それは精神のセキュリティシステムが作動しているらしい。だが、心はともかく、被虐者の肉体にとってみれば本当に自己保全につながるのが疑問である。




事実、照美は声を荒げると、よつんばいになっている由加里の背中に足を乗っけるとぐいぐいと踏みつけ始めた。はるかの他は誰もいないだけに、開放的な気分から嗜虐心が最大限に解放されている。そんな様子を見て、はるかは、まるで試合中のような興奮を覚えるのだった。なぜか、相手が予想以上に実力を備えていて、自分の攻撃がうまくいかないようなときによりいっそう燃えるようなそんな気分である。

「本当の赤ん坊に戻っちゃったのかな?西宮は?!」

少女の髪を乱暴な手つきで摑むと、はるか、今の今まで親鳥が温めていた卵のような腐ったぬくもりを感じて気持ち悪くなった。自分が虐待した少女が流した涙が染み込んでいるような気がしたのだ。はるかの感受性は、主人にそれを完全に無視することを禁じた。

「ヒイ・・・!?」

二人の手足は、無理やりに少女を肉体に呼び戻したようだ。由加里は、身体をからめ捕られて無理やりに戻されたような気がした。きっと、自分は死ねないのだと思った。仮にそうなることがあっても二人に無理やりに蘇生することを強要されるだろう。完全に支配されている。全身を見えない手枷足枷で縛られて、自殺することすらままならない。

「身体に、再び教えてやらないといけないみたいだな」

「はるかは、だめね。さすが体育系だわ」

「照美、おまえは褒めているのか、けなしているのか?」

「もちろん、後者よ。この体育会系ばか」

 二人の軽やかなやりとりを聞いていると、自分が置かれた状況があまりにも非現実的に思えてくる。それが少女を惑わせた。今、体験していることはすべて夢の中の出来事のように思えてきたのだ。

口が動いた。

「わ、わかりました・・・オナニーします・・・」

「なんだって?よく聞こえないなあ?」

さらにテンションが上がって、はるかの声が荒ぶる。それが由加里の理性を復活させた。

「ヒッ?!」

 突然起こった大きな音に反応した幼児のような顔をして、由加里は二人の顔を見た。今、自分は何を言ったのだろう、言ってしまったのだろう、自問自答しようとするが記憶が定かではない。ただ、とんでもないことを言ってしまったのだということだけはわかる。

それを会話の前後から推論すると、自殺の予告に等しい文々を述べていたことがわかった。

「西宮さん、今、何を言ったのかしら?もういちど繰り返してくれない?」

まるで母親が幼い娘に質問するように、ちょうど言葉と言葉の間をオブラートで挟み込むように甘ったるい口調で、言った。由加里にしてみれば、唐辛子を砂糖の塊でくるんだものを無理やりに食べさせられるようなものである。気持ち悪いことこの上ないが、ここは奴隷の身体、ご主人様には臣従しなければならない。わからなくても、何かを言わないといけないのだ。

「や、やっぱり、できない。できません・・・・わ、私・・・もう、許して・・・・クダサイ」

 このふたりに仕えるにあたって、その動詞がいかに無意味なのか、痛いほどにわかっているつもりだったのである。それにもかかわらず使ってしまう。自分が口走ってしまったことがどれほどに重大か、記憶喪失になった今となっても、感覚で理解しているからだ。

 照美は、被虐者が瀬戸際まで追い詰められていることを知っている。もうひと押しで白旗を上げることを理解しているのだ。 

「西宮さんは本当に都合よく、記憶喪失になるんだね?」

「・・・」

 照美の猫なで声などそうお目にかかれるものではない。その意味において、この少女はかなりの恩恵に浴しているといえた、ただし、本人が望めばのはなしだが・・・・。

「・・・・うう」

「泣いてちゃ、わからないわよ。西宮さん」



数万もの針で全身をつつかれているような気がする。照美たちは、こうやってじわじわと由加里を苦しめてだんだん弱っていくのを見て楽しんでいるのだ。それならひと思いに殺してくれた方がいい。

この美しい少女が自分に向ける憎しみの深いことと言ったら、高田や金江の比ではない。二人は面白半に自分をおもちゃにしているところがあるが、照美のばあい、仮にそのような説明ができる部分があったとしても、その背後にあるのは、殺意に裏付けされた運命的な憎しみなのだ。

そんなけったいなものと正面切ってやりあうよりも、いっそのこと、ここでオナニーをしてしまうべきかもしれない。

海崎照美という人間ならば一度交わした約束を違えることがないだろう。

きっと、もういじめないだろうし、ほかのクラスメートからも守ってもらえるだろう。

しかし、それがなんだろう。

この世でもっとも自分を憎んでいた相手に守ってもらうとは、どれほどみじめなことなのか。しかも、目的を達して飽きた、という但し書きがついている。こうまでされて生きている理由があるのだろうか?

それに、一度、加虐という美味しい肉の味を知った人間がそれを簡単に忘れられるだろうか?特に性質の悪い肉食獣は、言うまでもなく高田と金江の二人である。どんな手段を使っても、自分を服従させようとするにちがいない。

ここまで考えて、とんでもない考え違いをしていることに気づいた。クラスメートたちは自分を守ろうと言い出しているのだ。おそらく、それをまったく信用していないのだろう。だから、ここまで心が萎えるのだ。なんて嫌な人間なのだろう。守ってもらう資格なんか自分にはない。友達なんているべきじゃないのかもしれない。

そう思うと、二人の前で、自分を慰めてもいいような気がしてきた。思い切ってやってしまおうか。

しかしながら、犬以下の存在に堕ちることで、楽になろうか。それは彼女らだけに対することではない。人前でこんな恥ずかしいことをできる人間は、誰に対しても主人奴隷の関係以外の関係を築くことは不可能になるのだ。それは、家族に対しておなじことだろう。

だが、疲れ切った由加里の身体は休養を必要としていた。

「ほ、本当に、もう、いじめないんですか?あ、あんな・・う、ひどいこと、もう、しませんか?」

 大粒の涙がこぼれた。照美は、あまりの大きさに床に落ちるに際して、たしかに大きな音を聞いた。

 走馬灯のように、ひどい記憶がよみがえる。

「ええ、もうしないわ。そうしたら、あんたは死んだも同然だから・・・・」

「・・・」

逆説的な言い方になるが、きっと、親友は、由加里にオナニーをさせたくないのだろうと、はるかは思った。ここでやらせてしまっては、何か心残りがあるのだろう。本当の照美の姿を見るためには、体内に残った怒りや憤懣を完全に昇華させてやらねばならない。

 はるかは、思わず苦笑を漏らした。思わず浮かんだ二文字がこのような状況に合致するだろうか。知的にも人並み外れたものを持ち合わせる、アスリートの卵は、それに気づいてしまう哀しさを味わっていた。



 「じゃあ、したくないなら、さっさと帰って、もう、用はないから」

冷酷に照美は言い渡す。

 なぜか、恥ずかしい行為を命じたときよりも、はるかの耳にはよりひどく聞こえる。彼女の予想通りに、由加里は、童女のようなきょとんとした顔で、自分の所有者の酷薄な美貌を仰ぎ見ることしかできない。

 「どうしたの?やりたいの?そうよね、西宮さんは露出狂のヘンタイさんだもんね、よかったら、街中に出てやる?」

「ぁ・・・!?」

 照美の突っ込みに、平静を取り戻したようだ。しかし、突然に性器を弄られて、官能の海に引きずり戻された。

「ぁあっぁう!?いや!!」

逃げようとすると、はるによって取り押さえられた。

「簡単なことさ、西宮、今、あんたがしてもらっていることを、自発的に行うだけだ。同じことだろう?」

 照美の指は、由加里のすでにぬるぬるになったハマグリをこじ開けると、それはまったく力を入れないのにすんなりと受け入れたが、わざわざ実況中継をしてまで、自分の所有物を辱めて、その自尊心を取り上げることに励む。

「ほら、見てごらんなさいよ。西宮さんのいやらしいクリトリスが顔を見せてるわよ。入院している間も、相当、自分で楽しんだんでしょう?三ミリぐらい膨張しているわ!」

「ぃいやああ!いやあ!やめて!やめて、あぁぁ。うう、そぉ、そんなこと、言わないで!!えぇぇl」

「本当に気持ち悪いな、なめくじみたいだ」

 どうして、この二人の言葉は内面にまで突き刺さってくるのだろう。高田や金江に言われてもたいして感じなくても、二人に言われると、頭の上にコンクリートの塊を落とされたような気がする。

 わけもなく、涙がほおを伝わって顎を素通りする。こんなこと言われていまさら傷つくはずがないのだ。しかし、涙は止どめなく溢れてくる。

「ねえ、西宮さん、どうしてすぐに帰らなかったの?こうしてほしいからでしょ?」

「ち、ちがう!ぃぅぅ?ぁぁ・・はぁ・・・あぅう!?」

まるで万力のように両肩に押し付けられた、はるかの手が、その圧力を減らしているにもかかわらず、逃げようとしない自分をまだ、由加里は発見できずにいた。






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経過報告
 『由加里 107』執筆中。進捗率15%・・・。

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『由加里 106』


 由加里にとって、照美の家族のことなぞ、いっその事どうでもいいことだった。自分を虐待する人間の母親のことなぞ、完全に関心の範囲外にある。今、一番大事なのはわが身であって、それ以外のことを考える余裕はなかった。照美の一方的な憎しみの前に、命の危険性すら感じているのである。
 そのために、もしも、照美の両親なり家族が存在していれば、この場からの忌避はおろか、いじめそのものから解放される可能性すらあるかもしれない、という事実に気づくことすらできなかった。
思考回路はほぼショート状態にあっても、鋭敏な感受性は健在だった。
 この家には、レモンに糖蜜を混ぜたような、実に甘酸っぱい香りが立ち込めている。
 だが、この懐かしい匂いはなんだろう?
 由加里は不思議だった。かつて、どこかで嗅いだような気がする。実際に家族も、家も、 存在しているにも関わらず、知的な美少女は、いま、自分が住んでいる場所以外にいるべき家があるような、彼女にしてみれば実に不思議な感覚に囚われることがあった。真実を知っている母や姉ならば、その正体について心当たりいや、それどころか真実そのものを示すことができるのだが、何も知らない由加里がそれについてぼんやりでも洞察していることは驚くべきことだろう。
 この家には、そのような匂いが充満しているのだ。
 だが、その正体について、彼女はまったく気づいていない。

 一方、照美とはるかは、由加里について何もかも知っている。
 そのことが、二人の視線に、それぞれ、別の彩を施していた。しかし、それは普段、学校でいじめるときとなんら変わることはない。単に、虐待者と被虐者の関係にすぎない。だが、由加里してみれば、この家の雰囲気と合い間って、何かおぞましい空気を敏感に感じざるを得ないのだった。

 完全なる視野競作が知的な美少女を襲っている。この夜は永遠に続くのではないかと思われた。この広大な宇宙に世界は照美の部屋だけにしか存在しない。もはや、誰にも助けを呼ぶことは出来ない、なぜならば、外に世界は存在しないのだから....。
 
 大声を出して外の住人に救いを求めるということは、由加里にはありえない。ただ、二人から受ける暴虐をそのまま受け入れるよりも他に方法がないのだ。
そんな由加里に照美の酷薄な声が響く。
「西宮さん、今日はなんでわざわざこんな時間に来てもらった、と思う?」
 わざとらしい区切りが、余計に照美の酷薄さを助長させる。
「.....に、西宮、ゆか、由加里は、かい、海崎さまの奴隷で、おも、おもちゃです...ど、どんな、め、命令でも、よろこ、喜んでしたが、従わせて、従わせていただきます...ウウウ」
「そう....」
 照美のしなやかな手が無知のように撓って、由加里の頬を摑むと、顔全体をゆっくりと撫で回し始めた。何だか、悪意の粉を擦り込まれているような気がする。少女は恐怖のために声はおろか吐息さえ出なくなってしまった。
 由加里の顔を無理矢理に自分の方向に向けさせる。哀れにも、顔中がミルクだらけになっている。そんな姿を見て、照美はほくそ笑んだ。こんなにひどい目にあわされても、愛らしさを失っていない。それが憎らしいのだ。
「西宮さんは本当に赤ちゃんみたいね」
 知的で大人しい由加里をそう決めつけることで侮辱しようとしている。そんな意図は既に読み切っているのだが、どんなにわかっていても照美が醸し出す恐ろしさに馴れることはない。
「....!?」
 もはや、知的な美少女に助けを求める気力が残っているはずがない。照美はそう見なしていたが、事実は違った。こんな風に感じる自分を天真爛漫だと思わないでもないが、クラスメートたちが自分を支持してくれている。その可能性に思いを馳せているのだ。
 照美は、自分の所有物の常ならぬ様子に目敏く来付いたのか、「なあに?まだ、自分に味方がいるとでも思っているの?ま、別にあなたに味方が何人いようとも構わないから、私だけがあなたを憎むのを止めない。何処に逃げてもおいかけて殺してやる」
「ひ..…」
 それは本当に純粋な憎しみだった。色でいえば純粋な黒。ある宇宙飛行士が体験したことだが、宇宙空間でみる夜空、これは変な言い方になるが、それは地球から見る星のない部分と違って何もない「黒」なのだそうだ。それは体験したものではないとわからないことだが、「穴」としか表現できない、ということだ。
 被虐の美少女は、加害者に対して、彼女が自分に対する殺意を超えた憎しみに対して、そのように思うしかない。
「ゆ、許して...」
 獲物が、自分の敵意を受けとめるだけのエネルギーを有していない。そのことに気づいた照美は幻滅して、床に投げ捨てた。
「ウウウ..ウウウ?あぁ,痛い!!うう・・あああ?」
 由加里は逃げようとして、立ち上がったが零れたミルクに足を奪われた。そして、滑った先には体力的には、照美よりもさらにおそろしい、鋳崎はるかが立っていた。

 彼女の声を聴く前から、少女は全身に激しい痛みを感じていた。喉がからからに乾燥してまったく声が出ない。
「西宮、何処に行く?」
「.....」
 はるかは、内心で自分が安っぽい悪役を演じていることを知っている。その上で楽しんでいるのが、彼女が彼女である所以であろう。
「それにしても、こんな恥ずかしい恰好で街に出られたわね、こちらが恥ずかしくなるくらい」
「イヤ...ああ!?」
 既に用意していたのか、照美はビニールの手袋をはめると体操着の上から正確に由加里の膣を捕まえた。
「クふん!!いやあ!!や、やめて!」
 反射的に局所を護ろうとする両手は、無惨にも、はるかによって取り押さえられた。
 照美は、ちょうど俯せになった由加里の背中に座って、彼女の局所を攻撃する。
「ふふ、体操服の上からでもわかるほど、濡れてるじゃない。ぬちゃぬちゃよ」
 もちろん、あらかじめ手術用の手袋を用意してある。熱伝導が鈍い物質だけに、常温であっても冷たく感じる。マネキンの手に凌辱されているような感覚が少女の中に入り込んで、彼女の内臓を食い破る。
 「こんな風にしてほしかったんでしょ?あいにくと誰もいないから、ぞんぶんに、西宮さんの、おぞましい欲望を満足させてあげるわ」
 まるで官能小説の登場人物が吐くような台詞に、はるかは驚いた。もしかして、親友もその手の作品に目を通しているのかと思うと、微笑がこぼれてきた。
「何よ、きもちわるいわね、はるか、どうしたのよ?」
「いや、なんでもない、ただ、照美も成長したんだなってさ」
「ヒイ・・いぃぃぃぃぃ!痛い!!」
 哀れな被虐者の髪を乱暴に摑んだ。そして、自分の顔の位置にまで無理やりに引き寄せる。
「奴隷の扱いが小説じみてきた」
何をわけのわからないことを、というような表情をつくると、由加里の膣奥深くに指を侵入させた。
「ぃいやあああああ!!」
腰を奇妙にひねらされた格好で、少女は絶頂を迎えてしまった。照美の行き過ぎた行為によってそうなったのか、あるいは、はるかの「奴隷」という言葉によってなのか、判断がつかない。あるいは、両者があいまった結果なのかもしれない。

 照美は、行儀の悪い犬を叱るように言った。
「あら、あら、床を汚しちゃって、どうすればいいのわかっているわね」
「ハイ・・・・・」
幼稚園のお泊り会でおもらしをしてしまった幼児のような顔でうつむくと、いつもやらされているように、自分が分泌した液体に口をもっていく。
 屈辱的な姿勢、由加里の嗅覚を刺したにおいは、酸味がかかったピーナッツバターである。酸味が強いといっても、さきほどの懐かしいレモンのにおいとは完全に一線を画している。
「本当に、犬以下ね、赤ちゃんなんて言ったのは間違いだったわ。西宮さん、どうして、そんなあなたが、オナニーをするのを嫌がるのかわからないわ」
「・・・・・!?」
 照美の台詞の中にある、ある単語が由加里を凍りつかせた。
「何?まだ、残ってるじゃない?誰がやめていいって、いったのかしら?」
「・・・・・」
 従順な奴隷が主人のいうことを聞かない。その理由を知らない者は、三人のうちで一人もいない。
 言った本人は、意識的にその単語を選択したのだ。その結果、自分の所有物がどのような反応を示すのか、もちろん、計算済みである。はるかも、親友と同じように理解している。
 一方、被虐者はどうだろう。
 上品な唇の周囲に付着した、自らの分泌液による汚れにすら無頓着なままで、知的な美少女は、ただ、唖然とした顔で主人の顔を見つめていた。そして、決意したように口を開いた。
「いやです!絶対に、それだけは殺されてもできない!!」
 所有者は、奴隷が自分が思ったように動くことが面白くてたまらない。しかも、その反応が予想以上であることに、気づくと、嗜虐的で知性的は悦びに、美しい顔を歪めるのだった。
 はるかは、友人の顔がたとえ、狂気に似た感情に歪んでも美しさを失わないことに、驚きを感じていた。
「照美、こんなブザマな姿をさらせるなら、もう、やってくれるんじゃないか?」
「そうね、やってもらうわ」
「いや!!」
 由加里は、華奢な身体を折り曲げて、必死に懇願、いや、抗議した。奴隷が主人に反旗を翻したのである。
そんな態度も織り込み済みという顔で、照美はもう一度言った。
「西宮さんのオナニーが見たいのよ、やって!」
「絶対に・・うう・・いや!」
「そう、もしも、やってくれたら、いじめをやめさせてもいいのよ。私たちはあなたにかかわらないし、親しい友人の、高田さんや金江さんにも言って聞かせるわ。これで、クラスと部活、両方とも、あなたにとって平和な世界になるわよ」
二人に対する軽蔑を隠さない口調は相変わらずだ。
「信用できないって顔ね。だけど、あなたに人前でオナニーさせたら、もう、目的は達しちゃうわけ。おもちゃとして用済みなのよ、おわかり?」
照美の美貌が近づくと、さくらんぼうのようなとても上品で芳しい香りが広がった。それは、彼女が発する恐怖とは完全に性格を異にする。
照美は、もういちど言った。
「西宮さん、オナニーしてくれない?」
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日記帳
 18禁小説サイトには、半年以上放っておいたにもかかわらず、来訪者が毎日100人、それに較べて普通のサイトは10人来れば多い方だ。

 オレは官能作家を目指すべきなのか?迷うな。

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 『由加里 105』

 「こ、こんな・・・」
 化粧用の大きな鏡に着替え終わった自分を映してみて、由加里は絶句した。なんと言うことだろう。まるでビキニの水着姿の女性ではないか。いや、それが学校指定の体操着である故にいっそう淫らに見えた。
 おそらく、父親が帰ってきたのだろう、ふいに、階下から野球中継の騒音が聞こえてきた。巨人の四番が逆転ホームランを打ったらしい。由加里は、都民のくせに巨人ファンではない、いわば非都民なのだが、このような異常な状況におかれてそんなことは頭にない。
「ウウ・・・、こ、こんな恰好で外に?」
 父親の帰宅と野球中継が彼女にもたらしたものは、改めて自分の身分と年齢だった。中学2年生、14才、そのような少女がこんなに夜遅く、町に消えていく。それは、既に死語となった「不良」という言葉が真っ先に浮かんだ。
 だが、自分を優等生だとみなしている由加里が「不良」と同じ行動をとらなければならない。実は、最近まで、そのことにすら気づかなかった、はるかによって小説の訓練を受けるようになってはじめてそういう自分に気づかされたのである。
 
 これから、自分がしようとしていることは、家族への裏切りのような気がした。加えて、知的な美少女の道徳観念に悖るようなこと、それは今、彼女が目の当たりにしているような恥ずかしい恰好で外出することだ。もはや、普通の女の子、いや、人間ですらなくなるような気がした。西宮という姓を剥奪されて、政府公認の奴隷身分に落とされるような錯覚に襲われた。
 だが、赴かねばならない、自分を所有するご主人様のもとへ。
 念仏を唱えるようにSOSを家族に対して発しながら自室を後にした。しかし、音が家の中に響かないようにできるだけ静かにドアを開閉した由加里。彼女は、隣の部屋で泣いている妹には気づかなかった。姉らしい態度で接してくれなかった由加里に対する、いわば、恨みの涙だった。けっして、悲しみが主原因ではない。
 そのことに気づくほど由加里に余裕があるわけがないのだが、普段の状況であっても、人よりもはるかに他人の傷には敏感な少女であっても、気づくことが出来たのか、それは疑問である。聖人と称せられる人間であっても、事、自分よりも下のきょうだいには、以外と一ミクロンの疑いをはさむことなしに、他人からみれば実に傲慢な態度を取っているものだからだ。
 この点に関して言えば、由加里はその例に漏れないが、郁子の友人たちに比較すればはるかに本当の意味で妹思いの姉であったこともまた事実である。それを指摘して、郁子を我が儘だと非難するのは簡単なことだが、彼女がおかれた特殊な境遇を加味すればだれしも考えを変えるかもしれない。
 彼女は無意識のうちに気づいているのである、二人の姉と血が繋がっていないことを。しかし、どうしたことか、意識においては、自分は貰いっ子であり、家族に愛されていない、と間違った結論を出してしまった。それが姉に対する歪んだ愛情表現につながったのかもしれない。

 そんなことは、しかし、当の由加里にしてみれば関知しようがないことだった。
 忍者顔負けの潜み足で階段を降りると廊下を急ぐ。これほどまでに我が家が広いと思ったことはなかった。なんとしても、このみっともない姿を家族の誰にも見られてはならない。しかし、その反面、捕まえてほしい、と矛盾した思いに身体を裂かれている。

 人間とはなんと救いがたい生き物かと、知的な美少女は思った。

 だが、そんな高尚な思考などあさっての方向に飛び去ってしまう羞恥心が、彼女を襲おうとしているのである。細心の注意を払ってドアを閉めると、自転車を駆って、夜の町へと自分の身体を泳がせる。

 すーすと、性器にまで風が侵入してくる。かんじんの部分はサドルのでっぱりにぶつかって恥ずかしい刺激を、ペダルを漕ぐたびに、一定の感覚で伝わってくる。その度に華奢な身体をぴっくと捻らせる。
 いじめられっ子にひどい行為をされる前から、少女は泣いていた。常に誰かの視線を感じる。照美とはるかの個人的な所有物となった由加里は、風呂やトイレに入っている時でさえ、彼女たちの視線から自由ではない。
 しかし、今は、複数の、それもいやらしい男のものだけでなしに、同性の蔑むような目つきにも悩まされていた。むろん、人通りの少ない夜だけにほとんどは彼女の被害妄想にすぎない。だが、彼女がそういう誤解をするにあたっては、それだけの理由が与えたものだちがいた。
 それがクラスのいじめっ子たちに帰される罪であることはいうまでもない。
  由加里は、自分にまとわりついてくるそのような者たちを振りきるためにも必死に漕ぐ。しかしながら、それが必然的に、いじめっ子たちの中のいじめっ子、照美の元へと連結する、さらなる矛盾迷路に彼女を追い込んでいく。
 彼女にとって海崎照美とは、いじめっ子というカテゴライズをはるかに超える存在だったのかもしれない。もちろん、鋳崎はるかも同様だと言わねばならない。
 それにしても、普段見知っている街が夜のとばりが降りるとこうまで変わってしまうものか。はるかから渡された小説の中に、パラレルワールドを扱った作品があった。
 いじめられている女子中学生が一夜にしてパラレルワールドへと旅立ってしまう。なんと、その世界においては、加害者と被害者の立場が真逆だった。その少女は、クラス全体からいじめっ子という立場を熱望され戸惑うという、実に少女にとってはタイムリーな話である。

 現在完了形なのは、まだ読み終わっていないからだ。はるかは、いかにも体育会系の少女という外見から考えられないほどに魅力的で繊細な神経を持っている。由加里は、気丈にも訊いてみた。「もしかしたら、別世界では別のことが起こっているかもしれませんよ」
「何、この世界では私たちがあんたをいじめているのさ」とこともなげに言ったものだ。自分でいじめているという自覚があるいじめっ子はめずらしい。
 由加里は、この二人には特に恐怖を抱いている。これから、彼女たちにオモチャにされるのだ。それはいつものように五人で辱められるよりも、さらにおそろしい体験だと怯えている。
彼女は、あれほどまでヒドイ目に合わせられながらこんなことを思っているのだ。
・・・・もしも、パラレルワールドというものが存在するならば、あの二人と親友でありたい・・・・。

 その二人は、由加里の顔を見ると、あたかも10年来の親友のように歓待した。
「こんばんは、西宮さん」
「・・・・・・」
 由加里は、自分の所有者である二人に、同じように挨拶を返すことを躊躇った。なぜならば、「こんばんは」を敬語に変換するとどうなるのか、彼女の国語の知識では不明だったからだ。
「お、お会いで、できて、光栄です・・・・」
「ま、入ってよ。それにしてもすごい恰好ね。本当にその姿でここまで来たの?なんか羽織ってきたんでしょう?」
 近所でも評判の美少女は知っていた、自分の所有物がそんなことをするわけがないと・・。
 わかっていて、なお、そんな質問をする。なんという悪意か、その上、由加里は照美のそんな意図を見抜いているのだ。むろん、照美にしてみれば、獲物がそれを見抜くだろうことを見通している。
鋳崎はるかは、そんな二人のやりとりを見ていると、ほとんど性的な快感に近い刺激を感じていた。由加里はともかく、親友である照美ですら俯瞰的に観てしまう、それは映画監督や作家に属する才能なのだろうが、そういう自分に違和感を抱く繊細さをも併せ持っている。
 
 さて、獲物を自室に招じ入れるなり、照美はその上品な凶暴さを発揮した。
 由加里の頭をむんずと摑むと部屋の中央に置かれているものを見せ付けた。
「喉、乾いたでしょう?」
「ウウ・・・・・」
 由加里の目の前には犬用の皿があった。そこに照美がミルクを注ぐ。
「ふふ、子猫ちゃん、飲みなさい、ほら、飲むの!」
 ついに怒りを爆発させた照美は、由加里の頭を、あたかもゴミをゴミ箱に放り込むように、柔らかな髪の毛ごと皿に突っ込んだ。
「むぐぐぐぐぐ・・・・・」
 ついに来たと思った。これこそが本当に憎しみだと感じる。他の誰からも送ってこない特別な秋波。由加里を真に恐れさせるもの、そして、彼女を死にまで至らせる可能性を秘めた、嘲笑を一切含まない憎しみの感情。黒曜石の黒。
 それを浴びると、何故か、安心を一方で感じてしまうのはどういうことだろう。
 限りなく知的な美少女は悔しかった。照美という悪魔に対して、自分からありとあらゆるすべてを、今は妹さえ、奪い去ろうとしている。そんな彼女に情愛を感じるのだ。黒曜石のようにキラキラと光っている。
 自己弁護すらもう許されない。このおそろしい主人に従い続けなければならない。ちなみに、いじめられっ子に「あと2年で卒業できるのに・・」と励ますことは全く無意味と言わねばならない。当の被害者にとってみれば、子供たちが置かれている状況は、永遠とも思える煉獄以外のなにものでもないのだ。

 学校の歴史上、類い希なる残酷ないじめの被害者である由加里は、犬のようにぺろぺろと器のミルクに舌を伸ばしている。
「まさに畜生ね、西宮さんは人間のプライドがないのね」
「・・・・・」
「もはや、反論する気力すらない、というわけか」
はるかの、照美とはべつの意味で冷酷な声が由加里にのしかかってくる。肩の骨が折れるかと思った。そのために、犬の行為がおろそかになったとして、鳩尾に蹴りが加えられた。室内のために凶器はスリッパだったが、アスリートの卵が繰り出す攻撃は由加里に呼吸を忘れさせるほどの苦痛をもたらした。
「ウグウウ・・・」
「誰か、零していいって言ったの?」
 論理的に問題がある物言いも、照美は、当然のことながら彼女がそれを理解していないはずはないのだが、強引に押し通すのだ。
 クラスメートが側にいない照美は、本当の自分を顕わにしている。はるかにはそれが理解できた。しかし、一方で、そのことで由加里に対して嫉妬に近い感情を抱いていることを知って、おもわず苦笑した。
彼女の姉妹に等しい友人は、ついに由加里に対して最後のチャンスを与えようとしている。
「照美、夜も遅いから、はやく言ってやれよ」
「何、言っているの?まだ、8時27分じゃない」
「おまえ、オールナイトでやるつもりか?」
 はるかは、苦笑の上に苦笑を重ねざるを得なかった。照美は、彼女の次の言葉によって、さらに絶望の色を濃くするのだった。
「今夜、百合恵ママは仕事でニューヨークに行っているからな、それもありか・・・」

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 『由加里 104』
 西宮春子は、娘たちの間に今までにない空気が漂っていることに気づいていた。特に次女がおかしい。確かに、中2に上がっていらい見舞われているといういじめ、それに約2週間の入院と、彼女はこれまでの順調な人生にはなかった荒波に揉まれている。だが、今度は、あくまでも姉妹の間だけに醸し出されているにおいのような危惧するのだ。
 
 肉汁の匂いと食器どうしがしなやかに当たる音がカチカチと上品な音楽を奏でている。
 今、夕食の最中である。
 メニューは、好物のハンバーグにもかかわらず、由加里の箸は進まないようだ。何を思い詰めているのか、その口は固く閉じられている。それに好対照なのが、妹の郁子だ。いつも、彼女は明るくはしゃいでいるのだが、今、彼女が見せている態度は、何か姉に対して勝ち誇ったような顔をみせている。いったい、これはどういうことか。
 そして、無言のままで由加里に何かを迫っているようにみえる。
 それに促されたのか、次女は重い口を開いた。ほとんど、義務感と、今が夕食時どい長年続いた惰性から、ハンバーグを一欠片口に入れて呑みこむと、重い口を開いた。
「ま、ママ、郁子とあるゲームをしようと思うの・・・」
「ゲーム?」
「え?由加里お姉ちゃん、どんなゲームなの?」
 嘘だと、長いこと二人の母親をやっている春子は、直感で思った。由加里は喉になにかが引っかかっているような声で、続ける。
 かすかに首を傾けて郁子を伺うような姿勢を取って、「い、郁子と立場を逆にしてみようと思うの、たまには私がい、妹になってもいいかなあって、そんな気分を味わってみようとね・・・・」
 この子は、いったい、何を言い出すのだろう。妹の気分ならば、長女の冴子が轟然と存在して、むしろ、母である自分よりもこの家で存在感を由加里に示してきたのではなかったか?
「それは具体的にどういうことなの?」
「わ、私が、郁子の、ことを・・・・い、郁子お姉さんって呼ぶから、郁子、は、私の・・ことを妹のそう呼ぶみたいに、ゆ、由加里って呼んでね・・」

 無理矢理に造った笑いが、何処かマネキンめいている。しかし、プラスティックの肌の下には、確かに、温かい血が流れているはずなのだ。そう強く主張できないのが残念だが、春子の愛おしい娘が隠されているにちがいないのだ。
 春子は、二人と自分の間に見えない壁が立っているのを見て取った。どうしても乗り越えられそうにない。郁子はわざとらしく笑った。
「そんなのヘンだよ、郁子がお姉さんだなんて!どうしたの、由加里お姉さん」
 まるで台本を棒読みするような口調、彼女は完全に春子を意識していない。彼女を騙そうとすらしていないのだ。しかし、それが、彼女の幼さ故の無邪気な仕草とはとうてい思えない。だが、詳しいところまでは読めない。 何を考えているのかわからない。
 一体、二人の間に何があったというのだろう?まるで何年もふたりと顔を合わせなかったようにすら思える。それほどまでに壁は高く、そして、強固だ。
郁子が由加里にそのように迫ったことはたしかだが、あれほどまでに仲がよかった二人の間に亀裂が入ったのは、いつのことなのだろう?春子の印象によると、妹の姉に対する信頼感は絶対だったはずだ。
 
 こともなげに、郁子は言った。

「じゃあ、仕方ないなあ、由加里お姉・・由加里!」
「うん、郁子・・郁子お姉さん・・・」

 俯いた由加里の顔を長い髪が隠したので、わからないが、涙ぐんでいるのではないか、ここで、春子は、ふたりの母親として言うことがあるべきではないか、もしかして、それを彼女に躊躇わせたものがあるとすれば・・・・それは、片方と自分が血のつながりがないせいか・・・そこまで考えて、春子は、態度に出るような勢いで、それを自分に対して否定した。
 そんなことはあるまい、と・・。

 再び、顔を上げた由加里はハンバーグを口に放り込むと、ニコと笑ってみせた。強がって硬直した頬が痛々しい。だが、以前のように手を出せないことがもどかしい。もはや、子供たちとのつながりは切れてしまったのか。それともこれが成長の一歩だということか、しかし、ならば、まだ小学生にすぎない郁子はどうなのだろう。彼女と自分は正真正銘に、血が繋がった娘にもかかわらず、姉の由加里よりも心が読み取れない。
「由加里ったら、こんなに遺しちゃって、あたしが食べてあげるね」
 半分も食べずに食卓を立った姉に、わざと聴かせているのではないかと訝るほどに大きな声で、郁子は言った
 その声は、とうぜんのことながら、知的な美少女の耳にも入っていた。聴覚神経を通し送られる電気信号のうち、その声しか脳が受けとらないのではないかと思った。耳にこびりついた「由加里」という声を郁子が発するなどと、太陽が西に沈むことに等しかったはずである。
 
 今、それが現実となった。

「うう・・ひどいっ」
 暗いままの部屋で、寝具に沈み込んだ由加里が発した声は、郁子に向けたものなのか、それとも、照美かはるみ、あるいはそれとも全く違う誰かなのか、彼女には判断できない。いや、判断すらしたくなかった。そのような 気力すら、すでにないのだ。
その時、聞き慣れた着信音が、由加里の鼻面をぶちのめした。
「か、海崎さん・・・・!?」
 携帯を手に取りたくない。だが、随意神経が勝手に働いている。あるいは、脳の中にRAMが勝手に設けられて、由加里の自我に、早く携帯を取ってご主人様に答えるように、と命じている。
「いや、いや、いや、いや!!このままじゃ、あの人に殺されちゃう!!」
 由加里は大量の涙で顔を洗っていた。シーツは濡れて、まるでおもらししたみたいになっている。だが、それでもぬるぬるする手で携帯に手を伸ばした。
「何をしているの?奴隷の分際で!」
「・・・、もうしわけありません・・・」
 
 もしも、一年前の由加里が今の自分の姿をみたら、きっと、いくらそれが自分に酷似していたとしても何か悪意の充ちたいたずらにしか思えないに決まっている。よく駅のホームなどで携帯片手に30度に状態を傾ける、模範的なお辞儀をしている姿を、彼女は、自分の父親ならばあんなことはしないと、心密かに哀れに思ったものだ。
その由加里が、今、かつての彼女が同情を向けた対象となんら変わらない姿勢を取って、しかも、幼女のように顔を涙でぐっちゃぐっちゃにして、土下座と錯覚するほどのお辞儀を披露しているのだ。
「今すぐ家に来なさい」
「え?こんな時間にですか?」
 由加里は慌てた。いくら照美の命令と言っても、時計を見れば、午後7時半をまわっている。すでに、中学生が外を出歩く時間帯ではない。塾に通っていていればまだ夜とさえいえないかもしれないが、そんなものは彼女には必要なかった。
「聞こえなかったのかしら?」
 照美の家には一度だけ行った、いや、行かされたことがある。あの時も惨めなおもちゃとしてさんざん嬲られたものだった。
 しかし、と思う。もしかしたら、そんなことはこれで終わるかもしれないのだ。ゆららや、真野京子、それに藤沢さわの顔がちらつく。きっと、彼女たちが助けてくれる。そうなのだ・・・一条の光が天から差し込んできた。
だが、そんな由加里に美貌の悪魔は酷薄な命令を下してきた。
「そうだ、郁子ちゃん、あなたのお姉さんに服を借りて来なさい。そうね、学校の体操着がいいわ。下着はつけないで来るのよ、自転車を使うのよ!はやく来なさい」
 
 由加里の返事を待たずに照美は電話を切った。
 語尾がやけに落ち着いていた。それがおそろしい。
だが、郁子の服だって?小学5年の中でも小柄な彼女の服が自分に着られるはずがない。それに、午後8時、こんな時間に外出するなんて・・・・親からの躾と自分の主人、所有者の命令が、葛藤して由加里を苦しめる。
最終的に勝ったのは、類い希な美少女だった。
「郁子・・郁子お姉さん・・」
「あら、どうしたの?由加里お姉・・・由加里?!」
どうやら、照美は郁子に知らせていなかったと見える。由加里が来ることを予見していなかっと見えて言い間違えた。やはり、彼女は妹なのだと、嬉しくなったが、それどころではない。郁子から体操着を借りなくてはならない。
「郁子、郁夫お姉さん・・・体操着を借りたいの?貸してね」
「何をばかなことを言っているの?」
「あ、あした、体育があって。洗濯したままなの」
「じゃ、敬語で頼んでよ、昔はお姉さんに敬語使ったのよ。国語で習ったんだから」
「そ、そんな・・・・」
 涙にくれる由加里だが、郁子の背後に照美を見てしまった。彼女の部屋の窓から見えるネオンサインが爛々と輝く、照美の瞳に見えた。
「わかった・・・」
「わかった?」
「いえ、わかりました。お、お願いですから、い、郁子お姉さん・・」
 照美の酷薄さや残酷さには、品格の意味からも、そして、程度の意味合いからも、大人と子供くらいの差があったが、由加里は、かなりのダメージを受けた。
「い、郁子、お姉様、体操着をお貸しクダサイ・・・ううう」
 身も世もなく泣き崩れる由加里、そんな姉に郁子はふいに怒りを感じた。
「何よ・・・!?」
 お姉さんならどうして抵抗しないのよ!という言葉を呑みこんで、溜まりに溜まった憤懣を、自分の右足に爆発させる。身体をくの字にして亡きじゃくる姉の腹に向けて蹴りはじめたのである。
「い、痛い!郁子!やめて!!」
「あんたは私の妹でしょ!?」
 7発目の蹴りが由加里のみぞおちに食いこんだ。
「うぐぐう・・・い、郁子、お姉さん・・」
 ふいに意識が遠のいた。
 ・・・・・・・・。
 しばらく暗転があって、気が付くと薄汚れた体操着が置かれていた。
「・・・・・!?」
 由加里は、上着に貼ってあるゼッケンをみて、我が目を疑った。
3-1、西宮郁子。
「こんなのが入るわけ・・・、やっぱり、海崎さんの・・・・・・!?」
 絶望しながらも、極度の緊張と羞恥心のために全身の筋肉が吊りそうになっても、由加里は絶対に遂行しなくてはならないことがある。それは、海崎照美の命令のことだ。
 少女は、躊躇いながらも全裸になると、布の切れ端のような体操着に袖を通し始めた。
 
 



 

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