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『マザーエルザの物語終章7』
  家族の急変は、あおいの予想をはるかに超えていた。まるである時刻を境に、世界が一変してしまったかのようだ。自分は、何処か別世界に飛ばされてしまったとでもいうのだろうか。家も家具も、家族もみんな同じなのに、何かが決定的に違う。有希江がいつも身につけているイヤリングまで同じなのに、世界は、あおいにとって完全に異国になってしまった。ちなみに、それは、サーファーである彼からプレゼントされた品で、サーフボードを形取っている。

  少女は、確かに家族とは違う流れに迷い込んでしまったのだ。皮肉なことに、元々、それは自ら望んだことだった。
 今、あおいは風呂場にいる。昼間のこんな時間に、ここにいることは、今までほとんどなかったことだ。しかし、ここにいる理由も、普段とはまったく違う。今までほとんど家の手伝いなどしない彼女にとって、完全に不慣れなことだった。
 
  シュシュシュという音が、この薄暗い空間に響く。何か、硬い者どうしを擦り合わせる音だ。
 何処か孤独を思わせる音。現在、あおいが置かれている状況を例えてみるならば、巨大かつ堅牢な石たちに囲まれた中世の牢獄。その中では、白髪白髭の老人が、何のおまじないか、石と石を擦り合わせている。惨めなことに、この行為だけが、彼の世界に対する働きかけだとでも言うのだろうか。
  何処か、ここでない世界を、うつろな目で見やりながら、からくり人形のように、両手を互いに動かしている。石が擦り合うのも恣意的なことでなしに、偶然のようにすら思える。それほどに、その音は、生身の人間が持つ意識というものを感じさせないのだ。
  何度この単調な行為を繰り返してきたのであろう。何時、どんな理由で、ここに連れてこられ、閉じこめられたのか、老人は、今となっては憶えていない。ただ、単調で陰鬱な時間が過ぎていくだけだ。

 昼間だというのに、アポロンの祝福から完全に無視されたこの場所にいると、時間の感覚などあさっての方向へと去っていく。
 真冬の浴室は、凍えるほどに寒い。まるで、全身の血液が凍って、躰から飛び出てしまいそうだ。コーラの瓶を冷凍庫に入れたときのことを思いだしてほしい。スコンという音とともに、割れたはずだ。
 その時と同じように、あおいはその可憐な心が壊れてしまいそうなのだ。
 
 浴室の場合、それほど極端ではないが、プライバシーの保護の観点から、光が射さない場所にあるのが普通だ。このことが、余計に、この場所をシベリアの流刑地にしたてている。あおいは、実の家族から追放されたのだ。そして、この地で、頬を冷気で真っ赤にして、かじかむ手足を動かしている。
 厳寒の中での風呂掃除。慣れぬ手つきで泡を擦りつけていく。その泡のひとつひとつが、割れずに凍ってしまいそうだ。吐き出す息は、あくまで白い。こんなところで、恵子おばさんは、何も文句を言わずに、掃除をしていたのだ。かつて、久子は家政婦を雇うと言ったのだが、自分でやると恵子は言ってきかなかった。
 そして、久子は、あおいに浴室の掃除を命じた。それも、この寒空に、裸足でするように厳しく言ったのである。

――――寒い、寒いよぉ! 今まで手伝ってあげなくて、ごめんね、恵子おばさん。
思わず、涙がこぼれる。どうして、今まで手伝ってあげなかったのだろう。こんなに辛いことだとは夢にも思わなかった。
 「ひ! 痛い! つうぅ!」
思わずスポンジを落としてしまった。タイルとタイルの凹凸に指をぶつけてしまったのか、知らぬうちに、血の糸が這っている。そのとき、背後から冷たい声が聞こえた。
「ちょっと! 家政婦! 何をさぼっているのよ」
「ま、茉莉ちゃん!?ひ!痛い!」
そう呼んだとたんに何か硬いものが飛んできた。その方向にふり返ると、はたして、妹の茉莉が立っていた。
「何言ってるのよ! あたしはお嬢様なのよ!」
「痛い! やめ!ひ!うぐ!」

  抗議する余裕すら与えられずに、次ぎの攻撃が加えられる。茉莉の足先が、あおいのみぞおちに食い込む。まさか、そこが急所だとわかってやったわけではなかろうが、結果として、あおいに、徹底的なダメージを与えた。猛烈な苦痛のために、しばらく、呻き声すら出せない。冷たい脂汗が額に滲む。その不自然な温かさと、タイルの冷たさは、少女の精神を異常な不均衡へと導くのだった。

  いや、それ以上にあれほどおとなしい妹の変貌を、容易に、認めることはできなかった。あれほど、従順で、姉になついていた妹がどうしたことだろう。まさか普段から、自分を憎んでいたのだろうか。あんなにおとなしい妹の仮面の裏で ――――――――。
「ま、茉莉ちゃん!」
「まだ言うの? 家政婦のくせに!」
 
 その時、浴室の鏡に、自分を見た。茉莉の足下に、まるで犬か奴隷のように、惨めに転がる自分が見えた。そして、彼女は、そんな自分を平然と見下ろしている。親友かふたごの姉妹のように思っていたのは自分だけだったのだろうか。上の二人が、自分たちと年齢が隔たっているために、竹馬の友のように育った。あおいは、妹が自分に信頼のすべてを寄せてくれていると思っていた。
「ほら、ちゃんと働きなさいよ、家政婦でしょう?!」
「グ」
 茉莉の足が今度は、背中を踏みつける。まるで巨大怪獣に踏みつけられたドームのように、無惨に崩れ落ちる。

「ヤメテ ――――」
 その声は、まるで壊れたオルゴールを思わせた。悲鳴と簡単に表すには、あまりにも涙を内包していた。茉莉は、そんなことは構わずに容赦なく踏み潰す。
「グぎィ ・・・・・・・」
 オルゴールは、ごく器械的な音とともに、完全に潰されてしまった。
「本当に、役に立たない家政婦ね、きっと、もうクビよ、あんたなんて生ごみみたいに捨てられちゃえばいいのよ!」
 上から振ってくる声は、とても茉莉のそれとは思えない。しかし、確かに彼女の声なのだ。9年間、その声を聞いてきたあおいが保証するのだから、それは確かなことだ。
「どうして? こんなことするの?!」
あおいは、妹の顔を仰ぎ見た。
「・・・・・?!」
 濡れた大きな瞳が、上目遣いに光る。その光は、茉莉の心の何処かを刺激した。その部分は ―――、少女の脳深く沈む記憶を、多少なりとも蘇らせたかもしれない。しかしながら、ここのところ、その家を包んだ空気は少女をさらなる攻撃に踏み切らせた。
「ィぐ!」
「ほら、ちゃんと拭くの!!」
「ウウ・ウ・ウ・・ウ・ウ・うう!!」
 あおいは、茉莉の、いや、茉莉の背後に控える力に圧されて、ぞうきんを拾った。そして、それを再び、浴槽に擦りつけはじめる。
「ちゃんと、お仕事するのよ、ごほうびにエサを持ってきてあげたんだから」

――――この子は、こんなに喋る子だったけ?
 凍ってしまいそうな涙に手足を滑らせながらも、ぞうきんを動かしながら思った。天と地が逆転するほどの、ショックに心を動揺させられながらも、一方で、ある部分は健在で、理性的な思考を有し、物事を達観するのだった。しかし、それを直に見せつけられるあおいとしては、たまったものではない。手足を椅子に縛り付けられて、悪口を無制限に聞かされるようなものである。例え、それがビデオやテープであっても、とうてい耐えうるものではないだろう。

「ウウ・・・ウ・ウ、なんで、どうして? お姉ちゃんが何をしたっているの? うう・う・う・・う」
さらに暴力を受けることがわかっていながら、どうしようもない言葉が零れてくる。それは、必ずしも、 茉莉に向けて発した言葉ではないかもしれない。
「お姉ちゃんって誰のこと?」
「ウウ・・ウ・ウ・・ウ・うう!」
 茉莉が見たのは、姉の恨めしさに満ちた瞳だった。それは、さきほどの上目遣いの目と違って、明らかに姉の視線だった。すなわち、人を上から見る目つきである。それは姉としての威厳を意味した。
「・・・・・・・・!?」
 さすがにひるむ茉莉。生まれてきたころから、その目で言い意味でも、悪い意味でも睨みつけられてきた妹の身である。さすがに上の二人は、姉とは言っても、巨樹すぎた。
その一方あおいとは、双子の姉妹のように育ったのである。しかしながら、そこにはたしかに位階なるものが存在した。
 それを家族は否定したが、無意識のうちに、あおいを上座に据えていたのである。もちろん、一方では、「あおいはお姉ちゃんなんだから」と常々、言われつづけ、そのことで、不利益を蒙ってきたと主張するにちがいない。
 
 しかし、そんなことは茉莉にとっては無意味である。単に、姉によって理不尽な支配を受けてきたとしか思えない。今、目の前に、あれほど優越を示していた姉が、無残にも這い蹲っている。いまや、自分の思うがままに動く人形でしかない。
  このことは、少女に一種の快楽を与えている。奴隷を所有するということは、世界最高の快楽を得る反面、想像しがたい重荷を背負うことにも通じるのだ。
 それは、少女が今まで感じたことのない感情である。しかし、それはわずか9歳の少女にとって、劇薬でしかない。先ほど描いた、姉によって支配を受けていたなどという意識があったわけではない。ただ、意識しない場所で怪物のように、蠢いているぶん、残酷さも容易にK点を超えてしまう。

「あんたなんて、家族じゃない! お姉ちゃんじゃない!!」
「ヤ、やめて! おねがい! 茉莉! いや! イタイ!」
 茉莉はたまたま、摑んだモップを手にすると、あおいを殴り始めた。9歳の子供が10歳の子供に暴力を振っている。傍から見れば、単なる兄弟げんかにしか見えないかもしれない。しかし、これは歴っとしたドメスティックヴァイオレンスなのである。夢中で、振り上げたモップを振り下ろす。それは無意識により、支配の否定だったかもしれない。しかし、幼い茉莉には、自分が何をしているのか、わかっていなかった。いったい、何を否定し、拒否しているのかさえ理解していなかった。その行為によって、いかに愛するものを傷つけているということにも気づいていなかったのである。
 子供の暴力というものは、際限がない分、度し難い。あおいの身体は、瞬く間に、赤いあざだらけになってしまう。

「せっかく、ご褒美を持ってきてあげたのに!」
 恩着せがましく言う茉莉。あおいは、そんな妹が怖くてはたまらなくなった。
―――お姉ちゃん、あおいお姉ちゃん!!
 そう言って、いつも彼女の後ろを付いてきた妹は、いったい何処に行ってしまったというのだろうか?

「ちょっと! あんたたち!何やっているのよ!」
 突如として、有希江の声が響いた。その声は、茉莉の耳を劈いた。そして、彼女に恐怖心を与えるのに十分だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・!?」
「止めなさい! 何やってるの!? バカ!!」
 スリッパのまま、浴室に滑り込むと、有希江は、茉莉が振り上げたモップを鷲摑みにした。
「ゆ、有希江お姉ちゃ! ・・・いや!いや!」
「止めなさい! 茉莉!」
 激しく暴れる茉莉を力で押さえ込もうとする。しかし、少女はなおも抵抗しようとする。その動きは、まるで混乱する少女の心を暗示しているように見えた。茉莉の手も自分の手もわからなくなったとき、有希江は、力任せに封じ込めるべく力を込めた。その時、悲劇は起こった。

 ビシッ!!

「ィ、痛い!!ィイイイイイイ!!うううう!ゆ、有希江姉ちゃん?!」
 あきらかに頭蓋を打つ鈍い音が、浴室に響いた。
モップの柄が、茉莉の小さな顔を直撃したのだ。その勢いでは、可愛らしい妹の頭は、まるで関羽の 青龍偃月刀よろしく、空へと吹き飛んでしまうのではないかと思わせた。 
「有希江お姉ちゃん!! こいつは家族じゃないのよ!」
「ううう・う・うウウ・ウ・ウ・ウ・ウ・・ウ・う・う・う・・ううう!!」
 あおいは、有希江に頭を撫でられると、姉の懐に飛び込んで、泣きじゃくりはじめた。
「気持ち悪くないの!!ううう!!」
 茉莉も、負けずに泣き声を上げながら抗議の意を示す。
「いいかげんになさい! 茉莉!!」
「・・・・・・もう、知らない!!」
「茉莉!!」
 
 有希江は、みぞおちに向かって言葉の刃を投げつけたが、梨の礫だった。痛くもかゆくもないという顔で、見下ろしてみせる。無理もない彼女の背後には、母親と徳子という絶対的な保護者がいるのだ。
 茉莉は、あおいのすぐ目の前に、モップを投げつけると踵を返して出て行った。
「うううう・う・・う・・う・う・・ううう!! ひどい! 何も悪いことしていないのに! ウウ・ウ・ウ・・ウ・ウ・・・・・う・う・うううう!!」
 モップがまっぷたつに割れる音は、さらにあおいの泣き声を高ぶらせた。
「ど、どうして? どうして、あおいがこんな目に、ああ、あわないといけないの!?ウウ・ウ・ウ・・ウ!何もわるいこと・・・・・・していないのに!!?ううう・う・・・うう・・う・うう!」
「わかってるわよ! あおい、後で話してみようね」
 有希江の腕の中で、まるでモーターが振動しているように思えた。

―――たしかに、可哀想なはずなのに、この空虚感はなんだろう?
 目の前で起こっていることは、非道の極致なはずなのだ。完全な幸せを謳歌していたはずの、榊家に一体、何が起こったのだろう。
 両親の離婚や、ドメスティックバイオレンス、それに、兄弟姉妹の非行、有希江の同級生には、そのようなことで涙を流すものがいた。みんな有希江を慕ってその心を預けてくる。その中には、先輩すらいた。そのときは、心底彼等のことを同情し、その深い悲しみは、手に取るように理解できた。しかし、今度のことはどうだろう。あおいは大切な妹だ。しかし、彼等ほどに同情できない。いや、同情という感情が大風の前の砂のように、消え去ってしまったかのようだ。
 
 加えて、彼等のような家族問題とは、榊家は無縁のはずだった。しかしながら、伯母の入院によって、あたかも歯車のひとつがおかしくなってしまったようだ。永年の使用によって、金属疲労でも起こったのか。榊家の何処か、おかしくなってしまった。


 史実の関羽は、青龍偃月刀を使っていなかったそうです。
wikipediaによると、青龍偃月刀は、宋代になってはじめて、出現したそうです。

テーマ:萌え - ジャンル:アダルト

コメント
個人的に、西洋的な責めの展開があればいいなと期待しています。タイトルからして、そんなイメージが漂っています。
もちろん「和」も好きですよ。
2009/03/18(水) 17:49:41 | URL | ベンジン #0MXaS1o.[ 編集 ]
コメントありがとうございます!
 今回は全体的に、欧州ですね。
と言って、『由加里』が和のイメージなのかっていうと、それは難しい問いですね。
2009/03/18(水) 20:30:41 | URL | Cesare Borgia #-[ 編集 ]
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