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『マザーエルザの物語・終章 29』
 意識を失ってあおいは新たなる翼を得た。
 ところが、いちど空に向かって羽ばたいてみると、それは秋の空のように小春日和の清々しい空間を飛翔するための道具でないことがわかった。
 音もなく、少女は大地に降り立った。虚空に浮かんでいることに、そこはかとない恐怖と不安を怯えたのである。
 しかし、そこは彼女にとってほんとうに安泰な場所なのだろうか。
 思い出したくもない過去。言い換えれば、例え、どんなすばらしい大地にも、地下には地層があり、 その一つには悪魔の糞便で固められた層もあるということだ。
 言わんや、げんざい、あおいが置かれている状態は混迷を極めている。その過去にはいったい、何があるのか。まったく想像できない。立っている大地がけっして、堅実でないことは微かに触れる今の状況が何よりの証左になるだろう。

 過去という地下から、何か悪い記憶が噴出しているにちがいないのだ。
 それが、温泉のような頬笑ましい鉱床でないだろうことは、もはや、自明の理である。

 少女の耳に、場違いな固有名詞と単語が飛び込んできた。
―――フランス人です! 彼奴らが! しかも警官じゃなくて、軍隊が!!
 それはほとんど悲鳴に近かった。
(フランス人?!)
 あおいは、まだあどけなさの残る、いや、幼い唇をかすかに震わせて、その固有名詞を繰り返した。
 少女が10年あまりの人生で得た知識によれば、その国はヨーロッパの片隅によりそうように存在する。いわば、島国である。
 ところが、世界中に植民地を形成し、帝国を作ったらしい。有希江と徳子の会話が、断片のように少女の記憶に突き刺さっていた。
 だから、特別な敵意や怖れがあるわけではない。しかし、少女が夢想の中で遭遇したトリコロール(三色旗)からは、ただ一つの言葉が飛び出てくる。
文明人の顔をした蛮族。
どうして、イチゴのような自分の頭からこんなさかしげな言葉が飛び出し、それが理解できるのか、少女は不思議でたまらない。まるで、思考する自分とそれを受け止める自分が互いに乖離しているように思える。大人になった自分と交流しているような、いや、ちがう。
 それは巨大な過去だ。
 大過去。
 かつて、徳子が口にしていた単語だが、その意味はまったくわからない。ものすごく大昔ということだろうか。
 とにかく、あおいは、正確を期すならば、あおいらしき人物は、フランス人なるものを蛇蝎のように嫌っている。

 それにしてもこの熱はなんだろう。雲一つ無い空から降り注いでくる。かつて、親しみを込めてアポロンと呼んでいた太陽はそこにはない。
 かつて?
 自分は、何処にいたのだろう。しかし、いくら思いだそうとしても、明確な地名は浮かんで来ない。ただ、高原と豊かな緑、それに温かな陽光というイメージだけが浮かんでくる。
 あおいの立ち位置は、そんな呑気な場所ではない。立っているだけで死がやってくる。
ただ、黄色い残酷な塊が、灼熱を置くってくるだけだ。全身が火だるまになりそうだ。数分だけでも直射日光に浴びていると、肌に火ぶくれができる。
 アギリ。
 それは国名だと確信した。巨大な熱とイコールでその短い固有名詞が結ばれた。
 人々の声、怒声と悲鳴。
 そして、それらを彩るように銃声。肉体を叩く特有の音。渇いたという単調な形容詞では表現しきれない耳に不快な響き。胎内に水分と油を多分に含んでいるのだから、それは当たり前だろう。
 そして、それらに護られるように骨や筋肉といった組織が存在する。エモノは、それこそを破壊すべく叩きつけるわけだが、不快な音の原因は前者にこそある。

――――止めて!、止めなさい!ヒイ!?
 蛮行を必死に収めようとしたあおいだったが、自らの身体が危険となれば、とっさに防御に走るのが人間というものだろう。
 少女は、身を縮めて攻撃を避けようとした。

―――殺される!!
 そう思って屈んだ瞬間、彼女は信じられないものを目撃することになる。
 自分の変わりに、友人の男性が犠牲になっていた。彼は、フランス兵の残酷な銃剣の一刀によって、無惨な屍に成りはてていた。
「!」
 それは、彼女の記憶をどうひっくり返しても、出てきそうにないほどに残酷な体験だった。
 しかし、彼女を驚かせたのは、それではなかった。どう見ても粗野な一兵士の言い放った言葉だった。
「なんだ、おめえ、人間じゃないか!? こんなところで何をしてるんだ。おい、ピエール、この方を中尉殿のところへつれていけ」
「やめて! 離して!!!」

「あおい!」
「ぁぁあっぁあ!?」
 身体が激しく揺さぶられた。それは人間業とは思えなかった。何か巨大な力で魂ごと二つに切り裂かれるような気がした。
 しかし、よく見てみれば、赤木啓子であることがわかった。
「け、啓子ちゃん・・・ぅうあう!?
「あおい!?」
「ァァゥアァウ・・・・」
 弓なりになって股間を押さえるあおい。
 ほぼ、無意識のうちにその姿勢を取ったのは、下半身に隠された秘密を親友から隠すためだ。しかし、あおいのそんな有様は、見る人にその深刻さをアピールするだけだった。
 しかも、啓子は普段の冷静さを完全に失っている。
 
「せ、先生、救急車を呼んで下さい!」
  いつになく、動揺と混乱の二重奏を鳴らす啓子。教師は、そのようすにあっけにとられたのか、すぐに対応できなかった。
「だ、大丈夫です!! ウ・ウ・ウ・ウ」
 あおいは必死に訴えた。そんなことをされたらたまらない。下半身の恥ずかしい秘密が露見してしまう。
 辺りを見回すと、白いカーテンが見えた。ここが看護室であることがわかった。どうやら、気を失っている間に連れてこられたようだ。

――――まさか、見られてるってことは!?
 あおいは動揺を隠せなかったが、周囲のようすを鑑みてそんなことはないらしい。ふいに、親友の苛立つ声が響く。

「看護室に、校医と看護婦がいないってどういうことですか?」
 その声は、逆立っていて、今にも周囲に殴りかかりそうだ。
「どうしたんですか? 校医さんは!?」
 慌てて入室してきた両者に文句を言っているのだ。普段、冷静な態度に徹している彼女らしくない。
 そんな間にも、股間の異物は幼い性器を刺激しつつ動き回る。
 正確には、あおいが動くために、そのように錯覚するのだが、被害妄想と言われても、少女にしてみればそう思わざるを得ない。
 身体を砂漠にでも埋めたくなるほどの羞恥に蝕まれている今であっても、そのくらいの判断はできた。灼熱の砂はきっと、この身体から浸みてくる羞恥心を焼き切ってくれるだろう。

「赤木さん、落ち着きなさい!」
 担任の声が聞こえる。啓子を冷静に戻そうとする彼女の姿が目に見えるようだ。目を瞑ってもありありとその映像が浮かぶ。
「校医さんが来たから! 落ち着きなさい」
 しかし、それは違う世界から響いてくるようだ。あおいや啓子が立っている地面とはあきらかに風の色も、大地の匂いもちがう。
 「啓子!!」
 しかし、彼女の声だけはしっかりとした実体を持って迫ってくる。
 その時、二人は手を繋ぎ合った。
 二人とも時間の感覚を完全に失っていたのて、校医が声を掛けたことに気づいていなかった。

「ああ ――」
「赤木さん ―」
 担任である阿刀久美子も、そこに控えていた。
「はい・・・・・・」
  恐縮するようにあおいから離れる。その手と手との連結が切り離されるとき、二人の間で微かな体温のやりとりがあった。熱伝導の法則から高音から低音へと伝わった。それはもしかしたら、メッセージだったのかもしれない。少なくとも、あおいはそう受け取ったことだろう。
 手を握り合った瞬間、啓子は、その手の冷たさに、そして、あおいは、その手の温度に驚愕した。
触れた方は、触れられた方の死を直感してひるんだ。
「あおい!!」
 校医や久美子の静止も聞かずに、親友の骸、彼女が勝手にそう思っているだけだが、それに上からまとわりついた。その勢いは、対象に対して飛びかからんばかりか、取って喰おうというほどまでに増していたのである。
「ぁああ、あぐうう!!」
 胸郭に、啓子の両手が触れたとたんに、あおいは、小動物的な悲鳴を上げた。それと同時にぴくんと弓なりに、身体を曲げると小さく痙攣した。
「あ、あおい!?」
 啓子は、ますます、親友が重病だという思いを強くした。しかし、当の本人はそれどころではなかったのである。命に関わる病気を凌駕する出来事とはどんなことだろう。
「ウウ・ウ・・・ウ・ウウ・ウウ!」
 あおいは、シクシクと泣き出した。顔を真っ赤にして、小刻みに震えている。涙が、さくらんぼうに垂れた水滴のように、流れていく。
まるで、友人が手の届かない処に行ってしまったのではないかと思った、この小さな身体から離れて再び ――――。

 再び?

 啓子は、絶句した。自分の身体からわき上がってくるものに、恐れおののいた。まるで自分でないものに、操られているような、それこそ、何か得体の知れない亡霊に身体に乗りうつられて支配されてしまったのではないか。
 今まで、あおいに何処かに行かれたことなど、いちどもない。あるとすれば幼児体験だ。あおいと遊んでいて、彼女の母親が突然、連れて行ってしまう。しかし、それは自分の母親も自分に対して、同じ事をしたのだ。
 しかし、そんなことは、何処の世界でもありえる、ありふれた出来事だろう。だが、その時感じたやるせない気持は、今になっても思い出すことがある。淋しいような哀しいような不思議な気分。夕日に溶かされるあおいの背中を見つめていると、もう、永遠に彼女に出会えないような気がする。そればかりか、彼女に出会って互いに紡いできた時間がすべて嘘で、錯覚にすぎないのではないか。
 幼児だったので、そこまで具体的に言語化できたわけではないが、意識の周辺でそのような気持を強くしていた。
 けれども、おもちゃのシャベルを持っている方の肩を母親に叩かれたとき、あおいと同じように自分の家に帰っていくのである。その時にはもはや、そのようなもやもやは、あさっての方向にうっちゃってしまっているのだが。

 あおいは、死んだサバのように冷たい腹を見せている。先ほどまで燃えていた炎は、いつしか消え去って、兵ものどもが夢の後のような跡のような、無常観だけが死後の魂のように残存していた。
 その中では、啓子が想像できない戦場が展開していたのである。しかし、部屋の外からは、戦場の火を再び灯すような人物が足音を立てていた。あるいは、不発弾が少女の中に残っていたのかもしれない。

 


テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

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