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『マザーエルザの物語・終章 15』
 有希江と茉莉の違いは、ただ、ひとつのことを自覚しているか、否かにすぎない。言い換えるならば、自分が、あおいを憎んでいる。その事実に、形だけでも疑うことができるか、否かのちがいだ。
 それだけのことに尽きる。

 茉莉を自室に戻らせると、有希江はあおいを睨みつけた。少女がひるむと、柔らかく目を瞑った。まさに人間と犬どうしのやり取り。
 それに痺れを切らしたのか、少女は立ちあがろうとした。しかし ―――――。
「・・・・・・・・」
 有希江はただ、黙って掌を少女に向けた。
「・・・・・?!」
 少女は無言のうちに、その意味を理解した。
「来なさい」
 本当に久しぶりに、姉の声を聞いたような気がする。まるで10年ぶりに、再会したようだ。
 しかしながら、その顔は少女が知っている姉のそれではなかった。

 そこには真っ白な陶器があった。まるでヴェネツィアの仮面のように整った顔が、浮かんでいる。それは、あきらかに時間と空間から遊離して、ぼんやりと存在していた。

――――どうして、そんな顔をするの?
 少女は意識外のところで、姉に語りかけていた。
 
―――――お願い、本来のあなたに戻って、仮面を脱いで!
 しかし、その場所は本来の力を発揮できなかった。知識においても、精神的な体力という面に置いても、わずか10歳の心(からだ)は、彼女がその本当の能力を目覚めさせるには、あまりにも、小さすぎた。
 何処か別の次元で、小さくなった姉を抱きしめていた。しかしながら、次ぎの瞬間、それは、泡沫のようにあえなく消えてしまった。それは、子猫のような産毛に包まれた優しさに満ちていたのに、一本の毛すら残してくれなかった。

 意識が戻ると、少女は手と足を交互に動かしていた。
 あおいは、犬のように四つんばいになって、廊下を移動していたのである。有希江が具体的に命じたわけではない。ごく自然に手足が動き出した。
 自宅の廊下は、これほどまでに高かっただろうか。少女の周囲には、そそり立つような絶壁が彼女を取り囲むように。そそり立っている。彼女は、この家で生まれて、育った。
彼女が慣れ親しんだ回廊は、もはやそこになかった。まるで、大聖堂のような奥行と高さを併せ持つ。それらは、少女を押し潰さんばかりに、迫ってくるのだった。
 それは三角遠近法でなくては描けない。ちょうど、マンハッタンの摩天楼を一枚のキャンバスに収めるような技術を要求された。ただ、自分の家の廊下を歩くだけなのに・・・・・。
 それとちがうのは、青い空がないことと、二足歩行で移動することを許されていないことだけだ。

「ウウ・・・ウ・・ウ・ウウ」
 あおいは、泣き声を星図の一角、一角に押し込める。小さいころ、有希江のいたずらに加勢したことがある。いや、性格に表現するならば、させられたと使役で表現すべきだろうか。
 あおいと有希江の姉妹は、納屋から梯子を持ってくると、折り紙で作った星を、天井に貼り合わせて、昼間の天体観測と息込んだ。もっとも、その日のうちに、両親に見付かり、同じ梯子を使って、取り去ることを余儀なくされた。しかしながら、その作業はたった一名で行われた。
 有希江は、頑として、自分たけでやったと主張し、あおいを庇ったのだ。そのささやかな行為の代償はすぐに与えられた。
 「ごめんね、ゆきえ姉さん・・・・・」
有希江は、泣きながら彼女に付きまとう小さなストーカーを得たのである。
「わかったよ!もう!」
うっとおしげに、呻く有希江だったが、その実、嬉しそうに目を潤ませていた。
 ちなみに、両親は、それを察知していが、有希江のプライドを尊重して、黙っていた。
 教育的配慮を発揮したのだ。

 いま、あおいが見つめているのは、そんな牧歌的な記憶ではない。ただ、無数の氷柱が刺さった冷酷な天井である。しかも、少女の身体を貫くであろう氷柱は、今にも落ちてきそうに笑っている。
 少女は、強いられてこのような状況に追い込まれたのだろうか。
 しかし、少女はあえて自発的に従っているようにすら見える。さながら、生まれていちども立ち上がったことがないように、右、左、右、左とよつんばいを生きている。その道程は、ある意味において、しっかりしており、勝利を約束された軍団そのものだった。

 それをたった10歳の少女が行っている。

 だれか、涙なしにこの様子を見ていられるだろうか。迷宮の壁という壁は泣いたし、窓から入ってくるヘスティアの使者は、少女に主人の慈悲の意思を伝えたくらいだ。
 しかし、あおいは、そんなことを全く意に介せずに、奴隷としての生、いや、人間ですらないのだから、愛玩動物と表現した方が適当にちがいない。あおいは、謹んでその身分を甘受していた。

「ほら、お入り、あおいちゃん」
 有希江の声は、残酷だった。それは、綿菓子のように柔らかだったにも係わらず、中世の拷問師のような鉄芯が隠されていた。
 それは少女に、ある意味の引導を渡した。
 何故ならば、少女に自我の存在を呼び起こさせたからだ。もと言えば、自分が榊あおいという、小学校6年生の少女である ――――ということを思い出させてしまったのだ。
「ウウ・・・ウ・・ウ・・ウ」
 少女は、慟哭した。自分が置かれている状況に耐えられなくなったのである。人は、臭いに慣れるという。考えてみるがいい、子供のころ友だちの家に行って、「どうして、こんなに味噌臭いのだろう?」と首を捻ったことないか。
 その友人や家族たちはその臭いの中で平然と暮らしているのだ。その逆を言うなら、彼は、あなたの部屋を別の表現で異臭を感じると主張する。このようなことは、よくあることだろう。
 臭いと同じで、感情も鈍くなってしまうのかもしれない。

 あおいが慣れしたしんだ亜空間は、少女の感情を司る嗅覚をマヒさせていたにちがいない。
今、自分を取り戻した少女は、はるか遠くで雪崩が起こる音とともに、それを思いだした。
巨大な雪崩を遠くから見ると、音はたいしたことがなくても、迫力だけが伝わってくる。
少女は蘇ってきた羞恥心のせいで、全身を悶えさせた。それは、外見から見ても、セックスをしているように振動しているのがわかる。

「どうしたの? あおいちゃん」
 有希江は、それを見るとほくそ笑んだ。射すような目つきと口ぶりで、部屋に入るように促す。あおいは、それを肌で感じると、再び、行進を開始した。
姉の顎が、近づいてくる。少女はその迫力で押し潰されそうになった。まるで、自分を構成する分子が三分の一に圧縮されたような気がした。少女はたしかに痛みを音で聞き取ったのである。姉を見つめ返す瞳は、あきらかに萎縮していた。

「可愛い子・・・・・・・」
「・・・・・・・・・?!」
「何を怯えているの?」
「ヒ!?」
 有希江の指が、サクランボのような、あおいの顎を捕まえたとき、少女は確かに痛みを感じた。中枢神経が単なる触角を痛覚と間違えることは、よくあることだ。尋常ではない恐怖を感じているときは、なおさらである。
「この部屋は暖かいでしょう?」  
 しかし、この部屋は少女には熱すぎた。裸なのに、玉のような汗が噴き出す。
「あら、あら、どうしちゃったのかしら? まあ、いいわ。 あおいちゃんのために用意したのよ」
そう言って、有希江は持ってきた鞄から、弁当箱を取り出した。
「即席だから、たいしたものは作れなかったけど、栄養は満タンよ」
 自信ありげないつもの姉の口調。

「・・・・・・・・・・」
 少女が目の当たりにしたのはカツ煮だった。姉の得意料理である。よく、両親が所用にて、出かけているときに、食べさせられたものだ。
 確かに美味しいのだが、それは積み重ねられたマンネリズムの結果でもあった。どんなに料理の才能がなくても、繰り返せば、食べるに値する品がテーブルに乗るにちがいない。  
きっと冷凍庫に残っていたのだ。おそらく、それを電子レンジでチンしたのだろう。

 少女の脳裏に、中生代の記憶が蘇る。しかし、恐竜がうなりを上げているわけではない。四人姉妹という別の意味での、獣たちの呻き声である。
「有希江、またカツ煮なの?」
「徳子姉さん、何言っているのよ、長女のくせに、自分で作らないで文句たらたらって、どういうこと?」
「そうだよ! 徳子姉さんたらせっかく有希江姉さんが作ってくれたのに」
「何よ!? 手伝いもしなかったあんたに、そんなこと言う権利あると思ってるの?!」
 あおいは憮然として、文句を舌に乗せてみた。
「あおいには、学校の宿題をこなすって言う神聖な仕事があるのよ!」
「私だってそうよ! それなのに、私だけに押しつけて!きっと、私は実の子じゃないだわ」
「安心しなさい。パパとママ以外から、あなたみたいな子が生まれるとは思えないから」
「何よ! 姉さんだってそうじゃない!!」
 ちなみに、徳子を「姉さん」単称で呼ぶのは有希江だけに与えられた特権である。
「ふふ、実は、姉さんは聖母マリアさまが連れてきた天使なのよ」
「おかしいわね、天使のくせに悪魔みたいな角を生やしているのはどういうわけ? あ、しっぽまで生やしている?実に凶悪な天使もいたもんだわ」
 あおいが頭を振ると、徳子は持っていたビニールボールをあおい目掛けて投げつけた。
「ちょっと! さっきまでさんざん宿題見させたくせに! 何よその態度!?」
「姉さんたち、ぐるだったのね。きっと、それでママを説得したんでしょう? あおいの宿題を見るから、ごはん作れないって!!」
「何のことか、わかりませんね ―――え?ちょっと?!茉莉!!」
 ほんらい冷静なはずの徳子は、たった五秒の間にめまぐるしく表情を変えた。しかし、それは長女だけではなかった。次女も三女もそれにならった。
なんと、四女の茉莉が、できたばかりのカツ煮をよりわけで、小さな口でかぶりついていたのだ。

 三人とも、いつ、この末っ子がキッチンに姿を見せたのか、いっさい記憶にない。
「ちょっと、茉莉ったら、まだ切っていないのに!」
有希江の困惑する声とともに、幸せだった記憶は、あおいの脳裏からその姿を顰めてしまった。

「さ、あおい、口を開けて」
 もはや、有希江のしようとしていることは、明かである。
 有希江は自らスプーンを手にすると、カツ煮に差し込んだ。非音楽的な音が響く。
 
 ぐじゅ・・・・。
 
 それは、どう聞いても、幸せな家庭に相応しい調べではない。あえて表現するならば、ガマガエルを踏み潰すような、どんな前衛的なロックバンドでも、使用するのを躊躇うような音である。
「・・・・・・・?!」
 かつては、あのように美味しそうに見えた料理が、今や、ブタの餌に成りはてている。あおいには、そのようにしか見えない。しかし、有希江の脅迫の言葉が、彼女を単なる動物以下の存在に、貶めた。
「有希江姉さんの作った料理が食べられないの?」
「ウウ・・・」 
 あおいは、ためらいながらも小さな口を開けた。
「ちょっとい!? 何よ、その態度は!?」
「ウグ・・・!?」
 有希江の長い足が、敏捷に動いた。しかし、あおいはその美しい軌道を確認する暇もなく、自らの神経の叫びを聞いた。高圧電流を股間に押し当てられたような苦痛が、走る。

「私は、可哀想なあなたに食べさせてあげようと用意してあげたのよ」
 有希江は憐憫を声に偲ばせた。聞きようによっては、それは真実に聞こえる。あおいは屈辱とも受愛ともとれない感情に、身を焦がしている
 そして、妹を見下ろす。たった今、むごい暴力を加えたようには、とても見えない。
「ぁ。ありがとう・・・ございます!」
「何よ、その口!?食べたくないのォ!?」
「ウウ・・う」

 まるで、音楽教師の歌唱指導のように、大きな口を開ける。屈辱的な姿勢と、有希江の配置は、鳥の餌やりを彷彿とさせる。猫の額のような巣から、雛が母鳥に向けて、口を開けている。まさに、そのような光景だ。
「そんなに食べたいの? あおいちゃん?だったら。もっと大きなお口を開けなさいよ、裂けるくらいにね」 
 いとも残酷な言葉が、有希江の口からはみ出てくる。あおいは、それに答えるように、さらに口輪筋を緊張させた。顎と頬を二つに裂かされるような痛みが走る。
 しかし、あおいはすがるような思いで、口を開く。一体、何にすがろうと言うのだろう。決まっている  有希江の、愛情だ。泡沫のような姉の情愛に、すがるような思いで、期待しているのだ。おびただしい涙と涎で、目と口を汚しながら・・・・・・・・・・。
 
 中世の文筆家が、いみじくもこう書き残している。
 
 行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。
                                                       鴨長明
  憮然と新しい意味を含めて使ってみました。

  すでに、(がっかりした)という第一の意味に、第二の意味が加わっていると思っています。

テーマ:萌え - ジャンル:アダルト

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