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『マザーエルザの物語・終章 6』
 榊あおいが、その運命の時間を迎えたのは、数ヶ月前のことである。
 今は、ちょうど冬休みの最中である。最近では、珍しく、首都圏の街々も白化粧を施すことになった。榊家も久しぶりに、甘そうな雪で味付けされることになった。このころのあおいにとって、雪は、冷たさの象徴ではない。先進国の恵まれた環境に産まれ、愛されて育ちつつある少女にとって、完全な防寒具を備わっての雪は、甘い砂糖菓子と変わりはなかった。
 
 しかし、この年の冬、榊家では、ひとつの事件が起こっていた。

「えー?真美伯母さん、入院しちゃったの?」
 榊あおいが、まず、黄色い声を上げた。
「そうよ」
「で、どんな様子なの?」
 榊家の長女である徳子。四人姉妹の中で、一番冷静なのは、さすがに、この長女のようだ。それぞれ、次女と四女である有希江と茉莉も心配そうに母の口から出る言葉を見守っている。
 四姉妹にとって、真美は二人目の母親に等しいのだ。仕事と家事の両立を願った久子であったが、娘が四人もいては、一人ではままならなかった。
 そんな時、久子の妹である真美は力強い援助者となった。それは普通の家族以上の働きと言って良かった。真美は、久子に負けずに容姿端麗で、才色兼備だったが、小さいころから引きこもりがちで、他人とあまり付き合わなかった。しかし、姉の娘たちと出会うことで、その性格が一変した。いわば、双方にとって救世主だったのである。
 
 久子の職業は、弁護士である。女性ながらに、かなりのやり手であると、業界には知られた存在だ。
とある大企業の顧問弁護士の一人となって、相当の高給を頂いている。そう、彼女にとって弁護活動は人助けではなくて事業なのだ。間違っても弱気を助け、強気をくじくと言ったタイプではない。確かに、弁護士として、そういう価値観も存在することは認めるし、尊敬もしている。しかしながら、少なくとも、自分はそういうタイプではない。見ず知らずの社会的弱者ならば、自分の家族の方が万倍も大切だ。それが彼女一流の割り切り方である。

「ねえ!ねえ!ママ!どんな様子なの!ねえ!!」
「あおいったら、うるさいわね、静かにしなさいよ、恵子伯母さんが心配なのはみんな同じなのよ、あんたが一人で四人分心配するから、私たちが入る隙間がないじゃない!」
 
 いちいち、斟酌しながら、話すのは、この娘の癖である。その度にいちいち、目をつぶるので、相手をしている人間が疲れる。なれているはずの家族たちでさえ、気になるほどだ。
多少、やぶにらみがちな、目つきを向けるのは、榊家の次女、由希江である。

 徳子は今更ながらという顔をしている。四女である茉莉は、そのおとなしさと控えめな性格を主張するように、ただ、ひとりで泣いている。
 一家が明るいとき、暗いとき、いつも中心になって、それを代弁するのは、あおいの役割である。この家の、ライトメーカーであると同時に、トラブルメーカーでもあるのだ。

「とにかく、お見舞いに行こう!」
「とにかく、それだけはだめ、絶対に安静なの!」
  久子は頑として譲らない。
「なんでよ! 家族でもだめなの?」
「そう!」
「いい加減にしなさいよ! あおい!」
 徳子が言う。さすがに、この長女の言には、説得力がある。あおいは、押し黙ってしまった。
「とにかく、家でおとなしくしてなさい!それが、おばさんのためなのよ」
「徳子!今日、一日あの子を見ていてね、押しかける可能性があるから ――――」
「いやよ!一日中、妹の世話を押し付けられるなんて、こっちだってやることが山とあるんだから」
「そうね、家政婦の一人でもほしいものだわ ―――――――」
  久子が言ったとたんに、あおいが口を開いた。その一言が、想像を絶する不幸を呼び寄せるとも知らないで ――――――――。
「いい、アイデアがあおいにあるよ」
「ほら、自分のことを名前で呼ばない、もうねんねじゃないんだから」
「あおいは、いつまで経ってもねんねだもんね」
 由希江が悪意を隠さずに言った。それを無視して、あおいは続ける。
「四人の中で、一人が家政婦になるの
「何よ、それ?」
「よく、わからないな」
 一様に、不安と不満を織り交ぜた表情をする四人。

「それはどうやって決めるの? 当然、四人でじゃんけんするの?」
「それで、間違ってさ、加えて、よりによってさ ――――――」
「何よ、その持って回った言い方?いやらしいな」
「あんたに決まったらどうするつもりなの?ママの足を引っ張るだけじゃない?」
「もしかしたらたら、腕もひっぱるかも?」
「徳子姉さん!」
「それ、当たってると思う、悪夢よ、榊家の黄昏は近いというもの ――――。それで、どうして、あおいちゃんは、家政婦ごっこなんかしたくなったの、もしかして、この前、テレビで『家政婦は見た』見たからっていうんじゃないでしょうね!?」
 徳子は、自分で出した質問に、自分で答えた。

「あおいは、困ってらっしゃるお母さまを、お助けしたくて、申し上げられて ――――え?っと?」
「できもしないくせに、敬語を無理に使わなくてもよろしい」
由希江が、つっぱねるように言う。
「もう、いい、あんたやれ!」
「由希江!?」
 徳子は、不安を隠さなかった。思わず、頭を抱える。しかし、思いもよらない久子の言葉を聴くと、二の句が次げなくなった。
「いいじゃない、あおいにやってもらえば ――――」
「やた ―――――!」
「ねえ、あんた真美伯母さんが入院したの、嬉しいの?」
「そうじゃないよ、伯母さんとか、みんなのために役立てるのが嬉しいの!」
  無邪気に笑うあおい。
「あんたは無邪気ね ―――――」
  徳子は、テーブルに肘をつきながら、言う。
「で、どんな風に、家政婦やってくれるわけ?」
 榊家の長女の顔には、全く期待していないと書いてある。口の端に、たまたま落ちていた野菜の屑を噛んでいる。そんな態度に、あおいは不満を隠さなかった。
「徳子姉さん!何よ、その態度!折角あおいがはりきろうって言っているのに」
「そんなこと、あんたに頼んでないよ」
 有希江が言った。
「でも、あおい姉さんが、せっかく、言ってくれているんだから ―――」
 茉莉がようやく、口を挟むことができた。

「茉莉! 私たち、この子との付き合いにかけては、一日の長があるのよ」
「?」
「あの事件、あの事件、すべて、この家のトラブルの中心には、この子がいるの!」
「大丈夫だって! あおいは、もうネンネじゃないって!」
「不安だなあ ――――――――」
「ま、いいか、で、何をしてくれるの? うちの新しい家政婦さんは!?」
「徳子姉さん!?」
「もう、やぶれかぶれよ、有希江」
「・・・・・・・・・・」
「だから、家政婦をやるのよ、順々でね、でも、あおいが言い出しっぺだから、まず最初にやる!」
「それは正論ね」
「セイロンって? 何処?」
「よく、あんた、それで、お受験をとおったな」
「有希江!」

 その時、かすかに茉莉が顔色を変えたのを、徳子は見逃さなかった。実は姉妹の中で、唯一、彼女だけ公立の小学校なのである。その原因は言うまでもない。
「それで、普段よりも余計にお手伝いをしてくれるってことでしょう? 早い話」
「それじゃ、おもしろくないな、どうせなら本格的にやろうよ、有希江、服とかちゃんと用意してさ」
「服って?」
 この時、何か話しが変な方向に行っていることに、この時気づかなかった。しかし ―――
「家政婦って家族じゃないよね」
さすがにその言葉を聞いたとき、あおいの顔色が変わった。
「何?!」
「何、血相変えているのよ、単なるゲームでしょう? それもたったの一週間」
 有希江が笑った。
「だって、余計にお手伝いをするってことでしょう!?」
自分で言い出しておいて、あおいは、事態を収拾できなくなりつつあった。
―――― 一体、家族じゃないって、どういうこと?
「家政婦の制服は、すぐに用意できるよ、あおいのサイズはわかってるし、バースディプレゼントで、前に服を作ったことがあるでしょう」
「うん、わかった、ありがとう・・・・・・・・・・・」
家族の空気が、自分の予期しない方向に向かっていることは、あおいにもわかっていた。しかし、わかっていながら、あたかも蜘蛛の巣に絡み撮られた蝶のように、身動きとれなくなっていた。

 さて、その日から一週間、榊家の家政婦になったあおいは、いろいろと用事を押しつけられることになった。たまたま、日曜日だったために、父親をはじめ、家族はみんな揃っていた。最初は、笑顔で、それらを受けていたものの、やがて、不満そうな顔をあからさまに、仕事をこなすようになった。そして、昼食後に、部屋の掃除を徳子から命じられたときに、ストレスは爆発した。
「もーいや! やめよ! こんなこと!」
「何を、バカなことを言っているのよ、自分で言い始めたことしょ!最後までやり通しなさい」
 久子はまったく、意に介さずに言った。
「いやだ! いやだ! いやだ!」
 あおいは、いつものように、じたんだを踏んだ。
「そう、もうあなたみたいな子は、いりません、何処へでも行ってしまいなさい! 」
「え?!」
 久子は、あおいの華奢な手首を一摑みすると、小雪の降る庭に放り出したのである。それには、その場にいた三人も目を丸くした。「ママは、あおいには甘いんだから!」いつも、徳子と有希江に、言われる久子である。
 彼女は特別なんだと、一家、全員が思っていた。いや、実際は、約一名だけは、それを知らなかった。いうまもなく、あおい本人である。しかし、今や、何かが、あおいの周りで変わりつつあった。しかし、あおいを含めたほぼ、全員がそのことに気づいていなかった。
「ママぁ?!」
 昨晩は大雪が降った。
それは、見事、庭を雪原に変えていた。真っ白な平野が、ちょうど、少女のかたちにくり抜かれた。服を通しても、全身に突き刺さる雪の結晶に、あおいは身震いした。それは寒さだけのせいではなかったであろう。
 立ち上がって、部屋に戻ろうとした瞬間、開き窓が、酷薄な音を立てて、閉まった。ガラス越しに、見たこともない久子の冷たい顔があった。
「ママぁ! ごめんさい! 言うこときくから、入れて! オネガイ!!」
あおいは、声を上げて泣きながら、窓を叩く。その時、再びドアが開いた。久子の顔は、もっと雪よりももっと冷たくなっていた。
「あなたは、誰です?」
「ママぁ!ごめんさ――」
「だったら、どうすればいいの?」
「ママの言うとおりにすれば―――――」
 
 次の瞬間、三人を驚かせたのは、久子が続けた言葉だった。
「ママじゃないでしょう!? あなたは、この家の家政婦なのよ、だから奥様と呼びなさい」
「え・・・・?!」
 二の句がつげないとは、まさにこの場面のことを言うのだろう。あおいは、驚くことすらなかった。実際に、久子の声が聞こえなかったのである。それを心身的難聴というのだろうか?その内容があまりに衝撃的なために、耳が受け付けなかったのかもしれない。
「聞こえなかったの?私のことは、奥様と呼びなさい」
「オクサマ?」
 それは冗談にしか聞こえなかったが、その表情は真剣そのものだった。

「ほら、部屋が濡れるでしょう?!玄関に回りなさい!それから、スリッパは、穿かないで裸足で玄関に回りなさい、濡れるでしょう」
「ウウウ・ウ・・ウ・ウ・ウ・ウ・!」
 あおいは泣きながら、しんみりと歩き出した。濡れながら、歩く雪は、痛むほど冷たい。
「あんまり、みんなをからかうからだよ、ほら、靴を持ってきてあげるから ―――――」
 有希江が、珍しく仏心をだして、靴を持ってこようと、立ったときだ。久子が言った。
「甘やかさないの、有希江。家政婦なら裸足で十分、これまでが甘かったのよ、どれだけみんなが迷惑しているか、もう、あなたのこと、どう思っているか、その冷たさを裸足で実感しなさい!」
 
 あおいは、皺だらけの老婆のような顔で、母親の言葉を受け取った。玄関までの道のりは、数キロにも感じた。雪の結晶、結晶は、それこそ、鉄の針となって、少女の足に突き刺さった。生まれてはじめて、雪というものが、仄かな美しい、あるいは、可愛らしいものではなく、冷たいものであると実感した冬だった。

テーマ:萌え - ジャンル:アダルト

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